ライザ&カズマのアトリエ この素晴らしい世界と秘密の錬金術士   作:アトリエはいいぞ

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新たな冒険の始まり

「ここ、どこ?」

 

「フィー……」

 

 げこげこびょんびょんと超巨大なカエルが跳びまわる湿地帯の岩の上で、あたしは頭の上の妖精と一緒になって同じ疑問を唱えた。なんでこうなったんだっけ……とあたしたちを食べようと大口をあけてこちらに来るカエルにフラムを投げつけて、爆発と同時にため息をついて頭を回転させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!閃いた!」

 

 なんてことない山道の、なんてことない昼時にあたしの頭にぴきーん!と稲妻のようにアイデアが舞い降りた。あたしはあわててわたわたとカバンの中から何か書けるものを……この魔導書の切れ端でいっか!さっき拾ったんだけど意外と余白部分おおいし!あとはえーと平らな場所……切り株みっけ!忘れないうちに早くメモメモ~~~!!!

 

「よし、これで大丈夫!」

 

 魔導書の切れ端1枚じゃたりず、3枚につづった大作を前にしてあたしはふぅ、と両手を腰に当ててえっへん、と誰にでも張るわけでもない胸をはった。夏が終わり、秋のちょうどよい気温の中でぽかぽか暖かい陽気がこの画期的な錬金術のアイデアを生むのだ!なーんて。

 

「よっし、これならフィーがこっちの世界にきても大丈夫なはず!……やってみないと、わからないけど」

 

 今はいない、自分の子供のような、そうじゃないような小さな小さな妖精の鈴の音みたいな鳴き声を思い浮かべながらあたしはバッグの中に大切にたたんだ魔導書の切れ端をしまって、切り株から腰をあげる。

 

 あたしはライザ、ライザリン・シュタウト。クーケン島っていうなんてことない島の、ラーゼンボーデンっていう村のなんてことない農家の娘で、ちょっとすごいと自認するなんてことない錬金術士。少し前に、3回目になるひと夏の大冒険を終えて、なんてことない当たり前の旅に出た。目的は、あたしから何かを伝えることができる人を探すこと?それも別に急いでいるわけじゃない。

 

 あいまいな目的の、あいまいな旅。行先なんて決めてなくて、やりたいこともあやふや。だけど、それでいい。あの大冒険みたいなのもいいけど、あちらこちらにふらふらするのもちょうどいいと思う。だけど、たった今目的ができた。行かなくちゃ、アトリエに。作りたいものができたから……錬金術士としてね!

 

「ここから一番近いのは……フォウレかな?」

 

 あたしは苦笑しながら我ながらなんていいタイミングで脳みそに天啓を走らせたものだと自画自賛する。ちょっと前に通ったサルドニカの方でフェデリーカに会ってきたばっかりなのに。フェデリーカはあまりに早い再会に驚いてたっけ。もう一度、あの冒険の軌跡をたどるように旅をして、全く知らないところに行こうとしていたから、ある意味じゃ必然だったかも。

 

 一刻も早くさっき書き留めて、今も頭の中でぐるぐるしているアイデアを形にしてしまいたい。だって、約束したから。いつかの話が今できるかもしれない。私はいてもたってもいられずにサモナーズベルを鳴らした。現れた大きな霊獣にまたがった私は、紅葉が始まりだして赤く染まるネメドの山道をかけていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「験者さん、デアドラさん!お久しぶりです!旅の途中に寄らしてもらったんですけど、アトリエ使ってもいいですか!?」

 

「おお、ライザ殿。いいもわるいも、あそこはあなたのアトリエだ。この村が大移動しない限りは私たちが責任をもって保全している。もちろん今もだ、自由に使うといい」

 

「ありがとうございます!」

 

「久しいな。ああ、そういえばディアンから初めての手紙がきたんだ。なんでも今は王都にいるらしい」

 

「あ!私もレントからもらったんですよー!王都でボオスと一緒に魔物退治をしたとか!いやー、立派になったなー」

 

「ふふ、私もそう思うよ。引き止めてしまってすまない」

 

 1回くるっと昼夜が回ってさらにあたしのおなかがくう~と恥ずかしい音を奏でるくらいの時間帯に、私は夏の大冒険で各地に建造した拠点のうちの一つ、フォウレのアトリエにやってきた……んだけどこのフォウレの村の一角を間借りさせてもらっている以上、挨拶もなしに勝手にがっちゃんぐるぐると錬金窯を動かすのもおかしな話、きちんとこの村の偉い人、験者さんに挨拶してから作業に取り掛かろうと思って村の奥にある彼の家を訪ねた。

