面倒だし一気に入場した方がいいのではといつも思う選手入場。プレゼントマイク先生の実況を聞きながら入場中、来客が凄い量いるのが見えた。
「暇だねぇ、皆」
「飽和してるって言うけど、そこまで飽和してるか? 仕事あんだろ」
「というか選手宣誓をなぜ俺がやることになったの」
「「任せた、壱」」
二人に押し付けられたせいで選手宣誓をやる羽目になったよ、俺。許すまじマジで。
「ところで扱いに差があるのはどうかと思うんですけどプレゼントマイク先生!」
「ヘイトマイク先生に改名しますかプレゼンマイク先生!」
「紹介は平等にやるべきだと思いますプトレマイオス先生!」
『途中から名前が変わってるの聞えてんぞリスナー三人組!!』
年に一度の祭りなんだから、皆で楽しく蹴落と合いをすべきだと思います。というかヴィランの襲撃で生き残ったのは豪運だったからだと思う。マジで死ぬかと思った。
俺達A組から始まり、少し前にヴィランとの遭遇について話をしたら滅茶苦茶心配してくれた物間君を含めたB組、それに続く形で普通科のC・D・E組、サポート科のF・G・H組、経営科のI・J・K組もやってきた。
この全員が入場を完了し、整列すると、ヒールの音を立てながら18禁ヒーローの肩書きを我が物としているヒーロー、ミッドナイト先生が鞭を鳴らして壇上へと現れた。あのコスチュームの露出について法規制が入ったと聞くが、本当なんだろうか?
「選手代表! 多々良壱譚!!」
「短めでよろしいか」
「長めに逝け」
「行ってこい変態」
「かしこまりました……」
まるで断頭台に向かうかのような面持ちで壇上に上がる。ああ、何だかどうでも良く────いや待て、マジかよ物間君、変顔で笑わせに来やがった! 爆豪君は凄い顔してるし! 普通科の人達は何か凄く敵愾心を持ってる顔してるし!!
「選手宣誓!!」
「あー……まぁ、とりあえず一言、二言、三言……」
「「「増えてる!!」」」
やかましいぞ。
「まずはお礼を。ヴィラン襲撃を生き残れたのはプロヒーローと、三年生の方々のお蔭です。本当にありがとうございました」
頭を下げると、少しだけ同情の視線が向けられた。普通科と経営科の人達とはあんまり話したことがないけど、どんな人が多いんだろう。
「まぁ、お礼はこれくらいにして。俺は武器を作る個性を持っていますが、作るだけです。武器を扱える技能が手に入るような個性ではない。これは間違いありません」
突然何を言い出すんだと思った人もいるだろうけど、相澤先生や響ちゃん、人ちゃんは俺が何を言いたいのかを何となく察したらしい。
「まぁ、武器には変な力が宿っていたりするけど、使えなければ意味がない。俺の武器の一つ────この短剣は、俺が作った武器です。斬りつけても、傷ができることはない」
武器なのに? と思うだろう。俺だってそう思ったことがあった。だって武器は、人を傷付けるためにあるものだと思っていたから。
「簡単に人を殺せてしまう個性を持った。怖かった。初めて生まれた武器だって、やろうと思えば人間を簡単に殺せてしまう。ヴィラン向きの個性、なんて言われても仕方がないくらいの個性を持ったのが、凄く怖かった」
でも、と一度言葉を区切って、真剣に話を聞いてくれている皆を見る。
「助けてくれた人がいた。手を掴んでくれた人がいた。俺のヒーローがいた」
炉心から、強い火が溢れる。
「この個性はヒーローになるための個性なんだと、手を差し伸べてくれて人がいた。だから、それに応えたい。俺と、俺のヒーローが来たって、皆が来たんだってことを示したい!!」
武器達が、騒ぐ。早く暴れよう、世界に俺が来たってことを示せと言っているように、多くの武器が叫んでいる。
「ここにいる皆が、誰かのヒーローなんだ。異形だと罵られて、蔑まれても、ヒーローになろうとしている人を、俺は知っている」
「ヴィラン向きの個性、ヒーローには向かない地味な個性だと言われても、ヒーローに憧れて、俺のヒーローになってくれた人を、俺は知っている」
万雷が。喝采が、共鳴している。
「この場にいる全員が、誰かのヒーローだって言いました。ねぇ、ヒーロー! 人を助ける時は下を向いているか!? そんな陰鬱としてる顔を見せて人助けしてるかい!!」
整列して、こちらを見ていた皆の目に、熱が灯る。まだだ、まだ足りない。そんなんじゃ全く足りない!
