ライザ&カズマのアトリエ この素晴らしい世界と秘密の錬金術士 作:アトリエはいいぞ
「フィーっ!!」
「フィッ!?フィーッ!!!フィーフゥイフィフィッ!」
カラさんの天幕から飛び降りたあたしは、一目散にフィーたちが下りて行った宥めの精の庭に走っていく。ウィンドルは異界の魔物であるフィルフサの襲撃に備えて樹上に建物が作ってあるので梯子を使うのが安全なんだけどちょっと抑えられなかった。あーあ、こんなんじゃボオスにまたいろいろ言われちゃ……ボオスは別に何もしなくてもいろいろ言うからいっか。そういえばキロさんにも挨拶しないとー。
宥めの精の庭では、ウサギのような大きな耳をパタパタと動かしながら10匹以上の宥めの精たちが高かったり低かったりする鳴き声をあげてコミュニケーションを取っていた。でも、その鳴き声もぜんぶ言葉にしたら「フィー」なんだからちょっとおかしくなっちゃった。あたしは走りながらその一団に大声で呼びかける。すると、一番奥にいた子、星形のペンダントを首にかけた宥めの精が驚いたり喜んだりがごちゃ混ぜになったような鳴き声を上げて大混乱でこっちに飛んでくる。
空を飛んでるのに慌てすぎてこけそうになるなんて可愛らしいところを見せた宥めの精……フィーが翼のような両手を必死にはばたかせてこちらに飛んでくる。あたしは走りながら手を広げてフィーを受け止める態勢に入る。元気そうでよかっ!?
「フィムッ?!」
「え、ちょ、フィー!?大丈夫!?」
「フィー~~ム~~~……」
あたしの腕の中に飛び込む、直前でフィーはなぜか空中でバランスを崩しきりもみ回転しながらあたしの胸の中に突っ込んだ。慌てたあたしはフィーのわきの下に手を入れて持ち上げる。フィーはよっぽど今のきりもみ回転が堪えたのか目をぐるぐると回していた。かき混ぜているときの錬金窯の中身みたいな感じだったフィーの目は、数秒すると元の星のような煌めきを宿したものに戻った。
「フィーっ!!」
「うん、久しぶりだねフィー。といっても、あたしたちが再開した時よりは短いか。いっぱい仲間も見つかってよかったね」
「フィっ」
ぐりぐり、とフィーはあたしの頬に自分のほっぺたを擦り付ける。柔らかい体毛と意外なほど強い力に安心感を覚えた。やっぱり、寂しかったんだなあ……もうここにはオーレン族のみんなやカラさんにキロさんがいるから寂しくはないと思ってたけど、フィーにとってあたしたちはやっぱり特別なんだね。それがちょっとくすぐったくて、それでいてうれしい。
「フィー、約束覚えてる?」
「フィッ!」
もちろん!と小さな胸を張ったフィーにあたしもにっこりと笑う。他の宥めの精たちはフィーに向かってパタパタと手を振ると今度はウィンドルの天幕に向かって飛び立っていった。どうやらオーレン族といい関係を築けているみたいだね。フィーはひときわ強くあたしに抱き着いてからふわっと浮いて目の前でふよふよとしている。再開のハグを終えたあたしはカゴを漁ってお目当てのものを取り出す。
「フィー?」
「ふふ、フィーが向こうの世界でも生きていけるように、作ってみたの。カラさんからも大丈夫だって。えっとね、これを食べてゆっくり舐めてってあっ!?」
「ふぅい~~」
マナドロップを見せるとこれなあに?という風に首をかしげるフィー。食べ物で、これを舐めたら魔力を補給できるって説明をしようとしたらフィーは止める間もなくあたしの手のひらに出したマナドロップをぱくっと食べてしまった。いくらなんでも警戒心が……とおもったけどそういえばフィーは魔力を吸収して生きているから魔力を感じ取ることができるんだったと思い出した。
カラさんが魔力が詰まっていると断言したマナドロップはフィーから見ても魔力がたくさん詰まっているように見えたんだね、ちょうど王都にあった遺跡の結晶のように。ちょっとマナドロップが大きすぎたのか頬袋ができてしまっているフィーがもごもごと口を動かしている。両手を口に当てて満面の笑みを浮かべているところから見るに、お口に合ったのかな?それとも魔力がおいしいだけかなあ?
