気づいたらカードゲームアニメの強キャラに憑依した~外伝・カード紹介~ 作:名無しのカードバトラー
第一話「騎士対獣人・前編」
東海林健吾。彼はアニメ「ザ・シクスドラゴンズ」において主人公六道龍也の親友兼ライバルキャラとして活躍していた。彼は効果を持たないがその分強力なステータスを有する“レッド・ミノタウロス”を切り札とする獣人デッキを使用していた。“レッド・ミノタウロス”を主軸とし、それをサポートするカードで構成されており、重量級パワーデッキと言えるものだった。
そんな彼だがたった一人のイレギュラーによって未来を大幅に書き換えられた。黒導龍吾に憑依した者によって日本軍管区内のレジスタンス狩りの際に彼に敗北。神戸市にある旧ポートアイランドに建築された「日本軍管区第5収容所」に収監されることとなった。
第5収容所は日本軍管区に5番目に建築された収容所であり、ポートアイランドそのものを収容所にしたために規模も軍管区内で1、2を争う程巨大なものとなっていた。
そこには健吾のようなレジスタンスの人間やその協力者、関係者が主に収容されており、
徹底的な監視が行われているがその一方で脱走率は3割と高めになっている。これは絶対皇帝がレジスタンスの数が減りすぎてしまうのを危惧して一部に隙を作っているからであった。当然、その隙をついて脱獄を目論む囚人は多く、看守側もそれを警戒して常に監視を行っていた。
そして、健吾も脱獄を狙っており、虎視眈々とその時を待っている状態だった。
「決行は今夜です」
「了解した。人数は?」
「10人です。あまり多いと気づかれる可能性があるので」
「了解だ」
健吾は部下だった菅野からの言葉に短く返答する。内容は脱獄に関するものであり、レジスタンスグループのリーダーで警戒されている健吾の代わりに菅野が脱獄の計画を練っていた。そして、今夜が最適と判断して決行すると報告したのである。
それを聞き、健吾は内からあふれ出てくる興奮をなんとか抑えていた。ここに収容されて凡そ半年。漸く脱獄の機会が訪れたのだ。興奮するなという方が難しいだろう。
「気を付けてください。先週には脱獄しようとした連中が結構前にバレています。なるべくいつも通りの行動をするべきでしょう」
「ああ、わかっている。いつも通り俺が囮となるから最後の仕込みをしておいてくれ」
「了解しました」
菅野はそれだけ言うと健吾の元を離れていく。菅野とは決行直前まで話す事はないだろう。下手に同じグループ内で話していると看守に警戒されてしまうのだ。実際、一人の看守が健吾の方を険しい顔で見ていた。これ以上話すとたとえ脱獄を目論んでいなかろうと折檻されてしまうだろう。
「……ちっ」
そして健吾は忌々しい収容所から脱獄する事を夢見つついつも通りの収容所生活を送っていく。基本的に囚人は手作業による小物類の制作を作業内容としている。中にはサモンディスクの部品を作る事もあるがそういった作業は模範囚にしか許されていなかった。当然ながら収容されたばかり且つあまり態度もよくはない健吾では模範囚とは程遠い状況にあった。
「本日は公開バトルを開催する! 前もって通達されていた者は前に出ろ!」
そして、午後は作業が全面的に停止となり、公開バトルが開催された。これは収容所内で基本的にサモンバトルがNGとなっているため、月に1度ガス抜きとしてサモンバトルを許可しているのだ。対戦は囚人同士であったり看守とだったりとランダムに組まれており、今回バトルが許可された健吾の相手は若い女性看守だった。
「東海林健吾だな。私がバトルの相手をする円谷だ」
「……本日はよろしくお願いします」
健吾は内心でため息をつきながら円谷と名乗った看守に頭を下げる。看守とのサモンバトルでは囚人は看守に対して礼を尽くさないといけない。もし、礼を尽くしていないと判断された場合はバトルは中止となってしまうため、どれだけ嫌だろうと大抵の人は礼を尽くしている。
「では早速始めよう」
「お願いします」
「「ゲーム、スタート!」」
健吾は手札を見ながら円谷という看守について考える。就任直後の円谷は黒髪ポニーテールの正統派美人と言った装いでとても人気があった。しかし、他の看守よりも彼女はアース帝国に対する忠誠心が高かった。そのため、レジスタンスである囚人たちを社会のごみとして毛嫌いしており、他の看守が見逃しそうな小さな事柄も反抗的態度として折檻をしていた為にいつしか「地獄の看守」としておそれられる存在となっていた。
「(そしてバトルもそれに相応しい苛烈さを持っているからな)」
「私のターンだな。スタンバイフェイズ、メインフェイズ」
