手綱を握れ!人ちゃん&響ちゃん!   作:エヴォルヴ

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緑谷君、君に必要なのは筋肉だ。というわけでプロテイン飲めよ。我ーズブートキャンプはもう始まっているぞ。


鍛えろ!肉体!!

「うぉおおおおおああああああ!!!?」

 

「逃げるだけじゃダメだよ緑谷君。反撃反撃」

 

「その武器を仕舞ってから言ってくれるかな!?」

 

 危機感を煽ると強くなるタイプだと思ったから淫語刀を振ってるんだけど、ダメらしいね。淫語しか話せなくなるだけの武器なんだから傷付くことがないよ。嬉しいね。頑張ろうなぁ! 

 

「多々良、別のやつ使え。感度が上がって使い物にならなくなるのは訓練として旨味がない」

 

「うーん……うーん……じゃあ、こっちで」

 

 スロットに入れていないので胸に手を突っ込んで取り出したのは、ボロい赤布が巻き付いているガントレットと呼ばれる類の武器。派手な力を持っているわけではないが、ちょっとした能力を持っているガントレットだ。

 

「行くよ、【貪虎(どんこ)】!」

 

「速────ぐえっ!?」

 

 ドゴン、と鳩尾にクリーンヒットした拳によって、緑谷君が潰れた生き物のような声を上げながら吹っ飛んでいった。手加減したつもりだったけど、もう少し力を抑えて打った方がいいのかな。人ちゃんレベルになると内臓が潰れる可能性もあるけど……俺はテクニックキャラだからそこまでのはずだけど。

 

「な、なんて威力だ……! かっちゃんに昔殴られた時よりも凄い威力だった……!」

 

 まさかとは思うけど、いじめっ子かよ爆豪君……緑谷君を目の敵にしている節はあるけど、あの理由が分からないんだよね。俺と響ちゃんと人ちゃんの三人組は仲が良い幼馴染だから、仲の悪い幼馴染というのが分からない。まぁ、分からなくたっていいんだけどね。二人の関係は二人の問題だから。

 

「貪虎の能力はね、二つ。一つは攻撃をぶつけた箇所にマーキングを付けるんだ」

 

「マーキング……あっ!?」

 

 緑谷君の腹に刻印された、獣の牙のようなマーク。点滅しているそれを見ながら、俺は能力の説明を続ける。もちろん緑谷君が攻め込んでくるからそれをいなしながら。

 

「マーキングされただけではそこまで効果があるわけじゃないんだけど、もう一発そこを殴ることで効果を発揮するんだ」

 

(全部弾かれてる……!? 数%とはいえ、速度も威力も段違い────いや、多々良君はそもそも脳無と正面切っての足止めができるくらいの実力者! 当然ではあるけど……! ここまで遠いのか……!!)

 

「そしてその効果は、小突いただけでも発動する!」

 

「ブッ!?」

 

「もう一つの能力は発剄! 一発目の攻撃が当たってからの時間が長ければ長い程威力は強くなる。ただし、五分しかマーキングの効果はないから、五分経過後はもう一回マーキングしないといけないんだけどね」

 

 緑谷君は全身に個性を流すことをやれるようになったばかりだから、まだまだ全力で殴り合えるレベルじゃない。でも、殴ってみて分かったことがある。

 

「緑谷君、君の特訓は組手が最適とは言えないかも」

 

「ゲホッ、ゲホッ……組手が最適じゃないなら、何が最適なの……?」

 

「個性全身発動しながら筋トレ! 君もまた、筋肉が付きやすい体質だ。忌々しい……というわけでカモン人ちゃん!」

 

「まぁ、壱相手に三分もラッシュできたなら上々じゃねぇかな」

 

 普通に強かったよ、緑谷君。これで全身100%なんてできるようになったら、凄いパワーになるんじゃないかな。あのビルを吹き飛ばした威力を反動無しで使えるようになれば……二代目オールマイトみたいな存在になりそう。

 

「とりあえず緑谷、お前に必要なのは個性を慣らす時間と筋トレだ。一にフィジカル、二にフィジカル、三四もフィジカル、五にフィジカルだ」

 

「そんなに!?」

 

「筋肉量が圧倒的に足りねぇ。相澤先生を見ろ、あの細く逞しい筋肉を」

 

「見せないぞ」

 

 あれ? 俺と響ちゃん以外筋肉付きやすいタイプの人が集まってる? 

