人ちゃんと轟君が引き分けになったわけだが、勝敗はまさかの腕相撲。スタートの合図が聞えた瞬間、人ちゃんが轟君の右手を台に叩き付けて試合終了。開始三秒足らずで試合が終了したことに皆驚いていたけど、俺と響ちゃんはそこまで驚きはしなかった。だって、いつも見ていることだしね。最近仙峰寺拳法できないかなとか言ってたし、そのうちアクロバティック拳法を身に付けることだろう。モンクかな?
「ところで飯田君」
「む?」
「今思い付いたのを試してみてもいいかな」
飯田君と向かい合う形で舞台に上がった俺は、炉心の火を強くしながら尋ねてみる。まぁ、断られてもやるつもりだけどね。
「それは構わないが……」
「あ、いいんだ」
飯田君は優しいねぇ。多分、悔いのない戦いをするためなんだろうけど、俺はそのお言葉に甘えて、思い付いたことをやらせてもらおうじゃないか。
「俺の個性、飯田君に話したことあったっけ」
「ああ、武器創造……だったと記憶しているが」
「うん。……あ、ごめん、これは多分話してないかも。俺の武器って、色んな形をしてるけど、能力が同系統で同じ武器種しか混ぜられないんだよね」
そう言いながら媚主絶天を取り出して手の中で弄ぶ。この武器の効果について本日の昼休みの際に話をして、お前マジかよみたいな視線を向けられたのは記憶に新しい。その視線を向けた中には爆豪君や轟君の姿もあったよ。いつか君達も感度3000倍にしてあげるからね……
「これ、一本だけなんだけど、二十本以上の短剣を混ぜてるんだよね」
「二十本!? それだけの数、感度が上がる短剣が生まれていたのかい!?」
「うん。で、能力が同系統で同じ武器種じゃないと反発して弾けて俺が怪我しちゃうんだ」
「それは……大丈夫なのかい?」
「うん。軽い切り傷だけだし」
そんな話をしながら媚主絶天を仕舞ってから取り出したのは、
「飯田君は神話には詳しい方?」
「いや、あまりだな。有名なものはある程度知っているが」
「スルトとアグニは知ってる?」
「まぁ、それくらいならな」
おっと、ぐちぐちと物事を話し続けるのも良くないか。相澤先生がさっさと本題に行けという念を送っておられる。
「同系統、同武器種。それが混ぜる条件って言ったんだけど、その同系統っていうのはどこまでなんだろう。そう思いながら色々考えてたんだけどさ……神話、っていうのも同系統って考えていいと思うんだよね」
「……?」
「神話、炎。炎の巨人とされることが多いスルトと、炎の神のアグニ。炎に関連した神話の二つだ」
ここまで言って、飯田君は俺が何をしようとしているのかを察したようだ。勘がいい人は皆気付いたかもと思いつつ、それではお見せしよう、俺が寝る間も惜しんで考えて、今日やっとビジョンとして完成したこの技を!!
「炎×炎! 神話×神話! ほぼほぼ二次創作みたいなもんだ! 金槌振るって反発しあうそれらを無理矢理合体! 結果二分も満たないしインターバルを必要とする武器が生まれる!!」
己の中から溢れる炎で武器を包み、さらに俺の血液を混ぜ合わせながら金槌で叩く。ガンッ、ガンッ、ガンッ! と鉄を打つ音が響き、形状が変わっていく。ベースは大剣────ではなく、ガントレット! 飯田君相手に大剣を振り回して戦える自信はないからね! ガントレットをベースに、刃を形成。カタールっていう武器があるけど、それを使うにはまだ技量が足りない。ならばガントレットに刃を取り付け、鉤爪のようにする。反発しあい、武器が暴れるが、それをどうにか抑えつけて形を作れば────それは生まれる。ごめん、少しの間だけでいいから混ざっていてくれ。
「無理矢理融合して、破綻しやすい。だけど、制限時間付きでこういうものが作れる!」
『多々良が新たな武器を携えてリングに立っている! さっきの大剣とガントレットが混ざってんのか!?』
『即興必殺、に近いな。無理矢理と言っているだけあって、制限時間もある』
俺を腕に七つの炎の舌と梵語のような入れ墨みたいなものが奔り、額には何だか怒っているように見える巨人の瞳が開く。視点が三つになったとか、そういう感じはしないんだけど、第六感が開いている感じがする! でもアグニってそんな神様だっけ? 三つ目は違う神様じゃない?
