拝啓共働きで日本中、世界中を飛び回っている壱譚のお父さんとお母さん、いかがお過ごしでしょうか。ウチも人使も壱も凄く元気です。壱は今日も元気に感度600倍の短剣をぶっ刺して冬の寒さに震えていますが、とても元気です。体温を上昇させる短剣と感度上昇系の短剣の見た目が似ているのが悪いなどと言っていましたが、ほぼ自業自得だと思います。
「カイロ助かる」
「カイロ助かる」
「俺の個性はカイロだった……?」
そんな壱は今、ムワァ……! という効果音が出ていそうなレベルで熱を発している。壱がいると暖房を使わなくていいんだよね。こいつが非常用に持ち歩いている体温上昇短剣、
それにしても、ウチも人使も図太くなったものだ。自分の人生を決める大事な一歩を踏み出すための受験なのに、そこまで緊張していないのだから。全ては壱が爆走してるのを追いかけ続けているからなんだけど。昔の漫画へのコメントにあった最北端爆走組というのがこの馬鹿には似合っている。
「うーん、筆記は行ける。実技だな、問題は」
「響ちゃん響ちゃん、フィジカリストがなんか言ってるよ」
「さらに筋肉付けたらもはやゴリラだよね」
「ドラミングで洗脳できねぇかな」
あ、短剣引き抜いたな壱め。しかも冷たい風が吹いた直後に引き抜いたせいで暖かくなくなった。というか壱って存在自体が炉心みたいなものだと思ったんだけどな。火を熾しなよ火。
「壱、暖房」
「文明開花剣でいい?」
「チャッカマンじゃん」
「チャッカマンにしては火力がエグすぎる」
生物には火が付かない代わりに、コンクリートだろうが石だろうが簡単に火が付くという変な剣の柄だけ取り出した壱にそんな感想が出る。そういう個性だからこそ、第二希望がサポート科と書いていたが、壱は間違いなくヒーローになるべき人だとウチも、人使も思っている。ヒーロー向きの性格してるしね。
「さて……実技試験、対人戦じゃないとすれば、ロボだろ。体育祭でよく使ってるあれ」
「だろうね。ヤバかったら呼んでよ」
「そうならないように鍛えたんだよなぁ……」
「というか離されるでしょ、間違いなく」
同じ学校同士で協力させたらダメだろうし。だってこの三人で組んだら、間違いなく合格できる自信があるもん。ウチ、壱、人使の三人ならどんな相手が来ても怖くない。あのオールマイトが相手だろうと絶対に勝てる。最初から最後まで勝てないと思って戦うヒーローがどこにいるって話だよね。
「となると……初見のヒーローとのチームアップを前提とした動きが必要なのかな?」
「世界が個の力でどうにかなるなら、ヒーローがたくさんいるはずがないんだよなぁ……」
時事問題とかのために調べたけど、日本中のデータを見ると全然犯罪係数が減少していないんだよね。もちろん、大規模な犯罪自体は抑制されているけど、軽犯罪やら事故やらは減っていない。オールマイトやエンデヴァーみたいな凄腕のヒーローがたくさんいるのに、だ。昔、ウチが二人をロックの世界に沈めるために両親に連れて行ってもらったロックフェスでとあるプロヒーローと話したことがあったけど……あのヒーローが話していた社会の実現は中々難しいよね。
「もちろん個の力は必要だけど、時代はやっぱり団結の力だよね」(最北端爆走暴走野郎)
「おう、こいつの手綱を握れるやつを増やそうぜ」(手綱はタングステン派)
「無理でしょ」(手綱はクロム鋼鋼材派)
ウチと人使がどれだけ苦労したと思ってんのさ。大体個性が発現した瞬間に変態性が爆発するってどういうことなの? そもそも突然変異過ぎてご両親首をかしげてたじゃん。初めて作った武器が感度上昇系短剣っていうのも業が深いよ。発情顔になったりアへ顔晒したりする幼馴染とか涙が出るから。
「あ、響ちゃん人ちゃん。これ渡しておくね」
そう言って壱が引っ張り出したのは、装飾の一切が施されていない無骨な二振りの刀だった。
「今朝完成したばっかりの暴れ馬さ……ふふ……」
「暴れ馬って……名前は?」
「響ちゃんの方が万雷。人ちゃんの方が喝采」
合わせて万雷の喝采……結構おしゃれな名前つけたね壱。いつもはふざけた名前を付けることが多いのに。蛮包貂とか、愚瀉ツ刀とか。
「洒落てんなぁ。見た目は無骨だけど」
「ね。見た目は無骨だけど」