 

「増強型は肉体が出来上がれば出来上がる程、出力を上げられる。というわけでプッシーキャッツの虎が配信している我ーズブートキャンプを参考に、全力で筋トレ開始だ」

 

「う、うん! よろしくね、心操君!」

 

「とりあえず柔軟からな。個性は発動したままだ」

 

 緑谷君との組手はしばらく先かな。人ちゃんと相澤先生が緑谷君に合わせて筋トレをしているのを横目で見ながら、俺は響ちゃんと向き合う。

 

「響ちゃんはどうする?」

 

「体術を極める」

 

「なるほど?」

 

 響ちゃんは遠距離攻撃手段を持っているが、近付かれた時の対策が欲しいという感じか。俺も同じ感じかなぁ……武器を使わない戦い方というのも練習しておかないと、武器が無くなった時に無力になってしまうだろう。

 

「てことで、やるよ」

 

「いいよ、やろう」

 

 そうして始まった体術特訓。まず仕掛けてきたのは顎スレスレを狙った回し蹴り。これを喰らったら間違いなく脳震盪を起こすだろうなという蹴りを、バックステップで回避。その勢いを殺さずに放たれたもう一発の蹴りは貪虎で弾く。

 

「マジでイカれてる反応速度だよ、あんた」

 

「媚主絶天は使ってないよ」

 

「だろうね。それを使ってるならウチの攻撃を回避なんてしないでしょ」

 

「読まれてるなぁ」

 

 反応速度を高めている状態なら、回避よりも弾いての反撃を行った方がいい。あと、貪虎は意外と重いから外していいや。代わりに取り出すのはずっと活躍している無明。もちろん鞘に入っている状態だ。

 

「そういえば響ちゃん、足技が多いけど、躰道とかやらないの?」

 

「ダンスとか、そっちの方がいいでしょ、ウチの個性と合わせるなら!」

 

「それもそっか」

 

「てかあんた体幹どうなってんの!? 全然ブレないじゃん!」

 

「響ちゃんの蹴りが軽いんじゃないの~?」

 

「はぁあああああああああああ???????」

 

 お、速くなった。掌底を使った打撃も混ざり始めたな。

 

「余裕ぶっこいてるとぶっ飛ばすよ!」

 

「ぶっ飛ばしてみなよ。ほらほら、当ててみて♡」

 

「マジで腹立つ!」

 

 真っ赤になってて可愛いね♡

 いやはや、響ちゃん、本当に戦い方が巧くなったなぁ。下手に攻撃を差し込もうとするとイヤホンジャックによる手痛い反撃が待っているし、かといって反撃しないと防戦一方になってジリ貧になってしまう。人ちゃんはフィジカルに物を言わせた超ごり押し戦法が多いけど、響ちゃんは技巧派。俺よりかはテクニックに寄っていないし、人ちゃん並みにパワーに寄っていない。中間を行き来している彼女を中途半端と言うやつは三流もいいところだよ。足りないパワーはテクニックで、足りないテクニックは回転エネルギーや音の壁を利用したパワーで補う。俺達三人の中で一番巧い戦い方をしているのは間違いなく響ちゃんだ。

 

「でも、まだ俺の方が先に行ってるかな!」

 

「うわっ!?」

 

 刀を投げて避けたところで叩き込むのは打撃────ではなく、猫だまし。パァンッ! という気持ちのいい音が響いた瞬間、響ちゃんの動きが完全に止まる。上手いタイミングでいけば気絶まで狙えるらしいけど、俺の技量じゃまだまだ難しい。というわけで、動きが止まって倒れ込んでくる響ちゃんを全身で受け止めて、その体温と感触と匂いを堪能させていただきます。うーん、最高♡

 鍛えているから筋肉の感じはあるんだけど、それ以上に柔らかくて、温かいし、とってもいい匂いがする。

 

「変な触り方すんな変態」

 

