ライザ&カズマのアトリエ この素晴らしい世界と秘密の錬金術士   作:アトリエはいいぞ

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第9話 キャベツ

「で、結局変わらなかったんだ……」

 

「フィ~……」

 

「そうなんだよ~~~!いや、変わってねえわけじゃないんだけどさ、なんか悉くすべてが裏目に出てる感じで……」

 

「カズマ、呪われたりした覚えある?」

 

「アクアのやつが超強力な解呪をしてくれたらしいけど変わらねえんだ……」 

 

 ひ、悲惨……。あたしがカズマに戦い方を教えても、結局のところめぐみんは杖で殴るかアクアは神様なのでこれ以上成長の余地がなく、攻撃方法の習得ができなかったみたい。

 

 ただ、意識自体の改革はできたみたいである程度どうすればいいかを考えるようになったのだとか。それでもカズマ的にはきついものがあるようであたし相手に愚痴ってるわけなんだけどねえ。

 

 ああ、リラさん……はこの3人を見せたら無言で見捨てるだろうけどせめてレントがいてくれたら……戦士の心得を教えてくれると思うのに。あたしは戦士じゃなくて錬金術士なんだから戦う手段はなくはないけど本業じゃないの。殴るより爆弾でボン!が一番いいからね!

 

 ステータス上はカズマは運がいいはずなのにな~とフィーと一緒に首をかしげる。正直ステータスは信用してないんだけど。いやだって、普通に持ってる能力が数字として表れるってなにさ。怖くない?運なんて特に怖いよ。

 

「それで、新しく加わる予定の人は?」

 

「ああ、それがその……ドMなんだ」

 

「カズマは冒険者諦めたほうがいいんじゃないの?」

 

「なんてこと言うんだ!?」

 

「変な人ばっかり寄ってくるもん。おかしいって、そういう星の元に生まれてきちゃったのかもしれないし」

 

 アクアたちがいないのをいいことに言いたい放題言ってるんだけど、いやさすがに考え直した方がいいというか。せめて経験豊富な人に師事を仰ぐべきというか。こう、こう……もっとまともな冒険をした方がね?いや私も人のことは言えないんだけど、一緒に旅した仲間たちはかなり頼りになる人ばっかりだったからさ……恵まれてたんだなあ、私。

 

「あら?ライザじゃない。どうしたの?カズマと一緒にいるとぬるぬるにされるわよ?」

 

「しねーよ!つーかそれ全部自業自得だろうが!」

 

「おはようございます、ライザ。ダクネスはまだでしょうか」

 

「おはよ、めぐみん。もしかして結構仲良くなってるのかな?」

 

「はい!クルセイダーといえば職業の中でも群を抜いて防御力が高いのです!ですので、爆裂魔法を安全にドカンと!ドカンといけるのです!」

 

 ふんすー!と鼻息荒く語るめぐみんだけど、評価基準はそこなんだ。なるほど爆裂魔法が大好きなんだねえ。私も錬金術が大好きだから気持ちはわかるような、そうでないような。そうこうしてると昨日軽く話したダクネスさんさんがめぐみんの後ろから姿を現す。

 

 待たせた、というダクネスさんさんに改めてカズマがこのパーティーは本気で魔王を討伐することを目的にしていると改めて説明している。なんか説明が生々しいんだけど、いやな目に遭うぞというのをことさらに強調してない?

 

 そしてそれを聞いていくごとに鼻息が荒くなってほっぺが赤く紅潮していくダクネスさんさん。ボルテージはウナギのぼり。うーん、これはカズマが遠回しに拒否しているんだけどダクネスさんさんにとっては逆効果、なのかな。これはひどい。

 

「……ライザさん」

 

「なぁに?」

 

「パーティーに入って俺たちと魔王討伐しようぜ」

 

「ごめんだけどさっきの話を聞いてカズマたちと冒険しようって気にはならないなあ」

 

「くそ!同情を誘うつもりが逆効果だったか!」

 

 意外と強かだねカズマ。クラウディアの注意がなかったら引っかかってたかも。同情というか、なんというか……協力してあげたいとは思うんだけどねえ。フィーをこしょこしょとしながらも私はカズマにどうしてあげるべきか頭を回す。

 

 冒険は大好きだ。未知も知らないことも、旅も不思議なことも。ただ、今までの冒険は目的がしっかりしていたからこそ冒険ができたのだと思い返してるの。今の私の目的は、魔王討伐じゃなくて元の世界、最低でもオーリムに戻ることだ。それさえすれば何とでもなるからね。

 

 カズマはカズマの目的がある。私と同じ元の世界に戻ることみたいだけど、私は事故だから元の世界に戻してもらえるみたいだけどカズマは条件付き。私を頼ってくれるのは嬉しいけどね、協力できることはしてあげられるだけしてあげちゃおう。

