手綱を握れ!人ちゃん&響ちゃん!   作:エヴォルヴ

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君達ちゃんと話せるんだ

 夢を見ている。

 暗い闇の中、俺の炉心だけが光を放つ場所で、鎧を纏う誰かに囲まれている夢だ。

 

『燃やせ、激情を。九界を焼き尽くせども尽きぬ炎で、立ち塞がるもの全てを焼き尽くさん』

 

 最初に声を上げたのは、黒く、ゴツゴツとした鎧に身を包んだ誰か。手には巨大な剣が握られており、炎が燻っていた。

 

『斬り裂け、万物を。死狂い、血狂い、屍山血河を晒し、血化粧で己を染めましょう』

 

 桜の意匠が施された鎧に身を包んだ誰かが、刀の鯉口を切った。桜吹雪が舞い、彼女────多分女性な気がした────が笑みを浮かべた気がする。

 

『啼き続けましょう、喘鳴を。堪え切れぬ色欲を歌いなさい』

 

 鎧とは思えない露出度の高い鎧を纏った誰かが、短剣を弄んだ。

 

『拒絶せよ、害するものを。守り、凌ぎ、来たりて取れ!!』

 

 スパルタの鎧を着た誰かが、盾を構え、銅鑼を打ち鳴らしたかのような大声で叫んだ。

 

 知っている。この誰かを、俺は知っている。だけど────

 

『そうか……お前は────』

 

「てめぇは誰だァアア!!?」

 

『ゴアァッ!!?』

 

 はっ、咄嗟にぶん殴ってしまった。誰だこのバチウニヘッドの戦闘員Aみたいな人は!? あ、消えた! 逃げんじゃねぇ! どこ行きやがった! ふん縛って尋問してくれるわ! 人の夢の中に現れ訳知り顔で何やら色々言いたそうな口ぶりしやがって、恥を知れ俗物!! 

 

「……はぁ。あのバチンウニが次に現れたら炉に放り込んで焼いて焼きウニ軍艦にするとして……こうして話すのは初めてかな?」

 

『『『……』』』

 

「話せませんみたいな雰囲気見せてるところ悪いんだけど、君らさっき話してたよね? 思春期? 思春期なのか?」

 

 黒いのは黒剣の亡骸(コープスオブスルト)、桜は無明、露出狂は媚主絶天、スパルタンは決闘壁盾(コロッセオ)だろう。これが俺のイメージとドンピシャなもんで……あれ? もしかして顔もイメージ通りだったりするのか? ちょっと興味出てきたな……

 

「無明、ちょっとこっちおいで」

 

『……』

 

「来ないならこっちから行くが? 全力で構い倒す勢いで行くが? いいってことでいいんだよね? 行くね♡」

 

『ッ!? 行きます! 行きますからその手つきを止めてください父上!?』

 

 父上……? ………………………………………………ああ、俺が生み出した武器だから父上ね。てか喋れるじゃん。何か難しいこと話してたけど、普通に話せるんなら最初からそうしな? その方がコミュニケーション取りやすいよ? というかこの年で父親かぁ……まぁ、それはいいや。お母さんの実家じゃ高校生でお父さんになった人がいるみたいだし? 駆世家ってそんなやんちゃしてる家系なの……? まぁ、多々良家の人もまぁまぁやんちゃしてる人が多いけどね。ヤクザの一家だったらしいし。マジで? ひいお爺ちゃんスジモンだったの? 確かに正月とかで親戚の集まりに行くとひいお爺ちゃんとその友達と舎弟さん? から「若旦那」とか「坊ちゃん」とか呼ばれてたけど。……うちの家の家系図探してみようかしら。

 

 そんなことを考えながら、近くまで歩いてきた無明を座らせて兜兼仮面となっているそれを脱がすと、可愛らしい女の子の顔が露わになった。ううむ、イメージ通り。こう……何も感じてませんよ的な感じだけど、実は感情豊かな幸薄そうな儚げ少女って感じ。父性が湧き上がる感じがするな。俺は生まれながらのお父さんだった……? 

