最上階に至る道を一気に走り抜け、最上階に到達した。オペレートしてくれている八百万さんに送られているであろう葉隠さんの映像をこちらでも確認する。光学迷彩付きのビデオカメラを作れるとはとんでもないよ八百万さん。
「……アサルトライフル持ちが五人……で、あの大物っぽい人は誰だ」
「多分あれがこのテロの首謀者だと思う……」
「で、あの脅されてるっぽいのが────」
「きっとパパよ!」
「いや待って。何か変な会話が聞こえる」
葉隠さんに渡したカメラは音声を拾うことができないが、響ちゃんがいるなら話は別だ。イヤホンジャックによって音を拾って、所々端折りながら内容を伝えてくれる。
「…………脅されてる人の隣にいる人が、何かサポートアイテムについて話してる」
「サポートアイテム?」
「個性数値増幅器……? 研究が打ち止め、凍結、水の泡……」
「内輪揉めか何か?」
だとしたらちょっとあれだな。天才と謳われるような人やI・アイランドに呼ばれる程優秀な科学者もまた、人間だったって感じで親近感湧くけど、それはそれとして腹が立つ。せっかく響ちゃんや人ちゃんとダンスとかも楽しめると思ったのに。I・エキスポを楽しめると思ったのに、内輪揉め(仮)かボタンのかけ間違いでこんなことになってしまったと考えると……ちょっと許せないなぁ。
「一気に突入して制圧する。幸いなことに────」
「ケッ、遅ぇんだよ」
「悪ぃ、七分かけちまった」
「爆豪君と轟君という面制圧最強組がいるからね」
それと合わせて響ちゃんの万雷がいれば問題なく制圧できるだろう。人質の解放はガンヘッドマーシャルアーツを身に付けた麗日さんと、雄英最速の男飯田君がいる。後詰めには俺と人ちゃん、そして緑谷君がいるのだから、簡単なお仕事だ。
「峰田君達は?」
「先に屋上に向かってもらった。八百万が用意したドローンで屋上にヘリが何機か置かれてるのを確認したからな」
「OK、逃走経路抹消助かる」
轟君曰く、切島君は下の階にいる人質がヴィランに攻撃されないようにと下に向かったらしい。硬化の彼ならば、撃たれても問題ないと判断した結果だろう。アサルトライフルも弾けるのか、切島君……風雲相澤城のタレットから撃ち出されるゴム弾への対抗策、切島君でいいかも……
それはそれとして、セキュリティルームは、葉隠さんやヴィラン達がいる部屋の奥……しかもヴィラン達はそこから離れた場所にいる。緑谷君がメリッサさんを連れてセキュリティルームに突入して…………うん、大丈夫。飯田君からのストップも来ていない。彼もまた、行けると判断したと見た。
「爆豪君、轟君」
「あ?」
「何だ?」
「後詰めはこっちでやる。全力でぶっ放しちゃっていいよ」
「はっ、分かりやすくていいなァ……!」
「蒼零拳で行く。多分こっちの方が安全だろ」
「よろしくね。で、飯田君と麗日さんには葉隠さんと一緒に人質の確保及び避難をお願い」
「ああ、任せてくれ!」
「うん、任せて!」
人ちゃんと響ちゃんに何か言うことはない。とりあえず三人で武器を解放して大ボスっぽいやつを叩き潰すだけだ。
八百万さんによるカウントが始まり、全員が突入準備を始める。緑谷君が緑色の稲妻を纏い、飯田君がエンジンの馬力を高め、爆豪君が小さな爆発を起こし、轟君が片腕に巨大な氷の拳を生成した頃────
『突入してください!!』
突撃じゃあ!!
「なっ────!?」
「死に晒せェッッ!!」
「【蒼零拳】……! 氷晶猩!!」
「行くぞ麗日君! レシプロエクステンド!!」
「んっぎぎぎぎ────人質確保ォ!!」
「お茶子ちゃんパスパース!」
爆豪君と轟君が初手で最高出力を叩き込み、その衝撃でヴィランが人質から離れたところで、飯田君のレシプロエクステンドで飛んで行った麗日さんが人質を確保。無重力となった人質を吹っ飛ばされた勢いを利用して回転、投げて、葉隠さんが回収したところで無重力を解除。受け身も完璧。ガンヘッドマーシャルアーツ、サイトで公開されていたし、やってみようかな?