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!町の中にいる冒険者閣員は至急ギルドに集まってください!繰り返します……』

 

「なんだあ!?」

 

「緊急クエスト……?へー、そんなのがあるんだ」

 

「ん、ああ。おそらくキャベツの収穫だろう。今が旬だからな」

 

「キャベツかぁ……キャベツ?」

 

「フィー?」

 

「キャベツってあれか?野菜のことか?こっちじゃ冒険者に農家の手伝いをさせてんのか?」

 

 キャベツの言葉を聞いて私とカズマ、フィーはそろって首をかしげる。だってキャベツってあれじゃん。お野菜じゃんとあたしはクーケン島にいる両親を思い出した。麦とクーケンフルーツだけどキャベツも似たようなものでしょ。

 

 胡乱な顔で私たちを見るめぐみんとダクネスさん……ってあれ?何その常識知らずみたいな顔はそんなことを考えているとあたしたちのそばをどたどたとギルド職員さんが通って声を張り上げた。

 

「皆さん!すでにお気づきでしょうがキャベツの収穫クエストです!今年のキャベツは出来がいいためひと玉1万エリスでの買取となります!」

 

「なんだって!?」

 

「キャベツが1万エリス!?」

 

 うそだ!あたしの世界だったらいいとこ100コールいかないよ!?どういうことなの!?と混乱が隠せないあたしをよそにギルド内は大盛り上がり。われ先にとギルドのドアに殺到して外に出て行った。

 

 よくわからないけど気になるのでフィーを肩に乗せたあたしとカズマのパーティも外に出る。すると外の光景は、想像のはるか上を行った。あえて言うけど、フィルフサを初めて見た時の驚愕に匹敵する。そのくらいの驚き。

 

 なにせキャベツが空を飛んでいる。翼のように葉っぱをひらめかせて。あたしの中で、わくわくが膨らんでいくのを感じた。未知だ、未知だ!あたしの知らないことだ!アクアの説明も頭に入らない。ぎゅっと杖を握り締める。

 

 不思議だなこの世界!雄たけびを上げてキャベツに襲い掛かる冒険者たちに交じってあたしは杖を握って突っ込んだ。フィーが羽ばたいて後を追ってくるのがみえる。

 

「えいやっ!よいしょ!」

 

「どわぁっ!?このっ!?」

 

 できるだけ傷をつけないように、というのがオーダーだったはずなのであたしは魔法を使わずに杖でぽこぽこと向かってくるキャベツを叩き落としている。回収は後回し、というか討伐数はギルドカードで確認するので倒すだけ倒して後で全員で回収するのだそう。

 

 カズマもカズマでショートソードの腹で何とかキャベツを叩き落とし、アクアはどこからか取り出した虫網を振り回して、めぐみんにいたっては呪文を唱えると前方が超大爆発、爆裂魔法により数多のキャベツが木っ端みじんとなった。満足そうに倒れるめぐみんだけどキャベツは消し飛んだので他冒険者からはブーイングの嵐。

 

「よし、いいぞ!はぅっ!もっとだ!うっ!」

 

「痛くないのかな、あれ……」

 

 そしてダクネスさんは、とみると全身でキャベツの体当たりを受け止めていた。着ている鎧はあたしの目線で見るとそれなりにいいものっぽいけど無防備で受けるからべこべこになっちゃってる。レントだったら鎧の丸みで受けて受け流すくらいはするけど、仁王立ちでそんなこともしてない。

 

「フィーっ!?」

 

「えっ!?あっ!?ちょ!このっ!」

 

 あたしがほかに目を奪われた隙をついてフィーめがけてキャベツが突っ込んできた。驚くフィーに対し間一髪でフルスイングした私の杖がジャストミート。キャベツは粉々になっちゃった、だけどフィーを『弱いもの』とみなしたのかキャベツが殺到してくる。

 

「いい加減にしなさーーいっ!」

 

「なんだぁっ!?」

 

「風の魔法か!?」

 

 さすがに杖じゃ捌けない、と私はコアクリスタルとは別で持ち歩いている爆弾かごの中から風属性の爆弾、ルフトを取り出して掲げる。当然ながら向こうで調合したものなので威力抜群、オーバーパワーの爆弾だ。

 

 大きな竜巻が発生してあたしの目の前、さらには向かってくるキャベツを巻き込んで竜巻の中に飲み込んで上空へ吹っ飛ばす。どちゃどちゃどちゃと落ちてくるキャベツが山になっていくのを見て、ピッキーン!とあたしの頭に閃きの稲妻が走った。

 

「こっれだー!おりゃー!」

 

「のわー!」

 

