別世界のマンションの管理人になりました。住人が変ですが、相棒が綺麗です。   作:パッチワーカー

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 That's Not My Neighborの2次創作と呼べるかは分からないですが、インスピレーションを受けて即書きました。
 時代としては、ガラケー使ってるくらいを想像してます。


別世界のマンションの管理人になりました。住人が変ですが、相棒が綺麗です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の外出予定者は全て帰ってきていて、あとは分かりきった残業だけだ。

 

「···ですから、もう一度言いますよ──貴方は何故それほど口の周りが赤いんですか?」

 

 ガラス越しだが、血の臭いが漂う気がするほど

 目の前の住人の口の周りが鮮血に彩られている。

 

「はい···?──あー、それはですね、チッ···まぁいいじゃないですか。早く開けてくれませんか?早く休みたいんですけど···」

 

 いつもは可愛い笑顔を見せてくれる少女のはずが、今は敵意を隠しきれずに僕を睨んでいる。

 

 ほんと、いつもこういう分かりやすく簡単な違いがいいなぁ···

 

 僕は慣れた手つきで業者の番号にかける。

 

「あーもしもし?──はいそうです、口の周りが赤い少女です──いつもありがとうございます。はい、なら待ってま···いつも通り早いな」

 

 電話をかけながら出入り口を封鎖し、管理人室を保護するシャッターを下ろした瞬間、僕の頼れる業者がきた。

 

 宇宙飛行士のような分厚い防護服を着て、一瞬で駆けつけ抹殺してくれる。僕の、この世界で唯一と言っていい味方。

 

 グシャッと何かが潰れる音を聞き、なんでこんなイかれた世界に来てしまったんだろうか、と真剣に考えようとした時だ。気の抜けるような声がした。

 

「やーやー、いつもお仕事ご苦労さんだね〜」

 

「貴女もお仕事お疲れさまです。あと、いつもありがとうございます」

 

「そんな固い口調は辞めてくれって言ったろ?私のことは···なんて呼べって言ったっけ?覚えてないってことは君も()()()()()()()()に食い殺されたってことになるけど?うわー私、君も殺さなきゃなのかい?···寂しくなるね〜」

 

「寂しくなる」と言いながら、にやにやして僕の言葉を待っていた。

 ほんとにこの人は性格が悪い。···全然嫌いではないけど。

 

「敬語調を辞めてくれって言われなければ、本物の貴女だって簡単に分かるじゃん。今日も本物の貴女に会えて安心したよ。サナさんいつもありがと、調子はどう?」

 

「むふふ〜君にそう呼ばれるのは本当にいいね。まだまだ恥じらいがあるのもすごくいいよ、今のが聞けて今日もハッピーさ〜」

 

 お互い本人確認を済ませるとサナさんは厚い防護服を脱ぎ捨て、薄着の自分の身体を見せつけるような体勢になった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 薄い金髪のショートの髪で、少し大きめのタレ目、小さい鼻、薄ら笑いを浮かべてる口、左に2つ右に多く(日によって変えてるらしい)のピアスを付けて、気の抜けるような声と話し方。

 

 話しているとこっちまで気が抜けそうになるし、いつも防護服の中を薄着にして揶揄ってくるけど、僕の頼れる味方であることには変わらない。

 それに美人さんだし、よくご飯を届けてくれる。

 

 そして、ドッペルゲンガーが現れたら、どんな外見をしてても一瞬で片付けてくれる。

 

 本人曰く、「顔とか関係なくない〜?女の子でも怪物でもドッペルゲンガーなのは変わんないしね〜」らしい。

 そう言ってるが、多分顔なんて一切見てない感じがする。

 いつも顔を潰してるし、まともに見れてないはずだ。

 

 ···まぁ、助けてくれてるのには変わりないし、本当にいつもありがとうございます。

 

「僕に恥じらいがあるのは全然可愛くないって」

 

「いやいや、君みたいな爽やかな青年が恥じらいを持って私の名前を呼んでくれるのはすごいいいよ〜いつも労ってくれるのも高ポイント〜···私のペットにしたいくらいだよ〜」

 

