それこそが事実   作:スタイニー

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https://tospo-keiba.jp/anohi/14390

上のリンクはこのエピソードの元ネタです。

ここまで『史実に基づいたフィクション』を心掛けてきましたが、このエピソード全てと次のエピソードの一部は完全に私の創作です。
もちろん、元になる話はあるのですが、"絶対に無い話"なので、生暖かく読んでください(笑)


48.確かな成長 49.年度代表ウマ娘 50.VS撃墜王 51.確かな手応え

 

48.確かな成長

 

 

 

「おう、宮下!わざわざありがとな!今日はよろしく頼む」

 

「はい。よろしくお願いします。田川さんの担当と併せを出来るなんて光栄です。胸を借りるつもりで頑張ります。よろしくお願いします」

 

宮下が話しているトレーナーの名は田川成也。

今、中央の天才トレーナーといえば奈瀬文乃になるが、その奈瀬が憧れた"元祖"天才トレーナーが田川だ。

 

GⅠ競走15勝、通算勝利数1000勝以上という実績もさることながら、派手なパフォーマンスや絵になる言動でカリスマ的な人気もある中央のトップトレーナーの1人だ。

 

今日は田川が担当する外国からの留学生スピードワールドとの併走トレーニングに宮下とサニーは臨んでいた。

 

「そんなにかしこまるなよ。むしろ併走をお願いしたのはこちらなんだ。気楽にしてくれ」

 

田川はニコニコと宮下を気遣う。

 

「緊張はしますよ。田川さんの担当も安田記念前ですから、ウチのサニーがまともな練習相手になるか心配です」

 

併走相手のスピードワールドは留学生のためクラシック登録が出来ない。そのため、当初はNHKマイルを目指していたが、運悪く骨折が判明して、出場を取りやめていた。

そして、最近ようやく骨折が治ったため、クラシック級ながら安田記念に出走登録していた。

 

「いや、今年の皐月賞ウマ娘なんだから心配しなくても大丈夫だろうよ。ところで宮下。ここ最近、お前らしくない言動が多いが、一体何を企んでる?俺の担当に今年のクラシックに出る奴はいないからこっそり教えろよ」

 

田川は表情を変えずに宮下に最近の行動について単刀直入な質問をする。

 

「何も企んではいませんよ。きっと僕の発言をマスコミが面白おかしく騒ぎ立てているだけです。僕はインタビューが苦手ですから、うまく伝わらないんですよ」

 

宮下は田川の質問に対して淡々と答える。

 

「相変わらず釣れない奴だな。まあ、今日の併走でわかるだろう。俺の目は誤魔化せないからな。さて、そろそろ始めようか!ワールド準備よろしく」

 

「オーケー、ボス!」

 

田川の呼びかけにスピードワールドが返事をする。

ちなみにサニーは昔スピードワールドとは二度ジュニア期に対戦したことがあるが、その時は二度ともスピードワールドに先着されていた。

 

「じゃあ、サニーも準備をしようか」

 

「はい!」

 

宮下の呼びかけにサニーも返事をしてスタート位置につく。

 

「じゃあ、行ってみようか!ヨーイ、スタート!」

 

 

 

 

 

 

「ヘイ、ボス!」

 

併走が数本終わり、スピードワールドが田川のところに来た。

 

「ボス、ゴメンナサイ…。今のワタシでは彼女の相手にならなイ…。チェンジをお願いしまス…」

 

スピードワールドはかなり息の上がった状態で、申し訳なさそうに併走相手の降板を申し出た。

 

「いやいや、まさかここまで差がつくとはな…。確かにワールドは病み上がりだが、万全でもあの子についていくのが精一杯だな…」

 

サニーとスピードワールドの併走トレーニングはまさかの結果となった。

8割程度のサニーに対して、スピードワールドはかなり追ってついていくのがやっとだったのだ。

 

なので、サニーが強めの併走をするとスピードワールドは道中半ばでついていけず、実質単走のようなトレーニングになってしまい、全く練習相手にならなかったのだ。

 

