[凍結中]魔弾の王×戦姫×狂戦士×赤い竜   作:ヴェルバーン

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申し訳ない!
ストックが切れそうなんで、三日~一週間程一巻の内容まで書き溜めに入らせて頂きます!
すべては自分の想定の甘さです。原作軸はムズい!

本当に申し訳ない!

そして今話は短いです。



後書きにこの話を書いていて驚愕したことと、次回の概要が……。










第十四話

 ザイアンは父であるテナルディエ公爵に呼ばれ、その豪奢な館の一室で対面していた。

 

「アルサスですか?」

 

「そうだ。その地を焼き払え」

 

 ザイアンは笑いで歪みそうになる表情を必死で整える。だが、自身でもその努力が功を奏しているとは言い難い。顔がひきつっているのが自分でも判るからだ。

 理由だが、その土地はあの忌々しい男を思い出させると同時に、ある出来事を連想してしまうからである。

 アルサスは遠方で赴くのが面倒なことだが、その面倒さよりもそのある出来事で込み上げる笑いの方が強かった。

 

 これであの男がアルサスに居たならさらに楽しめると思うが、あの男───ティグルはジスタートに捕まっている。

 

 ザイアンはティグルが捕まったと聞いた時は周りの取り巻き達と大声で嘲笑ったものだ。

 

 弓など使い、自領で竜を匿ったなどと嘯くからこうなるのだと。

 

 最後に会ったディナントでは、当然ザイアンはその事を指摘し大いに笑った。

 まさか「竜自身が戦に行きたくない」という理由を話すとは思わなかった。

 その時はもう少し知恵を絞れと取り巻きが言い、その言葉の正しさに吹き出してしまった程だ。

 

 ザイアンはその時の事を思い出し、笑いが込み上げて来るのを必死で抑える。

 

「ご下命、確と。

 

しかし、理由をお聞かせ願えませんか?

今回の出兵に兵には何と?

それに四千は多過ぎでは?」

 

「内乱が近い。そのアルサスをガヌロンが奪うやもしれん。

それに国境を接しているジスタートの干渉があれば些か面倒だ。

兵達には領民を捕らえて連れてこいとだけ言っておけ。

ムオジネルに奴隷として売り払うのもよしとする。

気に入った女達はお前達で好きにしろ

 

それから……」

 

「? 何か?」

 

 公爵の言葉の内容に喜色を露にするザイアンだが、常にはっきりとした物言いを好む公爵が途中言い淀み、思わず疑問の声を投げ掛ける。

 

 公爵は何でもないと言うように首を振り、続きを話す。

 

「騎士は最低でも二千は連れていけ。

時間は掛かっても充分に物資や武器の用意をさせよ。

 

 

異論は許さん」

 

「!? っは! 畏まりました!」

 

 ザイアンは話しの途中、戦力が過剰や過保護に過ぎると不満を面に出してしまった。

 だが公爵の最後の言葉の声色に不興を買ってしまったと判断し急いで膝をついた。

 

 しかし、公爵は膝をついたザイアンに何も言わず最後に「ドレカヴァクに会っていけ」とだけ言葉を掛け退室を促した。

 

 

 

 

 

 

「おいお前、ドレカヴァクを見たか?」

 

「こ、これはザイアン様。ドレカヴァク様なら厩舎の方でお見掛けしました。」

 

「そうか」

 

 ザイアンはその後、公爵の言葉に従いドレカヴァクに会おうとその姿を探していたのだが、一向に見付からず先程漸く知っている使用人に会えた。

 

「全く、あいつが厩舎に何の用があるというんだ?」

 

 ドレカヴァクは公爵である父が重用している占い師だ。

 しかし、ザイアンはこの老人が全く好きではない。

 いつもフードを目深に被り胡散臭げで、公爵家の金を何に使っているのか不審に思っている。

 機会さえあればドレカヴァクを殺したい程だ。

 

しかし、

 

「父上も何故あんな場所に四千も……」

 

 このネメクタムとは比べるのも失礼なくらい、小さく人も少ない土地に何故騎士二千も向けるのか。ザイアンは不思議で仕方なかった。

 

「……途中の領地への示威行為か?」

 

 そんな事を考えながらドレカヴァクを探していると目的の厩舎が見えてきた。

 

 ザイアンは厩舎独特の動物の匂いと、糞便の臭いに鼻が曲がりそうになるが我慢してドレカヴァクを探す。

 

 

「ドレカヴァク! 居るか!」

 

 こんな場所に占い師が何の用があるんだと思い声を掛けるが、返事はない。

 

 既に立ち去った後かと思い、探し回りながら念のためもう一度呼び掛ける。

 

「ドレカヴァク! 居ない……の……か……」

 

 そこには竜が四頭いた。

 

 地竜と飛竜が二頭ずつ。

 地竜の一体は体長が百二十チェート(約十二メートル)程もあり、大きさがもう一体より際立っている。

 しかし、もう一体も頼りないと言う風では決してなく、大きい地竜よりも胴が太く頼もしい。こちらの体長は八チェート(約八メートル)程。

 