「抱きしめただけだよ?」

 

「訓練!」

 

「結構役立ってるよ。受け止めた時に響ちゃんにダメージが行かないようにするとか」

 

「効果を感じてるからイラつく!」

 

 ふふん、こう見えて受け身も得意だからね。人ちゃんくらいの体格までなら受け止めても衝撃を与えないでキャッチできる。サンドバッグで練習した甲斐があったというものだ。

 

「そういえばさ、響ちゃんの攻撃って無理矢理当てたりできないの?」

 

「ハートビートウォールでってこと? やれないことはないだろうけど、微妙かも」

 

「そりゃまた何で?」

 

「壱や人使がフォローに入ったり決闘壁盾(コロッセオ)の障壁内ならまだしも、広い場所で使うと、どこに吹っ飛ぶか分からないんだよね」

 

「響ちゃんは結構コントロールできてると思うんだけど」

 

「ウチが飛んだりする時に使う分にはいいの。細かい進行方向の指定は今後の課題かな」

 

「各方向に壁が作れたらピンボールなんかもできそうだよね」

 

「アリだね」

 

「ところで雄英体育祭の選手宣誓って決めてる?」

 

「壱がやるんじゃないの?」

 

「え? 人ちゃんが響ちゃんがやるんじゃないかって言ってたんだけど」

 

「人使ィ!!」

 

「チィッ!! 押しつけに失敗したか!!」

 

 ブートキャンプをしていた人ちゃんに襲いかかる響ちゃんと、止めようともしない相澤先生と、汗にまみれて倒れ伏している緑谷君。うーむ、カオス極まっている。ところで緑谷君は生きてる? ………………うん、個性は発動しているし、何かブツブツ呟いているのが聞えるから生きてるね。

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 時間は、とんでもない速度で流れていき、二週間後の今日この頃。BIG3の皆さんからのご指導は全力で叩き潰されに行く感じでした。途中、切島君や尾白君、障子君など、色んな人達が混ざるようになり、中々実りある時間を過ごせたと思う。

 

「皆! 準備はできているか!? そろそろ入場だ!」

 

「緊張してないのはどうしてだろう」

 

「緊張したら負け。古事記にもそう書かれている」

 

「ロックフェスの方が緊張する」

 

「何度も思っていたが、結構図太いな君達三人は!?」

 

 個性を常時発動しているからかな? 緊張はそこまで感じていない。A組の控室でジャージ姿の俺達は雑談を交わしていた。何を隠そう、今日は雄英体育祭の日。プロヒーローがスカウト目的で見ているというこのイベントで、俺と響ちゃんと人ちゃんは本日のお疲れ様会のメニューを巡ってじゃんけんをしていた。和食、洋食、中華の三つに分かれ、鎬を削るこの瞬間が、一番生を実感する。

 

「──────緑谷」

 

「轟君? どうかしたの?」

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

 

「えっ!? う、うん、そうだね……?」

 

「ごちゃごちゃ御託を並べるのは得意じゃねぇ。……お前には勝つぞ」

 

 あら、何だかピリピリしているけど、これもまたきっと青春というやつだと思うのでスルー。……チッ、またあいこか……

 

「轟君が何を考えて僕に勝つって言ってるのかは分からないけど……僕だっていつまでも止まってられない。前に進むためにも、本気で獲りに行く!!」

 

「……おぉ」

 

 うんうん、緑谷君の中で何やら自信が付いてきた感じがするね。頑張れ緑谷君。俺も負けないから。

 

「多々良、お前にも勝つぞ」

 

「「──────────だぁあああああああああ!! 負けたぁああああ!!」」

 

「っし、今日は洋食ね!」

 

 響ちゃんが競り勝った。ちくせう。中華、中華食べたかった……

 

「……おい」

 

「ああ、聞いてたよ、轟君。でも、俺が思うに、轟君が宣戦布告するべきなのはこの場にいる皆に対してだと思うよ?」

 

「……そういうもんか」

 

「うん。皆強いもん。……ま、宣戦布告されたからには返さなくちゃね。お互い、全力でやろう」

 

「…………ああ」

 

 へいへい、今の間は何だー?

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