Lostbelt No2 悠久延焼世界 ゲッテルデメルング 消えない焔と巨人の絆 作:焔の隣人
「スルト、これからどうする?」
『唐突だな』
あの後おばさんは出て行ってしまった。
その時になんか言っていたけどあんまり覚えてない。
『……おまえの母と父に頼れ』
「むり」
『何故だ?』
「お母様もお父様も、死んじゃったから」
『……そうか』
ひとりぼっちは慣れっこだ。
でもすごく寒い。
「……いなくならない?」
『何?』
「スルトは、おれの側からいなくなったりしない?」
『俺とおまえは魂がほぼ同一の存在になっている。離れたくとも離れられん』
「そっか」
詳しいことはわからないけど、スルトは一緒にいてくれる。
そうわかったら、体がぽかぽかする。
あったかい。
『この屋敷と……アインバームだったか? その家は小僧の物だ』
「え?」
『おまえの叔母が喚いていただろう』
「そうなんだ」
そんなこと言ってたんだ。
「……どうしよう?」
『そう言うつもりで奴も小僧を置き去りにしたのだろうよ』
「へー」
確かにそれはすごい困る。
うーんどうしよう、何をしたらいいのかわかんないや。
『見たところここは広い、食うものの気配もする。生きて行くだけなら困らん』
「けはい?」
『……貧弱な畜生どもがそこら辺にいるだろう』
「シカって食べれるんだ……」
動物ってご飯なんだ。
『長細い肉の塊を食べたことがあるだろう』
「……あ、ヴルスト?」
『あれがお前の言うシカの肉だ』
「そうなんだ……」
『別の肉の可能性もある』
肉って動物から取ってたんだ。
ん、じゃあ……。
「おれも食える?」
『は?』
「ん、人のお肉」
『それは……』
スルトが急に黙り込んだ。
どうしたんだろ。
『……まぁ、辞めておけ』
「おいしくないの?」
『味の問題ではない』
「ならなんで?」
『……楽しくないからな』
「たのしくない」
『満たされず、最後に残るのは己自身だけ。……そんな最後がおまえの望みか?』
「それはやだ」
『そうだろう、だから辞めておけ』
「はーい」
『……相変わらず突拍子のない奴だ』
「知らないもん」
知らないことを聞く、それが大切だって教わったし。
「知らないを知らないまま終わるよりいい」
『……』
「スルト?」
『……何でもない、おまえの考えは正しいのだろうさ』
「変なやつ」
……そう言えばスルト、やりたいことあったな。
なんとかって人に、何かしてあげたいとかなんとか。
確か、名前は……。
「お、ふぇりあ」
『……何?』
「おれ、やりたいことない。だからスルトの目的手伝う」
『……』
「いいよね?」
『……少し、待て』
む。
何を迷う必要がある。
ばーい、でぃっひ。
「はやく、はやく」
『喧しい。……全く、どこまでも煩わしい小僧だ』
『そして、ダメだ』
「なんで」
『今の小僧に、俺のものは重いだろう』
「むぅ、これでもずっと頑張ってるのに」
『……おまえはおまえの為に頑張っていないだろう』
「え?」
『理解できんのならば、まずはそれを目指すことだ』
「スルトはわかってるの?」
『知らん』
はー?
なにそれ。
「スルト、すごく理不尽、意地が悪い」
『ふん。ニンゲンの中でも特に矮小な貴様が背伸びするな』
「ひどい」
『……今はただ、今を死力を尽くして生きることを考えておけ』
「はーい」
こうしておれは。
いや、スルトとおれたちは2人きりになった。
そして、それから沢山の年月が過ぎて。
「ニック、身体の調子は大丈夫かい?」
「ん、今日は万全」
「それは良かった、今日は大事な日だからね」
「君が体調不良で全力を出せなかった、なんて。これ以上ないアクシデントさ」
「買い被りすぎ」
「あら、そんなことないわよぉ? ニックちゃんの魔術はとっても熱いもの」
「む、よりにもよって2人がおれを持ち上げるのか」
この2人も、だけど。
明らかにおれより優秀なんだよな。
人がいい奴ってのは、こいつらのことか。
「ふん、エリート様は余裕だな」
「そう言うカドックは余裕がなさそう」
「……うるさい」
キリシュタリア、ぺぺさん、カドック。
あと
「はっはっは! 相変わらずニックは火の玉を投げるのが上手だなぁ!」
「ん、火を纏って撒き散らすベリルには負けるよ」
「うげ、こりゃあ手厳しい」
「……」
「……ふん」
「あ、ヒナコ。この前はありがと」
「礼はいらないわ」
「ん」
ベリルにヒナコ。
あと隅っこで静かなデイビット。
そして、そして。
「オフェリア」
「……どうかしたのかしら、ニッキー」
「何でもない」
彼女が、オフェリア。
オフェリア・ファムルソローネ。
「……スルト」
『……ああ』
「『ここからが、本番』」
おれはこれから、彼女の役目を奪うのだ。
……まあ、詳しい事情はスルトから教えてもらってないんだけど。