手綱を握れ!人ちゃん&響ちゃん!   作:エヴォルヴ

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分けるべきだったかもしれないがもう書いちゃったしいいや。どーにでもなーれ!なんとかなれ―――――!!!!


殴り合え!雄英の森

「お、起きてたか、緑谷」

 

「し、心操君!?」

 

「俺達もいるよ」

 

「お疲れー。ゴリラに襲われて五体満足は大手柄だね」

 

「おい」

 

「多々良君と耳郎さんまで……!」

 

 医務室で治療を受けていた緑谷君がベッドから起き上がり、俺達の方を向いた。外傷は特に見当たらないが……

 

「脳が軽く揺れてただけだったよ。この子の個性が発動している時、稲妻が見えるだろう?」

 

「ああ、はい。それが何か?」

 

 というかこの人誰? 声はテンションの低いオールマイトみたいな声だけど。……まさかとは思うけど、この人がパンプアップした姿がオールマイトだったりするのかな? よく見るとスーツも凄く伸縮するタイプのスーツだし…………まぁ、考察は別にいいか。

 

「あの稲妻が外骨格やクッションのような効果を発生させているみたいでね。脳が軽く揺れた程度で済んだようだ」

 

「へー……なら内臓を強化してたりするのか? ……壱、薔薇陸奥」

 

「身の危険を感じる!?」

 

「病室で何するつもりだいあんたら」

 

「「「なんにも!」」」

 

 ふはははは、そのうち薔薇陸奥を喰らっても油を流出しないのかは試させてもらうとして。

 

「強かったでしょ、人ちゃん」

 

「……うん。本当に強かった」

 

「緑谷君は強くなった。うん、これは本当に強くなってる。下手な増強型よりも強くなってる。でも、準備がちょっと足りなかった」

 

「うん。僕は皆がどこへ行こうかと歩いている時に、歩き方を学んでた。何歩も遅れてる。皆よりも努力して、もっと強くならなくブッ!?」

 

 あ、しまった。思わず無明の鞘で頭を叩いてしまった。

 

「何するの!?」

 

「いや、焦りすぎだと思ってつい。ごめんね?」

 

「焦りすぎって……事実、僕は皆よりも……」

 

「いやいや。それで無茶して怪我して倒れて動けなくなったら終わりだよ」

 

 何をそんなに焦っているのかは分からないけどさ、もっと気楽に進んでいった方が色々と楽だと思うよ。

 そんなことを人ちゃんと響ちゃんとで緑谷君に話しているが、緑谷君の表情は納得いっていない感じ……というか、頑張らなくちゃいけない理由を探しているというか、誰かの期待に応えられなかったことに押し潰されそうな顔してる。うーん……どうしたものか………………あ、そうだ。

 

「緑谷君、俺ね、個性が出た時に事故って色々あったんだ」

 

「え……」

 

 目を見開いた緑谷君にたはは、と笑みを浮かべる。

 

「まぁ、それで個性をコントロールできるようになるまで、相澤先生に色々お世話になってたんだ」

 

「相澤先生に!?」

 

 驚くよね。でもあの人ほど俺の個性訓練に最適な人はいないってことで、お父さんとお母さんが連れてきてくれたんだよね。両親に感謝。

 

「うん。あの時、俺はどんなに苦しくてもいいって相澤先生に話したんだ。そしたらあの人、俺に何て言ったと思う?」

 

「……もっと厳しくやろう、とか?」

 

「んーん、その逆。焦らずゆっくり行こうって言ってくれたよ」

 

 信じられないものを見たような表情を浮かべる緑谷君と金髪の黒スーツの方。リカバリーガールは小さく笑みを浮かべただけ。響ちゃんと人ちゃんはこのことを知っているから、驚きもしない。

 

「何倍も、何十倍も頑張り続けていたら、いつか馬鹿みたいに硬くて高い壁に阻まれて壊れてしまうよりも、ゆっくり進んでいく方がいいって」

 

「まぁ、いつの間にかこいつは爆走族になってるけど」

 

「手綱を握ってないと遥か彼方の銀河の果てまで飛んでいくようなやつになってたけどな」

 

「それはそうなんだけどね。でも、爆走してもちゃんと道を見てるよ。迂回だってする。緑谷君、無理して断崖絶壁を登ろうとしてない?」

 

「………………してる、かも」

 

「それで落下して大怪我したら世話無いよ」

 

 響ちゃんと人ちゃんの隣を歩きたいとオーバーワーク気味に走り続けて、倒れたことがある。無理をし続け、無茶を重ねて、休むことすらせずに走って、追いつこうとして、夜中に走り込みをしたり、寝る間も惜しんで個性の制御をし続けて……相澤先生に滅茶苦茶怒られた。声を荒げない相澤先生が大きな声で怒ってきたのは、あれ以来ない。……あ、あった。小さい頃にヴィランに襲われて、個性を使って戦おうとして怒られたっけ。本当に誰だっけあのヴィラン……ムーン何たらだった気がするけど……ムーンシーチキン? いや、何か違うな? 