 いつもこういう誘いをしてくるから慣れたが、始めの方は動揺しかなかった。

 

「貴女がもう少し本気で誘ってくれたら考えるよ···ってか、こんなにゆっくりしてて大丈夫?結構依頼来てるんじゃない?」

 

 そう言うと、お姉さんは何かの端末を確認して少し青ざめた顔になった。

 ──これ、仕事結構溜まってるよね。

 ここ以外にもたくさんのアパートやマンションがあるみたいだし、その分アイツらはいっぱい出る。

 

「···あーまあまあだね〜早く片付けてまた来るよ〜だから、()()()()ー」

 

「うん···って、もういないか···」

 

 サナさんが目の前からスッと消えた。

 ほんとにあの人は何なのかは分からない。

 けど、味方なのは分かるし敵意の欠片もない。

 普段の生活の中でなら会いたいが、この仕事中はできれば遠慮したい。

 

 ──まぁ僕に普通の生活が送れるのかは分かんないが···

 

 サナさんが出て行くのを管理人室から見送って、一息つこうとしたときだ。

 

 

 ガチャッ!

 

 受付前の扉が乱雑に開かれる音を聞き、ふぅと下を向きながら一息つき、多分()()住人を見る。

 

. . . . . . . . . . . . . . . . .

 

「ごめんサナさんすぐ来てくれないかな?」

 

 目の前にいるのは、目玉や脳が飛び出ている人の形をした何かだ。服装的にここの住人であることは分かるが、服以外の何一つ人間ではない。

 

 また同じ電話をかけながら、管理人室を保護するシャッターを下ろした。その30秒後くらいに僕の頼れる業者がまた来てくれた。

 

 さっきみたく潰れるような音は聞こえなかったが、一面が赤く染まった。

 ···だけど、いつもは頭ぶっ潰すような音聞こえるのに変だ。

 

 些細なことでも気になるのは職業柄だろう。

 それに、サナさん以外の人が来ることだって当然あるだろうし······僕がここに来てから2ヶ月くらい経って、彼女しか来てないけど。

 

 疑う心を無にして、いつも通り話しかけて反応見るか···

 

 仕事を終えて手が赤くなっている目の前の何かに話しかける。

 

「本当にいつもありがとうございます。···サナさんお仕事今日は多いですか?」

 

「そうだね〜。やっぱり多いけど、君らが優秀なおかげでなんとかなってるよ〜」

 

 いつも通り気の抜けた声と話し方だ。そこに何の違和感もないが、甘いな。

 

 サナさんは僕が敬語で話すのを嫌っている。初対面のときですら本気で嫌そうな声で拒否ってたし、いつも敬語で話したら嫌な顔をしてる。

 

 それが今目の前の彼女にはない。

 ということはドッペルゲンガー確定だ。

 ──住人以外のドッペルゲンガー初めて見るな。···サナさんの外見も完璧なんだろうか?

 

 彼女はいつも防護服を着てるし、それを脱ぐときはこの封鎖されたときの管理室の前だけだ。

 だから、サナさんの外見をトレースできることが可能なら、直接見ずにコピーできる能力がある裏付けになる。

 

「···貴女にしては珍しいですね、いつもなら頭を捻り潰すのに···何か心変わりでも?」

 

「──さっきのヤツの頭が気持ち悪くてね〜、頭を潰す気にはなれなかったのさ〜」

 

「そういうものなんですね」

 

 ダウト。

 サナさんは潰すヤツも潰した後のヤツも一切覚えてないし、認識してない。

 性格までは模倣できてないっぽいな。

 なら、外見はどうだ?