基本的に看守側が先行であり、彼女は淡々とバトルを進行していく。
「私は手札よりフィールドマジック“ノヴレス・オブリージェ”を発動する!」
円谷が一枚のカードを発動する二人を取り囲むように風景が変化する。フィールドマジックとはフィールド全体に影響を及ぼすマジックカードであり、唯一効果が永続するマジックカードでもあった。
そして、風景の変化が終えるとそこは平原であった。周囲には一切の障害物がなく、まさに正々堂々と呼ぶに相応しい戦いをする場所のようであった。
円谷
コスト10→3
ノヴレス・オブリージェ(フィールドマジック コスト7)
「“ノヴレス・オブリージェ”の発動時効果により、私は手札を1枚セメタリーに置く」
円谷
手札4枚→3枚
「そして今セメタリーに送られた“ドロー・ナイト”の効果発動! モンスター・マジックの効果で手札からセメタリーに送られた時、2つの効果のうち、どちらか1つを発動できる。私はセメタリーから“ドロー・ナイト”をコストを支払わずに召喚する!」
ドロー・ナイト(戦闘モンスター)
コスト2 ナイト パワー6000 ダメージ1
「そして私は“見習い騎士-ラプア”を召喚する」
円谷
コスト3→1
見習い騎士-ラプア(戦闘モンスター)
コスト2 ナイト パワー1000 ダメージ0
「私はこれでターンエンドだ」
「俺のターン! スタンバイフェイズ! ドローフェイズ! メインフェイズ!」
東海林健吾
手札5枚→6枚
円谷の盤面は今後に備えたものとなっている一方で“ノヴレス・オブリージェ”の効果で健吾のパワー上昇を無効にするという妨害をしていた。しかし、現状でフィールドマジックを破壊できるカードは少なく、妨害をする事は難しくなっていた。
「俺は“レッド・ミノタウロス”を召喚する!」
東海林健吾
コスト10→6
レッド・ミノタウロス(戦闘モンスター)
コスト4 獣人 パワー17000 ダメージ2
健吾はいきなり切り札を出した。健吾は最初から全力で行く予定であり、円谷にあまりターンを渡したくはなかった。ナイトテーマモンスターは相手の動きを制限する効果を持つモンスターが多く、召喚されればされる程健吾は身動きが封じられてしまうのだ。
「更に“ハーゼルゲ”を召喚する」
東海林健吾
コスト6→4
ハーゼルゲ(戦闘モンスター)
コスト2 アニマル/ウィンド パワー10000 ダメージ1
次に召喚したのは“レッド・ミノタウロス”と同じ効果を持たないモンスターだ。黒い鷹のような見た目をしたそのモンスターはフィールドの回りを旋回しながら健吾の命令を待っていた。
「そして自分フィールドにアニマル及び獣人テーマモンスターが存在する場合、“カブキツネ”をコストを支払わずに召喚する!」
東海林健吾
コスト4→4
カブキツネ(戦闘モンスター)
コスト3 アニマル パワー9000 ダメージ1
健吾が出したのは歌舞伎の衣装に身を包んだ二足歩行のキツネだ。健吾の脚程度の大きさのそれは可愛らしく、円谷も思わず頬を緩めてしまう程だった。
「“カブキツネ”の召喚時効果発動! デッキから1枚ドローする。更に、効果を持たない獣人テーマモンスターがいるのでもう1枚ドローする」
東海林健吾
手札3枚→4枚→5枚
手札を一気に増やした健吾は改めて手札を見ると次の一手を打った。
「俺は“猫の賢者ニャコラ”の効果を発動する。フィールドの“カブキツネ”を手札に戻す事で召喚コストを2軽減して召喚する!」
東海林健吾
コスト4→1
猫の賢者ニャコラ(戦闘モンスター)
コスト5 獣人/アニマル パワー5000 ダメージ1
「そして再び“カブキツネ”をコストを支払わずに召喚する! 更に効果で2枚ドロー!」
東海林健吾
手札4枚→5枚→6枚
二足歩行の可愛らしい賢者のような“ニャコラ”と“カブキツネ”の効果で健吾の手札は
完全に回復された。そして、健吾のターンはまだ終わっていなかった。
「俺は手札の“ビースト・ソルジャー”の効果で召喚コストを4軽減してノーコストで2体召喚する!」
東海林健吾
コスト1→1
ビースト・ソルジャー(戦闘モンスター)
コスト4 獣人/アニマル パワー13000 ダメージ1
召喚されたのは剣を持った二足歩行の犬型獣人だった。2体のモンスターは門番のように円谷の前に立ちはだかっていた。
「バトルフェイズに入る! 俺は“ビースト・ソルジャー”でアタックする!」
健吾の指示に従い一体の“ビースト・ソルジャー”が円谷に吶喊する。
「ライフで受ける」
円谷
ライフ6→5
「続けて“ビースト・ソルジャー”でアタック!」