「名付けて【
「ああ! 即興とはいえ、君が全力を向けて挑んでくれることに、俺は敬意と感謝を表し、そして挑む!!」
「こっちこそ待っててくれてありがとう! 君みたいな強い人に俺も挑戦させてもらうよ!!」
『時間がかかったけど、行くぜ!! 試合スタートォ!!!!』
「俺は殴り────」
「俺は蹴る────」
「「どっちが先に倒れるか勝負だ!!!!」」
人ちゃんと轟君の戦いに感化されたわけじゃない────ごめん、やっぱり感化されてる。俺はそこまで力での勝負は得意じゃないけど、あんな試合で魅せてくれたらさ、やりたくなっちゃうよね、真正面からの殴り合いをさぁ!! まぁ、人ちゃん達みたいな感じにはならないんだけど。
「ふんっ!!」
「ぐぅ!? 何のこれしきっ!!」
「ぐえっ!?」
俺が拳を叩き込むのと同時にスピードの乗った蹴りがぶつかり、パワー負けして吹っ飛ばされる。飯田君の脚も俺の拳が激突したことで火傷と内出血を起こしているようだが、その程度じゃ飯田君は倒れないし倒せない。
吹っ飛ばされた俺が地面を焼き焦がしながらダンスの要領で起き上がると、舞台を広く使って加速していた飯田君がまた突撃してくる。真正面からの殴り合いとは言ったけどね、技を使わないとは言ってないんだよね、俺。小手先の技術はちゃんと使わせてもらうよ。
「受け流してぶん殴る!!」
「ぐぅっ!?」
「ありゃ、掠っただけか!」
『ああっと多々良の拳が飯田のを頬を掠めたァ! それだけで切り傷と軽い火傷が見えるぞ!?』
『上手いな。あの鉤爪、折り畳み式になっているから籠手としても、鉤爪としても使える。籠手で防御を、鉤爪で攻撃を。ただし、籠手で攻撃をすることもある。斬撃、打撃、炎。限定的なバーニンなどの炎熱系ヒーローに近しいか。しかも舞のように動くから攻撃と防御を兼ねている』
『ダンスダンスダンスダンス!! 多々良の情熱的な舞が飯田の蹴りとぶつかり合う!! ……ジャージが燃えてるってのもあって、なんかあれだな。多々良がよくあるあの露出が多い踊り子みたぐえっ!? いきなり何すんだイレイザー!?』
『俺の生徒に何言ってんだ』
うーむ、ジャージが燃えちゃって踊り子みたいな感じなのは否定できない。これにシミターとか持ったら間違いなく踊り子だよね。再行動させることはできないけど。それはそれとして……この武器結構時間がシビアだね! 何かさっきからさっさと終わらせろやと言わんばかりにガタガタ言ってる。
「時間も無いからさっさと決めようか!!」
「ああ! 俺は勝つぞ! 君に!! 俺も、誰かのヒーローとして君に勝つ!! トルクオーバー……!!!」
ギィイイイイイイイインッ!! と飯田君の脚のマフラーが赤熱しながら凄まじいエネルギーを溜め込む。最高最大……騎馬戦の時に見せたあの神速の加速が来る!! 避けてしまえば、いなしてしまえば俺の勝ちなのだろう。物間君曰く、あれを使った後エンジンがエンストを起こして使えなくなったらしいから。そんな技を使って挑んでくれる飯田君を避けて勝つ? 眠たいことを言うのは無しだぜ、俺。それは言っては何だけど、雑魚の思考でしょ! 後ろに守る人がいて、避けることを選択するヒーローがどこにいる!!? 受け止めた上で勝つんだよ!!
「全力で勝つよ、君に!!」
今にも融合が解除されそうなガントレットを突き合わせ、炎の出力を上げる。黄、橙、赤────青までは無理だね。炉心の火を使えば行けそうだけど、それはちょっと危険な気がする。
溢れ出る炎を合掌するように手を合わせて圧縮、整形。人の頭くらいのサイズの火の玉を作り出し、更に整形し、槍のように形を作り終え、構えた瞬間、飯田君と目が合い────────お互いに強い笑みを浮かべて激突した。
「行くぞ多々良君!! レシプロバーストォォォオオ!!!!」
「こっちも行くぞ飯田君!!
初速から最高速────まるで戦闘機が正面から突っ込んでくるようなイメージが脳裏を過り、飯田君の凄まじい蹴りが俺の腹に突き刺さり、空を舞う。勝負はこれで終わったかと飯田君がこちらを見て……それに気付く。俺の構えていた槍の柄が、まるで舌のように伸びて俺の体に巻き付いていることに。そして、地面に突き刺さっていることに気付いた。
「俺の、勝ちだぁあああああああああああああああああああ!!!!!」
「ぐっおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」
槍が地面に引っ張られ、その勢いのまま拳を叩き付ける。脳天直撃、一撃必殺ってね!!
「………………次は、俺が勝つぞ……多々良君……!!」
「んひひひ! 次も俺が勝つよ、飯田君!!」
その言葉を言い切って、飯田君は満足気に笑って倒れた。それを確認したミッドナイト先生は、判定を下した。
「飯田君、戦闘不能!! 多々良君の勝ち!!」
「よぉおし!! 勝ったぁあ!!」
優勝もしてないのに何か達成感!! あ、分離した。……うん、寝てるね。ごめん、マジで助かった。ありがとう。これで三回戦進出……あれ? 三回戦ってことはもう準決勝? んんんんんん??? えーと、さっきまで残ってたのが俺、飯田君、人ちゃん、物間君、常闇君、切島君、爆豪君で……今は俺、人ちゃん、物間君、常闇君、切島君、爆豪君……で、勝ち抜けるのは俺か人ちゃんを含めてあと二人なんだから……えーと……グループとしては……俺VS人ちゃん、物間君VS常闇君、切島君VS爆豪君で……えーと……うん。次に勝ったら多分決勝かな!? 誰と戦うことになるのかな……やっぱり爆豪君? 爆豪君も強いもんなぁ……物間君は……常闇君との相性差を覆せたら行けるでしょ。となると……物間君VS爆豪君か……何だろう、凄いことになりそうだね。