うーむ、予想通りという感じだな予選Bブロック。というか爆豪君本当に強いね? 緑谷君曰く、ほぼセンスで戦っているらしいけど、あれ全部感覚でやってるの? マジで? 凄いね?
ちなみに現在勝ち抜いているのは俺、人ちゃん、轟君、物間君、飯田君、常闇君、切島君。そして今、爆豪君が勝った。強いね、本当に。
『さあて一回戦が終わったんで小休憩だ! 十分間の休憩を挟んだら、次の試合に行くぜ!!』
一回戦が終わって、トーナメントも整理された二回戦。大火力持ち二人がいる魔境が生まれているが、ぶつかるとしても決勝だし、轟君に関しては人ちゃんというフィジカルモンスターを相手にしないといけない。氷だけでの戦闘で大丈夫? 頭蓋骨陥没しても知らないよ? 人ちゃんは氷程度なら粉砕できるよ?
ちなみに俺の相手は飯田君。強いんだよね、飯田君も。あの時、プロヒーローがすぐに来たのは飯田君のお蔭だ。あの速度をどうやって制するか……うーむ……無明、貪虎、縫剣・繕縁、跳躍丸、文明開化剣……色々あるけど、飯田君のスピードについて行くには……いや、ついて行くなんて考えなくていいのか? だったら何を使って攻略するかだよね。
「多々良君!」
「あ、飯田君。どうかしたの?」
「次の試合は君とだからな。少し話をしたくて声をかけたんだ」
「なるほど? で、話って?」
「いや、改まって話すことでもないんだが……君は凄い人間だと思う」
え、何? いきなりどうしたの飯田君。褒めても何も出ないよ?
「だからこそ、俺は君に挑戦したい!」
「…………そっか。なら、俺も君に挑戦するよ、飯田君」
君の速度が勝つのか、俺の武器が勝つのか。矛と矛の勝負、どっちが勝つか勝負しようじゃないか。まぁその前に俺は君に挑むための武器を考えないといけないんだけどね? ずっと同じ武器を使うというのもちょっと面白くないし、アピールにはならない気がする。色んな武器を使って、色んな場面に対応できますってアピールできれば、色んなプロが指名を入れてくれそうだよね。
「ところで飯田君、お兄さんがヒーローって聞いたんだけど、どんなヒーロー?」
「兄かい? 兄はターボヒーロー、インゲニウムだ! 俺が目指すべきヒーロー像は兄さんそのものだな!」
「へー……凄いヒーローなんだね」
「ああ! 俺の目標だ!」
とにかく凄いヒーローであることは分かった。人柄は……飯田君に似てるのかな? …………む。
「また耳鳴り……」
「大丈夫なのかい? 一度リカバリーガールのところへ……」
「いや、大丈夫。また消えた……何なのかな」
頭が痛いってわけでもないんだけど、何度も耳鳴りがするなら病院に行ったりすることも視野に入れないといけないかな。鬱陶しい耳鳴りが消えたら透明で気分が良くなるそうだけど、どうだろう? 実害は特にないんだけど。
「本当に大丈夫なのかい?」
「うん、問題なし。ところで飯田君、人ちゃんと轟君、どっちが勝つと思う? あ、良かったらこれ飲んでよ。間違えて買っちゃったんだ」
「む、オレンジジュースか。ありがとう! ……それで、どちらが勝つかだったか。どちらも実力者だからな。難しい所ではあるが……轟君の方が有利なのではないか?」
オレンジジュースを飲む飯田君の隣で、ウーロン茶を飲む。うーむ、なんだか独特な味。舌の横側が刺激される感じがするというか……濃いウーロン茶って美味しいのね。
「うーん、そうだよねぇ。そう見えるよねぇ、普通は。ただ、人ちゃんは普通じゃないからなぁ」
「心操君も何か秘策があるということか……」
「んーん。特に何もないはずだよ。ただ、人ちゃんはマジで種族心操人使だから」
もっと鍛えたら拳からソニックブーム出せるんじゃないかな、人ちゃん。それか波動拳。いや、サンドブラストか? まぁ、サポートアイテムで衝撃波出せるようになったらミニチュアカー版オールマイトになるよね。いや、どうなってんのマジで。俺の幼馴染かっこよすぎか? ちなみに人ちゃんは結構女子にモテてたぞ。本人は全く気付いてなかったし、コソコソ話されているのを見て悪口を言われているのかと思ってたみたい。ならばとバレンタインチョコを送った女子がいたけど……うん。誠実に断ってた。雄英行くなら遠距離になるからって。俺のこと口実にしていいよって言ったんだけど、人ちゃんはそんなこと一切しなかった。