「もう、もっと警戒心を持ってよフィー。説明の前に食べちゃうなんて」
「それはお主が作ったものじゃからのう。心から良き錬金術士殿を信頼しとる証じゃ。妾たちみたいにの?」
「カラさん?お仕事はいいの?」
「抜け出してきたわ。お主らの様子が気になっていたしの。その様子を見るに、大丈夫そうで安心したぞ」
マナドロップに夢中なフィーに毒気を抜かれてしまったけどさすがに警戒心もなくぱくっと食べちゃうのには注意しなきゃとおもったら後ろからやってきたカラさんにあたしが作ったものだから警戒せずにそのまま食べたといわれて、なんか胸があったかくなった。錬金術士として作ったものに自信はあったけど、レシピに頼らずあたしがオリジナルで作ったものを食べさせるのはさすがにちょっと怖かったから。
しばらくカラコロとはちみつ味のマナドロップを口の中に転がしていたフィーは、ガリッ!と小さくなったマナドロップをかみ砕いて、食べ終えたようだ。満足げな顔をしたフィーがあたしを見てくるっと空中で回る。機嫌のいい時の癖だ、一安心したあたしはフィーを抱っこして話しかける。
「フィー、まだ一緒に暮らすにはちょっと早いけど、マナドロップでフィーがちゃんと生活できるか試したいの。だから、1週間!1週間だけあたしと一緒に向こうで生活しない?」
「フィ?フィーッ!フィーッ!!」
「んー、もっと一緒にって?あたしもそうしたいけど、フィーがまた具合悪くしたら、いやだもん。だから、今回はお試し。1週間で、マナドロップの悪いところを見つけて、フィーがちゃんと生きていけるようにするの」
「フィー……」
「でもねフィー、あたし約束は破らないから」
一週間、という期間を設定するとフィーはもっと一緒にいたい、とあたしに抗議する。でも、フィーは王都にいるときもそうだったけど魔力を補給できないと少しずつ体調を崩していってしまう。仮に、マナドロップが完璧にフィーの魔力を補ってくれるものだったとしてもあんなふうに弱っていくフィーをもう一度見るのはいやだ。怖がりすぎだろ、とレントに言われそうだしあたしらしくもないかもしれない、だけどこれは譲れなかった。
でも、これはもう一度フィーと一緒に暮らすための第一歩、あたしは必ずフィーとの約束は守る。だからこの一週間でなんとしてでもマナドロップの完成度を深めて試作品ではなく完成品を持っていこう。そうして、こうやってあたし一人で抜け駆けするように会いに来るんじゃなくて、みんなで……大冒険をしたみんなを引き連れて堂々とフィーを迎えに行くんだ!
「それじゃ!キロさんが戻ってきたらよろしくね!」
「ああ。まったくせわしないのお。もう少しゆっくりしていけばよいのに」
「えへへ、だって少しでも早くフィーのためにマナドロップを完成させなきゃ!」
ウィンドルの門の前で、フィーを抱っこし大荷物を背負ったあたしがカラさんに頭を下げる。ウィンドルのアトリエの中にある素材をコンテナごと、ついでに複製窯といった古式秘具にトラベルボトルなんかの過去に使ったものを全部持っていくことにしたのだ。複製窯なんかはあたし一つしか持ってないから、ネメドのアトリエの中に設置しないといけないし。冒険のたびに持ち歩いてたんだよねー。
でも、最後の大冒険で得た知識で作った背負いバッグの中に全部突っ込んだから平気!あたしが持ってるカゴと同じで中の空間以上にものを突っ込める大容量バッグなの。いやー、竜脈を通して空間をつなげることができるなら、コンテナの中も繋げられるんじゃない?っていう発想から飛躍して秘密の隠れ家のアトリエで作ったらできちゃった。さすがに別世界のオーレムには繋げなかったからフィーと一緒の1週間で研究しちゃおうかなって。だから、オーレムの錬金窯も含めて全部一旦ネメドのアトリエに持ち帰ることにしたんだ。
帰り際、キロさんに挨拶しようと思ったんだけどキロさんは一回聖地の方に行ってしまったんだって。ウィンドルのオーレン族も何人かついていったから大丈夫だろうけど、ボオスが来たらがっかりするだろうなあ~~。ああでも、王都にいるんだから簡単にこっちには来れないか、残念。
「それじゃ、カラさん!一週間後にまた来るね!」
「フィーッ!」
「うむ。良き報告を期待しておるぞ。それではな」
「って感じで、ウィンドルの風あとを通ってきたはずなんだけどな~?どうしてネメドの遺跡じゃないんだろ?」
「フィー」
今まであったことをようやく整理し終えたあたしはフラムによって丸焼きになった大ガエルから使えそうなものが取れないかな~と大きなナイフ片手に解体作業をしながら頭の上にフィーを乗せて首をかしげていた。とりあえず採取できたのはお肉とぶよぶよした皮……骨の方はもろくて錬金術には使えないかなぁ~。きれいな水で解体用のもろもろを洗い流したあたしとフィーは旅人の水珠で水分補給をした。さすがあたしが調合しただけあって美味しい!
