スロー、スロー、クイッククイックスロー…待ち遠しいですね、淫語刀。
第一戦目の緑谷君、麗日さん、爆豪君、飯田君の戦闘を鑑賞中、俺達はちょっとした驚きを感じていた。
「緑谷君、あれ読んでるのか」
「癖を読んで戦うってスタイルなのかな。でも読むのが上手すぎて逆に手のひらの上だね」
「個性の制御ができてない分、アドバンテージは爆豪にあるか?」
あの超パワーを人に向けるにはある程度高度な制御が必要となるはず。人に向けたら内臓消し飛ぶだけじゃ済まない────いや、ぶっ壊れる腕がショックアブソーバーになって意外と威力出なかったりする?
「うーん、難しきかな、難しきかな」
「攻略がか?」
「いや、どうやって人ちゃんに淫語刀を当てようかなって……」
「いつも通りで安心したよ」
「ありがとう」
「皮肉で言ってんだよ」
「分かってるよ」
真面目な話、どうやって二人を攻略するのかが俺の課題なんだよね。核のある場所で迎え撃つなんて絶対に無理。だからある程度広くて、長物を扱える領域で殴り合うのがいいんだけど……向こうは絶対に乗ってこないだろうから、引きずり込まないといけない。問題はどうやって引きずり込むのかなんだけど………………あ、そういえば。
「あるなぁ……方法」
「ヤバい、思い出しやがった」
「勝率が五割減したよこれで」
これを使えば行けるはずだ。八割が変な能力を持っている俺の武器だが、組み合わせることで120%の効果を発揮する。例えば媚主絶天と淫語刀のシナジーは感度上昇だけだが、媚主絶天と烈火沙を合わせると、斬り付けたやつが感度が上がったせいで体温上昇が本来の体温よりも高い状態と勘違いして熱さで倒れたりする。ソースは俺。やらかしたよね。
まぁ、とにかく別々の武器を組み合わせてシナジーを生み出すのが俺のやり方。響ちゃんも人ちゃんもほぼほぼ喰らったら終わりな感じだけど、触れたら終わりっていう武器を振り回す俺も同じ。さぁ、楽しもうじゃないか二人共。俺はとっても楽しみだよ♡万雷と喝采の晴れ姿をこの目で見れるかもしれないし、それ以上に二人と戦えるって聞いただけで心が躍る。
「「抜かないからな?」」
「え? 制御できてないの? 万雷と喝采は認めてるみたいだけど? ……煽りポイントゲットか?」
「「絶対に制御してやるから待ってろ変態!!」」
うんうん、そう来なくちゃ。今の響ちゃんと人ちゃんは個性を二つ持っているようなものだからね。大変だね、頑張って使いこなしてあげてね。万雷と喝采は二人を認めているから、あとは二人の気持ち次第だよ。ちゃんと心で二振りを理解できた時に、呼んであげれば、その二つはきっと応えてくれるから。
「授業中だぞ三人共!」
「「「聞えてるし見てるし考えてるよ、委員長」」」
「む? そうか、それはすまない。けど委員長とはなんだ?」
委員長は委員長だよ。そこに何を求めるんだよ委員長。
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授業も後半戦、俺達で最後となった。いやはや、皆凄い個性ばっかりだったね。俺はヴィラン側なので、五分間の準備時間をいただけるのだが、あんまり必要ではないんだよね。床を全てぶち抜いておくとかは考えたけど、響ちゃんと人ちゃんに逃げ場を作るようなものだし、くり抜いてビルが倒壊しましたは笑えない。
「んー……まぁ、閉所は吹っ飛ばしておこうかな」
あの二人と閉所で戦いたくないし。というわけで抜き放ちますは、スレッジハンマーと刀が合体したような見た目の武器、
「よぉーいしょっ!」
ボゴンッッ!! と壁が一枚塵となる。うーん、快感。これを続けていくと、二階の部屋は何もない更地と化した。そして、解体工事が終わったのと同時に訓練開始のアナウンスが入る。
「────やっぱりそう来るよな、お前なら」
「ようこそヒーロー! このような僻地まで来てくださるとは……感激だ……」
「ゲッ、そのキャラ止めなよ似合わない」
酷くない?
