ライザ&カズマのアトリエ この素晴らしい世界と秘密の錬金術士 作:アトリエはいいぞ
「たーるっ!」
「フィーィッ!」
「たしかにたるね」
「たるがどうかしたのか?」
そういえば最近見てなかったなあ、と思うところにちょうど良くあったたるをみたあたしとフィーは同じ言葉をそのたるにむかってかけた。それに反応したアクアとカズマではあったけど、たるはたるなだけであって特にどうというわけじゃないんだよね、ごめんなさい。宿屋の部屋が埋まっていたのでカズマとアクアの隣の馬小屋を借りてあたしとフィーは幻獣の皮を布団代わりにしてひと眠りした。きれいな水やらなんやらでしっかりばっちりと身支度をしたあたしたちは二人と合流、ギルドへの道すがら今こうなっている。
「それでなんだけどライザさん、早く錬金術みせてくれよ!」
「ねえしってるライザ、カズマったら昨日楽しみすぎて寝付けなかったのよ。まったくお子様ね~」
「なっ!?アクアてめこのっ!」
「へぇ~、そんなに楽しみにしてくれてただなんて錬金術士冥利に尽きるなぁ~」
「フィ~」
にまにま、とあたし、フィー、そしてアクアの生暖かい視線を受けたカズマは恥ずかしかったのか顔が真っ赤。いやー、かわいいねえ。だって、あたしの仲間ときたらこーんなに純粋に不思議な技術として錬金術を見てくれたことなんてなかったからさー。最年少のディアンだってここまでいい反応をしてくれなかったし。すごいとは言ってくれたけど、アトリエをぱっと作ったときの反応だからなー。
「とりあえず、ギルドに行こうか。使ってない土地があるなら借りるか譲り受けたいし」
「土地ねー。まあいいんじゃないかしら。借りたほうがお得よ?どうせあんた帰るんだし。土地はどこも高いわよ」
「げっ。やっぱクーケン島とかフォウレとかとは違うかあ」
そっかー、あたしがアトリエをたてた場所ってどこも使ってない土地とか、その町の偉い人に使っていいよって提供してもらったところだから実質家賃なんてかかってないんだけど……王都のアトリエみたいな感覚でいたほうがいいか。うーん、こうなったらセイントダイヤとかもうちょっと高く売れそうなものを売ってお金を作ったほうがよさそう。
「二人はギルドでどうするの?」
「私たちはパーティーのメンバーを募集するわ!」
「俺たちみたいな駆け出しと一緒に組んでくれる奴がいるかどうかわからないけどなあ」
「だーいじょうぶよ!この私がいるのよ!?回復、補助、蘇生に状態異常治癒までなんでもござれのアークプリーストアクア様がね!どのパーティでも欲しいに決まってるじゃない!」
「確かにそれは魅力的だね。戦いにおいて回復に補助はとっても重要だから」
「フィー」
肩に乗ったフィーの喉元を指先で撫でながらあたしはアクアの言葉に頷いた。グラスビーンズにネクタル、エリキシル剤に女神の飲みさし……今のコアクリスタルの中にも一つ入っているけど回復と補助はとても大事だ。竜と戦ったときとか、フィルフサの親玉とか、万象の大典のコアとか、ないと全滅していたってことはかなり心当たりがあるから、それが全部ひとりでできるというなら確かに魅力的だ。
「なあ、俺もフィー撫でてもいいか?」
「フィーッ!」
「いいって。カズマ、かわいいもの好きなの?」
「好きっつーか、なんかこういう小動物みたいなのは癒されるんだよ。そこの水色よりもかなり。そういえばライザさんっていくつなんだ?ため口聞いちまってるけど、俺と同い年くらいか?」
「え?あたし?21歳だよ?立派な大人!」
「え!?年上!?み、見えねーー……」
失礼しちゃうなあカズマは。両手でフィーの顔をやさしく揉んでいるカズマの質問に素直に答える。えー、若く見えるって喜んでいいのか、貫禄がないって落ち込めばいいのかわかんないけど女性にストレートに年齢を聞いておいてそれ~?カラさんじゃないけどあたしも傷ついちゃうよ?フィーがかなり気持ち良さそうなのでそれに免じて許してあげよう。よかったねカズマ?
