ライザ&カズマのアトリエ この素晴らしい世界と秘密の錬金術士 作:アトリエはいいぞ
「いつのまにこんな建物が……」
「隣の魔法道具店は閉まってるのね」
「あー、なんか用事があるって言って留守にしてるんだって。というわけでようこそ!ライザとフィーのアトリエに!」
「すっげえ……こんなことまでできるのか錬金術って」
「私が知ってる錬金術とはだいぶ違うのですが……」
「いい家だな。調度品も品がよくて嫌みがない。落ち着ける空間だ」
翌日のこと、冒険者ギルド前に集合したあたしとカズマ一行は連れたってアトリエに来ていた。というかあたしは帰ってきたって感じなんだけど。如何せん建ててからずっとここでフィーと寝起きしてるわけだし。
「あの、これは何でしょうか?」
「たる型フラムだね。火属性の爆弾だよ。カズマに渡した爆粉うにより強烈」
「持ち運びやすそうだな。腰に一つくらいぶら下げてたらお守りにはなるか?」
「こっちはなによ?」
「リフュールパッドっていうんだけど、擦り傷とかに貼っておくと翌日には治ると思うよ。今なら10枚セットで1万エリス!」
「高いような高くないような微妙なラインだな……」
実は明日アトリエを本格的に開店するのですでに在庫も含めて商品は充実させてあったりする。各種下級爆弾、薬品、保存食、あと旅人の水珠とか。変わりものだとそこら辺の石とか廃材金属より錬成したインゴット、錬金繊維なんかもあります。品質はちょっと高め程度。品質なんて上げようと思えばいくらだってあげられるけど、やりすぎるとね、目をつけられてめんどくさそう。
ちらっと、この町で錬金術で作った薬を置いてある場所に行ったんだけど、特別品質が高いものもなかった。というか、品質にばらつきがなくて安定してる。どの商品も一定の品質だった。私の錬金術は素材によって品質にばらつきが出ちゃうんだけど、こっちはそうじゃないみたい。
だから、怪しまれないように狙った品質で作った道具をジェムで増やすという方法で品質を完全に一定にすることにした。複製釜があってよかったよほんとに。ジェムは既に無限生産ができるようになってるからね。素材は貴重だったんだけど!
「それじゃ、まずそのショートソードを直しちゃおっか」
「お、おお!なあ、要望聞いてくれたりとか……」
「んー、形変えるとかだと完全に錬成しなおしだからちょっと高くなるよ?全身予算で30万エリスでしょ?まあまあ、ちょっと頑丈にしてあげるから」
まだキャベツ狩りの報酬は支払われてないし、カズマにも生活費があるので今回だけ特別価格。オーダーメイドの武器新造は大体30万エリス弱くらいからが相場だし、防具も合わせるならさすがにサービスしすぎだってクラウディアとかボオスに怒られちゃいそうだ。
「はい、そのショートソードも素材に使うから貸してね~」
「おうってなんだその剣!?錆ついてんじゃねーか!?」
「うん、錆びついた剣だね。まあまあ見てなって。あとは、スタルチウム……」
ぽい、ぽい、ぽいと火のついた錬金釜に3つの素材を投げ入れる。カズマはまだ冒険初心者なのでゴリゴリに強化した装備を渡しても持て余すだけ。
フィーが歓声をあげながら錬金釜の上を踊るように飛び回る。フィーにとってはあたしと一緒に過ごす時間が代えがたいみたいでこんな状況でも喜んでもらえてうれしい。
完成品の形はカズマのショートソード、投入した素材から特性を移し替える。錆びついた剣からレアメタル、スタルチウムから攻撃力増加。カズマのショートソードの形をそのままに新たな力を。
「うお……お……」
「これ、は……全然別ものじゃないですか!?」
「ああ、一緒なのは形くらいだ」
まあ、本身がスタルチウム製になったからね。質の悪い鉄で作られたショートソードと比べれば確かに別ものだ。それによくよく切れる。カエル相手じゃ頭を叩き割るのがせいぜいだった前の剣と比べても雲泥の差のはず。
「カズマ、持ってみて」
「え、ああ……」
「刀身が少し短い……よし」
そう言って私はカズマからもう一度ショートソードを受け取り、錬金窯の奥に配置した炉に火を入れた。3つの紫の火種が輝く。1度目の冒険で手に入れた古式秘具の錬金炉。武器防具の強化を行う時に使うやつだ。
十分に熱して、錬金釜を使う時のように完成形をイメージして何度かハンマーを叩きつける。澄んだ甲高い音と虹色の火花が飛び散った。超純水で満たした甕でじゅううっと刀身を一気に冷却。うん、完璧。
