戦え、妖精さん!   作:全智一皆

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序章「リボン付きの死神」

 

■  ■

「おまっ、はっ、えぇ…!?」

 

 その日、提督は驚愕と激震に身を焼かれた。

 一通りの仕事が落ち着き、ようやく自分の鎮守府に戻る事が出来て、艦娘達からの熱い歓迎を受けた。

 初期艦である叢雲からの容赦なきグーパンからの笑顔。

 古参である加賀と電という意外な組み合わせからの怖い笑みからのおかえりの一言。

 裏提督LOVE勢の曙・霞・満潮からの懐かしい罵倒とデレ。

 痛みを伴う歓迎もそうでないものも含めて、懐かしくて嬉し泣きしながらも提督は自らの鎮守府に帰還したのだ。

 

 艦娘達からの熱烈な歓迎を受け終え、初心に戻る気持ちを含めて大型建造を回した。

 燃料4000、弾薬7000、鋼材7000、ボーキサイト2000、開発資材20と、通常の建造とは比べものにならない莫大な資材を費やして建造するシステムだ。

 このレシピで、大和や武蔵といった仲間を迎えたのだ。彼にとっても思い出深いものなのだが―――

 

「な―――何この戦闘機!?」

 

 建造に立ち会った艦娘―――兵装実験軽巡「夕張」が、唖然とする提督に代わって声を上げた。

 そう。戦闘機だ。

 大型建造によって造り出されたのは、超弩級の戦艦でも何でもなく―――最新鋭の戦闘機だった。

 あれ、これ装備開発だっけ? と現実逃避をするも、残念ながら現実です提督さん。

 

「―――はァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 絶叫を上げても仕方ない。

 尾翼に青いメビウスの輪のエンブレムを刻んだ最新鋭のステルス戦闘機―――「F-22A」。

 アメリカ空軍に配備される最新世代の『第五世代』ステルス戦闘機であり、この時代には絶対に存在しない機体である。

 そして何より、そのエンブレムと妖精である。

 青いメビウスのエンブレム。遠目から見ればリボンにも見えるであろうそれは、かなり見覚えがある。

 妖精は見慣れた革色の空軍服ではなく、右腕の上部分に尾翼と同じメビウスのエンブレムバッジを付けた灰色の飛行服を身に纏っている。

 

「メビウス1!? なんで!? なんでメビウス1!?」

『――――――――――?』

「俺の事を知ってるのか? だって。提督、この妖精さん知ってるの?」

「知ってる知ってる! 勿論だ! ISAF空軍第118戦術航空隊所属の戦闘機乗り、『リボン付き』の異名でエルジア空軍から恐れられたエースパイロットだよ! たった一人で一個飛行隊と同等の戦闘能力を持ったエース!」

 

 メビウス1。

 ISAF空軍第118戦術航空隊に属する戦闘機パイロットにして、『円卓の鬼神』に次いで戦場に名を馳せたパイロット。

 自軍からは英雄、敵軍からは死神と恐れられたオーシアが誇るエースパイロットの内の一人であり、『リボン付き』の異名で知られている。

 その戦闘能力はISAF空軍1個飛行隊に相当するとまで言われ、ISAF最高クラスの単体戦力と言っても過言ではない。

 妖精は照れくさそうに頬を掻きながら(ヘルメットを被っている)口をパクパクと動かす。

 

『―――――。――――――――――――、――――』

「大袈裟だよ。今じゃただの小さな妖精さ、片羽じゃないがな。だって」

「おぉぉぉ!!!! ピクシーの事だよな、それ!? やっぱ知ってるんだな! うっわ、めっちゃ懐かしい!」

「提督、めっちゃテンション高いね!?」

「そりゃあ、もう! 世代だったからな、俺! 妖精とは言え本人と出会えるとか最高過ぎんだろ!」

『―――――――――――――――――――』

「艦隊の指揮官がファンボーイとは光栄だよ。だって」

「そんな滅相もない! かの戦闘機乗りが艦隊に来てくれるなんて、身に余る光栄だ!」

 

 かくして。

 とある鎮守府に、時代に見合わぬ第五世代戦闘機を駆るエースパイロットが着任したのであった。

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