「違うよね! 下は見ない! 助けを求めている人を見る! 下なんて見ていない! 前を見てるはずだ!」
もっとだ、もっと強い熱が必要だ。せっかくのお祭りに、熱がないのは勿体ない。
「下なんて見てる暇があるなら前を向いて走っていこう! その方が楽しい! その方がヒーローらしい! 上には上がいる? そんなこと言って曇ってる暇があるなら笑おう! 笑ってその壁にぶち当たって、進んでいこう!」
熱が溢れる。会場全体が、熱に包まれた。
「ごちゃごちゃ言ったけど、結局伝えたいのはこれだけ! 雄英体育祭、皆で盛り上げていこう!!」
「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」
うわ、うるさい。熱が欲しいとは言ったけど、ここまでうるさいのは求めてないのでもう少し抑えてどうぞ。(手のひらクルルヤック)
「青い! 青いわ! そう言うの好みよ!! その青さと熱をそのままに、第一種目に行くわよ!!」
お、すぐに始まるのね、種目。ところで爆豪君、凄い目で見てくるじゃん? そういう目で見られても興奮しないよ? 俺がそういう目を向けられて興奮するのは響ちゃんと人ちゃんにだけだよ。
「今年の第一種目はこれ!! 障害物競走!!」
障害物競走……うーむ、妨害もありの障害物競走。間違いなく轟君が仕掛けてくるんだろうなぁ……凍らせたら普通の人なら動けなくなっちゃうし。障子君みたいな体格に恵まれた人なんかも有利かも? でも皆色々伸びてるから、勝負はまだ分からない。
「機動力持ちは強いかもね」
「だが出鼻をくじかれる可能性は高い」
「何の障害物が来るかだよね」
「ま、何にせよ、突破するだけ。そうだろう?」
「おお、物間君!」
「僕達も全力で獲りに行く。決勝で会おうじゃないか」
「「「望むところ!」」」
物間君の言葉一つ一つに重みを感じた。分かっていたことだけど、B組も全力で獲りに来る。障害物を避けながら4キロを走り抜ける……俺達三人の場合、妨害行為よりも連携なんかを意識するといいかも。
「さぁ行くわよ! 第一種目、障害物競走!! ────スタート!!!!」
お、スタートの合図をされた。さぁて、最初のふるいは────やっぱり轟君の氷だよね!! まぁ、大雑把な氷結に引っ掛かる程温い訓練してないさ。通形先輩達に指導してもらったわけだし、その成果が出ないと先輩にも、相澤先生にも失礼だ。
「跳躍丸で飛んでもいいんだけど……響ちゃん、雑でいいから壁!」
「了解!」
「「「おおおおおおおお!!?」」」
あ、他の人も巻き込んでしまった。ごめんよ、他の人達。でも巻き込まれる場所にいたのも悪いと思うよ、他の人。響ちゃんが作った音の壁を踏んで吹っ飛ばされながら軌道修正。A組もB組も抜け出しているみたいだし、俺達も急いで進んでいこう。
にしてもこれだけ凍ってるなら、スケートみたいに滑っていけそうだよな。そんなことを思いながら進んでいくと、第一関門が見えてきた。
『さあいきなり障害物だ!! まずは手始め、第一関門!! ロボ・インフェルノ!!! 』
あ、0ポイントロボットを含めた入試のロボットが現れた。でもこれを突破して俺達は雄英に入学しているんだ。もう少し派手なやつが来ても良かったんじゃない?
「「壱!!」」
「こいつでぶっ飛ばす! 愚瀉ツ刀!!」
0ポイントロボットを思いっきりぶん殴った瞬間、衝撃が全身に伝わってスクラップになる。入試の時に使わなかったのは、愚瀉ツ刀がまぁまぁ壊れやすい武器であることが起因している。あと、もし地面に叩き付けたら穴が開いちゃうから。壁をぶん殴る分にはいいんだけどね。
『1-A多々良がロボを粉砕!! なんだあの武器!? ハンマー? 刀? よく分からないけどとんでもない威力だ!! ぶん殴る度にロボットが粉々になっていく!!』
『確か愚瀉ツ刀だったか。叩いた部分に伝わった衝撃や威力を伝達させる武器だ。ただし、壊れやすい。適当に振り回せば簡単に壊れる癖の強い武器だ』
『荒々しくも確かなテクニックを感じさせる打撃がロボットを粉砕しながら進んでいく!! そのフォローに入るのは同じく1-Aの心操と耳郎!! 殴る! 蹴る! 飛び上がる!』
相澤先生には今持っている武器の名前と効果のリストを渡しているので、名前も効果も話してくれる。一々説明するのもくどいだろうしね。
とりあえずロボットはそこまで脅威にならない。というかこれに立ち止まっていたら、ヴィラン襲撃の後の学びが無駄であったことになってしまう。予測と分析……通形先輩が話していたことはまだできていないけど、この日までたくさんの学びを得たんだ。実践していかないと損だよ。
「やぁ轟君! お先!」
「もう追い付いて────────」
「油断大敵だぜ、轟」
『轟の動きが止まったぁあああ!!? 何があった!?』