「まぁ、いいか。こっから先には行かせないよ、ヒーロー。あれは、俺の目的完遂に必要なんだ」
「あー、そういう感じかヴィラン……」
「でっかい花火を上げるってことね。それ、本気でやらせると思う?」
「まぁ、思ってないよ。だから……君達はここで殺すよ」
さぁ、俺の居合はこの二人に対してどこまで通用するのかな? 組手じゃあんまり使ってこなかったからね、通用するといいんだけど。
「行くぞ、ヒーロー。──────抜刀!!」
「っぶねぇ!!」
「淫語刀でそれ撃ってくるのは卑怯過ぎない?」
む、避けられた。初手で感度1000倍の淫語人間にしてやろうと思ったのに。お、カウンターで鞘に納めたままの喝采を鎧のない部位に叩き込もうとしてきた。しかも後ろから響ちゃんのハートビートが迫ってくる。容赦ないね、全く。まぁ、逃げられないように仕掛けをさせてもらおうか!!
「鳴らせ大銅鑼! これより始まるタイマン勝負!! おいで!
「くっそ、忘れてた!!」
「お馬鹿! 油断したでしょ!?」
「マジすまん!!」
ガジャアアアアアアアアン!!!!
俺が取り出した大きな盾を全身が震えるような銅鑼の音が鳴り響き、俺達を囲い込むような障壁が展開される。銅鑼のような大盾【
「さぁ、タイマンしよっか♡まぁ、2対1なんだけどね」
「全く……呆れた個性だよ、あんた」
「……」
響ちゃんの声じゃない。響ちゃんの声はもっと可愛らしいハスキーボイス。もっと精進してどうぞ人ちゃん。
「こいつの耳狂ってるよ」
「耳がいいってのも考え物だな」
「……」
「っとぉ!? 危ねぇな!? R18キャラになるつもりはねぇよ!!」
今のは個性を使っている人ちゃん。返したら負けだね。はい、右、左、正面、後方、斜め上、蹴りからの捕縛布。からの刀。籠手と兜で凌いで後方警戒。ハートビートは使えないよねぇ、この射線じゃ人ちゃんを巻き込────あれ、何か後ろから悪寒が────
「
「忘れてた────」
「かかった!!」
────ハッ!? 咄嗟の反応で叫んじゃったけど今の人ちゃんの声だった!! 音の壁が俺の後ろに展開されたことで、バックステップしていた俺がぶっ飛ばされる。ピンボールのように吹っ飛ばされた先にいるのは、拳を構えた状態で待ち構えていた人ちゃん。
「ッシャオラァッ!!」
「うわらば!?」
腹にもろに喰らいそうになったので体を捻ったが、間に合わず斜め横に拳が突き刺さる。凄く痛い! ────けどねぇ……痛み分けにはしないんだよねぇ、俺。
「■■■■ッ────!!?」
「あはははっははははは!! 油断したね、人ちゃん♡」
「何やってんの馬鹿人使ィ!?」
淫語刀、構えたんだよね、咄嗟に。淫語刀のいいところは、軽く斬り付けただけでも効果を発揮するところだ。そして効果が発動したということはだ。人ちゃんは今、全く使えないお荷物となってしまったということ。慣れないときついよね、その状態。分かるよ。俺もそうだった。
「真っ赤になっちゃって、可愛いね♡♡」
「ッッ! ッッッ!!」
「えー♡? なんて言ってるのか分かんなーい♡」
ちょっと小突いたり、振動させただけで体が反応してビクンビクン震えている人ちゃんは、羞恥心と怒りと……色んな感情がない交ぜになって凄い顔になっている。可愛いね♡
「人使が見たことがない形相になってる……」
「これで二人きりだね♡」
「っ、この反応速度、あんた媚主絶天使ってるでしょ」
「正解♡」
感度を上げまくっていたら慣れちゃったんだよね、この感覚に。この状態で響ちゃんに抱きしめられてみろ、想像しただけでお腹の底から熱くなってくる。
「クネクネすんな変態」
「言葉責めも大歓迎だよ♡」
「ブレないなこいつ……」
おっと、話をしていてもしっかり攻撃してくるんだね。さすが俺のヒーローだ。
媚主絶天の能力は感度を上昇させるだけではない。体の反応速度を大体四倍にまで引き上げるのだ。もちろん一気に四倍するわけではなく、少しずつ、自転車やバイクが変速していくようにギアが上がっていくのだ。
「でもどうする? このままだと時間切れか、俺に斬られるだけだよ?」
「どうするも何も……あんたをぶっ倒して核を確保する。それだけだよ」
「言うは易し────ん?」
人ちゃんも諦めてないみたいだね。ビクンビクンしてるけど、目はまだギラギラと燃えている。いいよ、どこまでも付き合ってあげる。俺に付いてきてよ、俺はどこまでも走っていくからさ。
「ではヒーロー、俺の夢を阻むなら、我が剣によって────潰えよ」
(……来る!)