 

「友達が大怪我したり、死んだりしたら、俺は────響ちゃんと人ちゃんも悲しいよ」

 

「他のやつらもそう思ってると思うぜ」

 

「友達が怪我して心配しないやつなんていないって」

 

 そう言うと、緑谷君は申し訳なさそうな、でもどこか嬉しそうな笑顔を浮かべて口を開いた。

 

「ありがとう、三人共」

 

「ん。まぁ、遅れてるのはちょっとあるかもだけどさ、緑谷君はすぐにレベルアップしていくと思うよ」

 

「そう、かな」

 

「うん。戦った人ちゃんがそう言ってたし」

 

「そうなの?」

 

「お前が全力出せるようになったら多分、障子と真正面から殴り合えるぞ」

 

 二週間の訓練で許容上限は5%にまで行っているらしいから、これからガンガン伸びると思う。だって常時発動しながら筋トレしたらどこまで伸びるんだろうか。制御の方法に慣れたら、間違いなくA組のゴリラ係数がグンと上がる。

 

「とにかく個性を使いながら筋トレし続けて行こうぜ。目指せカイリキー」

 

「腕は四本にならないかなぁ……」

 

「例え話だよ」

 

 でもカイリキーみたいな筋肉を緑谷君が手に入れたら、オールマイトみたいな感じになりそう。オールマイトの筋肉って密度凄そうだよね。骨とかも頑丈そう。

 

「長話はこれくらいにしなさいな。この子の治療は終わってるし、積もる話は体育祭が終わってからにしな」

 

「おっと、そっか。そろそろ試合もあるのか。行かなくちゃね」

 

「物間と上鳴どっちが勝ったと思う?」

 

「物間君かなぁ」

 

 B組に電気を完全無効にする個性持ちがいるらしいし。確か……塩崎さんなる方が、電気系に対して凄まじい特攻を持つ個性なんだそう。お昼にB組代表として、B組の個性を使って勝ち抜くとか話していたし、きっと物間君が勝ったんだろうなぁ。

 

「手札多いのは強いよなぁ」

 

「うん。ゴリ押し系の個性も強いけど、手札の多さは本当に魅力的だと思う」

 

 まぁ俺も手札の多さが売りなんだけどね。

 

「切島VS芦戸も中々だよな」

 

「まぁ、切島君でしょ」

 

「根拠は?」

 

「身体能力があっても、切島君の方が耐久性が高いから」

 

 多分泥仕合になって最終的に芦戸さんのスタミナ切れor水分不足で終わりだと思うんだよね。芦戸さんも強いけど、今回ばかりは耐久性の高さが物を言うと思う。常闇君と八百万さんのバトルは……うん。常闇君が強すぎる。まぁ、近付けたらワンチャンありそうだけど。

 そんなことよりも俺は響ちゃんにどうやって勝つかを考えなくてはいけない。響ちゃんは人ちゃん並みに強いからね。どうやって勝とうかなぁ……殺傷力の高い武器は一切使えないだろうし……貪虎? 響ちゃん相手にインファイトせよと? 至近距離でハートビートウォール打たれたら俺が負ける可能性があるけど……死中に活ありとも言うし……行くしかないか。あ、でも貪虎はダメだな。別のを使おう。

 

「ま、何にせよ楽しんでいくしかないか」

 

「手加減したらマジで殺すからね」

 

「大丈夫、手加減したら俺が死んじゃうから手加減はしないよ」

 

 途中、ちょっと不機嫌そうな轟君と低体温症になっていそうなくらい震えている瀬呂君とすれ違ったけど、大丈夫かな。

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

『さぁ、第四試合が始まるぜ! カメラは問題ねぇかメディア共!! 東コーナーから登場するのはトップ独走トリオの一人! 大量の武器を使いこなすテクニカルキャラ!! 弁慶だってもっと非力で武器が少ないぜ!! 多々良壱譚!!!』

 

『同じくトップ独走トリオの一人! 連携、単独行動! どちらも高水準でやってのけるロックンローラー!! ハートは熱いが思考は冷静! 高鳴る鼓動は立ち塞がるものを弾き飛ばす痺れるビート!! 耳郎響香ァ!!!』

 

『怪獣合戦と言ったところだな』

 

 大歓声に全身を打たれながら入場する多々良と耳郎。舞台に足を踏み入れた二人の口元には小さく笑みが浮かんでいた。

 