 

 そこではちょうど、大冒険をともにした大切な仲間のひとりであるディアンの話題で話していた途中だったらしく、彼の親代わりである二人はあたしがやってきたことでそれに火がついちゃったみたい。私が幼馴染のレントから手紙をもらったようにディアンもこの二人に手紙を送っていたようだ。ちょっと字が下手……人のこと言えないって?うるさいな~。まあそれはともかく、心がこもっているのはよくわかった。

 

 お茶でも、ともてなしてくれようとする二人に改めてお礼を言ってから私はそこを辞してやっとの思いでアトリエの中に突っ込んでいった。中身自体は、あの隠れ家のアトリエとばいばいした時にまとめて掃除したのでちょっとほこりが出てきたな~くらいですんでる。よかった~~。掃除からスタートだなんて待ちきれないし。

 

 さて、と改めてからっぽの錬金窯に錬金術の初歩の初歩である薬液を調合して注ぐ。この虹色に沸き立つ薬液がなければ何も始まらない。これに、素材を突っ込んで煮立たせてぐるぐるとかき回すことで錬金術は行われるのだから。繰り返し使えるものだけどこの前は心機一転ということで全部廃棄しちゃったんだよね~。

 

「さて!作るぞ~~!フィーがこっちでも生きていけるようになる道具を!」

 

 あたしの脳みそに走ったアイデアというのは、2回目の大冒険の時にであった妖精、フィーに関することだった。かいつまんで話すけど、あたしが孵化させてしまった卵から生まれたリスのようなウサギのような、とにもかくにもザ・妖精という外見をした生き物のことだ。王都で遺跡の調査をしようとしていた時に重なるように産まれたんだよね。

 

 最初は、一緒に楽しく遺跡の調査をしてたんだけど、ある時からフィーはだんだんと弱っていった。あたしの錬金術の師匠であるアンペルさんが言うにはフィーは別の世界の生き物で、生きるために必要な魔力があたしの世界にはないからいずれ弱って死んでしまうと。あたしと仲間たちはなんとかフィーが生きられるように頑張ったんだけど、結局だめだった。

 

 いろいろあって、あたしたちは異界の扉を開けてしまい、そしてそこから出てくる魔物の親分を倒すことになった。そして、その扉を閉じるときにあたしはフィーと別れた。あの時のあたしは今よりも錬金術士として未熟で、こちらでフィーを生かすという道を手放さざるを得なかった。フィーが生きてくれるという道だけは手放したくなかったから。

 

 そして、3回目の大冒険、何度目かの異界、オーリムにてあたしは奇跡のような確率を潜り込んで生き残っていたフィーに再開することができた。宥めの精という種族だったらしいフィーはあたしが思っているより図太くたくましく生きていてくれた。うれしくって、涙がたくさん出たよ。そして、宥めの精がたくさん集まって、それであたしが錬金術の腕を上げてフィーがこっちで生きていられる道具を作ったら、また一緒に暮らそうって約束したの。

 

 前に作った道具は一時しのぎにしかならなかった。目標は、魔力を小分けにして定期的に摂取できるような道具にすること。それに必要なのは……

 

「えーと、まずは……エアドロップでしょ、ドンケルハイトでしょ、賢者の石でしょ、それとオーリムで採取した高濃度の魔石に、それとそれと……」

 

 あたしはまずアイデアの中心になるエアドロップを突っ込んで、それにできるだけ高濃度かつ神秘的なものをコンテナの中から選び取っていく。そして、忘れちゃいけないのがオーリム、フィーが生きることのできる世界にあった魔力を宿す結晶だ。それらを適切な量錬金窯の中に突っ込んで両手杖でかき回していく。

 

 今回閃いたアイデアは、エアドロップが舐め続けると空気を出して水の中でも呼吸ができるということから着想を得たものだった。フィーを返したときは異界をゆっくり探索なんてできなかったから思いつきもしなかったけど異界の魔力を宿した飴を作ってしまおうという話だ。こっちでフィーが舐めれば生きていけるという飴……名づけるならマナドロップかな?

 

 こぽこぽ、くつくつと煮立つ錬金窯をかき回しつつ、何か足りないんじゃないかとあたしは考え、そういえばエアドロップの味はいまいちだったと思い出し、ハニーボールを突っ込んでもう一回しした。そして、ぐるぐるぐるぐるとかき回し続けると、中身が形を持ってきた。完全に形になったそれを一つ残らず掬い上げて袋に詰める。透き通るような、紫色の飴だった。

 

「いただきまーす。んん?ん~~~~……エアドロップよりは、おいしい?この色ではちみつ味なのは変かもしれないけど、問題なのは効能だよね」

 

 アトリエに出入りしていなかったけど、錬金術のことを考えなかった日はない。あたしの錬金術の腕は錆びついていなかったことにとりあえずは安心してフィーに試す前にまずはあたしから、と飴を口に放り込む。これでも4年以上錬金術をやっているので食べたらまずいかどうかは作った瞬間に判別できる。錬金窯でパイだって作れるよ!

