ちなみに俺は陰のあるイケメンとロックな女の子がタイプです。自己紹介終わり。これでお友達だな。性癖かタイプの開示を。
受験が終わって、ロックフェスの興奮冷めやらぬ数週間ちょっと経った頃。俺と響香はいつものように壱の家にやってきた。壱の家はヒーローの家系というわけではないが、比較的ヒーローに関わることが多い家だ。何せ、ヒーローのコスチュームを調整したりする会社やヒーロー同士の通訳を行う企業に勤めているため、毎日のように日本中、世界中を飛び回っている。
だからなのか、壱の家にはヒーローのサインが書かれた色紙があったりする。日本はオールマイト、ベストジーニスト、ヨロイムシャ、バブルガール、マニュアル、センチピーダー……有名なヒーローからマイナーなヒーローまでサインがある。アメリカのスターアンドストライプ、イギリスのエレクプラント、スーダンのニイガング、エジプトのサラームなど────ヒーローオタクが見たら大興奮間違いなしのサインがたくさんだ。
なお、そこまでヒーローのことに詳しくない壱はその価値をよく分かっていないらしい。本人曰く、凄いヒーローなんだろうなー、程度だそうだ。正気か?
「受験結果を、発表する……!!」
おう、唐突の興奮状態止めろや。後頭部に突き刺さってる感度上昇系武器を引き抜きながら笑う壱に正拳突きを叩き込むか否かを悩んでいると、響香が口を開く。
「言うて合格確定では……?」
「それがな、変なんだよな……」
「変?」
「なぜ俺の家に響ちゃんと人ちゃん宛の封筒がある……?」
「「ああ……そういえば」」
うちに届いていないと思ったら、壱の家に届いてたんだもんな。何だろう、何か作為的なものを感じる。こう……どうせこいつの家に集まるんだろうから、ここに出しておけば合理的だろ的なサムシングを……
「まぁ、いいや。いざ、開封!」(抜刀)
「ペーパーナイフを使えテクニカル馬鹿」(剛力)
「文明の利器を使いな馬鹿共」(ペーパーナイフ)
三者三葉の開封の仕方で開封された封筒の中から出てきたのは、三つの機械。……あ、これ投影機か。ならとりあえず……
「「「起動するか」」」
『あー、これを見てるってことは、お前達三人が集まってるってことか』
「「「イレイザーヘッド!!」」」
個性『抹消』の抹消ヒーロー、イレイザーヘッド。フィジカルとテクニックを兼ね備えたヒーローだ。うちの馬鹿が個性を制御できるようになるまで、彼がよく壱の訓練場もとい鍛冶場に来ていて、俺達もたまーに指導してもらったことがある。メディア露出が少ないヒーローだが、雄英の教師になっていたとは。
『長々と話すのは合理的じゃない。多々良壱譚、心操人使、耳郎響香。三人揃って合格だ』
あ、同じ音声が流れてる。うーん、同じものを複製するとは中々。
『学力試験は言わずもがな。実技試験では戦闘力の他にヒーローとして必要な救助活動などの資質も見ていた。レスキューポイントってやつだ』
「戦闘力だけじゃなかったんだ」
「まぁ、救助を専門とするヒーローだっているし、当然っちゃ当然か」
「なお戦闘力は最低限必須であるものとする」
鍛えてない俺だったら多分不合格だったな。暴走野郎に引っ張られて良かった────いや、本当にそうか? 本当に良かったか?
『ああ、それと、お前達三人は同じクラスな。理由は分かるな?』
「何でやろなぁ……」(フェンリルよりやべーやつ)
「おう、鏡見てこい」(手綱は太い縄派)
「間違いなくあんたでしょ」(手綱はグレイプニル派)
『自覚はあるだろうからとやかく言わん。来い、
映像はそこで終わった。あとは同封されている資料を読めということだろう。自覚ありませんでしたよイレイザーヘッド。……それにしても、あれだな……長かった。本当に長かった……ここまで辿り着くのに、どれだけの苦労があったか、つい昨日のことのように思い出せる。大体壱のせいだがなぁ!!
「それはそれとして、二人共、万雷と喝采、どうだった?」
「「殺す気かと思った」」
「んひひひ」
マジでヤバかったんだよなぁ、あの刀。引き抜いた瞬間、変な幻影見えたし……あれ、スルトと同じタイプだろ。
「マジでお前の武器どうなってるんだよ」
「さぁ?」
「おい作り手」
「武器がそう生まれたいと望んだら、俺は作るだけさ!」
そうして生まれたのが感度6000倍とか泣けてこないか? 誰かを傷つけるための武器がそう生まれたいと望んだと考えるとちょっとエモさを感じないこともないが、それを使ってビクンビクンしている幼馴染を見ると涙が出てくる。
「てか省エネだよな、俺の個性」
「鉄分とカルシウムとビタミンだもんな」
「俺が女の子だったら生理が死ぬほどキツイであろう自信がある」
「……確かに」
おい女子。
だがまぁ、それっぽい感じはある。こいつの武器の素材はこいつ自身の鉄分とカルシウムとビタミンだ。あとたまに食物繊維。鉄分とカルシウムとビタミンと食物繊維になるものなら何でも食べられる体らしく、ライオンのレバーも食べられるらしい。何なら冷凍庫の中に色んな動物のレバーが入ってる。野菜とか牛乳も冷蔵庫に凄い量入っている。
「…………響ちゃん、人ちゃん」
「ん、どうした変態」
「何? マゾヒスト」
「そんな目で見ないで! 興奮しちゃう♡!」
落ち着け変態。話くらいは聞いてやるから体をくねらせるのを止めろ変態。女みたいな顔と体してるせいでただの変態女にしか見えないぞ変態。
「まぁ、それはそれとして」
「うわぁ! 急に落ち着くな!?」
「え、響ちゃんは発情状態の方が好み? しょうがないなぁ……」
「こっちを見るな変態」
「辛辣! でもそんな響ちゃんも好き!」
その好意自体は本物なんだけどなぁ、こいつ……響香自身もそれ自体は嬉しいと思ってるんだろうし、もっとイケイケドンドンで押していけば堕ちると思うぞ、壱。でも変態性を落ち着かせような、変態。
「ここから雄英まで死ぬほど遠いんですよ」
「それはそう」
「まぁ、遠いよな」
入試の時、電車何回乗り換えたか……ホテルも取ったしなぁ……まさかの障子と同じホテルを取っているとは思ってもいなかった。なぜ顔を合せなかったのか。
「というわけで、三人でここに住まない?」
そう言って壱が取り出したのは物件の写真。………………中々の好立地にある物件では?