「これは仕方がないな。ワールドはあっちで別メニューだ。うーん、弱ったな…。サニーちゃんだっけ?君はまだ走り足りないだろ?しかし、今日いるウチの担当に君についていける子はいないからな…」

 

田川は困った顔をして悩む。

 

「田川さん。大丈夫ですよ。サニーは単走で調整します。他の子にも悪いですから。さっ、サニー行こうか。田川さん、貴重な時間ありがとうございました」

 

宮下は田川にお礼を言い、その場を後にしようとする。

 

「トレーナーちゃーん!何してるのー!」

 

田川の後ろから聞こえた元気な声。

果たしてこの出会いは宮下とサニーに何をもたらすのか。

 

 

 

 

 

49.年度代表ウマ娘

 

 

 

 

「ん?マヤノか?お前、なんでここにいるの?」

 

居るはずのない人物の声に田川は驚きを隠せない。

 

声の主はマヤノトップガン。

GⅠ4勝の実績を誇る一昨年の年度代表ウマ娘。

現在のトゥインクルシリーズの看板選手の1人でもあり、マーベラスサンデー・サクラローレルとともに『新永世三強』と呼ばれていて、現役最強のウマ娘の一角だ。

 

「マヤノ、しばらく休養だと言ったはずだが、どうしたんだ?それにさっきは遊びに行ってくると言ってたじゃないか」

 

マヤノトップガンは先日マスコミを通じて秋シーズンまでの全休を宣言していた。

 

「だってみんな用事があるって言うからー。ローレルさんはフランス語教室だし、マベちんは宝塚記念を頑張るからしばらく遊ばないっていうし、ブライアンさんはいつも通り無視だし。つまんないんだもーん。だ・か・らトレーナーちゃん!あーそぼ!」

 

マヤノトップガンは田川に一緒に遊ぶことをねだる。

 

「いや、今どう見てもトレーニング中だろ。後で付き合うからあっちに行ってなさい」

 

無邪気な笑顔のマヤノトップガンのおねだりに田川は少し困りながらあしらおうとする。

 

「ぶー。トレーナーちゃんのケチ!じゃあ、いいもん!あっちで…ははーん、マヤわかっちゃった!」

 

「…」

 

マヤノトップガンは突然何かに気付いたと言う。

その様子を見た田川がとてもまずい顔をする。

 

「ねえねえ、お姉さん!走り足りないんでしょ?マヤと走らない?」

 

「えっ?」

 

マヤノトップガンがサニーに一緒に走ることを提案する。突然の申し出にサニーも困惑している。

 

「いや、ダメだ。お前は休養だろ?いいからあっちに行きなさい。すまんな、宮下。今日はお開きだ。この埋め合わせはまた今度な!」

 

そう言って田川は強引に話を終わらせようとする。

 

「ねぇ、お姉さんも走りたいよね?全然息は上がってないし、まだまだ余裕って感じがするよ!マヤだったらちょうどいい練習相手になるよ!ね!やろう?おねが〜い!」

 

そう言ってマヤノトップガンはサニーにお願いをする。

 

「えっ?あっ、え〜…」

 

マヤノトップガンの急なおねだりにサニーが困惑する。

 

「あっ、コラ!勝手に交渉するんじゃない!ったく、お前は…」

 

田川はマヤノトップガンの行動に困った表情をすると、チラリとさりげなく宮下の表情を伺う。

 

「いや、年度代表ウマ娘と走らせてもらえるなんて滅多にない機会ですから、僕は嬉しいですが…。サニーはどうだい?」

 

田川のさりげない目線を察した宮下がサニーに本心を聞く。

 

「私は…。是非走ってみたいです!お願いします」

 

宮下もサニーも困惑はしているがマヤノトップガンとの走りに意欲を見せる。

 

「…わかった。じゃあ、マヤノ着替えて来なさい。併走トレーニングを何本かやろう。それでいいね?」

 

『相手が望むなら仕方がないか』という建前を落としどころに、田川が渋々許可を出す。

 