『声真似か……上手いもんだな』
「やったぜ」
「流石人ちゃん」
轟君が反応したのは、俺の声じゃなくて人ちゃんの声真似だ。以前聞いた時よりも精度が上がっているけど、響ちゃんの声はもっと練習した方がいいよ人ちゃん。
「多々良君! 心操君! 耳郎さん!」
「待てゴルゥアアアアアアアアア!!!!」
「君達に遅れを取るわけにはいかない!!」
「ハハハハハハハハ!! 逃がさないよ多々良くぅん!!」
「──────油断した……!!」
「足腰を鍛えた甲斐があったな……!」
「あははははは!! 付いてきなよ皆でさ!!」
俺達のすぐ後ろを追いかけてきていたライバル達────緑谷君、爆豪君、飯田君、物間君、轟君、障子君に笑みを零す。というか障子君、複製した部位を使って地面を蹴ってる? なんてこった、剛力に速度が乗っているぜ! しかも物間君は飯田君の個性をコピーしているのか、エンジン全開で迫ってきているし。
『第一関門を難なく突破して来たってことはチョロかったって感じかぁ!? なら第二はどうよ!? 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!! ザ・フォ──────ルッ!!! 』
「お、これ跳躍丸で飛べるんじゃない?」
「待てよ壱。ここは個別で行こうぜ!」
「ここは個別に動いた方が良さそうだね!」
「あ、そう? じゃあまた後で!」
そう言って奈落の底を目掛けて飛ぶ。もちろん考え無しの行動ではなく、跳躍丸の跳躍を強くするためだ。予想通り、下には怪我をしないようにするためのネットが張られており、跳躍丸の石突きがそこにぶつかった途端、凄まじい勢いで俺の体が弾き出される。
「てめ────」
落下する直後に俺の下を通過しようとしていた爆豪君に、石突きを叩き付け────もう一回跳躍する。
「ごめんね爆豪君! ちょっと跳ね台になって!」
「ざっけんなぁああああああああ!!!!」
お、凄い体幹。人ちゃんくらいとは言わないけど、結構鍛えてるね、爆豪君も。
「はい、到着」
『先頭は変わらず多々良!! あいつ、自分の武器使い慣れてんな!!』
『あいつは自分で作っては試し、考察し、使い続けるを徹底している。食わず嫌い、使ってみて苦手だと感じたものも、苦手じゃなくなるまで使い続けて克服する。生み出したものに真摯に向き合うからこそ、あいつは自分の武器を使いこなせている』
『結構高評価じゃねぇかイレイザー!!』
『事実を言ったまでだ』
ありがとう、もっと精進しますね相澤先生!
「二秒遅刻!」
「三秒遅刻!」
「誤差でしょ」
「「まぁそれはそう」」
『心操、耳郎が多々良に合流!! あの三人組んでるのか!?』
『あの三人組が組むのは想定内だったはずだが、マイク』
『いや、それでもここまでガッツリ組んでるとは思わなかったけどな!!』
バトロワであろうと、組めるのなら組むよ、俺達は。そもそも三人で事務所を持とうって決めてるしね。三人で戦えば俺達は無敵だ。一人がミスしても、残りの二人がフォローしてくれる。俺達三人なら、どこまでも行けるんだ!!
『さあ早くも最終関門!! かくしてその実態は────一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!!! 』
「「任せた!」」
「ウチの出番ね!!」
そう言って響ちゃんがイヤホンジャックを地面にぶっ刺し、心音を流し込む。それをするだけで、埋められていた地雷が剥き出しになり、衝撃を受けた地雷が爆発していく。地雷って感圧式じゃないの?
「響ちゃん耳大丈夫!?」
「問題ない。ちょっとキーンって言ってるけど。あと、地雷は外枠にはない!」
「ならヨシ! では……」
「「「走れぇえええええええええええええええええええええ!!!!!」」」
『ああっとここで先頭三人組が外枠を全力疾走!! 遠回りになるはずだがそれでも凄まじい速度だ!! クレバー!!』
『脳筋的思考だが、あいつらの身体能力ならあの程度の距離、いいハンデ程度だろ』
『まさに疾風怒濤の勢いで外枠を駆け抜けていく三人組! 復帰した爆豪と! なりふり構わず氷を敷く轟と! 稲妻纏う緑谷が! 追いかけるが届かない!! プロ顔負けの身体能力から放たれるその速度に、追いつかない!! 三位一体! 雄英史上最も仲のいい幼馴染トリオがスタジアムへ凱旋する!! 刮目せよ、その三人は──────』
『────多々良壱譚!! 心操人使!! 耳郎響香!! 』
ちなみに最初にゴールしたのはビデオ判定でフィジカリストの人ちゃんに決まりました。やはり筋肉が正義なのか……?
一位 心操
二位 多々良
三位 耳郎
四位 緑谷
五位 轟
六位 爆豪
七位 飯田
八位 障子
以下原作とほぼ同じ。物間君?ガス欠で……