そんな幼馴染は鍛えて鍛えて鍛え続けて種族心操人使の領域に片足突っ込んでいる。そりゃあまだ、障子君や尾白君みたいな異形型の個性を持ってる人達や、個性が発動した砂藤君や緑谷君と正面から殴り合えはしないけど、それでも個性無しでぶん殴りあったら、間違いなく人ちゃんが一番強い。
「確かに彼の筋肉は、思わず感嘆の声が上がるくらいの仕上がりだったな。しかし、それだけで轟君を突破できるのか?」
「ここで問題です、飯田君!」
「む!?」
「人ちゃんは純氷を拳一つで粉砕できる。轟君の氷は空気も混じっているせいで不純物もある。さぁどうなる?」
「……!!」
気付いたようだね、飯田君。人ちゃんの勝ち筋を。それは可能なのかって思ってるかもしれないけど、やれちゃうんだよ、人ちゃんなら。そうできるように鍛えてきたんだから。最近はサンドバッグが物足りなくなって、石材を通販で見てたけど、購入しないよね?
「ま、とにかく人ちゃんは真面目に強いのさ。全力を出さない人に負けるような人じゃない」
「全力を出さない────確かに轟君は左側を使わないが……」
「そもそも人ちゃんに氷は有効打じゃないんだよね。実際さ」
轟君、多分君は知らないんだと思う。挫折────は知ってるかもしれないけど、個性を使わずに誰かを守れなかった時の後悔を。まぁ、あの時の俺は個性で事故ってたせいで反応できてなかっただけなんだけどね?
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『さあ始まるぜ第二回戦!! この組み合わせは中々厳しいかもな!!』
『……どうだろうな』
『イレイザーの思わせぶりな発言があったが選手の紹介だ!! 力こそが全て! 個性よりもその肉体で全てを薙ぎ倒してきた男!! シニカルな笑みを浮かべて現れたのは心操人使!!!』
『バーサス!! 全てを凍てつかせる個性が超強力!! 第一回戦では瀬呂を瞬殺してみせた出力トップクラス!! 轟焦凍!!!』
さーて、どうするかなぁ、こいつ。緑谷からの伝言もあるし、ちゃんと戦う……って言いたいところだけど、壱と響香の戦いを見てからだとマジで萎えそうになる。炎使えばマジで強いと思うんだよな、こいつ。まぁ、氷だけでも強いんだけどさ。だから萎えないはず……なんだけど……なんでこうも萎えそうになる?
「なぁ、轟。さっきエンデヴァーに会ったけどさ」
「……」
「あれだな。ありゃお前も反抗期にもなるわ」
うん、マジであれは轟が反抗期に向かう理由も分かるわ。壱の両親はよくあの人相手に淡々と仕事をすることができるわと思うくらい、あの人ちょっとあれだわ。俺を見ているようで見てないんだよな、あの人。理由は知らん。最高傑作だ何だと言っていたけど、轟は轟、エンデヴァーはエンデヴァーだろうが。あの野郎、炎のせいで誤魔化せると思ってるかもだが、加齢臭もあるぞ。もっと匂いケアしろや。うちの壱を見習え、匂いケアのための武器が生まれてからずっと定期的に使ってんだぞ。お蔭であいつはいつもアケビの香りを纏ってるわ。何でアケビなんだよ。せめて桔梗とかスミレとかにしとけよ。というかアケビの香りってお菓子みたいな甘い匂いなんだな。……マジでなんでアケビの香りなんだ。次は桜の香りにするとか言ってたけどアケビ、気に入ってんのか?
「何が言いてぇんだ」
「ああ、回りくどくて悪いな。まぁ、緑谷の伝言含めて一言で纏めるなら──────」
『第二回戦、スタァアアアアアアアアアアアアアアトッッ!!!』
「てめぇの力を全部使ってかかってこいってことだッッ!!!」
プレゼントマイク先生の試合開始の宣言と共に轟に向かって走り出す。轟は初手で最大出力────ではなく、ちまちまとした、普通の氷。その程度、毎年夏にぶん殴って粉々にしてる純氷に比べたら生ぬるいにも程があるんだよ!!