 

「無明は最近生まれたばっかりだからなぁ……何回か折っちゃってごめんね」

 

『いえ、父上のお役に立てるのであれば本望ですが────顔をムニムニしながら話すのを止めてください』

 

「思春期かな? 可愛いね♡」

 

『止めてください!? 皆が見ています!?』

 

 響ちゃん達にやるように抱き締めると、慌てて叫ぶ無明。そしてこちらを黙って見ている鎧の連中。何だろう、凄くコントのようにも感じるが、とりあえず全力で構い倒しておけ。

 

「で、君らどうして俺の前に現れたの?」

 

『そこは私から話をさせていただきたい、親父殿』

 

黒剣の亡骸(コープスオブスルト)もイメージ通りのダンディボイスで安心してるよ」

 

 ゴツゴツした黒い鎧に身を包んだダンディな声を発する巨躯に笑みを浮かべる。イメージ通りで安心してるよ、本当にさ。

 

「まぁまぁ、座りなよ。他の皆も座りな? ほら、もっと近くに来ていいから」

 

『では失礼して。…………この度親父殿の前に現れたのは、少し小耳に挟んでいただきたいことがあってのこと』

 

「ほうほう。聞こうじゃないか」

 

『良からぬものが、御身に近付いております』

 

 ……炉心が反応して危機感知みたいなものを発生させていたと思っていたんだけど、もしかして武器達が炎を介して俺に対して警告していたのだろうか。俺の個性はよく分からないことばかりで混乱しちゃうけど、まぁ、こうして武器と話をできる機会なんてあるもんじゃないから、よく分からない個性に感謝しておこう。

 

『我らは御身を守るために全力を尽くしましょう。しかし、どこまで行っても我々は武器。使い手次第』

 

「使いこなして払い除けろってことね。あの変な歯茎ヴィランに襲われた時みたいに」

 

 小さい頃に出くわしたあのヴィラン、名前は忘れたが凄く印象的なことを言っていた気がする。こう……断面が何とか。傷口から炎と武器が出てきて傷を塞いでいた俺に対しては何だか滅茶苦茶発狂していたけど、あのヴィラン何だったんだ……まぁ、狂人だろうけど。

 

『左様。……ところで親父殿』

 

「何?」

 

『無明をそろそろ解放してやるべきでは?』

 

「え? 離す必要ある?」

 

 動かなくなった無明は俺の腕の中にいる。真っ赤になって可愛いね♡

 

『やっぱりお父様の今のお気に入りは無明なのかしら?』

 

「依然変わりなく全部だよ?」

 

『変わってなくて安心したわ』

 

『ははは! 父祖は死んでもこうだろうよ!』

 

 媚主絶天、名前通りイメージ通り露出度が高い服装だけど、仏門っぽい感じの鎧を着ているからこう、色っぽさよりも先にカッコよさが来る見た目をしている。スパルタンな決闘壁盾(コロッセオ)もだけど、マジでイメージドンピシャ。

 

「とりあえず進化だよなぁ……万雷と喝采みたいなの」

 

『か、可能性が、一番あるのは……私です、父上……』

 

「え? そうなの? 凄いねぇ」

 

『うぬああああああ……!?』

 

 抱き締めたまま撫でくり回すと、変な声を出し始める無明。

 それにしても無明が一番進化する可能性が高いのか……この子、めっちゃよく切れるだけの刀だと思っていたけど、実は違ったりするのか……? うむむ……こうして考えてみると、俺は武器に向き合えているようでそこまで向き合えていなかったのかもしれない。これからはもっと向き合っていけるように頑張らないとね。

 

「そもそも進化ってどういう条件なの?」

 

『そこに関しては何とも。万雷と喝采のように成ることは間違いないでしょうが。……一度進化している媚主絶天が詳しいかと』

 

「君進化してたの!?」

 

『何度も似たような武器を重ねられて、何度も打ち直されていれば進化くらいするわ』

 

 そ、そうだったのか……万雷と喝采のあれが印象的すぎて気付いていなかったけど、媚主絶天、君も進化していたのか……

 

『ま、万雷と喝采みたいに具象化してないけれどね』

 

「あれの条件って、教えてもらえたり……?」

 

『意志が強く宿った時に成るわ。あとは……同調したり、かしら? お父様ならすぐよ、すぐ』

 

 まぁ、少なからず意志を持って生まれてくる時点でそのうち強い意志を宿すであろうとは思っていたけど、マジで強い意志を宿すようになるみたい。そして同調というのは……俺が武器の意志を汲み取るということ……なのかな。それとも武器に意識や波長を合わせるみたいな感じ? そこら辺は色々試してみてかな? 