「さて、とりあえず町を探さないと。それと、フィーのこともちゃんと考えて、帰る手段を探さないとなあ」
「フィーィ?」
「だーいじょうぶだよ。伊達に3回も大冒険してないんだから!こういう時は、落ち着いて行動するのが大事。それに、物資は余裕があるから」
「フィ!」
どうしよう、と不安そうな顔になるフィーにあたしは強気な笑みを浮かべて胸をドンと叩く。フィーが不安にならないようあたしが元気いっぱいでいればいい。マナドロップの不安は残るけど、幸いオーレンの素材はアトリエから大量に持ってきているし、運がいいことにトラベルボトルもある。素材に困ることは、たぶんないはず。そして複製窯も持てているのは大きい。錬金術士としてのあたしは何も欠けてはいないのだ。
「アクアーーーーッ!?」
「え!?誰かいるの!?」
「フィッ!?」
急に響いた男の人の声にあたしとフィーは同じように肩をびくっと跳ねさせて驚く。フィーが被っていたあたしの帽子が地面に落ちる前に空中でキャッチして、立てかけていた杖を手に取りバッグを背負ったままあたしは駆け出す。フィーも急いで飛んでついてくる。あの叫び方からしてかなり切羽詰まっているに違いない。
「うわっ!?この、こいつっ!?」
「だいじょうぶ!?」
「フィーッ!?」
「だ、だれか知らんが手伝ってくれ!」
藪をかき分けてあたしが顔を出すとなんか、見たこともない緑色の服を着た男の子がショートソードを片手にカエル相手に奮闘しているところだった。そして、カエルの口の端からは足がのぞいていた。げぇっ!?飲み込まれたんだ!?あたしはすぐさま背負っていたバッグを地面に落として杖の先端に組みこんであるコアクリスタルに収納したアイテムを使う。この際しのごいってられないよね!
「メルトレヘルンッ!」
氷属性の爆弾の中でも上位の威力が起爆する。一瞬の静寂の後、周囲ごと凍り付いたカエルの氷像がそこに鎮座していた。ふぅ、と一息ついたあたしは気持ち悪いけど杖をてこのように使ってカエルの口をこじ開け、カエルにのまれたおかげでメルトレヘルンの威力から身を守れた飲まれちゃった人……青い髪でどこか神秘的な女の子を引っ張り出した。ちょっと凍り付いたぬめぬめの粘液がすべてを台無しにしてるけど。
「す、すっげえ……ファンタジーだ……」
「ううっ、ぐすっ、たすかった……うええええええんっ!!」
「だ、大丈夫?えっと、そっちの男の子も……?」
「あっやべっ!ごめんなさい、助かりました!えっと、俺は佐藤カズマっていいます。こっちの飲み込まれて泣いてるのがアクアです」
「寒かったけど、助かったわ……ありがとう~~~~!!」
「あ、あはは……無事でよかった。あたしはライザリン・シュタウト、ライザってよんでね。こっちはフィー」
「フィーッ!」
「うわっ!?なんだ、こいつ!?」
ふむふむ、サトウ・カズマ……ファーストネームはどっちなんだろ?フィーのことにようやく気付いた彼は私の周りを飛び回るフィーに対してまるでボオスが初めてフィーに会ったときみたいな反応をしている。しかし、こんなところで人に会えるとは助かったなあ。ファンタジーっていうのが何なのかはよくわからないけど……クリフォードさんのいうロマンと似たような感じかな?
どろどろになっちゃった愛用の杖をきれいな水で洗い流したあたしはようやく泣き止んだアクアとカズマに一番聞きたかったことを訪ねることにする。
「あたしたち、道に迷っちゃったの。ここがどこで、近くに町があるなら教えてくれると嬉しいんだけど……」
あたしの言葉にカズマとアクアは何かを示し合わせたかのように顔を見合わせたけど、アクアが首を振ってカズマは納得したみたい。情報がわかるといいなー。
このすば世界にライザがイン!便利ですね「門」の設定は。次回以降あとがきでアトリエシリーズのことについて解説しつつ作品の設定の解説も入れたいですね。
ではまた次回に。