その夏は忙しかった。色々なところを駆け回った。
私が見たものは何も珍しくない。周知の醜悪。
知った上で私はヒーローとして人を救う選択をしてきたはずだ。
あの日から自分に言い聞かせてる。あの日から……。
◆
「そう言えば悟」
「あ?」
「高校、何処にするかもう決めたのかい?」
「高校、高校ね……」
夏油傑、五条悟の唯一の親友である彼が晩ご飯を何にするかとでも言うようなノリで問いかける。
「傑は?何処行くか決めてんの?」
「私?私は雄英に行こうと思ってるよ」
「雄英……あっあれかプロヒーローをすげぇ出してる」
「……まぁそうだね大体そんな感じさ」
雄英、正式名称「国立雄英高等学校」数多のプロヒーローを排出する名実ともに日本最高峰の名門校であり、全国の中学生の憧れでもある。
だが、当然その壁は高い。偏差値70オーバー。倍率は300倍率。余りにも狭い門を潜り抜けなければならない。
「お前プロヒーロー目指してんのか?」
「あぁ」
「弱者生存それがあるべき社会の姿さ」
「弱きを助け、強きを挫く」
「いいかい悟、個性は弱い者を守るためにある」
「それ正論?俺正論嫌いなんだよね」
「何?」
「
「ポジショントークで気持ちよくなってんじゃねぇよ」
「おっえ〜」
「外で話そうか、悟」
「寂しんぼか?一人で行けよ」
『Time Up!』
「「あっ」」
「ふっふふふ」
「はっははは」
「よし決めた」
「俺も雄英に行ってやるよ」
「行ってやるって……悟らしいけど」
「大丈夫でしょ、俺達最強だし」
「ふっ、そうだね、私達は最強だ」
そう言って二人は拳でのタッチを交わし笑い合う。彼等は
◆
その日は雨が降っていた。
日本らしいジメジメとした夏を、この部屋で過ごすのも何回目か。
病院特有の消毒臭。無機質な機械音。此等に違和感を示さなくなり、最早日常の風景と化してからどのくらいの月日が流れたのだろう?
自分はとある病気を患っている。それは世間一般に、不治の病と呼ばれるものだ。
医者や看護師はこぞって「大丈夫だよ」だとか、「絶対に治るから安心してね」とか言ってくる。
絶対なんてこの世に存在しないことを彼等が一番分かっているだろうに。
さらに親子仲も悪いときた。
まぁ良い悪い以前の問題なんだろうけど。不治の病にかかり、死を待つしかない自分のことを見ていない。
存在しない者として扱っているのか、はたまた
どちらにせよ不治の病だと判明した日から一切来なくなった。という事実は変わらない。
まぁ自分の人生が終わると分かってしまうと何もかもがどうでもよくなってくるが。
死んだらどうなるのだろうか。よくある漫画みたいに異世界に行くのだろうか、それともその後なんてないのか。どちらでも良い事だが、何故だが無性に気になって仕方がない。
……そうか、自分はこの人生を早く終わらせたいんだ。この中身のないスカスカな人生を。
成る程、合点がいった。そうなると何だか楽しみになってきたな。死んだらどうなるのだろう。魂というのは存在するのだろうか?
あぁどうなるのだろうか。気にって気にって夜も眠れないじゃないか。