「響ちゃん、万雷使う?」

 

「使うよ」

 

「言うと思った。はい」

 

 胸に手を突っ込んで取り出した刀────万雷を多々良が耳郎に放り投げると、耳郎はそれを受け取り、抜刀する。

 その刀の刀身を見た瞬間、会場の誰もが────否、テレビで視ていた者までもが、感嘆の声を上げた。鍛え上げられた、美しい薄紅色の刀身が太陽の光を浴びて美しくも妖しく輝く。鍔に刻まれているのはオーケストラの姿。刀身、鍔、柄、鞘。どれを取っても間違いなく芸術品と言っていいだろう刀を前に、多々良はニコニコと笑みを深めた。

 

『ビューティフォーな刀を多々良が耳郎に渡したぁ!! 鬼に金棒かぁ!?』

 

『リストによれば、あれは……万雷。能力は────おい多々良、書いてないがどういうことだ』

 

「うん、やっぱり万雷も喝采も響ちゃんと人ちゃんが握る方が似合うね」

 

「相澤先生お怒りなんだけど、大丈夫なの?」

 

「まぁ、あとで土下座してでも赦しを請うよ」

 

 まぁ、許してくれなさそうだけど、とケラケラ笑う多々良は、自分が使う武器として裁縫の針を巨大化させたような形状のレイピアを取り出して構える。

 

「……よりにもよってそれか」

 

「使うの久しぶりなのによく覚えてるね」

 

「そりゃあね。マジかそれって思ったもん」

 

 縫い針のような形状のレイピアの名は、【縫剣(ほうけん)繕縁(つくろうえにし)】。このレイピアを見る耳郎の表情は少しだけ苦々しいが、気を取り直したかのように表情を切り替える。面倒な力を持っている武器ではあるが、負ける気は更々ない。負けるつもりで戦うヒーローなど、どこにもいないのだ。

 

「とことんやろうね、響ちゃん。死ぬ気で付いてきてよ」

 

「とーぜん。そっちこそ途中でバテないでよ?」

 

 両者が握手を交わし、距離を取る。審判のミッドナイトが二人の準備が整ったことを認め、頷いた直後、プレゼントマイクの叫び声が会場に響いた。

 

 

『第四試合────────────────―スタートだァ!!!!』

 

 

「……行くよ、万雷!!」

 

 試合開始の合図が響いた瞬間、耳郎が万雷の名を呼ぶ。その声に意志を宿した刀は答え、その姿を現す。

 

『こ、これはぁああ!?』

 

『万雷────入試で0ポイントを斬った刀か』

 

 それは、雷鳴のように響く音楽。嵐を表現する美しくも荒々しい音楽は刀身から鍔へ、鍔から柄へ、柄から耳郎の腕へ流れ込み、耳郎の腕から右頬にまで楽譜のような刺青が刻まれ……耳郎の後ろに指揮棒を構えたタキシード姿の獣――――否、人狼と表現できるであろう女性が現れた。

 

「マジで、激しすぎない、この武器……!!?」

 

「おお、そこまで引き出せてるなんて流石だよ響ちゃん! でもその子、オーケストラだよ? まだ指揮者だけ────―っとぉ!?」

 

「チッ、外した」

 

「凄いね……万雷を使ってる響ちゃんの攻撃は嵐みたいでとっても綺麗だ♡」

 

 耳郎のイヤホンジャックから放たれた音波の波が、嵐のように暴風を生み、多々良に襲いかかる。ギリギリで回避してみせた多々良はその顔に嬉しそうで、楽しそうな────それでいて恍惚とした表情を浮かべて耳郎と万雷に賞賛を送る。

 

「俺も負けてられないなぁ……♡じゃあ、今日は心ゆくまで楽しもうね、響ちゃん♡」

 

「本当に、いつも通りというかなんというか……ま、壱らしいけどさ」

 

 お互いに浮かべている笑みはヒーローやヴィランという区分にはない、ただ幼馴染と過ごす時間を楽しむ笑み。観戦している心操が思わず羨ましがり、どちらかとの戦いをすべくモチベーションを高める中、多々良と耳郎は激突した。




万雷
耳郎響香専用武器。一応多々良と心操も使えるが、100%の性能を引き出せるのは耳郎のみ。
能力は嵐のオーケストラ。耳郎のハートビートを軒並み強化するだけではなく、刀身に音や心拍を乗せたり、心拍数を調整したりなど、耳郎の能力を120%引き出すような刀。なお、耳郎はまだ指揮者以外を呼び出せない。精進が足りない。


縫剣(ほうけん)繕縁(つくろうえにし)
二本一組のレイピア。
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