 

『とにかく、危機が迫っている! 父祖よ、備えてくれ! 特異点はすぐそこだ!』

 

「ごめん、特異点って言われても何が何だか分からないや。とりあえず、立ち塞がるやつは全部叩き潰す気概で行けばいい?」

 

『ははは! そうでなくてはな!』

 

 暗闇が薄れていく。あ、これ何となくだけど分かるぞ! そろそろ夜明けだから目覚める感じだな!? 

 

「次に来るのがいつになるかは分からないけど、また来るよ。もっと話もしたいしね」

 

『あの、父上……そろそろ離して、いただけると……』

 

「え? 嫌だけど」

 

『ぬああああああああ……!?』

 

 目覚める直前まで全力で無明に構い倒して、俺のアメリカ初日の夜が明けた。

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 アメリカでの職場体験二日目。同じ訓練を行った後、個性の圧縮訓練へと取り掛かった俺は、スターアンドストライプが個性で強化した壁の前で無明を構えていた。

 

「おいイーサン、声かけてこいよ」

 

「ペルソナコードとイヤホン=ジャックが声をかけて反応しないレベルで集中してんだぞ。俺が声かけても戻って来ねぇよ」

 

 強い意志を宿した武器と同調することで、その武器は進化する。深く、深く、もっと深く……繋がれ。無明という刀に、この子の願いに俺自身を合わせろ。

 

 無明が生まれた時、一番強く感じたのは、全てを切り裂くという思い。万象悉く、一切合切全てを切り裂く鋭い刃を持ちたいという願いを持って生まれてきたこの子の力を発揮させられるのは、俺だけだ。願いを汲み取り、叶えてあげることができるのはきっと、俺だけだから。ねぇ、無明。君のことを全部理解しているとは言えないし、人の姿をしているのを見たのだってあの夜が初めてで、全力で構い倒したけど。君の望みを叶えてあげたいと願ってる気持ちは間違いなく本物だから。

 

「おいで、無明。俺の負担は考えなくていい」

 

 無明の柄を握る腕が、震える。無明から滲み出す妖気のような深い紫の靄が、俺の体に絡みついていく。まだだ、まだ足りない。君の力はそんなものじゃないだろう? あの時、0ポイントロボットを切り裂いた時、脳無と戦った時────君は何者にも負けない力を発揮していた。あれは俺の力じゃない。きっと、君が力を貸してくれたからこそできた芸当だったんだ。

 

「スターアンドストライプが言ってたんだけどさ、この壁、君じゃ斬れないらしいよ」

 

「……なぁイヤホン=ジャック。煉武って、ああしてブツブツと武器に何か語り掛けるタイプなのか?」

 

「う、うーん……いつもならそうじゃない、ような……?」

 

 外野が何か言ってる気がするけど、構いやしない。

 

「そんなわけあるかよ。君は、どんなものであろうと斬り裂ける。だから無明────君の全部を見せてくれ」

 

『言われずとも、血化粧で私を染めましょう。あなたの前に立ち塞がる障害の一切を切り裂いてみせましょう。私は、そのために生まれたのだから』

 

「────────ッッ!!!」

 

 声が聞えた気がした直後に振り下ろした無明は────強化された鉄の壁を紙でも切るかのように切り裂いてみせた。

 

「へぇ、これならもっと強化しても良さそうだね」

 

「ヒューッ、マジかよ!!」

 

「手加減してるとはいえ、スターの強化が施された分厚い鉄板が紙切れみたいに切れたぞ!!」

 

「記念撮影しようぜ煉武! お前、個性圧縮訓練初日からとんでもないことしやがった!!」

 

 ────集中が途切れる。全身から凄い汗を掻いていることに今更気付いた俺は、大興奮しながら近付いてくるスターズの皆さんに笑みを浮かべて無明を納刀する。……腕どころか体全体が満遍なく痛い。無明のポテンシャルを100%発揮させてあげるにはまだ鍛錬が足りないか。しかも進化には至っていないから、課題をクリアしたことにはならない。

 

「やるね、壱」

 

「俺達も負けてられねぇな……!」

 

 響ちゃんと人ちゃんが万雷と喝采を解放しながらこちらを見ている。まだ一人だけしか出てきていないが、薄らぼんやりと、一瞬だけ二人目が見えた気がしたし、明日にはきっと二人目が薄っすらと出てくるんじゃないかな。プルスウルトラってやつさ。頑張れ、二人共。俺も更に先へ向かうから。