「チッ! ガキ共が!!」
激昂したボス格らしき大柄なヴィランが近くの手すりに触れた瞬間、周囲の鉄が形を変えてうねり、極限の殺意を感じさせる形状となって俺達に襲いかかる。
緑谷君はメリッサさんをセキュリティルームに連れていき、まだ復帰していない。並大抵のヒーローじゃ太刀打ちできないような殺意に満ちたそれだが……
「おいで、
俺の武器には対無機物最強がいるのだ。無機物相手であれば、どんなものでも焼き切ってしまう
「行くよ、万雷!!」
「行くぜ、喝采!!」
そしてその隙を俺の幼馴染が見逃すわけがない。
すかさず解放された万雷と喝采。指揮者とトランぺッター、メインコーラス二人が現れ、嵐を纏った拳がヴィランに襲いかかった。
「「
「ゲァアアアアアアアアアッ!!!??」
内部から崩壊させる爆音によって吐血するヴィランだが、咄嗟に鉄を纏い、筋肉を膨張させたらしく致命傷には至っていない。……こいつ、個性二つ持ちか。しかも結構頑丈……だけど……これで詰みだ。
「おいで、
『『『ギヒヒッ!! これで幕引きだなァ!!!!』』』
禍々しい気配を放つ大刀を握れば、俺の背中の皮膚を突き破るように現れた三本の竜の首が叫び、黒紫の瘴気を吐き出す。その瘴気はやがて炎となり、大刀本体と三つの首に纏わりついた。
『苦難の竜は告げる! 汝へ越えられぬ苦難の毒牙を!!』
『苦痛の竜は告げる! 汝に想像を絶する苦痛の爛れの炎を!!』
『終幕の竜が告げる! 汝が逃れられぬ終焉の刃を!!』
『『『喰らい尽くすぜェッ、一切合切悉くッッ! 【
金属を纏っていようが関係ない、何もかもを喰らい尽くす毒牙が、全てを焼き爛れさせる炎が、幕引きを告げる刃が、最後の力を振り絞るヴィランの体に喰らいつき、叫び声を出すことなく気絶した。峰打ちとはいえ、凄まじいダメージを与えたことには変わりない。しばらくの間目覚めることは無いだろう。
「あ゛ー……しんど」
竜化が深刻なのは目と右手ぐらいかな? これぐらいなら明後日には戻っているはず。悪竜の刃も仕舞ってるし、多分大丈夫でしょ。万が一があったとしても、相澤先生に何とかしてもらえばいいし。
「やったわ!! 警備システムは正常に戻せた! 人質も八割方解放されたわ!!」
俺達が完全にこの階を制圧した頃、緑谷君の護衛の下セキュリティの復旧作業を行っていたメリッサさんがセキュリティルームから出てきた。戦闘時間はそこまで無いはずだが、この短時間で復旧させたとかマジで凄いなメリッサさん。エンジニアっていうのは、こういうこともできなくちゃいけないのかな?