人の通りが多いここ────雄英高校の敷地内では抜刀できないけど、実技試験でどんなもんか試させてもらおうかな。壱の作る武器は基本的にふざけた能力を持っているものが多いから、ちょっと楽しみではある。……感度上昇系武器だったらシバき回すけど。最近はイヤホンジャックでの攻撃を感度を上げて快感にするという手段で回避されていたが、人前ではアへ顔晒さないでしょ。ファミレスとかでやってやろう。
「響ちゃんの目が獲物を見つけた肉食獣のようだ」
「芸達者なサディストの顔が出ておられる。壱、受け止めて差し上げろ」
「ウチはサディストじゃないから!」
「「ええ~、本当でござるかぁ~?」」
「ぶっ飛ばすよ」
「「さーせん」」
全く……少しだけ感じていた不安とかも全部消し飛んじゃったよ。
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さて、どうしたものか……
そう思いながら、試験内容をスタート地点で再確認していた。うーん、壱は余裕だけど、ウチと人使はそこまで……0ポイントロボをどうやっていなして避難を急がせるかを考えるべきかも……? いや、その前に壱がちゃんとやっているかが気になって仕方がない。昔からちょっとおかしいから、何かやらかさないといいんだけど────
『はいスタートォ!!』
そのアナウンスが聞こえた瞬間、自然と体が動いた。スタートで出遅れると、勝手に地の果てまで爆走してしまう幼馴染の手綱を常日頃から握っているからこそのスタートダッシュ。我ながら、とんでもない体力を手に入れてしまったと思いながら、市街地で暴れるヴィラン────ロボットを狙う。
私に必要なもの。それはどこまでも走っていける脚と、息切れを起こさないスタミナ。そう自覚した時から今日まで、壱と人使を巻き込んで色んな訓練を積んできた。そのお蔭もあって、フルマラソンとトライアスロンをやっても動けなくなる、ということはなくなった。それくらいのスタミナがないと、壱が走っていくのを追いかけることも、手綱を握ってやることもできなくなってしまう。ウチは、壱譚にとってのヒーローなんだから。
『標的捕捉!!』
「邪魔ぁ!!」
個性を使うまでもない。壱からもらった刀を鞘に納めたまま振り抜く。テクニカルモンスターの壱よりも雑な太刀筋だけど、何度も見て、喰らい、教えてもらった使い方はしっかり覚えている。昔、感度上昇系武器で斬ってきたのは今でも許してない。あと無機物だけ斬る剣で服だけ斬られたのも忘れてないから。……思い出したらちょっと恥ずかしくなってきた。人の裸を見ておいて、何の恥ずかしげもなく綺麗だなんだと言ってきた時、もはや呆れたやつって思ったよね。まずは着るものを渡してよ。
「ッ! ……ハートビート!!」
後方から迫っていたロボをイヤホンジャックで突き刺し、爆音でぶっ壊す。回し蹴りとかは人使が使えるんだけど、ウチは体術が苦手だからなぁ……個性に頼らない戦い方っていうのももう少し詰めていきたい。雄英高校に入ったら、遠距離持ちの体術使いのヒーローとか先輩見つけて────いや、壱が疑似的な遠距離持ちのテクニカルモンスターだったわ。
……それにしても、あれだなぁ……団結の力だなんだと言いつつも、今のところ個の力でしか動いてないや。
「あー、もう! 壱と人使がいたらなぁ!!」
あの二人との連携が一番上手く噛み合う。ずっと一緒にいるからっていうこともあって、どう動くのかとか簡単に分かるし。だからこそ手合わせなんかでは千日手になるんだよね……………………あれ? そういえばこの試験って、戦闘だけを見る試験なのかな? もっと悪辣な落とし穴とかありそうなもんだけど。
そんなことを思いつつ、私は目に映るロボットを破壊し続けた。この程度なら、壱も人使も余裕でしょ。
基本的な印象
壱譚→耳郎
親友としても、異性としても大好き。俺のヒーローのためなら命を捧げても惜しくはない!!
壱譚→心操
親友として大好き。俺のヒーローのためなら命を捧げても惜しくはない!!
耳郎→壱譚
手綱を握らねばならぬ……!!
恐らくずっと隣にいるのはこいつだと思う。幼馴染で親友。純粋な好意を向けられているのは何だかんだ言って嬉しい。
耳郎→心操
同志。親友と書いて同志と読む。フィジカルモンスター。サディストじゃないから。
心操→壱譚
手綱を握らねばならぬ……!!
多分死ぬまでつるんでいると思う。親友。あと響香に対してはもっと押せ押せドンドンで行けと思ってる。往け、デカヌチャン・ヒーローのすがた!!
心操→耳郎
同志。親友と書いて同志と読む。芸達者なサディスト。ほら、壱、受け止めて差し上げろ。