『ラッシュラッシュラァァアアッシュ!! 轟の氷を拳で! 足で! 肩で! 粉砕していくゥウウウウウ!!!』
『心操は下手な増強型や異形型よりもパワーがある。正確にはどこを殴れば壊れるかを見極めるのが上手い。毎日のように手札が変わるやつを組手相手にしているだけあって、弱点を見出すのも上手いな』
そりゃあ、あんな暴走野郎の手綱を握っているわけだからな。今の轟みたいな雑な攻撃は通用しねぇよ。個性を使っても応じてくれるかも分からねぇやつが相手ってのは、いつでも同じことだしな。
「んじゃ、まぁ、最初の一発!!」
「オゴッ……!!?」
『顔面一発入ったぁ!! 容赦のないフックが轟の右頬を襲う!!』
む、防御が間に合ったか。拳に霜が降りると意外と冷たくて痛いもんだな。まぁ、それを気にしてたらいつまで経ってもヒーローにはなれないんだけど。そもそも、この程度のダメージで倒れるような鍛え方はしていない。壱の鞘有りの無明の打撃の方が痛い。鎖骨が陥没するかと思うぜ、あいつの攻撃。
「これでダウンなんてつまんねぇ終わり方してくれるなよ轟ィ!」
「舐めん────」
「馬鹿がよォ!!」
「ゲェッ……!?」
「俺の個性忘れたとは言わせねぇぞ!!」
洗脳が入った轟の鳩尾に膝を叩き込むと、今にも吐きそうな声を上げて復帰する轟。おいおい、凄い顔してるぜお前。
「そんな顔して人助けするヒーローがいるかよ」
「……!!」
「今個性は使ってねぇよ。駆け引きってやつだな。お前はその駆け引きすらできてない。氷ばっかじゃ俺には勝てねぇよ!」
まぁ、何かを考えてる感じはしてる。壱が何か言ったか? あいつが言いそうなこと……あいつ腹減ってたから何か支離滅裂なことでも言いやがったか? そうだなあ……うん。あいつなら色々ずけずけと言いかねないわ。気持ちは分かるけど。
「左、使えよ。じゃねぇと負けるぜ」
「……左は、使わねぇ……! クソ親父の、個性なんて……!!」
ああ、そうか。なんで萎えるのか、何となく分かったわ。
「どこ見て話してんだァ!? 俺はそんなとこにいねぇぞ!!」
「何、言って……」
「俺を見ろや轟ィ!! 緑谷も!! 物間も!! 壱も!! 響香も!! 皆! 必死で!! 全力でやってんだよ!!」
さっきまで出していた氷よりも脆い氷を粉砕して、もう一発轟の顔面に拳を叩き込む。チッ、場外にできなかったか。やっぱダイナミックエントリーか? まぁ、これはこれで好都合だ。言いたいことはまだまだあるんだよ、轟。
「なのにお前は何だァ!!? 俺を見ない! 誰も見てない! 見てるのはいつも別の場所!! エンデヴァーがいる方を見てやがる!!」
「……」
「観客席で座ってるやつの手、見たか!? 悔しくて、悔しくても涙を堪えて、拳を握りしめて俺達の戦いを見てた!! 必死なんだよ、全力でやってんだよ、本気でヒーロー目指してんだよ!! 全力で、前向いて!! 誰かのヒーローになるために!!」
『もろだァアアアアアア!! 生々しいレバーブローが轟に突き刺さる!!!』
「俺達は全力でやってんだよ! 誰かのヒーローになるために、誰かの想いを受け取って、自分の意志で前に進んでるんだ!!」
言いたいこと全部言ってやるよ、轟。お前がどんな悩みを抱えているのかとか、コンプレックスがあるのかとかなんて知ったこっちゃない。俺は俺が言いたいことを言わせてもらう。
「お前はお前なんだよ轟! エンデヴァーなんかじゃねぇ! 轟焦凍! お前の個性は!! お前のその個性は────!!!」
洗脳。俺はヴィラン向きの個性だって言われてきた。それでいじめられたことだってある。けどな、俺のヒーローが言ってくれたんだ。どんな人でも助けられる優しい個性、ヒーロー向きの個性なんだって。
緑谷の伝言もこれと同じだったけど、俺としてもこれを言わせてもらおう。お前のその氷と炎は、エンデヴァーの個性なんかじゃないんだよ!! お前の個性は、力は────!!