「てか、セキュリティが復旧したってことは……」
「ああ、そうだな」
「あの人が、自由に動ける!!」
『よくやった、十代!! あとは私達プロに任せたまえ!!! 私達がッ! 来たァアッッッ!!!!』
切島君達から通信機を渡されたのか、耳がキーンってなるくらいの声量で頼もしい声が聞えてきた。しかも私達ってことは、他に捕まっていたプロヒーロー達も動き出したのか。うん、これならもう、俺達が出る幕は無いだろう。これ以上出しゃばってプロヒーローの負担をかけるようなことはしたくないし。撤収ということで。
「八百万さん、屋上メンバーも戻るように伝えてー」
『もう伝えてありますわ。セキュリティが復活したことでエレベーターも使えますし、皆さんも戻ってきてくださいな』
「仕事が早い」
「やはり副委員長、司令塔向き」
「飯田は前線指揮みたいな感じだよなぁ」
「適材適所! 僕は僕のやれることをやるさ!」
さすがだぜ委員長。もっと柔軟な判断ができるようになったら飯田君は今以上に強くなるのではないだろうか。
というわけでリザルト。
俺達A組全員怪我無し、ヴィランはプロヒーローが拘束中、人質は全員保護が完了。パーフェクトゲームと言っても過言ではない結果で、俺達のミッションは終わりを告げた。俺が竜化してるのはノーコメントで。
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さて、その後の話だが、緊張の糸が切れた俺達はほぼ無意識状態でホテルに帰り、シャワーを浴びて、三人で泥のように眠った。
で、翌日の今日。警察やヒーローが連携して事件の収拾を行い、無事にI・エキスポが開催された。テロを引き起こしたヴィランは全員、海外のタルタロス級刑務所に収容されるらしい。ヴィランがなぜここに入り込めたのかとかは、聞いていない。そもそもあんまり興味がない。内輪揉めとか、痴情の縺れとかでしょ、多分。
ちなみに拘束した最上階のヴィランは峰田君のもぎもぎ、瀬呂君のテープ、俺の淫語刀によって完全に封じ込められた。念入り、大事。薔薇陸奥も抜こうとしたが、爆豪君に止められた。その様子を見た緑谷君が驚いて解釈違いを起こした厄介ファンみたいな発言をして、ゾワムカされてた。緑谷君、君もしかして特定個人に対するマゾヒスト属性持ちだったりする? 仲間だね♡
それはそうと、開催されたI・エキスポは皆で回って、途中からは自由行動になった。障子君とも色々話したけど、最近、幼馴染の女の子がたくさん手紙を送ってくれるんだって。内容? それを聞く程俺は野暮じゃないよ。話を聞いていた峰田君は最初嫉妬の表情を見せたけど、「まぁ、障子はいい奴だもんな。モテるだろ」と頷いていた。入学直後のあの変態性剥き出しの峰田君が懐かしいよ、俺は。マウントレディのところで何を見たんだい、峰田君。
そして時は過ぎて、午後。オールマイトが用意してくれた場所を使って、俺達はバーベキューをしていた!
「レバニラうまっ!?」
「レバーの唐揚げとか初めて食べた! 美味しー!!」
「多々良、おかわり!」
「はーい、肉も焼けたよ~。野菜も一緒に食べてねー」
「「「肉美味ぇ!!」」」
聞きなよ。
青い空、白い雲、エメラルドグリーンの海。リゾート地のような場所を貸し切ってのバーベキューなんて中々経験できないことだ。凄いなぁ、オールマイト。あ、俺は鉄板と焼き網と超火力コンロの前で焼き係をしている。凄くいいお肉や野菜だけじゃなく、内臓類もあるんだ。毎日料理をしている人間として美味しく料理してやると意気込むのは当然だろう。
「僕、ホルモンをこんなに美味しく食べれたの初めてかも……」
「おや緑谷君はホルモンは苦手だった?」
「うん……昔食べたのがブヨブヨしてて、それがちょっとね……」
「あー……まぁ、ガリっと焼かないとどうしてもねぇ。はい、肉焼けたよ。玉ねぎも」
俺は油を吸ったエリンギを一口。うーん、最高。バーベキューで一番好きなのは肉の油を吸ったエリンギとかナスかもしれない。もちろん肉も美味しいんだけどね。
「ところで皆、おにぎり食べないの?」
「「「食う!!」」」
だよね。たくさん食えよ、食い盛り。
【
1.一本目の首が毒牙で敵に噛み付く。
2.二本目の首が毒を悪化させて皮膚を爛れさせる炎の牙で敵に噛み付く。
3.三本目の首が断頭台の刃のように鋭い牙で敵に噛み付く。
4.1,2,3を何度もループさせながら、炎を纏った刃が敵を切り裂く。
殺傷能力が高すぎるので、基本的には峰打ち+毒、炎、牙の手加減。手加減不要な存在に対しては全力のそれを叩き込む。