「待って、雄英から歩いて一時間弱って近くない!?」
「ふふん、雄英受けるって決めた時から探してたんだ」
「でも高いんだろ、これ」
「事故物件らしくて家賃結構安いよ」
なんでも、十数年前くらいに変なカルト系ヴィランがその物件を儀式だ何だと言って血染めにしたという。それから誰も気味悪がって近付かず、買い手が見つからなくて、不動産側も困っていたらしい。雄英の近くでそんなことをやらかすやつがいるとは、何とも剛毅なやつもいたものだ。
「そんなわけで、ここ、購入しちゃおうかってことで話が進んでます」
「誰と?」
「二人のご両親と、俺の両親とで。もしかして、聞いてない?」
「「聞いてませんが???」」
何やってんだうちの両親と響香の両親と壱の両親。俺と壱だけでシェアハウスするならともかく、響香は女だぞ? 馬鹿なのか? 雄英の教師から生活指導されちゃう可能性があるだろうが。そうならないようにするのは当たり前だけどさ。
「響ちゃんのご両親曰く、俺達なら問題ないってさ。あ、でもなんか他にも色々言われた気がする」
「馬鹿! 本当に馬鹿!」
「そもそも俺達三人のご両親だけが集まった家族会議で決まったことだしねぇ」
「じゃあなぜお前が知っている?」
「まぁ、そのお話合いの席を設けたのが俺だし」
「一発行っとくか」
「もう殴ってる!」
「蹴りでいい?」
「いつもより強めで情熱的で素敵だね二人共♡♡!!」
こいつ無敵か? というか響香、お前いつの間に座りながらハイキックなんて高等テクニック身に着けたんだ。
「ったく……まぁ、ウチは別にいいけど。風呂はじゃんけんでいいよね?」
「いいのかよ。家事は分業な」
「判断が早い! じゃあその方向で進めちゃうね!」
個性を制御できるようになってからマジではっちゃけたよなぁ、こいつ。発現した時はあんなにもパニックを起こしていたというのに。感度上昇系武器ってのは、マジで体が成長していないと痛みしか感じないからな……俺と響香も試したが、とんでもない激痛が全身を襲った記憶がある。あれはとんでもなく痛いんだ……!!
「ところで壱、あんたの居合って、漫画だかアニメの再現って言ってたよね?」
「うん? いや、ゲームだよゲーム。水鳥乱舞とかは無理! あれは手首どころか上半身が逝く!」
……ああ、あれか。俺も壱と一緒に見ていたし、プレイもしたが、とんでもない技だったな。ゲームの世界とはいえ、やべぇよあの技。あ、でも色々再現できそうなものはあったな。アニメ、漫画、ゲーム、特撮……意外にも侮れない。
「ウチも色々見てみようかな」
「響鬼見ようぜ響鬼! あとアーマードコアやろうぜ!」
「響鬼はいいよ響ちゃん……!! アーマードコアもやろうねぇ!!」
「めっちゃ推すじゃん」
ようこそ響香、俺達の世界へ……! 歓迎するぜ、盛大になァ!!
……にしても三人暮らしか……色々用意しないとな。とりあえず電化製品とか、服とか、色々持っていくものを選別しないといけないし……あ、楽器も忘れちゃダメだな。あれは絶対に忘れちゃいけない。響香はベース────というか全部、俺はギターとドラム、壱はベースとキーボードが使える。一緒に演奏するのは結構楽しい。声真似とかすると、俺の個性の練習にもなるしな。
「そういえば響ちゃん人ちゃん、コスチュームのデザインってもう決まってる?」
「コスチューム……ああ、入ってた資料の……」
大雑把でもいいからコスチュームのデザインとか、欲しい機能とかを書いて送れって書いてたっけ……会社で作るとか何とか。コスチュームかぁ……
「近接は壱の刀があるからいいとして……いや、あれ危険すぎるからダメだな?」
「淫語刀使う?」
「……………………アリだな」
「結構使える性能なのが腹立つ……!!」
壱の武器を使えるのなら、ある程度の代用が利くからな。ただ、俺も、壱も、響香もイレイザーヘッドの動きを見てきたから、使いこなしてみたいと思うものがあるのだ。あれは間違いなく欲しい。あとは声を真似る補助をしてくれる機械とかか……壱は武器しか作れないからサポートアイテム系はどうしても必要になってくる。
「あ、ところで二人共ご飯どうする? 食べてく?」
「「献立による」」
「レバニラ」
「「いただきます」」
壱の作るレバニラは絶品なのだ。というか内臓系料理を作らせたら、こいつが一番上手いんじゃねぇのかな。