そんなこんなでギルドについたあたしはパーティメンバーを募集する掲示板に紙を張りに行った二人を見送ってギルドの相談窓口に歩を進める。相談窓口の職員さんが暇そうに肘をついているのを見てここにしよう、と椅子に座らせてもらうと職員さんはあたしを見てぎょっとした後しゅばっっと音をたてる感じで後ろに引っ込んでしまった。あたしが呆気に取られているとやってきたのはウェイクエメラルドを売った時に担当してくれた人だった。
「あの……あたし、何かしましたか?」
「いえいえ、シュタウト様が悪いわけではありません。先日買取したエメラルドが魔道具だったので詳しい私が担当するというだけの話でして。いうなればシュタウト様専属です。それで、本日はいかがなさいましたか?」
「そうなんですか……あの、今日はですね」
あれ?あのウェイクエメラルド魔法の道具っていう属性はなかったはずなんだけど……?まあいいや。この職員さんなら安心だし、話を聞いてもらおうとあたしは故郷に帰るまでここでアトリエを開きたいので手頃な土地や使ってない土地があるなら斡旋してもらえないかという話を担当さんにすると担当さんはふむ、と考えてあたしに質問をした。
「魔道具店を開く、ということでしょうか?それとも単に居住したいということでしょうか?」
「えーっと、お店を開くつもりはなくて、研究ができる場所を作りたいという感じなんですけど」
「うーん、実はアクセルの町の土地はすべて領主様のものでして、無料であるいは自由にしてよい土地というものがないのです。従って土地を借りて建物を建てるという話になりますが……大体このくらいになります」
「うえっ!?さすがにこれは難しいかな……」
「そうですよね……」
示された金額は目玉が飛び出そうなほどお高かった。具体的には王都のあの部屋の数倍くらいかな?エリス=コール換算でだけど。さすがにこれは手が出ない、とあたしが次はどうしようかと考えていると担当さんは魔道具店を開くというなら話が変わります、と説明をしてくれた。
「魔道具店を開くとなると、アクセルの利益になる話になりますので、補助金がでます。土地も格安で貸し出しあるいは買い取ることも可能になります。いかがでしょうか?」
「なーんか、美味しすぎるような……」
「フィム~……」
「はい、美味しすぎるようにしているのです。といいますのもアクセルは初心者の町、性能のいい魔道具に武器、防具があればあるほど初心者の方が生き残れる確率が上がり、町にさらに人が来ます。初心者が増えるほど、職人も必要。なので確保したいというわけですね」
意外と明け透けだなぁ。クラウディア曰くこういうのには裏があるって聞いてるんだけど……うーん、でも要はクーケン島や王都でやってたようなことをやればいいんでしょ?どうやらこの人、というかギルドはあたしの錬金術士っていう生業を正しく理解してくれているみたいだし、悪くはないのかなあ。そうなれば、よし!
「大体いくらくらいで買い取れます?」
「店を開くということでしたら即決でご案内できる場所が一つございます。簡単なテストに合格すれば土地は無料、建物に関してはシュタウト様持ちとなりますが」
「ほほう、テストですか。どんなものでしょう?」
「二つ、店を開いたときに並べる商品を製作して持ってきてください。商品になると判断すれば土地と、工事業者の斡旋を請け負います」
「なるほど、やりますっ!」
なんて、あたし向きのテスト!錬金術士であるあたしに対して、商品になる道具を持って来いですって!?4年前ならいざ知らず、今のあたしにとっては簡単も簡単だよ!というか、クーケン島ではそういうことしてたし、王都でもあたしの作る錬金術の品はそれなりの値段で売れてた。ただ、賢者の石がやばいっていうから最上位の道具はだめだし品質もおさえなきゃいけないだろうけど。
あたしは担当さんにお礼を言って膝の上で寝てしまったフィーを抱っこしてその場を後にする。そろそろ調合したいなあと思っていたころだし、カズマとアクアに錬金術を見せるついでにテストの何らかを作ってしまおう。パーティ募集掲示板の前でむふんと胸を張るアクアと懐疑的な顔をしているカズマと合流し、あたしたちはギルドを出るのだった。
「なあ、ライザさん。さっきから何拾ってるんだ?」
「素材だよ~。さーて、何作ろうかな~。ゼッテルは確定だね。それと~……あっ!うにがある!」
「は?栗だろこれ」
「栗ね」
「え、うにだよ?」
そういってあたしは首をかしげる。どう見ても木になったこのとげとげはうに以外の何物でもないんだけど……杖でがんがん木をたたいてうにを採取する。うん、どっからどう見てもうにだ。釈然としない顔のカズマと馬鹿にしたような顔のアクアに挟まれながらウニを拾ってカゴの中に入れる。拾えた素材は、よくわからない赤い花、トーンっぽい植物、紙屑に、きれいな水、うん、これなら多分作れそう。