「えー、併走トレーニングはつまんなーい!模擬レースしよ!」

 

そんな田川の提案に対して、マヤノトップガンはつまらないと文句を言い出す。

 

「おい!調子に乗るな!あの子もそうだが、お前までケガをするかもしれないんだ!それはダメだ!」

 

マヤノトップガンの更なる勝手な提案にさすがの田川も怒る。

 

「えー、ダメ?お姉さんもそっちの方が楽しいよね?トレーナーちゃん!ダメ〜?」

 

そんな田川に対してマヤノトップガンは目を潤ませながら最大限のおねだりモードを発動する。

 

「…。宮下どうする?レース前にリスクがあるのはいただけないが、やってみたいか?」

 

普段は飄々としている田川だが、やはり女の子のおねだりには弱いようだ。

 

「サニー、やりたいかい?模擬レースを?」

 

「はい!お願いします!」

 

サニーは力強く返事をして頭を下げる。

 

「わかった。じゃあ、模擬レースをやろう。マヤノ。30分あげるから着替えとアップをやりなさい」

 

「アイコピー!やったー!着替えてきまーす!」

 

そう言ってマヤノトップガンは元気良く更衣室へとかけていく。

 

[いやいや、大変なことになった。しかし、年度代表クラスとレースが出来るのはサニーにとっても刺激になる。勝ち負けはどうあれ、いい機会だな]

 

成り行きで模擬レースをすることになったが、宮下の心は踊っていた。

 

 

 

 

 

 

50.VS撃墜王

 

 

 

「お待たせー!マヤ!準備万端でーす!」

 

着替えとアップを済ませたマヤノトップガンがみんなの前に登場する。

 

「それじゃあやろうか。条件は左回り2400mでいいかな?2人ともゲートへ向かってくれ」

 

「はーい!」

「はい!」

 

田川の配慮により模擬レースの条件はダービーと同じものになった。

2人は元気良く返事をしてゲートへと向かう。

 

「しかし、お前の担当、調子いいじゃないか。さすが皐月賞ウマ娘だ。お前がマスコミにああ言う理由がわかるよ」

 

田川がサニーを賞賛する。

 

「ありがとうございます。とはいえ、この模擬レースは少々荷が重い気がします。なんとかくらいつければいいですが…」

 

「とか言いながら少しは期待しているんだろ?なんだかんだで、俺も楽しみではあるからな。さっ、お手並み拝見と行こうか!行くぞー!」

 

そう言うと田川は手を挙げてスタートの合図を出す。

 

 

 

ガシャン

 

 

 

2人が一斉に飛び出す。スタートはサニーが出足で勝る。

 

[ここ最近、スタートの調子がいい。やはりこの1ヶ月で全ての能力が底上げされているな]

 

あれだけ苦しんでいたスタートを難なくこなすサニーに宮下は手ごたえを感じている。

 

[よし!先手を奪えた!このまま内に入ってペースを落とす…!?]

 

先手を奪えたサニーはいつも通り最短ルートを確保し、ペースを落とそうとする、が…

 

なんと、スタートから200m地点でマヤノトップガンが強引に先頭を奪い返す。

 

[先頭を奪い返すだと…。まさか、狙ってやったのか?それとも…]

 

まさかの展開に宮下は動揺し、田川を一瞬見る。

 

「ん?俺は何もしてないぞ?一応、言っておくが、このレースは全てマヤノに任せているからな」

 

自分を一瞬見たことに気づいた田川が宮下の疑惑を否定する。

 

「あっ、いえ、すいません。そうですよね…。田川さんはあの子と打ち合わせなんてしてませんよね…」

 

予想外の出来事に動揺してあらぬ疑念を抱いてしまったが、冷静になって考えても状況的にそれはありえないことで、宮下が動揺するのも仕方のないことだった。

 

[あの奪い返しは狙っての行動だ。なぜ、マヤノトップガンはわかったんだ?サニーの"苦手な展開"が…。サニーのデータなど把握していないはずなのに…」

 