 

 味としてはまあ、ふつう。おなかが痛くなったりももちろんない。魔力が宿ってるのは……何となくしかわからないけど、これは詳しい人に聞くしかないかなあ。ああ、ここにアンペルさんやリラさんがいてくれれば一発でわかるのに。今は何してるんだろ、あの二人は神出鬼没だから手紙すらこないし、送っても届くかもわかんない。

 

「とりあえず、たくさん作っておこう!」

 

 成功したのは間違いないので、あたしは同じ材料で調合をまた始める。ジェムを使って複製することもできるけど、折角なら全部手作りしたい。もしかしたらフィーがこれを魔力の源として扱えるなら、あの子が食べるということになるんだから。だったら、あたしが愛情いっぱいに手作りするべきでしょう!錬金術っていうのは、目をつぶってほしいけども。ああ、はちみつ味だけじゃ飽きるよねえ。仕上げの品を変えたら味変できそう!

 

 夜中一杯まであたしはいろんな種類の味のマナドロップを作り続け、鍋の薬液が尽きるころには山になったマナドロップを机の上に放っておいたまま、ちょっと埃臭いベッドで倒れるように眠ってしまうのだった。

 

 

 

「という感じでここまでやってきたんだよカラさんっ!」

 

「そうか、それは遠路はるばるご苦労じゃったのう。にしてもこんな短いうちにまた世界を渡ってくるとはライザはせわしないんじゃなあ」

 

「えへへ、だって早くフィーに会いたくて」

 

 竜の風あとことネメドの遺跡にある異界の門をくぐったあたしを待っていたのは、待ち構えたように門の前で立っていたカラさんだった。竜の角のような頭冠を付けた白髪のあたしより小さい女の子……というには年齢が高すぎるかな?なにせ1000年以上生きているらしいから。彼女はあたしが出てくるのがわかってたらしく、その左右で色が違う瞳を細めて歓迎してくれた。

 

「どれ、マナドロップじゃったかな?ふふん、ほうほう……よくもまあここまでやったのお」

 

「どうかな!?カラさん!」

 

「どうもなにも、詰まっておるわ。オーリムの魔力がふんだんにな。これなら確かに世界をまたいでもフィーは生きていけるじゃろう」

 

「じゃあ、あの遺跡の結晶みたいな感じなんだ……」

 

「妾はそれを知らんが、純度が高いのう。宥めの精ならば……3日に1度食べれば十分じゃろうて」

 

 あたしたちよりよっぽど敏感な感覚をもつオーレン族の、それも1000年生きた族長の言葉は、あたしの錬金術士としての勘を補強するには十分、いやそれ以上だった。ころころとクーケンフルーツ味のマナドロップを舐めるカラさんはうんうんとうなづいている。これなら、これならフィーも大丈夫のはず!と期待がぐんぐん膨らんでいくのを感じた。

 

「お、帰ってきたぞ。お主の子供が」

 

「もー、カラさんはそういうこと言ってー!」

 

 カラさんの天幕から見える空から、聞きなじみのある鳴き声がいくつも重なって聞こえてくる。カラさんの話によると、あたしが離れている間にフィーと同じ宥めの精が10匹ほど合流したらしい。全員、フィーが見つけてきたんだって。フィーも、あたしと一緒に暮らすのが楽しみで頑張っているのだそう。生まれが一番若いから、仲間たちから末っ子としてかわいがられてるのだとか。

 

「ほれ、行ってこい。新しい冒険に、フィーを連れて行ってやるのじゃろ?」

 

「うんっ!カラさん、またあとで!」

 

 あたしは荷物をまとめるのもそこそこにバッグを担いで、梯子を飛び降り、フィーたちがいるウィンドルの聖地へ走り出すのだった。




 初めまして。最近アトリエシリーズに見事にドはまりし、どうにか小説書きてえと悶々としていたころ親和性高そうなこのすばを全巻セットで読破したので頭の中でピースがはまり、書き上げたものを投稿させてもらいます。

 とりあえずは1日1投降を目指して、小説を錬金釜で調合していきたく存じます。ではまた次回にお会いしましょう。
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