手綱を握れ!人ちゃん&響ちゃん!   作:エヴォルヴ

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職場体験明け、テストがやってくる

 職場体験が終わり、久しぶりにクラスメイトと再会した登校日。大きな変化は……そこまでないかな。爆豪君の髪が8:2になっていたり、麗日さんがコォオオオオオ……と波紋の呼吸をしていたり、峰田君が爪を噛んでいたりと変わっているところはあるけど、ほぼほぼ許容範囲だ。

 

 普通に考えて一週間で見た目がガッツリ変わったら怖いよ。怖くない人は多分感性がひん曲がっていると見たね。

 

「ところで多々良……」

 

「ん? どうしたの上鳴君」

 

「ヒーロー殺しのあのコンプライアンス違反ぶりってまさか……」

 

「淫語刀だよ。あ、飯田君淫語刀返してもらっていい?」

 

「ああ! 正直これ程とは思っていなかったが、ありがとう多々良君!」

 

「「「マジで何なんだよお前の武器!?」」」

 

「武器だよ?」

 

 武器は武器だよ。それ以外に何を求めるんだよ武器。

 というか本当に耳鳴りが消えたなぁ……本当に何だったんだろうね、あの耳鳴り。とても気分が良くて透明なのは凄くいいことなんだけどね。

 

「ケロ。多々良ちゃん、ああいう武器も自分で試すのかしら?」

 

「試すよ? 試さずに人に向けるとかしないって」

 

 能力も分からずに名前を付けるなんてできないしね、と俺が蛙吹さんに答えると信じられないものを見るような目を向けられた。……何? 何か問題がある? ねぇ、爆豪君もマジかこいつみたいな顔してるけど、本当に何? 

 

「個性は皆試すでしょ? それと同じだよ」

 

「同じ……?」

 

「切島君、どうやら感度7900倍にされたいようだね……」

 

「前より上がってねぇか!?」

 

 ウフフフフフフフ……動くな動くな。誤って目玉にぐっさり行っちゃうかもしれないじゃないか。

 

「そういえば多々良ァ……オイラ聞くことがあるんだよォ……!!」

 

「何?」

 

「お前アメリカで滅茶苦茶モテモテだったみてぇじゃねぇか……!!!」

 

「何を言ってるの峰田君?」

 

 俺がモテモテだった? そんなことあるわけないでしょうに。

 

「響ちゃん響ちゃん」

 

「ん?」

 

 というわけで俺が気絶してからのことを色々知っているであろう響ちゃんに声をかける。人ちゃんは今職員室に行っている。登校中に路地裏に女の子を引っ張り込もうとしている変な大人がいたからぶん殴った件について、代表して行ってくれた。まぁ、うん。過剰防衛かもしれなかったけど、去勢されなかっただけマシと思っていただきたいよね。

 

「峰田君が何言ってるのかさっぱりなんだけど」

 

「あー………………峰田、諦めな。こいつこういうやつだから」

 

「刺々しい響ちゃんも素敵♡」

 

「はいはい。あと壱、忘れてるかもしれないけど、あんた女の子助けたでしょ? そのことだよ」

 

 女の子……? ………………………………………………ああ! あそこに捕まってた女性の皆さんね! 確かにお礼言われたわ。何かネットニュースになったとか何とか聞いているけど、モテたというわけではなくない? 確かに助けはしたけど、モテたわけじゃないよ? 

 

「あの人達ってその後どうなったの?」

 

「そっか、壱は寝てたから知らないか。あれから検査とかして、身元が判明した人は家に帰ったよ」

 

「そうなんだ。それはよかった」

 

 しかし、身元が分からなかったり、ストレスのせいで言葉を話せなくなった人など、色々と問題は山積みだという。身元の解明か……そういった能力を持った武器は生まれたことがないな。結局時差ぼけを治す能力を持った武器も生まれなかったし。

 

「にしても多々良、耳郎、心操の三人は一気に認知されたよなぁ」

 

「そうなの?」

 

「ネットニュースとかSNS見ないのか? トレンドになってるぜ、お前ら三人」

 

 瀬呂君がスマホで見せてくれたニュースを確認すると、『日本からやってきたヒーローの卵、大手柄!』という見出しの記事が。へー、ほー、ふーん……何か記事とかこの記事に書かれたコメントにもダメ出しとかもされてるけど、知ったこっちゃないや。

