遺言 作:歪み神
そもそもキシリア機関とは、きな臭くなった現状を憂い、戦争などしなくても独立を勝ち取るために発足された機関だ。最初は彼女とその学友の5人だったという。彼女は優秀な成績で飛び級をしているので、その学友も彼女の5つ以上年上だったと考えられる。
最初の5人のうち、一人は閣下本人、一人は軍事面で閣下の発言力を高めるためにマクベが軍に残った。残り3人の消息は不明だが、潤沢な資金と後ろ盾を得て、物流、食料、政治、何処かキシリヤ閣下が必要と思う分野にキシリヤ機関の為に派遣された。彼らは皆3rdとされ、各々の力量で自分の組織を強く強大にしていく事を是としている。一人閣下の傍に残ったマクベは2ndだ。
3rdは4th 5thを任命するが、マイクロチップを持つのは4thまでだ。だがこれはあくまで命令の形態に過ぎない。3rdよりも大物が、自分も知らないうちに5thにされていることも有るかもしれない。3rdは自由裁量で動くから、組織の作り方も個人の個性に依存する。
カールトン・フィスクが3rdに任命された時点で、3rdは十数人だとキシリヤ本人から聞いているらしい。
「マクベと才能を同じくする者たちが、潤沢な資金と後ろ盾をもって10年近くの年月が経っている。キシリア機関はどうなっていると思う?」
「どうなっているんだ?」
「まったく分らんよ、機関の全貌は閣下しかわかっていないのだ。私は一人だけサードを知っている。だがその人物の名を明かすことはできん、だが仲間の活躍は予測できる」
彼は他のキシリヤ機関の動きを予想し、説明をしだした。
・地球にはまだ大隊規模のジオン軍が存在している。そんなことが可能か?彼らの補給支援は一体どこの誰が行っている?
・シーマ・ガラハウの艦隊はどうやって組織を維持している?海賊行為も行っているようだが、連邦の網をくぐりあの艦隊を維持することは可能か?デラーズ艦隊はザクF型の整備維持にも苦慮しているらしいぞ、シーマの部隊のほとんどはゲルググタイプで構成されている。我々は総帥の派閥を嫌う、2つの部隊の経済差に表れているのではないかね?
・終戦後のサイド3はどうだ?多少の虐殺行為はあったが数十億人の命の代償としては、終戦の協定は甘すぎるだろう?
・アクシズは何故存在が黙認されている?ジオン軍と何が違うというのかね?
・現在の連邦軍の将軍による私物化はどうだ?それぞれの派閥が互いに牽制しあう構図は自然にできたものなのかね?
指摘されれば、おかしなことは幾つもあるな、ならば一番重要な事を聞かなければならない。
「アクシズは機関の支援を受けているのか?」
「アクシズは敗残兵と兵器が雪崩込み、一気に経済規模を10倍にする必要があった。そんなことが可能かね?マハラジャは軍人だ、そんなことが出来るとは思えんな。それにアクシズは独自にMSの開発もしているだろう?お前たち軍人は当然のことに思っているようだが、私は思わんよ。強力なバックボーンが無ければ出来るものか」
「スゲーなキシリア機関、結集すれば連邦に勝てそうだな!」
「元々戦争をしないための組織だ。戦争はできんだろうが、サイド3の独立位はやれただろうな。それも閣下がご存命であればの話だ。2ndはお前の他にもいるだろうが、機関の全貌を知るものはやはり居ないだう。マクベが生きていればな・・・いや閣下が存命でなければそれも無いか・・・」
「あんたは何をやっているんだ」
「私はツィマッド社の重役だった。ジオニックとの統合合併を目的にされた工作員だ。南極条約協定が締結された後、マクベから敗戦に備えるように指示を受けた。そこでこの会社を別人の名で興し、今はその別人に成りすましているというわけさ。眼鏡と髭程度の変装だが意外とこれで十分やっていける『現にお前も私にまるで気が付いていない』」
「3rdなのに工作員なのか?、あんただけちょっとショボくないか?」
「この会社の規模も知らないのによく言う。私は前にとある組織を立ち上げる責任者をしていた。機関にとって重要な組織だ。理由があって、そのポストを譲って今に至るのだよ」
私はこの男から不思議な親しみを感じていた。同じ機関の仲間だからか?父親のような感覚をこの男から受ける。
私は生き方を迷っていた。何度も零すが、私のアクシズに合流して以降の戦果は散々だった。多くの期待も裏切っただろう。今後起こりうる記憶を手に入れても、私の頭脳でよい解決策が見つかるだろうか?、ずっとそう考えていたのだ。
「あんたに相談がある、俺の知識を利用し、アクシズに有利に導きたい。もちろん、あんたの組織に有益に振舞ってもらっても構わない。ああ、これでいいじゃないか、俺があんたの工作員になってやる、あんたの都合のいいように世の中をかき回してやるよ。ハマーンのサイド3独立達成の邪魔にならない限りはな」
「そんなものは必要としていない、それにあんな少女にそんな大それたことが出来るものか」
「俺がパトロンを必要としているんだ、いいから俺の話を聞け」
私は今後5年間に起こりうる騒動や戦争を半ば強引に話し出した。
こうして、俺の新たな戦争が始まった。