シニア級で戦っているマヤノトップガンが春シーズンの時点でクラシック級で戦うサニーの情報を仕入れ分析している可能性はほぼ0に等しい。にも関わらず、マヤノトップガンはサニーを"潰す方法"を瞬時に判断した。それはレースセンスの高さという範疇では表せない異質な能力だった。

 

「マヤノはいつもああなんだ。直感でわかるんだよね『正解』が。たぶん彼女の仕草や行動・会話とかを観察して答えを導き出したんだろうね。さて、レースの主導権を握られた彼女はこれからどうするのかな?」

 

淡々とマヤノトップガンの能力を語る田川はレースの行方を見守る。

 

[まずいな…。スタート直後でこの洞察力だ。道中では更に解析されるだろう…。サニーは上手く対応出来るだろうか…]

 

マヤノトップガンの実力を感じ取った宮下がサニーを心配する。

 

[この子すごい…。スタート前に言ってたことは本当なんだ…。私が苦手な展開をわかってる…]

 

実はスタート前に両者にはこんなやり取りがあった。

 

 

 

「ねえねえ、お姉さん!お姉さんって『先行タイプのステイヤー』でしょ?」

 

「えっ?私のこと知ってるの?」

 

「ううん。知らないよ。でも、なんとなくそう思ったの。でも困ったなぁ〜。そういうタイプの人の攻略は簡単だから…」

 

「簡単?それって私みたいなタイプに勝つことが簡単てこと?」

 

「そうだよ!大体こういう展開にすれば勝てるって決まってるもん。でも、お姉さんには少し期待してるかな。なんか、普通の子たちとは違うって感じたから!だからね、お姉さん!マヤを飽きさせないでね!」

 

 

 

[あの子はああ言っていたけど、私だって場数は踏んできた。思い通りにはさせない!]

 

スタートから200m地点でマヤノトップガンがサニーの前に入った後は順番はそのままで既に400m地点を通過していた。

 

[12・13…。やっぱりスローペースに落とす気だ。だったら、ここで主導権を奪い返す!]

 

600mに差し掛かろうかという地点でサニーが先頭を奪い返すために動く。

 

[妥当な判断だ。このまま追走しても末脚勝負では勝ち目がないだろう。ならここで先頭を奪い返す方がまだ勝ち目があるか…]

 

宮下もサニーの判断に同調する。しかし…

 

[なぜだ?サニー、どうして抜きに行かない…?]

 

レース中盤に差し掛かる直前、両者の見えない攻防が続いていた。

 

 

 

 

 

 

51.確かな手応え

 

 

[うっ…。抜けない…。この子後ろに目がついているの!?]

 

実はサニーは仕掛けようとはしていた。ただ、マヤノトップガンがサニーを抜かさせない。

マヤノトップガンはサニーの"走りたいコース"を先読みしてわずかなフェイントを繰り返しているからだ。

 

もちろん、レースにおいて進路妨害は反則となる。しかし、マヤノトップガンのフェイントは巧妙だった。

サニーとの距離は約1バ身。進路妨害に当たるような接触はもちろんなく、距離感としてはサニーが前に行こうと思えばいけないことはないものだ。

 

ただ、マヤノトップガンはサニーが動き出そうとする瞬間とほぼ同時にその進路上に体を入れ、ルートを塞ぐような素振りを見せる。

 

このフェイントはマヤノトップガンからすれば一歩ほどズレるだけの労力しかかからないが、その一歩の違いで追い抜きにかかるサニーにはその倍以上の労力をかけなくてはいけなくなる。

 

 

 

必要以上の労力をかけて先頭を奪い返すか否かを悩ませる

 

 

 

マヤノトップガンが仕掛けた駆け引きは巧妙だった。

 

「あの子の判断は間違っていない。ただ、マヤノが何か駆け引きをして、あの子を抜かせないようにしているといったところか。このまま、判断に迷っているとあっという間に4つ角まで行ってしまうが、どうするのかな?ちなみにマヤノの末脚は先行からでも鋭い切れ味があるぞ」