鞘に納めたままの無明を構え、抜き放つように鞘ごと振り抜く。
「抜刀」
「まだ練習中って言ってたよねそれ!?」
「抜刀」
「腕!」
「抜刀」
「胴! 脚ィ!?」
うーん、速度か? 速度が足りないのか? 媚主絶天で反応速度も上げているのに、響ちゃんに避けられてしまう。うーむ、目線かなぁ、これ。目線と殺気かな。しかし、そろそろ時間が来る。このまま何もさせずに攻撃し続け────あ。
「掠っただけならすぐ解けるみたいだなぁ、淫語刀……!」
「……!!」
「まーたオマージュかよ!? 頭おかしいんじゃねぇのその技の吸い込み判定ぃいいいいい!?」
お、弾くよね、そりゃあ。殺意の波動に目覚めていそうな人ちゃんの攻撃を凌ぎながら、無明を切り替え。薙刀の跳躍丸に交換。離れるんじゃなく、突っ込む感じで石突を地面に叩き付ける!!
「避け……ない! 迎撃が生存の鍵ぃ!!」
「正ッ解!!」
響ちゃんが避けたら障壁を利用してピンボールが如く突っ込もうと思ったけど、目論見は読まれていた。鞘に納められた万雷と、跳躍丸が激突する。しかしそこはさすが響ちゃん。ハートビートを上手く使いながらよく凌いでいる。
そこに人ちゃんのフィジカルゴリラな戦闘が加わるせいで本当にやりずらい。俺が武器を使っていなかったら、確実にものの二分で終わっていた。ああ、本当に、本当に凄いよ二人共。でも、勝ちを譲る気は全くないんだよね。
「開け
「「あ゛!?」」
「からのおいで、愚瀉ツ刀!」
「「この野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!??」」
「あはははっはははっはははははは!! バイバイ、ヒーロー! 花火は打ち上げられてこそなんだぜ!!」
床に叩きつけたことで、崩れ落ちていく二階。その隙に俺は跳躍丸で飛び退いて階段を駆け上がる。捕縛布と響ちゃんのイヤホンジャックがこちらに伸びてくるが、残念ながら届かない。残念だったね♡
『ヴィランチーム・WIN!!!!』
やった、勝った! 今夜はレバニラだ! あ、でも昨日も作ったな。今日は響ちゃんにご飯作ってもらお。
淫語刀
切ったやつを感度1000倍にして、淫語しか言えなくする刀。
愚瀉ツ刀
衝撃を満遍なく伝達させる刀(鈍器)。
媚主絶天
感度を100~6000倍まで調整して上昇させる短剣。感度上昇系の短剣が多すぎたので混ぜ合わせたらこうなった。
反応速度を四倍まで変速していく。
銅鑼が埋め込まれた大きな盾。銅鑼部分をぶっ叩くことで障壁を十分間発生させて自分を含めた半径15m内にいる人間を閉じ込める。オールマイト並のパワーで殴られたら流石に壊れるが、生半可な攻撃は全く通用しない。緊急シェルターとしても利用可能。
跳躍丸
バネの力が宿った薙刀。石突部分に強い衝撃を受けるとバネのように飛んでいく。これを利用して閉所でピンボールのような動きもできるが、壱譚の三半規管では吐く。
無明
何の効果も持っていない、ただひたすらに切れ味が良い刀。