バスに乗って向かいますは今日の授業の会場となる大きなグラウンド────確か名前は嘘の災害や事故ルーム、略してUSJ。著作権とか大丈夫?
「そういえば緑谷君、ちょっと質問してもいい?」
「え、あ、ああ、うん! 大丈夫だよ、多々良君!」
「ありがとう。それで、質問っていうのが、コスチュームについてなんだけど……」
「あ、前回の戦闘訓練で壊れちゃったから今修理に────」
「ああ、うん。それは知ってる。ガントレットとかサポーターとか付けないの?」
ピタリ、と緑谷君の動きが止まる。え、何? 俺、何か地雷踏んだ?
「そうか、そうだよ……! 超パワーに耐えられないなら普通付けるはずなんだ、何で思い至らなかったんだ……! この力の制御ばかりに目が行っていたせいで気付いてなかったけど、普通は思い付くものだよなこれ。制御できないならその制御をサポートするような装備を────」
「おーい、緑谷君、こっちに戻ってきてよー」
「────ハッ!? ご、ごごごごごめんね!? 僕、一度考え始めると止まらなくなっちゃう癖があって……」
「大丈夫。で、何か構想とかあったらサポート科にいるパワーローダー先生に声かけてみるといいって。難しいならこっちに電話してもいいかも」
「この短期間で色んな所に顔出してるんやね、多々良君って」
「縁って大事だよ、麗日さん。俺の個性だってほぼ縁みたいなものだし」
どんなのが生まれるのかはランダムなんだよねー、と俺が話すと、正面に座っていた蛙吹さんが口を開いた。
「ケロ、そういえば緑谷ちゃんの個性って、オールマイトのものと似てるわよね」
「そそそそそうかな!? 僕のはちょっと違うというか────」
「ありゃ似て非なるもんだぜ梅雨ちゃん! でも、派手でいいよなぁ、緑谷も多々良も。俺はちょっと地味でよ……」
「そう? 凄くカッコいい個性だと思うよ、俺は。だって、君の後ろにいれば誰も傷つかないんだ。カッコいいじゃん」
「うん! 硬化って、シンプルかつ強力な個性だと思うよ!」
「お、おお……なんか、そこまで褒められると照れるな!」
「派手さと言えば爆豪君とか轟君も派手だよね。爆破は言わずもがな攻撃力と派手さ、氷なんかも派手だけど人をあまり傷付けることがない攻撃ができるし」
口にしてみると派手だなぁ、と思いつつ、今スロットにセットしている武器を思い出していく。俺の武器はたくさんあるけど、全てを瞬時に扱えるわけではない。スロットに入れていない武器は胸に手を突っ込んで引っ張り出さないといけないが、スロットに入れている────まぁ、ゲームのショートカットみたいなものが俺の中にあって、そこにセットしている十本の武器はすぐに取り出せる。とりあえず今後の目標として、収納している武器を瞬時に取り出して扱えるようにすることが挙げられる。あとは……銃! 銃弾切れるようになりたい! スナイプ先生にお願いして稽古つけてもらおうかな。
「派手でも爆豪は荒っぽいから人気出なさそう」
「あ゛ぁ゛ん!? 出すわ!」
「うーん、やんちゃ。やんちゃといえば特防が低いけど物理攻撃力が高いよね」
「た、多々良君もポケモンやってるの……!?」
「おお、口田君。やってるよ。最近受けトドンの育成に沼ってます」
「物理? 特攻?」
「特攻。人ちゃんのシャンデラを叩き潰せる力が欲しい……!!」
「ああ、うん、シャンデラかぁ……」
シャンデラ、おおシャンデラよ、なぜ貴様はエナジーボールを覚えるのだ……お前ほのおタイプだろうが……
「お前ら、そろそろ着くぞ。切り替えろ」
「「「はい!!」」」
それにしてもUSJってどんな場所なのかな。行ったことないから知らないや。遊園地ってことでよろしいのだろうか。そう思いつつ、降りた場所は────凄いカオスなフィールドであった。
「ようこそ皆さん! ここは僕が考案した