 

「···さっき多くの依頼来てましたけど、その防護服暑そうですし汗とか大丈夫ですか?···脱いで休憩されますか?」

 

「···ほんと〜?ならシャワー借りていい〜?」

 

「ええ。···防護服は脱がないんですか?」

 

「···脱いだ姿が見たいの〜?君ってえっちだね〜」

 

「普通に見たいですよ」

 

「後でね〜今は汗かいちゃってるしね〜」

 

 やっぱり完璧に模倣はできてないな。

 いつもなら僕を揶揄うために脱ぐし、サナさんが汗かいてるところなんて見たことない。

 ──結構脱ぐの嫌がってるってことは、外見まではコピーできてなさそうだ。出来てるなら意気揚々と脱ぐだろうし。

 

 

「···少しお待ちくださいね···今開けますので」

 

「助かるよ〜」

 

 そう言いながら、もう一度業者に電話しようとしたときだ。

 目の前にいるサナさんのドッペルゲンガーの頭が無くなってグジャッと奥の壁にめり込んだ。

 

「──サナさんおかえりなさい、随分と遅かったですね」

 

「敬語はやめてくれよ、···さっき話してた間に、いつもより死ぬほど入っててね〜多分コイツに仕組まれてたかもしれないね〜」

 

「話し方や声は完璧でしたし、模倣する能力が高いのと賢いことは関係あるのかもね。相互関係あると厄介すぎるなぁ···」

 

「やっぱり私の話し方や声を模倣してたんだ〜···どこでバレたと思う〜?」

 

「···わかんないけど、多分外見や性格は模倣できてなさそうだったから、どっかで聞かれてたんじゃない?」

 

「ここ以外で話すことはないから、ここで雑談してたときかな〜」

 

「ここ以外ない?」

 

「そうだよ〜君以外と話す気起こらないしね〜」

 

「他のところで事務的な会話してるときとかは?」

 

「あー、確かに掃除完了しましたくらいは言うしね〜、そういうときに聞かれたのかもね」

 

 ···そういう会話以外を外でしてないことに少し驚きがあったが、確かに適当に流しているサナさんも想像がつく。

 

 ──なんで、僕はこの人と仲良くなったんだっけ?

 

「···何か考え事かい〜?あとちょっとでお互い仕事終わるんだし、お酒飲む〜?」

 

「···そうだね、久しぶりにちゃんと飲みたい気分だし、付き合ってもらおうかな」

 

「ほんと〜?君と飲むの1週間ぶりくらいだよね〜じゃあ、あとでお酒とか君の好きなおつまみ系いっぱい買ってくるね〜」

 

 仕事の性質上僕はここから()()()()し、酒盛りするときはいつもサナさんに買ってきてもらってる。

 ···いつか、何かでお返ししないとな···

 

「ちゃんとレシート貰ってきてよ?またうやむやにされるのも困るし」

 

「まあまあ、お互い命に関わるお仕事してるんだしさ〜お金なんてきにしないでいいんじゃない〜?」

 

「僕がお金使えるときはこういうときしかないから、払わせてね」

 

 僕がお金使える場所は本当にないし、サナさんに色々頼むしかない。

 

「まあ考えておくよ〜、じゃあまた後で〜」

 

「うん、じゃあまた後で。死なないでね」

 

「···やっぱり君をペットにしてもいいかいー?」

 

「早く職場に戻らないとヤバいんじゃない?」

 

 また、何かの端末を確認すると面倒くさそうな顔して、

「バイバイ」と言って姿を消した。

 

 

 このビルには()()というものがある。例外として、事前に申請されたらその人だけは伸びるが、それ以外の人は定められた時間までに帰ってこないとならない。

 

 あと10分もすれば門限になる。

 

 門限をすぎたら問答無用に殺される···訳ではないが、一度その辺りにある簡易ホテルのようなところに泊まらないとならない。

 

 そして、僕の始業時間が7時からなので、それ以後に帰ってこい。このような感じになっている。

 

 •いくら遅くても0時以後に外を出歩いてはならない。

 •周りの人が何かおかしいと違和感を感じても、その人に直接言ってはならない。指示されている人に相談に行くなど対処しなければならない。

 •自分の写真付きIDと外出のエントリーリクエストを理由つきを出さなければならない。

 

 など、色々元の世界にはない規則がある。

 元の世界とこの世界にはほぼ同じではあるが、一つ大きく異なるところがある。

 

ドッペルゲンガー

 

 僕の意識が目覚めたとき、教育ビデオのようなものが目の前のテレビに映っていた。

 