「お前の!!! 力だろうが!!!!」
じわり、と大気が焦げるような熱を感じた。
「馬鹿じゃねえのか、お前……!」
「はっ、このくらいはしねぇと、うちの幼馴染達に置いてかれんだよ」
遅かったじゃねぇか轟。にしてもアクセル踏み始めたばっかりの状態なのか、あんま熱くねぇな? これなら壱の炉心の方が熱いぜ。……いや、俺の体温が下がってんのか? まぁ、炎のお蔭で温まってるが。
「……なぁ、心操。お前も、耳郎みたいに多々良から貰ってるのか?」
「あ? あー……まぁ、貰ってるよ。武器だけじゃないものも、たくさんな。あと、さっきの言葉、俺だけじゃねぇ。壱と緑谷の言葉でもあるからな? あと、多分瀬呂も」
「……そうか。緑谷と瀬呂と多々良にも、礼、言わねぇと」
「おう、言っとけ言っとけ。で、行けるか?」
「……悪ぃ、まだちょっとだけ、迷いがある。あいつのことを、まだ許せないし、俺はまだ……清算できてない」
「そか。なら、こっからは殴り合いと行こうじゃねぇか。俺の拳と、氷と炎の拳。どっちが勝つか勝負しようぜ」
挑発するように笑みを浮かべると、轟は困ったような、どこかスッキリしたような笑みを浮かべて口を開いた。
ところでさっきからうるせぇぞ外野のエンデヴァー。こちとら今から楽しいどつき合いが始まるんだ、あとにしてくれ。大人しくご馳走の準備でもしてろよ、今日は轟が
「散々殴ってきたくせに、何言ってんだ」
「あ? これから氷と炎でスリップダメージ受けるんだからこれくらいでイーブンだろ。それに、個性ぶっぱするよりも、多分スッキリするぜ」
持論だけどな、と俺が笑えば轟も年相応の笑みを浮かべて拳を構えた。……やっぱり鍛えてんだな、体術面も。流石プロヒーローの家系。
「んじゃまぁ────腹も括ったようだし、始めるか」
「……ああ」
「「殴り合いだぁぁぁぁッ!!!!」」
氷と炎で加速して突っ込んでくる轟に対して、俺は避けるのではなく迎撃を選択。ただの迎撃じゃない。これから始まるのは正真正銘殴り合いのインファイトだ!!
轟が繰り出した拳を全力で固めた腹筋でどうにか防ぎ、同じようにボディを殴れば、轟も負けじと氷で盾を作って防いでくる。流石だぜ、轟。しかも氷をわざと壊れやすい薄氷にしてその下から炎を出してきやがった!
「流石だよなぁ!」
「効いてねぇな!」
「火傷はしてるぜ! ただ、それ以上に氷が冷たくて痛くねぇな!!」
俺が殴る。轟が受ける。轟が殴る。俺が受ける。俺が、轟が、俺が、轟が。殴っては受け、殴っては受けを繰り返し続ける。凄ぇ痛い。けど、それ以上に何か嬉しいもんだな。やっぱ、人とのコミュニケーションってのは、お互いにお互いの顔を見てないと。
そんなことを思いながらどつき合いを繰り返していると、何となく分かってくる。お互いにこの一発が最後の一撃になるってことを。──────お互い、めっちゃ顔が腫れ上がってるな。壱と響香が見たら笑いながらも手当てをしてくれるくらいの腫れ具合だ。外野の声が聞こえてこないくらい、俺達は夢中でどつき合っていた。轟も、どこかスッキリしている気がする。
「心操」
「ん?」
「ありがとな」
「どーいたしまして」
「これが、最後だ」
「おうよ」
「「──────────────────―ッッッッ!!!!」」
声にならない咆哮を上げて、俺達はお互いの顔面に拳を叩き込んで────────そのまま一緒に倒れた。
『両者同時にダウン!! 動けるかぁ!!?』
「動けねぇよ」
「俺もだ……一歩も動けねぇ」
うーむ、こういう場合はどうなるんだったか……例年通りだと確か……腕相撲とか、ツイスターゲームで決まっていたような……え? ツイスターゲームやるのか? 轟と? マジで?
「両者戦闘不能!! 引き分け!!」
……………………まぁ、その時になってから考えればいいかぁ!!