 飛竜二体も八チェート程の大きさで、大きさが揃っている分美しく圧巻だった。

 

「おお、ザイアン様。お越しくださるとは」

 

 ザイアンの声が聞こえていたのだろう、ドレカヴァクは大きい方の地竜の影に隠れてザイアンには見えなかった様だ。

 

 ザイアンが茫然と立ち尽くしているとドレカヴァクが傍まで寄って声を掛ける。

 

「ザイアン様、こちらへ」

 

 ザイアンはその言葉に漸く身体が動き出す。恐る恐る竜達の方に近付く。

 

「ド、ドレカヴァク。この竜達は……一体?」

 

「この竜共は、ザイアン様の出征のお祝いに贈る予定のものでございます。

 

最初は二頭贈らせて頂く予定でしたが閣下から増やせと仰せ付かり、至急揃えましてな。

 

飛竜共と小さい方の地竜は調教を終えておりますが、こちらの大きい地竜はあと数日は掛かるかと。」

 

 もう暫しお待ち下さいと、続けるドレカヴァクの声も耳に入らない程、ザイアンは竜達に圧倒されていた。

 

「こ、これを、この竜達を俺に?」

 

 そしてこの竜達が自分のものになるという事実に歓喜した。

 

「大きい方の地竜はもう暫しご猶予を」

 

「あ、ああ。そうだったな。

しかし、でかしたぞ! ドレカヴァク」

 

「ただ、二つ程お願いが」

 

「なんだ?」

 

 ドレカヴァクの願いの一つ目は、竜はまだ人の臭いに慣れていないため町に留めるなというもので、これには竜に暴れられては敵わないとしてザイアンも納得せざるを得なかった。

 二つ目は、この竜達の他に、別の竜を見たらドレカヴァクまで報せて欲しいとのことだ。

 

「何故だ、竜がその辺に居る筈ないだろう?」

 

「アルサスには竜が居るという噂があります。

竜を調教出来る者としては興味深いので」

 

「ああ、ヴォルンのホラ話か? ふん、まあ良いだろう。

 

見かけたら報せれば良いのだな?」

 

 

「ありがとうございます」

 

 ザイアンはそんな噂話など欠片も信じていないが、報せるだけなら別に構わないとして願いを聞き入れた。

 

「竜か……」

 

 ザイアンはもう一度竜を見詰める。

 そして、この竜を駆り雄々しく進軍する自分を想像して胸を熱くした。

 

 

 アルサスに出征する四千の軍勢、そして四頭の竜。

 目の前の竜を見詰めて熱い視線を送り、自身の未来を想像するザイアン。

 

 そんなザイアンをドレカヴァクが無機質な眼で見詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ない、カイム殿。アンヘル殿も……」

 

 血を吐く様にそう言って、涙目で頭を下げるマスハスにカイムは知らず歯噛みした。

 

 

 昼より二刻ばかり過ぎた頃、ティグルの屋敷の応接室で四人は向かい合っている。

 身代金の集まりは芳しくない。期日は今日を入れてあと七日だというのに。

 

 現在の身代金の資金は目標とする額の三分の二。

 カイムが身銭を切って賊を狩りその首級や戦利品を加えてもこの額。

 そしてティッタとバートランが各村から集めた資金、さらにマスハス自身の資金を加えても約五分の一足りない。

 

 あと七日、いや届ける日数も掛けると四日もない。

 凡そ三日でこの状況を打開できなければ、ティグルは恐らく奴隷として売り払われるだろう。

 

「ティッタ、バートランもすまない。

村々を必死に駆け回ってくれたというのに……」

 

「おやめ下さい! マスハス様!

どうか頭をお上げ下さい!」

 

「そうです、マスハス卿!

マスハス卿が手を尽くして下さったのは、わしらだって分かっとります!」

 

 消沈して頭を下げるマスハスに、ティッタとバートランの二人が止めに入る。

 

 この二人もかなりこの領地を駆けずり回った。

 このセレスタは言うに及ばず、四つの村の凡そすべての家に直談判しに行き、少ないながらも今日まで資金を集め続けた。

 

「……こうなってはティグルの脱走に望みを掛けるしかあるまい」

 

 

 それだけでも問題だというのに新たな問題が発生した。

 

 このアルサスに兵が向かっているのだ。

 

 テナルディエ公爵の軍勢約四千が、公爵の治めるネメクタムを発ったという報告が先日判明した。

 あと数日でこのアルサスに襲来する。

 

 同じくガヌロン公爵もテナルディエ公爵に先んじてアルサスに兵を出そうと、現在動いているらしい。

 ガヌロン公爵の方がこのアルサスに近く、先んじる事は充分に可能だ。

 

「わしはガヌロン公爵の方を抑えなければならん。

テナルディエ公爵の方は……。

心苦しいが囚われているティグルに頼む他あるまい。

 

バートラン」

 

「はい、マスハス卿」

 

「ティグルに手紙をしたためる。

 

ジスタートまで、行ってくれるか?」

 

 マスハスの悲壮な問い掛けに、バートランは迷う素振りも見せず即答した。

 

「お任せ下さい、マスハス卿!

