ご供養、いかがかね……
賽は投げられた(白目)
「そういえば人ちゃん、響ちゃん、刮目せよ……」
「ん? 何かあった────って、うおおおおお!!?」
「マジ!? 本当に三枚当たったの!?」
俺の手に握られているチケット見て、目を輝かせる二人に自慢気に笑う。ふっ……最近感じていなかった豪運がここに来て発動したな────いや待て、この二人と友達やれていることこそが豪運なのでは? そうか……豪運が常に発動しているからこそ、目に見える幸運が幸運として見れていなかったのか……
日頃の豪運に感謝しながら、俺はライブチケットを手に取って喜ぶ友人、陰のあるイケメンこと心操人使とロックな美少女こと耳郎響香との予定を擦り合わせる。うーん、受験後すぐのライブなので暇だぜ! ありがとうロックバンド!
「ところで受験勉強の進捗どうですか」
「関数に殺される」
「歴史に殺される」
「化学式に殺される」
「「「……よし、一回休憩!」」」
今日は俺の家に集まっての第365回勉強会が開催された日である。脱線することがたまにあったが、基本的にはガチでの勉強会だ。何のための勉強会だって? ヒーローになるためだ。
個性というコミック的なパワーに目覚めた人類が発展して幾年月。ヒーローなんて職業が生まれるくらいの世界になった。ヒーロー飽和社会、なんて今の時代は呼ばれているらしいけど、飽和してるならどうして悪に堕ちる人がいるんですか? まぁ、難しいことを考えると俺の頭が羊羹になるので考えることを止めよう。
「ところで壱、個性の方はどうよ」
「ふっ……聞いて驚け、また生まれた」
「次はどんなのが生まれたの?」
「
ズボ、と自分の胸に腕を突っ込み、中にあるものを引きずり出す。内臓じゃないぞ。俺が引きずり出すのは銃刀法違反待った無しのものだ。
ごそごそと体をまさぐるように腕を動かすこと数分。俺の中から引っ張り出されたのは、桃色の刃を持った美しい刀だった。
「この刀はな、斬り付けた相手をな、淫語しか話せなくするんじゃ。あと感度1000倍アンポンタンにして動けなくする。なおダメージ無し」
「ひっでぇ刀!!」
「え、何? 効果を知ってるってことは壱、自分で試したの? あの事件が起こったのに?」
「……………………あれは、嫌な事件だったね……」
マジかこいつ、という表情を向けられているが、一つ弁明しておこう。俺は変態ではない。確かにこんな馬鹿みたいなものを生み出す個性を持ち、それを試さないわけにはいかないという使命感を持って自分を実験台にするような人間ではあるが、断じて変態ではない。昔、思春期特有のちょっと官能的な夢から目覚めたら生まれていた短剣【
「でも今回のは一日で効果が切れるから……」
「それでも馬鹿なんだよなぁ……なんで誰もいないところで試すんだよ」
「今度動けなくなっても助けないよ」
「そこに可能性があるなら走りた────いやごめんなさい、助けてください……」
俺の個性は特徴的なんだ。滅茶苦茶美味しい煮付けが作れる炎を生み出す鉈やら、熟成された高級醤油が出てくる剣やら、感度3000倍になるナイフやら、完全にネタ武器が生まれる時があれば、木製のものなら絹豆腐のように斬り裂ける妖刀が生まれたり、炎だけを切り裂く大剣が生まれたりとちゃんとした武器が生まれたりする。比率? ネタ:真面の8:2だが?
「でも感度倍化系ってあれだよな……感覚が無い人達への治療とかに使えそうだよな。……普通に使えないか? ………………量産していいのでは?」
「待って人使。そうすると壱が発情顔晒す時間が増えるよ」
「よし、却下で」
「そんな顔なんて晒さねえよ!!?」
「「やらかした人が何か言ってる」」
否定ができないって、こんなに辛いんだな……
「にしても、そろそろ受験日か……もう少し鍛えたかったんだけどな……」
「武器の選別をせねば……」
「フィジカルモンスターの人使とテクニカルモンスターの壱が何か言ってるよ」
「「汝、鏡を見て言の葉を発せよ」」
力の人ちゃん、技と書いて
「まぁ、何にせよ、俺達はやれるだけやるだけよ」
「それはそうなんだけどさ……ちょっと心配────」
「え!? この中で日和ってるやついるってマジ!?」
「おいおい、受験後の楽しみが待ってるのに日和るやつがいるだって!?」
「「煽らなきゃ……」」(最低最悪の使命感)
「ぶっ飛ばすよ」
「逝け人ちゃん(かくとう・エスパータイプ)! 君に決めた!」
「てめぇが逝くんだよ!! デカヌチャン・ヒーローのすがた!!」
あ、くそ! 逃げられねぇように関節極めてきやがった!? ふぉおおおおおおおおおおおおおおお!! 響ちゃんの怒りの心拍イヤホンジャックがハートに来るぜ!! あ、待って、一本でこうも震えて燃え尽きそうなくらい情熱的なパトスを感じるのに二本刺しされたらマジでヤバ────
「ん゛お゛ッ……!?」