「これで完成だね。更新するまでのつなぎだよ?」
「すっげえ……」
「つなぎって……ライザの中での完成品はどのようなものを想定しているのですか……?」
「……みたい?見せてあげようか?」
「み、見たいです……!」
そうかそうか、みたいのか~。しょうがないなあめぐみんは……なんてね。感嘆とした声を出してショートソードを一心不乱に見つめるカズマとごくりと息をのむめぐみん。見せるくらいならいっかな。ガサゴソとあたしはコンテナを探して、見つけた。
「あたしの中で完成してる最高傑作がこれかな」
「な、なんですかこの杖……!?直接持ってないのになんて魔力を……!?」
「でしょ?前の大冒険の時に作ったんだけどね。とにかく強い杖が必要だったから」
あたしが見せたのは、アニエスルーチェ。万象の大典に乗り込む前、これから何が起こるかわからないからと各地を巡ってレシピを集め、これ以上ないくらいに強い武器にするためにありとあらゆる素材をつぎ込んで作った最高の武器のうちの一つ。
みんなに作ったものはみんながそれぞれ持ってるけど、強すぎるのも困りものって言ってみんな普段は別の武器を使ってる。持たなくても伝わる魔力の波動、完成度で言えば極上。これ以上はどう頑張っても上げられないレベルだ。
今あたしが使ってる杖とは雲泥の差があるけど……こっちでこれを使う用事がないことを祈ろう。それこそアカシアの原典とか、ツヴァイレゾナンスとかの最上位の道具とかも含めてね。
「ほしい……ほしいです!それがあれば爆裂魔法の威力がもっと!ライザ!譲ってください!」
「え、あの威力でこれ以上を求めるの?それはちょっとお勧めできないかなあ。そもそもこの杖、魔法用じゃないからね?錬金術で作った道具の威力を高める効果があるから」
めぐみんの目が怪しいどころか狂気を孕み始めて怖くなってきたのでコンテナの中にアニエスルーチェを仕舞う。カズマがめぐみんの頭をはたくと彼女も正気に戻ってくれる。さっきからアクアが黙ったままなんだけど……。
「アクア、どうしたんだ?」
「素直にすごいって思ってただけよ。めぐみんが欲しがってる杖、いわゆる伝説の武具と同等クラスよ?錬金術師ったって限度があるわよ。ま、私には関係ないけど」
「あはは、ありがと。あたしは錬金術初めてまだ5年しかたってないからそう誉められちゃうと照れるなあ」
「それは俗にいう天才というやつではないのか……?」
「やだなあ、あたしはなんてことない錬金術士だよ。ちょっとすごいかもしれないけどね」
「フィ~~」
こしょこしょとフィーの喉元をこしょぐってあげながらアクアのぼやきに返事をする。あたしの世界は錬金術士そのものがあまり数がいないので比較対象なんてない。だからあたしが天才なのかどうかもわかんない。アンペルさんに並んだとはとても言えないしね、まだ。
「さて、それじゃあカズマの防具も作っちゃいますか。その服の上から着るってことでいい?」
「ああ!動きやすいやつがいいな。盾役はダクネスがいるし」
「任せてくれ。すべての攻撃を受け止めよう」
「なまじ防御の数値を見て不可能じゃないのが怖いですね……」
いいでしょう!さてさてカズマの予算は30万エリス、武器の方は素材リサイクルということで20万エリスと換算して残り10万エリスで防具を作るわけなんだけど。普通の服の上から着るとなれば鎧だね。そして動きやすさを勘案すると金属はダメ。それで今のカズマにあってるのは……レザープロテクターだね。
それじゃ、素材。ビーストエア、動物の毛皮、ちょっと豪華にヒンメルシュルワーとロイヤルクロース。特性は防御力、速度の強化、品質の向上かな。ふふ、いい材料はサービスしちゃう。カズマ危なっかしいから死んじゃいそうで怖いし。
「……なあ、さっきから鍋の中で見えたり見えなかったりするわっかみたいなのなんだ?」
「は?何言ってるんですかカズマそんなのどこにも見えませんよ?」
「ついに幻覚見えだしたの?ライザ、精神の薬とかおいてない?……ライザ?どうしたの?」
「…………」
完成品のレザープロテクターを取り出したあたしにカズマが首をかしげながら訪ねる。あたしはびっくりしちゃって口を開けたままとまっちゃった。マテリアル環が見えてるんだ、カズマ……!