 

 スターズの皆さんとカメラの前でピースサインをしながらいざ撮影────という直前。スターアンドストライプの通信端末がブザーを鳴らした。

 

「────────了解した。訓練に水を差すようで悪いけど、聞いてくれ!」

 

 その一言で、スターズの皆さんの意識が切り替わった。このひり付いた感じ、もしかして……

 

「連中に動きがあった。作戦会議を行う」

 

 だよね、そういう感じだよね。説明はされていたけど、本当に現場に飛び込むことになるんだ……ちょっとだけ緊張してしまうが、落ち着いていこう。

 

 スターアンドストライプの背中を追って到着した会議室で配られた資料を見て、俺達は戦慄した。

 

「「「脳無……!?」」」

 

「知ってるのか?」

 

 忘れるわけがない。資料に載っているそれは、間違いなくUSJにカチコミかましてきやがった(ヴィラン)の中にいた脳無と呼ばれる化け物と類似した姿をしている。見間違うわけがない。あの時通形先輩達が来ていなかったら、間違いなく誰かが死んでいた。

 

「俺達が追っていたテロリストがこいつを引き連れているって情報がFBIから入ってな」

 

「これについては調べ回っても情報が出てこなかった。知ってることがあれば何でも言ってくれ」

 

「……脳無。複数の個性を持った化け物ってしか……」

 

「交戦経験があるのは壱────煉武だけっす」

 

「知ってることは再生能力、怪力、あとは打撃が効いてなかった……ぐらいです。あとは……凄く気持ち悪い。こう……人間とは思えない。異形型差別じゃないですよ? あれはもう、人間の枠に入れちゃダメなものです」

 

「ふむ……」

 

 渡せる情報なんてこれくらいしかないんだ。申し訳ないけど、本当にこれくらいしか分からない。多分、日本の人達もそこまで知らないんじゃないか? 

 

「というかこれを引き連れてる連中は何をやらかしてるんです?」

 

「個性増幅剤及び麻薬の密売、人身売買、売春斡旋、etc……とにかく叩けば埃が出てくるクズ共さ」

 

「尻尾切も上手いから今まで足取りを追うのも精一杯だったが、遂にアジトを突き止めた」

 

 警察とプロヒーローのチームアップによって成し得たこの機会を逃したくはない。そう言ったイーサンさんの言葉に、俺達も同意する。薬の密売ももちろんだけど、人身売買とか売春斡旋とかは絶対に許しちゃいけない。

 

「アジト候補周辺のヒーローと警察には声をかけてある。スター、どうする?」

 

「当然、SMASH」

 

 強い言葉に身が引き締まる感じがした。これが、アメリカのナンバーワンヒーローか。

 

「いつ仕掛ける」

 

「明朝────と言いたいところだが、末弟(ブロス)末妹(シス)をある程度の段階まで仕上げたい」

 

「ならいつだ?」

 

「二日後の明朝。そこで仕掛ける」

 

 ……猶予一日弱しか無くないですか? 

 

「そこまでにペルソナコードとイヤホン=ジャック、そして煉武の課題の八割を終わらせる。プルスウルトラさ。やれるだろう?」

 

「「「やってやりますよ」」」

 

 脳無がいるという情報を知ったからには、否が応でもやりますとも。あれが何なのかとかも気になるけど、多分これが黒剣の亡骸(コープスオブスルト)が言っていた危機というやつだろうから。これを退けるくらいに強くならなければ、俺はきっと響ちゃんと人ちゃんの親友ではなくなってしまうだろう。それは嫌だ。

 

 だから……頑張ろう。俺はそう自分に言い聞かせながら、作戦の内容を頭に詰め込んでいった。




バチンウニヘッドの戦闘員Kに告ぐ。今すぐ現れて焼きウニ軍艦になりなさい。繰り返す。直ちに現れて焼きウニ軍艦になりなさい。

それとヒーロー殺しステインに告ぐ。直ちに投降せよ。投降すれば感度300倍程度と淫語しか話せなくなる程度に刑が軽くなるぞ。繰り返す。直ちに投降し、感度1000倍淫語のオンパレードアンポンタンになりなさい。



多々良壱譚:伊邪那岐と伊邪那美とティアマトとゼウスとデウスエクスマキナを同時にこなすやべーやつ。父であり母である。受胎告知(武器鍛造)。
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