「こいつ捨て身で感度上げて痛みを快感に……!!? …………………………すっげぇ変態だぜこいつ」(家畜を見る目)
「咄嗟に感度200倍短剣使ってアへ顔晒さないでくれる?」(絶対零度の視線)
響ちゃんの心拍に合わせてビクンビクンと自然に動いてしまう情けない姿を晒す俺を見る友人二人の目は冷たい。ちなみに俺の体は不可抗力で耐性が付いているのだが、感度200倍は触れられただけで体が快感を覚え始める。何でかは知らないけど、物覚えも良くなるぞ。快楽物質って、凄いね。
「全く……不安感じて損した」
「大丈夫、響ちゃんも人ちゃんも心配いらないよ。俺のヒーローなんだから」
「発情顔晒しながら話しても全然響かないんだけど」
「うーん、正論……ふんぬらば」
取り出した感度200倍短剣で体を元の状態に戻して起き上がる。ビクンビクンしている時の余韻が若干残っているが、これで発情顔は晒さない。
「年に180回発情顔晒してるせいで親の顔より見た光景になり始めている」
「可愛い系の顔してるせいで性癖破壊兵器になりかけているの笑えない」
「響ちゃんにはカッコいいと言われたい人生だった……」
女顔だからな、俺。響ちゃんと一緒にいると、たまに一緒になってナンパされたくらいには。そこに割って入るのが対人最強の人ちゃんよ……響ちゃんだけがナンパされた時は俺と人ちゃんが死ぬほど人相が悪い顔で割って入る。俺がナンパされる時? 記憶にございませんね。そもそも俺一人で出歩く機会なんてほぼ存在しないのでね。俺の隣には必ず人ちゃんか響ちゃんかの二人が存在している。
「そういえば人ちゃんは声真似どうよ」
「壱と響香の声はまねできるようになったぞ」
俺と響ちゃんの声を交互に切り替えながら話すだと!? なんて高等テクニック……!! やはり天才だったか……文化祭でのメインボーカルは響ちゃんと人ちゃんで決まりだ!
「響ちゃんは?」
「小規模だけど、音の壁は作れるようになったよ」
「思ったよりヤバイの来たな……編み出したの見たけどさ」
「響ちゃんに防御力を持たせたら終わりなんよ。編み出した時に実験台になったから知ってるけど」
壁に触れて吹っ飛ばされるという経験を初めてしたあの日、俺はインスピレーションを手に入れて武器が生まれた。
「「壱は? ……あ、いや言わなくていい」」
「おいおい遠慮するなよ響ちゃあん、人ちゃあん……成果はあの淫語刀だけじゃあないんだぜ……!」
刮目せよ、我が新作を!!
「尊崩剣薔薇陸奥! 効果! バラムツ!」
「「捨ててしまえそんな武器!!」」
フハハハハ!! ……あ、自己紹介がまだだったな。
俺は多々良。多々良壱譚。皆からは壱と呼ばれることが多いヒーロー志望の中学三年生! 趣味は友人二人と過ごすこと! 最近ハマっているのは感度を上げてから食事をしてどんなものが入っているのかを当てること(人ちゃんと響ちゃんがいないとやってはいけない)!
身長は170㎝と言いたいところだが、残念ながら169㎝! 火が燻っているような灰色の髪と瞳が特徴的!
女顔! 人ちゃんみたいな陰のあるイケメンフェイスが良かったと思ったりもする! 可愛い系らしいぞ! 響ちゃんにはカッコいいと言われたい人生だった……
好きなものは俺のヒーローたる人ちゃんと響ちゃん! 人ちゃんは親友として! 響ちゃんは親友としても、女の子としても好き!
個性は『武器鍛造』!! ただし80%以上の確率でネタ武器が生まれる!! 生まれた武器は俺の中に収納できるぞ!!
自己紹介終わり!!
というわけで宣言しよう。これは、俺が二人のヒーローと一緒に歩いていく物語だ!!
「ところでアイスまんじゅう食べる?」
「「こたつでアイス最高」」
多々良壱譚
向上心で上に落ちる極まり始めている変態。親友二人の前では定期的にビクンビクンしてるか発情顔を晒している。大体自分の武器の試し切りのせいか、耳郎のイヤホンジャックで流し込まれた音のせい。
大好きなのは心操人使と耳郎響香。二人のためなら命を捨てても惜しくないと素で言えるくらい愛が重い。愛です、愛ですよヒトチ、キョウティ。
心操人使
今回のチャンピオンです。(アイベックスレジェンズ)
引っ越してきた先で近所に住んでいたやつとつるみ始めたら、個性発現と共になんかやべーやつになった。「俺が見てないとダメだ……!」という使命感を得て手綱を掴む係になった。手綱を握り続けるために爆走中。でもこの関係性が好き。
耳郎響香
今回のチャンピオンです。(エ〇ベックスレジェンズ)
家が近所で、よく遊んでいた。共働きの両親がいない間に個性が発現した瞬間に変態性が爆発してしまった変態を見て「ウチが見てないとダメだ……!」という使命感を得て手綱を掴む係になった。心操と同じく爆走中。この関係が好き。
最近自分の中にサディストの魂が住み着き始めているような気がするがきっと気のせいだと信じている。