あたしの世界にはない植物だけど、アンペルさん曰く錬金術は代用が聞くものなので完成品のイメージさえしっかりしていればうまくいくみたい。アンペルさんその理論で赤の輝石作っちゃってるし。借りている馬小屋の部屋の前まで帰ってきたあたしは、背負っている改良型探検セットの中に突っ込んでいた錬金窯をドシーン!とだした。カズマが飛び上がって驚いている声を聴いてフィーが跳び起きちゃった。
「どわあっ!?どこに入ってたんだそれ!?」
「ふふふ、すごいでしょ~。空間をあれこれしてるんだ~」
「あ、アイテムボックスって実在したんだな……」
カズマが言ってることの半分はわからないけど、良く寝たフィーが久しぶりに見る錬金窯に嬉しそうに飛び回っていた。お手伝いさせて、とあたしに羽のような両手を出すフィーがかわいくってあたしはしょうがないなあ、と赤い花を持たせてあげる。とりあえずは中和剤……赤と緑が作れそうだからそこから始めよう。保存しておいた薬液で錬金窯を見たし、火をつける。
「じゃ、調合しちゃうよ~。フィー、お手伝いお願いね」
「フィッ!」
赤い花、きれいな水がフィーによって錬金窯に放り込まれる。頑張れば人間一人持ち上げて飛べるフィーだけど、手がないから危なっかしい。カズマがなんだか胡散臭いものを見る目になっている気がするけど、あたしは気にせずに杖を錬金窯に突っ込んでぐるぐるとかき混ぜて完成品をイメージする。とりあえず火薬の属性はつけておかないと。そうしてぴかっと一瞬窯の中が光って4本の試験管が飛び出してくる。赤い液体が納められたそれを見て、成功したと笑みを深めた。
「おおっ!!!って、なんだそれ?」
「これは、中和剤っていうの。錬金術において最も重要な触媒で、基礎の基礎かな?」
「へー、でもすげえな。突っ込んだものとは別のものに変わっちまった……」
「想像通りだった?」
「イメージとはなんか違うけど……どっちかっつーと魔女って感じだな」
「ええ~~~?」
魔女、魔女かあ……嬉しくないかなあ、なんか……一度カズマの中の錬金術ってどんなものなのか確認したいよ。同様の手順で緑の中和剤を作って、確保。それじゃあカズマの度肝を抜いてあげようじゃありませんか!中和剤がそろったので、あたしはうに、火薬の属性を付けた中和剤、燃料として紙屑を突っ込み、もう一度ぐるぐるとかき混ぜる。そうしてできたのが簡単な割に意外と威力が高い爆粉うにだ!
「はい、カズマ。あげる」
「え、なにこれ」
「爆弾」
「そんなもん渡すな!」
「少なくともそのショートソードよりは威力出るよ?」
「まじ?」
「大マジ」
爆粉うには、錬金術で作る爆弾のなかで一番簡単だけど、こだわればこだわるほど威力は上がっていく。品質は中位だけど一応マテリアル環は半分解放したから、カエル相手でも一発で針だらけにできるくらいの威力はあるよ。錬金術に興味がないアクアはすでに馬小屋の中ですやすやしてるんだけど、カズマは今のでむしろ興味が燃え上がったみたい。
「さて、テスト用の商品を作っちゃいますか~」
「また爆弾か?」
「んーん、薬作っちゃおうかなって」
もう一つはゼッテルにしようかと思ってたんだけど、いまちらっと地面をみたらよさそーな植物が転がっていた。それをふんぬっと引っこ抜くと……やっぱり、苦い根っこだ。それを3本ほど確保した苦い根っこ、トーンっぽい植物、赤い花、緑の中和剤を突っ込んでかき混ぜる。久しぶりに一緒にする調合に楽しくなったフィーが窯の上で踊っているのを楽しみながら、あたしが作り出したのはあらゆる外傷にそれなりの効果がある軟膏、施しの軟膏だ。
かぱっと中身を空けてみて、よしよし。ちゃんと想像通りの品質と効果を持ててるね、と一つ頷いてあたしは杖を錬金窯から引き抜いた。とりあえず、これでこの世界のものでもきちんと錬金術が作用するっていうのはわかったかな。大成功だ!
アトリエ開設のコーナー
たる
樽である。それ以上でもそれ以下でもない。アトリエシリーズのキャラはたるをみると「たーるっ!」などと発声せずにはいられないらしくゲーム内でも専用のボイスが用意されている。
アトリエシリーズのお約束
うに
うに。アトリエ世界ではなぜか木の実である。ちなみに水の中からとれるいがいがは「くり」と呼ばれている。元はプロデューサーがうにが好きだったとかでゲーム内に仕込んだらそのままそれが続いているだけとのこと。なお、爆弾の材料にも食料にもなるし、ゲーム内では「うに」カテゴリーがあるくらいには特別視されている。アトリエシリーズのお約束
ではまた次回に。感想評価くださるとうれしいです。