 内容をまとめると、

 僕の仕事は建物に入ってくる人がドッペルゲンガーか見極めること。

 ドッペルゲンガーは別の人に変身してなりすます能力を持っている。しかし、擬態する能力は完全ではなく、一部不完全なところがある。

 

 それを確認するために、管理人室には色々仕組みがある。

 右側には各階の住人のすべてのデータが入っているフォルダがある。

 左側には今日外出予定の人物が書かれていて、日付を確認するためのカレンダーがある。

 違和感を見つけたら、質問をし、ドッペルゲンガーだと分かれば()()を呼べ。

 

 そして、この仕事は死亡率が高すぎて大体死んでいること。

 

 と、そのようなことを教育番組みたいなテンションの高さで言われた。

 ドッペルゲンガーと一言で言われても何か分からなかったが、初めての人がこの世界を物語っていた。

 

 ···アリの目みたいなのが顔中を埋め尽くしていた。

 

 こういうヤツを始めに見たのが幸運だったのか、不運だったのかは分からないが、3ヶ月くらい生き残っているのだから、ただただ僕は幸運なのだろうなと思う。

 

 ドッペルゲンガーの正体や、どこから産まれたのか、どういう処分を下しているのか、世間の扱いはどうなっているのか、もし本物が殺されてしまったら──

 

 そういった疑問を押し殺しながらも、莫大な金額が舞い込んでることもありこの仕事を続けている。

 この仕事をしてる間はこのビルからは出られないが、それでもこの待遇で座り仕事なのはいい。

 

 ···だけど、僕が扉を開け住人を入れたときに、僕の元に簡単に来れるのは心臓に悪い。

 小さな子供がこちらに走ってきたときは、心臓が止まりそうだった。

 

 ドッペルゲンガーは人を殺したい欲があり、管理人などを酷く憎んでいる。

 だからこの部屋に行きやすくして、ドッペルゲンガーの第一被害者は管理人にして落ち着かせたいらしい。

 

 ──僕らの命は本当に軽いんだなぁと分かって、この世界が少し分かった気がした。

 

 

 

 ゴーンゴーン

 

 

 

 壁に掛けてある時計が門限である時間を指した。

 その音を聞き、僕はそろそろ来るだろう人を待つ。

 

 

「ごめん〜ちょっと遅れた〜?」

 

「いや、時間ぴったりですよ」

 

「敬語はやめてくれよ、···今日は依頼が多くて君と話す時間が少なかったね〜」

 

「そうだね、確かに今日は多かったし、たくさん呼んじゃって申し訳ないよ」

 

「気にしないでくれよ〜アイツらの頭潰すのストレス解消になるし、何の労力もかからないしね〜」

 

「···よくドッペルゲンガーとはいえ、人の頭あんなに簡単に潰せるよね。サナさん筋力どうなってるの?」

 

「私らは訓練されたからね〜自慢の腹筋でも見せようか〜」

 

「そう言いながらもう防護服脱いでるじゃん。まあともかく、上がってよ」

 

 そう言って、久しぶりに開けるボタンを押し、立って唯一の相手を迎え入れる。

 

「はいはい〜」

 

 軽く扉を通って、僕の部屋まで来た。

 これがドッペルゲンガーなら、僕は普通に死ぬんだろうなぁ···と思ってると、いきなり手首を掴まれ押し倒された。

 

「···もし私がさ〜ドッペルゲンガーだったらどうする〜?」

 

 いっしょにこの部屋で飲むようになって、その度に毎回聞かれてる質問だ。

 

 その答えは、やっぱりこれしか思いつかないよ。

 

「僕が1番詳しいのサナさんだから、それ見抜けないんなら、いずれ食い殺されるのは確定してるし気にしないよ。僕にこの仕事の才能ないんだなぁ···って思いながら死ぬんじゃないかな」

 

 僕の想像をどこか満足げな顔して聞きながら、着々と酒盛りの準備をしていた。

 

 

 

 ──こういう生活はいつまで続けていられるんだろうか?

 

 いつまでも付き纏う「死」への恐怖は、サナさんが前にいてくれるときはない。

 だから今だけは全て忘れて酒に溺れたい。

 

 そう強く思いながら、酒を飲み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 





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