 

「好き勝手言ってるね。別にいいけど」

 

「いいのかよ!?」

 

「あんまり酷いなら雄英に言って裁判でも何でも起こすよ」

 

「まぁ、それはやっていいだろうな……あんまりだぜ、こりゃあ」

 

 誹謗中傷とかは無いけど、心無い言葉を投稿している人はいる。この程度は気にしないけど、この人達って何かを貶めないと生きていけない種族なのかな。

 

「それはそうと、皆そろそろ期末試験が来るけど大丈夫? 勉強してる?」

 

「「「ウ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!」」」

 

 お、何名かにクリティカルヒットした。

 

「そういう多々良君は大丈夫なのかい?」(中間二位)

 

「ん? 中間は三位だったよ?」(中間三位)

 

「意外と勉強できるんだよ、壱って」(中間四位)

 

 ちなみに人ちゃんは中間五位だったよ。八百万さんが一位。夏休みを満喫するためには、課題をいかに早く終わらせるかが肝要だ。あと赤点取ると補習があるからね、そこら辺も加味してしっかり授業を受けておかないとだ。提出物も忘れちゃダメだ。

 

「ところで壱、二次関数教えて」

 

「いいよー。応用?」

 

「応用も応用」

 

 どれどれ……? ああ、確かに応用も応用だねぇ、これ。エクトプラズム先生ってたまーに趣味丸出しの問題出すけど、これもそれに近いな……でも基礎の応用に応用を重ねるだけだから、結構簡単な部類かな? 

 

「この公式と公式を順番に使うだけだね。飯田君、八百万さん、こんな感じだけど、もっと分かりやすい感じにならない?」

 

「む? ……この場合なら、こちらの公式の方が簡単ではないか?」

 

「そうですね……これでも答えには辿り着きますが、少し遠回りになってしまいますわ」

 

 ありゃ、それはダメだね。分かりやすくて簡単な方がテストで時間を使わなくなるし、その分色々な問題に挑戦できる。数学は暗記科目だから、数を熟さなくちゃ。

 

「……よし、解けた!」

 

「おめでとう。じゃ、次行ってみよう────」

 

「おはよう。今日も元気よく行こう」

 

 全員が静かに、それでいて迅速に着席する。躾けられてますね。あ、人ちゃんおかえりー。え? 表彰状貰える? い、いらない……

 

「少し告知が早いかもしれんが、夏休み、林間合宿に行きます」

 

「海じゃないんですね」

 

「海は二年生だ」

 

「色々知ってたよぉ!! やったー!!!」

 

 そんなに喜ぶこと……? 林間合宿、嫌な予感しかしないんですけど? 

 

「「「山ですか!?」」」

 

「安心しろ、森だ」

 

「「「樹木は!?」」」

 

「多種多様、とだけ言っておこう」

 

 わぁい、サバイバルになっても大丈夫だぁ……あ、やばい、急に震えが……震えるなこの身体め……

 

「肝ためそー!」

 

「風呂!」

 

「水源確保から……?」

 

「花火!」

 

「火種は大事だよね」

 

「風呂!」

 

「カレーだな!」

 

「食料確保は……まぁ、やれんことはないか……?」

 

「行水!」

 

「自然環境ですと、活動条件が変わってきますわね」

 

「冬じゃないだけマシと信じたい……」

 

「湯浴み!」

 

「いかなる環境でも正しい選択を……か。面白い」

 

「装備の準備だ……戦争じゃ……」

 

 震えるな、震えるんじゃない俺の体……! 響ちゃんと人ちゃんも震えてるぜ……! 思い出すのは相澤先生によるサバイバル鬼ごっこ……あの日のことを生涯忘れることはないだろう……! 

 どうせ今回の林間合宿もテントを一から立てたりさせてくるんでしょう!? 騙されませんよ、俺達はァ……! 

 

「だがその前に」

 

 ワイワイと騒いでいるクラスメイト達に水を差すのは相澤先生……! 何を課してくる……!? 