必ず、若を連れて戻って来ます!」

 

 バートランは決意を感じさせる口調でそう宣言した。

 続けてマスハスはカイムに向き直り涙目で頼みを告げる。

 

「カイム殿、アンヘル殿。

本来関係のないおぬしらに、この様な頼みをするのは筋が違うと分かっておる。

 

しかし、どうか……どうかバートランと共にティグルの脱出に手を貸して欲しい。

 

恥知らずな願いだとは分かっておる。

だが、どうか……」

 

 そこから先は言葉にならなかった。

 カイムの足元に縋り付く様に懇願するマスハス。

 

 

 

 

 

 マスハスは泣いていた。そして哭いていた。

 ティグルの為に。このアルサスの現状に。

 何故彼がこんな目に遭うのか。

 彼は領主として自分に出来ることを精一杯やっていた。

 

 このアルサスの領民が何をしたのか?

 

故郷から離し、連れさる必要があるのか?

家を、畑を、家畜を、財産を、家族を、命を、尊厳を、

 

奪い、焼き払う必要があるのか?

奴隷とする程の罪を犯したのか?

 

 マスハスは憤っていた。

 力及ばぬ自分自身に。他者に縋らねば打破できない現状に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カイムは自身に縋り付いているマスハスを見下ろしながらこの状況を思った。

 

 彼ら三人は謂れのない現状に必死で抗おうとしている。

 

 二十四年前の自分と同じように。

 

 そしてふと思う、

 

 この三人は嘗ての自分と同じになるのではないか?

 

──故郷を滅ぼされた自分、滅ぼされようとしている彼ら。

 

──大切な者を喪った自分、喪おうとしている彼ら。

 

 その未来を想像したカイムは愕然とした。

 

 今の三人は二十四年前の自分だ。

 すべてを失うことになる前の自分だ。

 

 しかし、この三人は自分とは違いまだ救える余地がある。

 

 そして、滅ぼされ喪った自身の境遇と彼ら三人の境遇はまだ何ら共通していない。しかし、ある一つの思いが共通し共感できるものがある。

 

 それは───、

 

 

───迫り来る理不尽に憤り、抗い戦おうとしていること。

 

 

 

 

 そのことを自覚したカイムは、自身に縋り付くマスハスの肩を掴み同じ目線に引き上げる。

 

 いきなり引き上げられたマスハスは、涙を浮かべていた顔を呆けさせ、カイムを見る。

 ティッタやバートランも同じくついていけない様で、哀しみに歪んでマスハスを見ていた顔を呆けさせた。

 

 カイムはアンヘルに『声』を飛ばす。

 アンヘルはその内容に若干戸惑った様でカイムだけに『声』を飛ばした。

 

 

━━━良いのか? お主がそこまでする義理はないのだぞ。

 

━━━……、…………。

 

━━━フム、まあ、確かにな。

 

━━━…………。

 

━━━……ならば、我はもう何も言わん。我も力を貸そう。お主の好きにするといい。

 

━━━……。

 

 

 

 マスハスを引き上げてから十ほど数えても、何の言葉も伝えない自身に不審に思ったのだろう。

 三人の顔には訝しい表情が浮かんでいる。

 アンヘルはカイムの意志を伝えるため三人に『声』を飛ばす。

 

 

━━━出発はいつだ?

 

「で、では!」

 

━━━刻限が迫っておるのだろう? 老僕、準備はいつまでに終わる?

 

「あ、ああ。今夜までには……」

 

━━━老いた人間よ。大味なもので構わん、地図を用意しろ。そして手紙も。

 

「……ああ、もちろんじゃ!」

 

━━━……それから、小娘。

 

「は、はい!?」

 

 三人の顔に徐々に生気が戻り、喜色めいた表情でアンヘルの問いに答えていくマスハスとバートラン。

 ティッタも喜びを露にし、そのやり取りを嬉しそうに見ていた。

 しかし、自分には声が掛かることは無いと思っていたのか、慌てて返事をして声が上擦っている。

 カイムとアンヘルは一瞬、彼女を一人で残して行く事に不安を覚えたが面には出さなかった。

 代わりに、

 

━━━……留守を頼むぞ。

 

「!? はい! 任せて下さい!」

 

 留守を預けるとだけ伝え、あまり気を負わない様にと思ったのだが何処まで理解したか。

 

「よし! 早速、準備に掛かろう!」

 

 マスハスの言葉に一同は忙しなく屋敷内を往き来する。

 そして数刻後、赤い翼が秋の夜空に翻った。




フェリックス=アーロン=テナルディエ

カイム・カールレオン




実は共に、42歳。


ちょっ、カイムさん!
あんな強面な方と同い年なんですか!?

18年って凄いわ。

まあ、それは置いといて。


次回は潜入ミッション!



スネェーーーークゥーーーー!

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