遺言 作:歪み神
あれから一年の月日がたった。
まず私が手に入れた権能、若しくは不具合だが
一つ目:動態の数舜先の像を、目からの情報を脳が補填して見せたがる
二つ目:情報に乏しい像を補填してクリヤにしたがる
というもので、したがるというのは、私の意志に関係なく作用したがるのでこう表現している。
情報量の多い場所でこの権能が発動すると、当たり前のように脳の血管が切れる。
これまで 私は10回ほどこれが原因で医療施設に運ばれている。おかげでクリス・エバート少尉を私の専用介助人のような立場にしてしまった。
この厄介な権能も何となく克服する手段のような方法、若しくは手掛かりがある。
私にいたずらを及ぼす者は、意志のような物をもっていて、意志力で強引にねじ伏せる、若しくは対話する(お願いする)ようなコミニケーションでほしい情報のみにフォーカスをして作用させることが、たまにできるようになった。
今ではバスクグラスを付けていれば、一般的な行動に支障を来すことはまずない。
ニュータイプ研は、私をサンプルにいくつか実験を行いたがったが、一年戦争の活躍で私を英雄視する人間や私への同情する派閥が強く、私の大尉という立場もあり、あの組織とは一線引かれるようになった。
そうそう、エンツォ大佐の暗殺だが、当時相当の騒ぎになったが、何せ一番の容疑者であるべき私が当時歩行も困難な状態であったことから、事情聴取すらされず、手掛かりすら見つからなかった。
U.C.82年1月
毎日美しい女性を引き連れてブラブラしているだけの様にしか見えない私に命令が下る。ガンダリウムγとムーバブル・フレームとリニアシートの技術交換の為に月に赴くシャア・アズナブル大佐の護衛だ。私が記憶しているよりも少し早い。おそらく反乱分子が居なくなって政情が安定した為だろう。記憶ではアボリーがついていったと思うが・・。
「これを機に大佐との距離を縮めてください」
と、まだ私に対して敬語のハマーンに送り出される。クリス・エバート少尉も一緒に向かってくれるそうだ。
そして、月へ向かうシャトルの中の座席配置が、シャア・アズナブル大佐が最前列、私が最後尾となり、親睦などまったく取れない状態となっている。
「大佐と大尉はどうしてこうも仲が悪いのですか」
「宇田津の上がらない奴に一度説教をしたんだ、内容は言えないがそれ以来どうも避けられている」
彼女にこう答えるのはもう何度目だろうか?
アクシズに到着して覇気の無い彼にその理由を尋ねると、ララー・スンという最愛を失ったとか言われ、私が冗談ではないと怒りをぶつけたことがあったのだ。
・お前の父親の遺言のせいで何十億人死んだと?そんな別れは死人の数だけあふれていること。
・デギン公王が士官学校でガルマと仲良くなったお前に喜んでいたこと。
・デギン公王がキャスバルに粛清される道筋を用意していたこと。
・キシリア閣下がお前の取り込みに良い返事をもらい、安らいだ顔をしていたこと。
・ザビ家の面々がお前に後を託すために悪名を被ったこと。
私が知っている秘匿事項をすべてぶちまけて、喝を入れてやったのだ。喝を入れたのは強化人間プログラムの前の事で、記憶の時間軸でも私はシャアに怒りをぶつけている。それ以来距離を取られ、その距離は離れるばかりだ。まあ5thルナまでの作戦行動まで支障を来したことは無いので、このままでも問題はないだろうと私はあきらめている。
月の宇宙船ドックにはカールトンマテリアルというアナハイムと我々を仲介してくれる企業の社長、カールトン・フィスクが迎えに来ていた。
彼と握手を交わすと、左手がわずかに震えた。握手をしたまま不思議そうに左手を見ていると、彼は迷惑そうな顔を私に向ける。まあ、確かにこれは礼儀を逸脱した行為だ。私は謝ると順番をクリスに譲った。
先方が提案したとうりの条件で、交渉をシャア大佐がまとめると、私は用意された寝室に案内された。
部屋で一時間も時間を費やしたころだろうか、カールトン・フィスクの秘書が私の部屋を訪ねた。
「あなたの一年戦争のご活躍を社長が伺いたいそうです」
『シャアではなく、勲章ももらったことのないオレか?』
私はハンドガンの状態を秘書の前で堂々と確認し反応を見るが、澄ました表情は変わらなかった。
カールトンマテリアルの社長室に案内され、秘書が部屋を離れると
「迂闊だぞ2nd《セカンド》」
彼の第一声は訳の分からないものであった。