Lostbelt No2 悠久延焼世界 ゲッテルデメルング 消えない焔と巨人の絆 作:焔の隣人
前の席のあの子、すごく大胆。
変な意味で尊敬しそう。
『そんなにか?』
ん、それはもう。
スルトはひすてりっくな所長の前で寝るってことの凄さをわかってない。
『わかりたくもないが』
「ひどい」
あっ。
ばっさりと切り捨てるスルトのせいで声を出してしまった。
「ひどい……?」
「……」
「アインバームさん、あなた今何と言いましたか?」
とても、とても悪いタイミングで。
所長が前の席のあの子を諌めている途中だった。
傍目から見たら、ただの空気読めない人になる。
「ん、何でもない、です。失礼しました」
「ッ……そうですか、では先程の失言は不問とします」
相変わらず、怖がってる。
『……つくづく思うが』
ん、どうしたの?
『いや、貴様ら……あれは、何をしでかした?』
所長のこと?
来る前は知らないけど、来た後は何も変なことしてない、よ?
『……ふむ……』
スルトの世界で何かあったの?
『俺は何もないが……あれがここの支配者なのだろう』
うん。
『……ではあれが忌々しい邪神どもと繋がるきっかけを作ったのではないのか?』
いや知らない。
けどここまででそんな気配した?
『してはいないが』
じゃあ多分違う。
所長はひすてりっくだけど、おじさん達みたいにはなれないよ。
『……そうか』
あ、大胆な子が眠そうに出ていった、まだ眠たいんだ……?
あはれ無情、でも妥当。
「……説明は以上です。それでは、15分後にレイシフトを始めるわ。各々、コフィンの中に入る準備を始めなさい」
ん、レイシフト始まる。
おれはAチームだから早く行かないと。
「よおニック」
「ん」
「……」
「……?」
「っていやいやいや! ん、だけじゃなくてだなぁっ!? 他になんか言うことあるだろ?」
「……ん、わかった。頑張ろみんな」
ベリルから何かを求められているらしいが、これでいいかな。
「だははこりゃだめだ! まぁ頑張るけどよ!」
「んふふ、相変わらずねぇニックちゃんは」
「ベリル、あまりニッキーを揶揄わないでもらえる?」
「おっと、ニックの保護者達のご登場か。悪かったな」
「……誰が保護者よ」
「ヒナコ、ベリルは君のことを言ったわけではないと思うよ」
「な……」
「だっはははは! 芥が珍しく墓穴掘ったなぁ! 面白ぇ!」
「?」
頑張ろって言ったのに、気を引き締めるどころか弛んでる、何でだろう。
「カドック、どうしてこうなった?」
「……知らない。自身の胸に手を当てて考えてみたらどうだ?」
「ん、わかった」
ねえスルト、何でだと思う?
『俺に聞くな、知らん』
……。
「わからない、どうしよう?」
「……はぁ」
カドックがすごく呆れた目でこちらを見ている。
相手にされてないみたい。
「そろそろ入らないと」
「そうだね。……じゃあ皆、話の続きは冬木でするとしようか」
ん、爆発、焦熱ばっちこい。
おれはその手の専門家だ、死なないぞ。
『何を言っている』
……?
え、爆発くるんじゃないの、この後。
『……確かにそうだが』
『俺達の目的のためには、一度死なねばならんぞ』
え。
『正確には、仮死状態になる必要がある』
…………えー……?
ほんとに?
『嘘を言う必要があると思うか、お前と俺で』
ない。
『そう言うことだ』
にへへ、そっか。
じゃあ、一回死のう、そうしよう。
『……』
どうかした?
『……何でもない、とにかく、最善は尽くすが覚悟はしておけ』
ん、わかった。