 

田川はマヤノトップガンが駆け引きを仕掛けていると理解した上でサニーの出方を伺っている。

 

[まずいな…。マヤノトップガンは全ての脚質が一流と聞く。前半のリードを守り切るだけしかできないサニーには分が悪すぎる]

 

4つの異なる脚質でGⅠを4勝したマヤノトップガンの自在性と違い、サニーは直線に入った段階である程度のリードがなければ勝つことができない。

 

しかし、マヤノトップガンのフェイントに翻弄されてサニーは二番手追走のまま、残り1200mのハロン棒まで来てしまっていた。

 

このレースに勝つためのサニーに残された猶予は確実に少なくなっていた。

 

[強い…。日本一のウマ娘はこんなに強いんだ…。でも、これであきらめたら、ダメ!こんなことで諦めてたらダービーなんて勝てない!出し惜しみなんかしない!このレース、勝ちにいく!]

 

[マヤの右後ろにお姉さんが動いた。さっきより距離は詰めてきてるみたいだけど、どうして今、外に動いたんだろ?この状況なら普通は直線まで待つよね。焦って判断ミスしたのかな?残念だなぁ〜。もう勝負が決まっちゃった…]

 

マヤノトップガンは残り1000mを残しながら2人の位置関係と能力差を見極めた上で勝ちを確信する。しかし、その時だった。

 

マヤノトップガンがペースを維持しながら第3コーナーを回ろうとした瞬間、サニーが外からマヤノトップガンに一気に並びかけた。しかもそのペースはかなり早く、明らかに抜きにかかっている。

 

[サニー、行くのか!?ここから!?]

 

状況を遠くから見守る宮下がサニーの仕掛けに気付く。

 

[え?ここで?それはムリでしょ…あっ!?]

 

思いがけない位置で並びかけられたマヤノトップガンがビックリする。そして、サニーがマヤノトップガンを追い抜こうとした瞬間…

 

[!?]

[!?やめた?]

[!?止まった?]

 

何かに気付いたマヤノトップガンは走るのを急にやめてしまった。

 

「おい!マヤノ!どうした?脚を痛めたのか?」

 

突然の出来事に田川は慌ててマヤノトップガンの元に向かう。一方のサニーと宮下は呆然としてその場に立ち尽くしている。

 

「いやー、マヤ疲れちゃった!今日はこれでお終い!」

 

マヤノトップガンは駆け寄ってくる田川にニコニコとレース終了を告げる。

 

「おい!疲れたからってレースを勝手に止めるな!マヤノが言い出した…。まったく、お前は…。そんな理由で走るのをやめたら相手に失礼だろ!」

 

マヤノトップガンのあっけらかんとした態度を見て田川は何かに気付いたようだが、それはそれとして勝手にレースをやめたことを怒る。

 

「ホントにゴメーン!でも、疲れちゃったんだからしょうがないでしょー」

 

マヤノトップガンが舌を出しながら茶目っ気たっぷりに田川に謝る。

 

「俺に謝ってもしょうがないだろ!相手選手とトレーナーさんに謝ってきなさい!」

 

田川がマヤノトップガンにサニーと宮下に謝るように促す。

 

「お姉さーん、ごめんねー。でも、マヤとっても楽しかったよ!今度は本当のレースで戦おうね!」

 

マヤノトップガンがサニーに謝る。が、それは謝罪というよりはまたレースをしようという約束に近かった。

 

「えっ、あっ、こちらこそ…。私も楽しかったです。ありがとうございました…。また、レースできたら嬉しいです…」

 

いろいろと急転直下な出来事ばかりでサニーは何が何だかわかっていないようだ。

 

「宮下、最初から最後まで振り回してしまって悪かったな。今度お詫びに奢るから。とりあえず、ダービー頑張れよ!応援してるから」

 

「いえいえ、とんでもない。こちらこそありがとうございました。ダービー頑張ります」

 

田川が宮下にお詫びと激励を送る。

 

「マヤノ!行くよ」

 