なんだか凄いコスチュームに身を包んだ方がいらっしゃったぞ。何だろう、宇宙飛行士が着ている服をもっとふっくらさせたような、洗濯機みたいなフォルム……え? 13号っていうプロヒーローなの? ごめんよ緑谷君、俺はヒーローについてよく知らないんだ。ところで最近生まれた生やし丸使う? 腕が千切れても生やせるようになるよ。デメリットとして一日中笑い上戸になるけど……え? 使わない? そう。
「────確かに僕の個性は災害救助の際に役立ちます。しかし……人を簡単に殺せる個性でもあります。皆さんの中にも、そういった個性を持っている方はいるでしょう」
お? 俺を見たな? 正解ですよ13号先生。俺はその気になれば人を簡単に殺せる。
「ヒーローとして、その力をしっかり使いこなすだけじゃなく、よく考えてください。その力はどうすれば人の助けになる力になるのか。この授業では心機一転! 人命のために個性をどう使えばいいかを学んでいきましょう! 君達の力は、人を傷付けるためにあるのではなく、助けるためにある力だと心得て帰ってくださいな」
お小言兼助言をくれた13号先生に感銘を受けた生徒の拍手と褒め言葉を送る中、チリチリと俺の中の炉心が火を燻らせ、武器達が騒がしく胎動を始める。それは武器を作る時や戦闘時以外は、いつも意識的に抑え込んでいるはずなのに。
「……っ?」
「壱────って、火が!?」
「壱、火ィ出てるぞ!? どうした!?」
「何? おい、多々良、個性の制御はいつも────っ!?」
刹那。靄のようなものがUSJの広場に広がって……
「全員、一塊になって動くな!!!」
「何だぁ!? また入試ん時みたいにもう始まってんぞパターン!?」
「違う!! あれは────ヴィランだ!!!!」
相澤先生が臨戦態勢へと移行し、俺達の意識もいつでも動けるように切り替わる。これは、訓練とかじゃない。チリチリと炉の炎が燻り、体の外に出そうになるのを抑えながら黒い靄の中から現れたそれに目を向ける。
「せっかく大勢で来たのにさ……オールマイトいないじゃん……」
いくつもの手がくっついた男が、そう呟く。……オールマイト?
「子供を殺せば来るのかなぁ?」
その声から感じる憎悪と、愉快さ。オールマイトに用があるから、俺達を殺そうとしているのが、嫌でも分かった。
「ヴィランンンン!? 馬鹿だろ!? ヒーローの学校に侵入するとかアホかよ!?」
「13号先生! 侵入者用センサーは!?」
「もちろんありますが……!」
センサーを無効化、またはジャックするタイプの個性を持っているヴィランがいる。つまり今、この場がどんな状況なのかを知らせることができない状態にある。厄介極まりない状況だ。
「13号、避難開始! 学校に連絡試せ! 電波系の個性を持ってるやつがいる可能性が高い! 上鳴! 個性で連絡試せ!」
「ッス!」
上鳴君が通信を試みるが、結果は失敗。相澤先生はそれを確認してからすぐ完全に戦闘状態に移行した。けど、嫌な予感がする。なら、俺ができることは……
「先生! これ!」
作った武器を相澤先生に渡して、少しでも負担を減らせるようにすること!
「! 効果は!」
「凄い効く目薬!! 明日は全身筋肉痛!!」
「上出来だ!」
やった、褒められた。って、考えている場合じゃないよね。
「避難の時は!」
「慌てず騒がず落ち着いて!」
「ただし迅速に!」
「手慣れてますね三人共!」
相澤先生がすぐに離脱できるように、俺達は早くここから脱出しないといけない。応援を呼ぶにしたって、USJを出ないと話にならない。刮目せよ、避難訓練の際に習得したゴキブリ走行を。カサカサ動くが音もなく、そして速い動きを可能にしているのだ。
「させませんよ」
「人ちゃん!」
「てめぇら何が目的だ!?」
「初めまして、学生の皆様。我々は
は? 人ちゃんの個性が、通用してない!? 生物なら効かないはずがないのに!?