「それもライフだ」
円谷
ライフ5→4
2回続けてブロックもしないでライフを受ける。その事に健吾は眉を顰めつつ攻撃の手を緩める事はなかった。
「更に“ハーゼルゲ”でアタックだ!」
「ライフだ」
円谷
ライフ4→3
3回目もライフで受け、円谷のライフは半分となっていた。それを受けて健吾は円谷の目的を完全に予測した。基本的にライフで攻撃を受けるメリットは3つしかない。1つはモンスターをバトルで破壊しない。2つ目はコストの回復値が上昇する。3つ目がマジックやモンスターの効果の発動条件を満たす。現状で考えられることは3つ目であり、ちょうどそれに相応しい汎用カードが存在していたのだ。
「……俺はターンエンドだ」
「ではエンドフェイズ時に私はクイックマジック“エマージェンシーコール”を発動する! これにより、私はコストを6つ回復する」
円谷
コスト1→7
ライフを一気に回復し、次のターンで円谷は大きく動く事が出来るだろう。
円谷
ライフ3 コスト7 手札2枚
フィールド
ドロー・ナイト
見習い騎士-ラプア
フィールドマジック
ノヴレス・オブリージェ
東海林健吾
ライフ6 コスト1 手札5枚
フィールド
レッド・ミノタウロス
ハーゼルゲ
猫の賢者ニャコラ
カブキツネ
ビースト・ソルジャー
ビースト・ソルジャー
「私のターン! スタンバイフェイズ! ドローフェイズ! ヒールフェイズ! メインフェイズ!」
円谷
手札2枚→3枚
コスト7→10
前のターンの“エマージェンシーコール”と合わせて円谷のコストは全回復となった。それを受けて健吾は大きく警戒する。
「私は“ハウンド・ナイト”を召喚する。“見習い騎士-ラプア”と“ハウンド・ナイト”の効果で召喚コストを3軽減する」
円谷
コスト10→7
ハウンド・ナイト(戦闘モンスター)
コスト5 獣人/ナイト パワー12000 ダメージ1
「そして私は“ハウンド・ナイト”を生贄に、“湖畔の騎士-バスラット”を召喚する!」
円谷
コスト7→2
湖畔の騎士-バスラット(
コスト6 ナイト パワー16000 ダメージ1
召喚されたのは穏やかそうな表情をした騎士だった。しかし、その体からは溢れんばかりの覇気があふれ出ており、決してやさしいだけの騎士ではないと分かる程だった。
「そして手札の“流浪の騎士-ヘルテア”は相手モンスターの数だけ召喚コストを軽減できる。よって、私は“見習い騎士-ラプア”の効果と合わせてコストを7軽減して召喚する!」
円谷
コスト2→2
流浪の騎士-ヘルテア(戦闘モンスター)
コスト7 ナイト パワー22000 ダメージ0
円谷の最後の手札から召喚されたのは“バスラット”とは違い、薄汚れた騎士だった。まさにその名の通り、流浪を繰り返しているような風貌の“ヘルテア”はそのせいか“バスラット”を超える覇気を有しているように見えた。
「“ヘルテア”の召喚時効果を発動する! 私はセメタリーからナイトテーマモンスター1体を手札に加える。私は“ハウンド・ナイト”を手札に戻す。そして“ハウンド・ナイト”と“見習い騎士-ラプア”でコストを支払わずに召喚する!」
これで“バスラット”の召喚によってセメタリーに送られた“ハウンド・ナイト”は再び召喚された。大量の騎士が並ぶ円谷と獣人たちが揃った健吾の盤面。互いが大量展開をするバトルに周囲で見ていた者達は歓声を上げる。互いに実力者だからこその展開であった。
「私はこれでターンエンドだ」
全ての手札を使って整えられた円谷の盤面はまさに鉄壁と呼ぶにふさわしい状況になっていた。“ノヴレス・オブリージェ”の効果でパワー上昇は出来ず、“バスラット”の効果で健吾のモンスターの召喚時効果は発動できなくなっている。更にバトルフェイズに入れば“ヘルテア”の効果で健吾のモンスターのパワーは3000下げられ、“バスラット”の効果で円谷のフィールドのナイトテーマモンスターはパワーを4000上昇する。実質的に7000アップと言っても過言ではなく、更にブロック時には自身のパワーを6000もあげられる“ハウンド・ナイト”がいた。
この盤面をバトルで突破するのは事実上不可能と言えた。こうならないために健吾は早めに決着をつけたかったのだが相手は予想以上に素早く展開して見せた。
「(厄介な……)俺のターン! スタンバイフェイズ! ドローフェイズ! ヒールフェイズ! メインフェイズ!」
東海林健吾
コスト1→3
手札5枚→6枚
だが、この盤面を何とかしないと健吾に勝利はない。健吾は自身の手札を確認しながら勝利の為の策を必死に練り上げるのだった。