「はーい!お姉さん、またね!バイバーイ」

 

そう言って田川とマヤノトップガンは去って行った。

 

「ハハハ…。何だかバタバタした終わりになってしまったが、サニー、どうだった年度代表ウマ娘の走りは?」

 

宮下がマヤノトップガンとのレースの感想を聞く。

 

「いやいや、凄かったです。あんなハイレベルな駆け引きは初めてでした。シニア級の人たちのレベルの高さを知りました。でも、楽しかったです」

 

サニーはマヤノトップガンの実力に驚きつつ、充実感も覚えたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、マヤノ!あれはダメだぞ!相手に失礼すぎる!」

 

帰りながら田川はマヤノトップガンに再度注意をする。

 

「反省してまーす!でも、楽しかったなー。去年のブライアンさんとのマッチレースを思い出しちゃった!」

 

マヤノトップガンは一応申し訳なさそうにするが、目はかなりギラついていてまだレースの興奮が冷めていない。

 

「確かに去年の阪神大賞典に展開が似ていたな」

 

昨年の阪神大賞典。

軍配はわずかにナリタブライアンに上がったが、後続を9バ身も引き離すマヤノトップガンとナリタブライアンによる壮絶なマッチレースは史上に残る伝説的な名レースとしてファンの記憶に新しい。

 

「マヤが悪いのはそうなんだけど、あのお姉さんもイケないよね。あんな楽しそうな顔して仕掛けてきたらマヤ、本気になっちゃうって。でも、これは”模擬レース”だからね。だからやめたの。ねっ、マヤ大人でしょ?」

 

マヤノトップガンはぶりっ子ポーズで大人の対応を強調する。

 

「その程度では大人の対応とは言わない。まったく、どうせそんなことだろうとは思ったが、急にやめたらビックリするから二度とするなよ」

 

田川がマヤノトップガンに釘を指す。

 

「アイ、コピー!って言うか、マヤがあんなこと

するなんて、まずないからだいじょ〜ぶ!」

 

マヤノトップガンはおどけた表情で決めポーズを作る。

 

「まったく、勝手な奴だ。しかし、それはそれとしても、マヤノが模擬レースで本気になりかけるとはな。さすが今年の皐月賞ウマ娘だ」

 

田川は改めてサニーの強さを賞賛する。

 

「えっ?そうなの?あのお姉さんが今年の皐月賞ウマ娘なの?」

 

どうやらマヤノトップガンはサニーが今年の皐月賞ウマ娘だとは知らなかったらしい。

 

「なんだ?そんなことも知らずに模擬レースを挑んだのか?相変わらず興味のないことにはとことん興味ないな」

 

田川がマヤノトップガンの無頓着さに呆れる。

 

「しょうがないでしょー!この天才マヤだって学園全部のウマ娘がわかるわけじゃないんだから!でも、もう覚えたよ!だってあのお姉さん、相当強いもん。あの実力があるなら今年のダービーはあのお姉さんが勝つよ!マヤが保証してあげる!」

 

マヤノトップガンがサニーの実力に太鼓判を押す。

 

「マヤノがそこまでいうならあの子は本物だろう。それならマヤノもしばらくはしっかり休まないと。秋にはあの子と戦うかもしれないんだ。今から準備だな」

 

「もっちろん!今から秋シーズンが楽しみだなぁ〜。秋から復活して、あのお姉さんにも勝って、2回目の年度代表ウマ娘をゲットするよ!頑張ろうね!トレーナーちゃん!」

 

「はいはい。頼むよ『撃墜王』」

 

 

 

 




このエピソードを描きたいなと思ったのは『シンデレラグレイ』のオグリVSディクタの模擬レースの話が面白かったからです。

史実では相対することのなかった両雄のIF。
ウマ娘だから出来る"夢の一端"が見れたこの話に自分は感銘を受けたので、この様な話を創りました。

もし、史実でマヤノトップガンもサニーブライアンも健在だったとしたら97年の有馬記念は…。
その夢の一端がこの話に詰め込まれています。
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