「よいしょー!」

 

「フィーッ!!」

 

「もういっちょー!」

 

「あああああっ!」

 

「ダクネスさん!?どうしてライザの魔法に突っ込んだのですか!?」

 

 安全、かつ沢山キャベツを刈り取れる方法に気づいてしまったあたしはコアクリスタルのオメガクラフトとルフトを交換して四方八方に振るい、キャベツの山を築き上げていく。楽しくなって歓声を上げ始めたあたしに対して逆に悲鳴を上げる人多数。当たらないようにしてるのに。

 

「どんなもんよ!」

 

「フィムッ!」

 

「キャベツが全滅しちまった……いや!第二派がくるぞ!」

 

「また!?もう全部吹き飛ばしちゃダメ!?」

 

「報酬にならねえからダメだ!」

 

 あたしの頭より高い小山がいくつもできた真ん中でたたずんでいるとまだまだくるようで全部吹っ飛ばしちゃダメかと聞いたらダメと帰ってくる。あたしはこれだけ暴れればもう満足かなあ。フィーもいるし。ストレス解消にはなったかも。

 

「ふんふふーんふーん」

 

「ライザさん何してんだ?」

 

「錬金術に使えそうだからいくつか失敬しようと思ってね」

 

「キャベツも錬金術に使えるのか!?」

 

 レタスが錬金術に使えるんだからキャベツだって使えるよ。属性で見るなら食品、植物、あと気体ってところかな。気体の属性があるのは嬉しいねえ。見た限り風っぽい属性だし。こっちで新レシピ考察もできちゃいそう!

 

 採取、採取とあたしがカゴをキャベツで埋めていく後ろで、冒険者vsキャベツという緑にまみれた戦いは続いていく。カズマは息を切らしてキャベツを殴っていくが、ショートソードが若干曲がってきてる。品質悪そうだもんねえ。

 

 しかし、この世界すごいな。キャベツというか農作物は地面に根っこはやしてそこから動かないのが基本だ。魔物という例外はあるけどそれは別にして、ただの植物がここまで食べられることに反抗して反乱を起こすのだから、面白い。

 

 

 

「くそ、なんでこんなに美味いんだよ……キャベツの炒め物が……」

 

「シャキシャキで甘くて、塩コショウと油だけなのに美味しい!」

 

「フィムフィム!」

 

 面白いうえに美味しいんだねキャベツ!フィーなんかいまひと玉丸かじりしてるくらいには夢中だ。冒険者ギルドで冒険者カードを出し討伐数を見せるとひどく驚かれたけど、あれはズルでも何でもなく事前準備のたまものなので大目に見てほしい。

 

 そして冒険者カード!あたしのレベルが4つも上がってたの!だからなんだ、って話なんだけどね。スキルポイントってやつでスキルを取ろうと思ったら錬金術関連のスキルは軒並み取得済みになってたし、余らせちゃった。

 

「それで、ダクネスさんは本採用なんだ。よかったね」

 

「ああ、是非とも使い倒してほしい。私は守ることが本業だからな。無慈悲で強烈な攻撃でもどんとこいだ」

 

「ああ、にしてもこれどうしようかな……金ねぇんだよなあ」

 

 押し切られて、という形ではあるもののダクネスさんさんはどうやらカズマのパーティの一人として受け入れられてみたい。よかったね、という私とげんなりとした顔のカズマ。彼は現実逃避をするように鞘に収まった剣を見る。

 

 カズマのショートソードは本来使われない腹の部分をキャベツ相手に存分に鈍器として使用したから、変な方向に曲がってしまっていた。もうカエル相手に何とかなんてレベルじゃないなあ。切りつけられるかどうかって感じ。

 

「キャベツ狩りでお金入るんだから新調すれば?」

 

「おお、そりゃいい考えだ!是非明日鎧の一つでも見に行こうぜ」

 

「なんであたしがアンタの買い物に付き合わなきゃなんないのよ」

 

「あ、そういうことならあたしが作ってあげようか?初回サービスしちゃうよ?」

 

「え、ライザさんって武器とか鎧作れんの!?」

 

「そりゃ作れるよ。なにせこの杖も私の錬金術で作ったんだからね!よし!カズマ、明日あたしのアトリエにおいでよ!冒険者の装備、作ってあげる!」

 

「やった!マジで助かる!足向けて寝れねえ!」

 

 ぽん、と両手を打って提案するとカズマはものすごく乗り気なようでガッツポーズ。めぐみんやダクネスさんたちも気になるようで来るつもりらしい。アクアも、素直じゃない感じで仕方ないから行ってあげるわよ、とのこと。よーし!やるぞー!




時間ができたのでカキカキ。解説はおやすみ!ではまた次回に

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