アンペルさんが言ってた、錬金術の才能があるなしは、釜の前に立てばわかる。つまり、マテリアル環が見えてて、そこに素材をあてはめることができるかどうか。錬金術士に必要な才能はそれらしいの。
「すごい!すごいよカズマ!マテリアル環が見えてるんだ!?」
「フィーッ!フィーッ!」
「うわっ!?いきなりどうしたんだ!?マテリアル環!?なんじゃそりゃ!?」
「落ち着け、私たちにはさっぱりわからんのだ」
ぽいっとレザープロテクターを放り捨ててあたしはカズマにずずいっと近寄る。あたしの世界で錬金術士が絶滅危惧種なのは神代の民のせいと、才能を持ってる人が少ないから。
あたしにずいっとされたカズマは引き気味に顔を赤くして後ろに下がる。あ、やりすぎちゃったとあたしはおほんと咳ばらいを一つしてマテリアル環について説明する。
「カズマが見えたのは、マテリアル環っていうんだけど……錬金術の素質がある人には見えるものなの。あたしが何度か調合するのを見てたから、何となく材料から何ができるかわかったんじゃない?」
「あ、ああ。ありがちだよな、獣の皮と糸、布ときて防具って言われたらいわゆる皮の鎧だろ?」
「うん、そう。カズマがマテリアル環が見えたのは、何が作られるのかがわかってたからと、錬金術の才能があったからだね」
「才能っ!?あるのか、俺に!?錬金術の才能が!?」
「ある、と思うよ?まあ、やってみなければわかんないけど……やってみる?」
「いいのかっ!?」
「うん、いいよもちろん!それじゃ、まずは中和剤から作ってみようか!」
拾い上げたレザープロテクターを改めて置きなおし、カズマの肩を押して錬金釜の前に立たせる。いきなりは無理だ!というカズマにあたしもぶっつけ本番だったんだから、とあたしはコンテナから緑の中和剤と、きれいな水、トーンを二つとりだした。
「完成品はこれ、緑の中和剤。レシピは、水と植物二つ。錬金釜の前に立ってみて。集中するとマテリアル環が見えるはず」
「…………!みえた!」
「じゃあ、マテリアル環に当てはめるように、材料を投入して、かき混ぜる。しっかり、完成品をイメージしてね」
「えっと、これと、これと、これ……!で、かき混ぜて……!」
カズマはわくわくしたような感じで釜にトーン二つときれいな水を投入して、あたしの杖を使ってかき混ぜる。うん、うん。わかる。初めて錬金術をやったとき、あたしもそうだった。未知のものへの不安と、好奇心、期待。全部が一気に襲ってくる感じ。
「で、できちまった……!な、なあライザさんこれ!」
「カズマ、すごいです!ぶっつけ本番ですよ!?」
「へぇ、カズマにも意外な才能があるのね」
「すごいじゃないかカズマ!錬金術は難しいと聞くぞ!」
「うん!間違いなく緑の中和剤だね!おめでとうカズマ!錬金術の才能があったってことだよ!」
錬金釜の中から出てきたのは、間違いなく緑の中和剤。カズマの震える手に握られた緑の中和剤をカズマは見て、ぼろりと涙をこぼした。ぎょっとしたあたしたちにカズマは泣きながら声を絞り出す。
「お、俺さ……!こっちに来る前、ずっと部屋に引きこもってたんだよ……!何もしないで、ただずっとさ……!何物にもなれずにこのままだと思ってた。なんの才能もないって思ってたんだ、実際器用貧乏な冒険者だし……!だから……俺にも何かできるって今わかって、すっげえ嬉しいんだよ……!」
「何者にもなれず、かあ……それはちょっと違うね。今のカズマは錬金術士だよ。おめでとうカズマ!駆け出しでも、今立派に踏み出せたね!」
「うんっ……!!」
カズマの心底嬉しそうな顔を見てあたしは決意した。あたしは、カズマを弟子にする。3度目の冒険を終えて旅に出た時の目標の一つ。誰かにあたしの何かを伝えること、それが多分……カズマなんだ。
「カズマ、あたしの弟子にならない?」
あたしはカズマに、そう投げかけた
アトリエ解説のコーナー
錬金術士
錬金術を扱う人たちのこと。師ではなく士である。ライザ世界は主にクリント王国のせいで錬金術が絶滅危惧種になっているので忘れられた技法になってしまっている。面倒くさいことに習得には錬金術の才能がないといけないらしい。才能がない人が釜の前に立っても爆発するだけである。
弟子
文字通り。アトリエシリーズでは3作品一シリーズみたいな感じで世界観が地続きになるが、秘密シリーズ以外では作品ごとに主人公が変わり、前作主人公が師匠ポジションもしくは先達として導くような形が定番だった。ライザのように3作品とも主人公が同じというのは初めてのことであった。
カズマさん、錬金術士へ。冒険者のスキルも使いつつ錬金術アイテムも使う最強の器用貧乏の誕生です。悪いこと起こりそう(小並感
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いいたします。