「その前に!」
「俺達にやられるとは考えてなかったのかよ!?」
爆豪君と切島君が仕掛けるが、黒い靄のようなものを纏っているヴィランには通用せず、すり抜けてしまった。こいつ、ワープ系個性持ちなのか? ワープ系の個性って貴重だから凄い重宝されると聞くけど……なんでヴィランに? というか、何で人ちゃんの個性が効いていないんだよ。まさか人間じゃないとか、死体が勝手に動いているとか言うなよ?
「危ない危ない……生徒と言えども、優秀な金の卵……」
「ダメだ! どきなさい二人共!」
────あ、ヤバイ。二人がブラックホールの射線に入っているせいで13号先生の攻撃を邪魔してしまっている。これは────
「一つ一つ……散らして、擂り潰す……!」
不味いかも────
「「留まれ、壱!!」」
「ッ、
ガジャアアアアンッ!! と銅鑼を打ち鳴らす。デスマッチ状態になるこの盾だが、障壁を展開するエネルギーを全て使って、何でもかんでも弾き飛ばすこともできる。それを使うと一週間使えなくなるけど。その効果はこの靄にも適応されたらしいが────しかし鳴らすタイミングが遅く、皆が靄の中に飲み込まれてしまった。響ちゃんと人ちゃんも、俺の近くにはいない。
「……大丈夫!」
あの二人は、強い。きっと大丈夫。
ちょっとだけ怖いけど、あの二人はきっと大丈夫だ。だから、今俺がやるべきことは、相澤先生のサポートと……雄英への連絡を出すこと。大丈夫……きっと上手くやるさ。俺はどこまでも突き進んでいく男。こんなところで縮こまっていても始まらない。俺が今できることを全力でやるだけだ。
「力を貸して、皆」
力を失った
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心操と耳郎は、ひたすらに心を落ち着かせるように深呼吸を続けていた。
「おい坊や、そっちの女を置いていけば命だけは助けてやるぜ?」
「ハッ、抜かせ三下」
「ぷっ、おいおい、そんなに粋がって────」
「おいおい、馬鹿かよ」
「お、おいどうし────」
「何やってんだお前ら────!?」
「「オラァアアアッ!!」」
「「「ひでぶっ!?」」」
洗脳、イヤホンジャック。その二つを利用した奇襲は成功。洗脳し、ぶっ飛ばし、ぶん殴る。その拳には心を落ち着かせているのにも関わらず、怒りの感情が込められていた。それは、ヴィランへの怒りだけではなく、多々良を一人にするという選択肢を取った自分達への怒りも含まれている。
「さっさと合流するぞ、響香。行けるか?」
「誰に言ってんの」
「ガキ共が! 調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
「「うるさい」」
向かってきたヴィランに対して心操が股間を蹴り上げ、耳郎が顎に向けてハイキックをかます。泡を吹いて倒れたヴィランは、目覚めたら性転換していることだろう。
「あいつを一人にした。今夜はあいつに何言われても受け入れる腹積もりだ」
「同じく。一人にさせないって決めたのに、その約束を破ったんだから当然でしょ」
今の二人を言い表す言葉があるとすれば、修羅。中学の頃に多くの女子を陥落させ、失恋させた陰のあるイケメンこと心操も、「こいつの魅力は俺だけが知っている」的な感じだったが多々良の存在もあって男子を脳破壊させまくったロッキン美少女こと耳郎も、同じような雰囲気を纏い、戦闘態勢を取る。
「壱が待ってるんだ。悪いが手加減は一切しねぇ」
「悪いけどウチら今マジで機嫌悪いから、死なない努力はしてくれると助かるよ」
「「「ほざけ────」」」
「入れ食い状態だなぁ、おい!!」
「ただのチンピラで助かったね」
洗脳によって意識を支配されたヴィランを丁寧かつ迅速に処理していく二人。心操は念入りに急所を蹴り上げているが、他意はない。全くもってない。耳郎が暴行を受けそうになっていたと多々良が知ったら、死ぬほどうるさいだろうから、全力で去勢手術を行っているという意図は全くない。親友が下卑た欲望の目を向けられていたので去勢手術に勤しんでいるわけでもない。男としてこうすべきだと心がそう叫んでいるからやっているだけだ。