 

「学期末……期末試験がある。ここで赤点を取ったやつは学校で地獄の補習漬けだ」

 

 どうしよう、そっちの方が魅力的に感じる……

 

「皆頑張ろうぜ!!!」

 

「まぁ、授業をちゃんと聞いていれば分かる問題ばかりだ。それに加えてヒーロー科は実技もある。気張れよ」

 

「「「はい!!」」」

 

「あと三人組。お前らは赤点を取ったらサバイバル鬼ごっこ雄英バージョンだ」

 

「「「負けられない戦いが、ここにある……!!」」」

 

(((どんだけ怖いんだ……!!?)))

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 そんなこんなで放課後。スーパーの買い物を済ませてから家に帰った俺達は、鍋を(つつ)きながら期末試験までの時間をどうやって過ごすかについて話し合っていた。

 

「勉強は……まぁ何とかなるか」

 

「問題は実技試験……」

 

 通形先輩達から聞いたところによると、例年ロボットを使った戦闘での実技試験らしいが……雄英の先生達がそんな生易しいことを考えるかな? ロボットだったら轟君の氷で一発でしょ。

 

「一番可能性が高いのは先生との戦闘実習?」

 

「だとすると……何が課題だ?」

 

「弱点の克服とか?」

 

 それかコンビネーションの確認とか、そういったところを見られるのかな? 

 

「二人一組だとしたら、弱点が分かりやすいかもな」

 

「俺は?」

 

「「間違いなくイレギュラー」」

 

「んひひひ」

 

 自慢じゃないが、俺は誰と組むことになっても一定以上の成果を出せる。だって、その場に応じて武器を切り替えればいいだけだし。スロットに十本、職場体験のように二、三本装備しておけばどんな状況にもある程度の対応が可能。

 

 ……うん、こうして考えてみると本当にイレギュラーなんだろうね、俺って。いつもご迷惑おかけしてます。

 

「ウチと人使はプレゼントマイク先生と当たりそうだよね」

 

「爆音VS爆音かぁ……でもいいのかな、それ」

 

「……まぁ、あれだよな。驕りじゃないが、万雷と喝采が合わさったら大抵のことは何とかなっちまう」

 

 最もシナジーが強いからね、万雷と喝采は。万雷が演奏して、喝采が歌う。それだけで並大抵のヴィランは耐え切れずに気絶するか吹っ飛ばされるだろう。聞いたところによると、響ちゃんが引き出したのはトランぺッターで、人ちゃんが引き出したのはソプラノ。嵐の中でも響き渡り続けるトランペットの旋律と甲高いソプラノの歌声が重なり合って最強に見える……

 

「壱も進化させたんだったか」

 

「うん。まぁ、これは人に向けにくいけどね……おいで、無明紅姫」

 

 ズアアアア……、と俺の背に寄り添うように現れた無明の人間体。もちろんこっちはビジョンみたいなもので、本体はこっちの刀なんだけど、人間体の方はしっかり感情表現が見えて面白い。仮面を被っただけで俺から感情を隠せると思うなよ無明。

 

(……何か、距離近くない?)

 

「へー、進化させると皆そういう感じで顕現するもんなのか?」

 

「さぁ……? この子と万雷と喝采しかまだこうなってないから分からないけど……」

 

 無明の髪を撫でながら、〆に入った雑炊を口にする。うん、もつ鍋でも結構いけるじゃないか。ラーメンのイメージがあったけど、これなら雑炊も選択肢に入れていいだろう。

 

「能力は?」

 

「何でもかんでも斬る」

 

「ざっくりしてんなぁ……」

 

「実際そうだし。ね、無明」

 

『そうですね』

 

 何だ、今日はいつになく────人間の姿を見て一週間くらいしか経ってないけど────甘えてくるな。どうした? 思春期から甘え期に突入したか? まあいいけど。

 

(……はぁ、なるほどね。そういう感じなんだ……あんまり遅いと奪うって? ユーモアあるね)

 

「壱、何か寒くないか?」

 

「え? そうかな?」

 

「夏もやってくるってのに……冷夏ってやつか……?」

 

「あ、エアコン22度になってるよ」

 

「そりゃあ寒いわ」

 

 鍋を食べても肌寒いのはこれのせいだったか……大分冷えてるし、エアコンは一度切ってもいいかな!




耳郎&無明
女同士でしか分からない言語によるコミュニケーション

多々良&心操
エアコンのせいで寒かったと思ったけど、なんか今日は冷えるな……風邪か?
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