おバカな魔女ちゃん、治安維持組織で頑張る   作:SIU123143

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その魔女さん、アホにつき

 その日――不可視の隕石が落ちてきた。

 

 地球で説明すれば、一撃で全てが崩壊するほどの大きさである。

 ただ、誰もその存在に気が付いていなかった。

 

 隕石に含まれる鉱石の魔力に視認疎外の効果が付与されていたからだ。

 それ故に、高水準の魔力を持たない人々は普段通りの生活で終焉を迎えようとしていた。

 

 

「……つまり、あれを壊せるのは私だけってことね! 師匠!」

「あぁ、そうじゃのぅ」

 

 

 後ろのよぼよぼ爺さんに対して二つ結びの金髪少女が紫の瞳をキラキラ輝かせている。しなやかで小柄な体でありつつも、表情からは体の大きさからは見えないほどの強さを感じ取れる。

 

 少女は星空をイメージした紺碧のワンピースドレスから薄茶色の魔法杖を取り出した。

 

 少女の杖は、非常に万能な武器である。

 使用者が想像したものを具現化するという、超人離れした力を持っているのだ。

 

「閃いた!!」

 

 少女はどんどん迫ってくる隕石をにらみながら、額と両手の甲に魔方陣を錬成する。

 師匠と異なり十個の魔方陣を出せるわけではないが、それでも十分な数だ。

 

「隕石よ! 消滅した後、ここから去れ!」

 

 少女が杖を振りかざすと、魔法陣が虹色に光輝く。

 直後、不可視の隕石はひびが入り――無数の小隕石に分裂する。

 引力の関係上、砕け散った隕石は星に衝突するかに思われたが――彼女のはなった言葉によって、宇宙の彼方へと吹き飛ばされていった。

 

「流石じゃのぅ、ルナージ・ライト」

 

 師匠が褒める中、ルナージと呼ばれた魔法少女は――

 

「はぇ……ぇ……ほえぇ……」

 

 バカになっていた。

 

「魔法を使った後に生じる少しの後遺症が問題じゃのぅ。大規模魔法の場合だとアホになったり変態になったり狂暴になったり、なんともまぁ、面倒くさい状態になるのがどうにかならんかのぅ」

 

 師匠ははぁとため息をつきながら彼女を自分の家へと帰宅させるのだった。

 

 

 ルナージ・ライトは魔法使いの両親の下で生まれた少女だ。

 

 物心がついていないときに両親を殺された彼女は、師匠の下で明瞭快活に育てられた。

 結果、復讐心一つない自然と人が大好きな元気っこになるまで成長したのだ。

 

 ここまで聞けば、師匠がとても良い人物だと誰もが思うかもしれない。

 

 けれど、そんな風に片づけられるほど世の中は甘くなかった。

 

 師匠、レーベンクルス。この男は人間社会に復讐心を抱いていた。

 その筈、自分の愛娘であったルナージの母親を無残にも凌辱されて殺されたのだ。

 

 それだけでなく、魔法が使えるとだけで武器転用するための実験に活用すべく、数多の仲間を拉致されてきたのである。そんな状況になれば、許すことが出来ないのは当然だった。

 

 レーベンクルスにとって、弟子であるルナージは自分の生きる希望だった。

 彼女を育てることは自分の娘がなせなかった夢だからだ。

 

 せめて彼女には、幸せな人生を歩ませるべきだとレーベンクルスは考えていたのである。

 

 しかし、現実は違っていた。

 

 ルナージはレーベンクルスが思う以上に魔法に関する才能を持っていたのだ。

 

 年が増加すればするほど魔力が高まる種族でありながら、若人にして才能の片鱗を見せる。

 

 そんな彼女を見ていたレーベンクルスは、段々と黒い考えを持ち始めた。

 

 彼女に殺人術をつけさせれば、人間を皆殺しにできると。

 

 実現するために、様々な困難に対して難しいクリア方法を教えながら何度も取り組ませてきた。

 その度に、ルナージは目標を達成し、どんどん力をつけていった。

 

「師匠! 今回も無事に達成しましたよ!」

「あ、あぁ……」

「師匠、どうしたんですか?」

「あぁ、いや。何でもないよ」

 

 レーベンクルスはずっと考えていた。

 娘の残した宝を復讐の道具に使ってもよいのか。

 

 ずっと考え続けていた。

 

 だからこそ……レーベンクルスは最悪の選択をするしかなかったのだ。

 

 それは、禁忌魔法と呼ばれる武器変化と呼ばれる魔法だった。

 

 自らの魂と身体を触媒に、自らの身体を武器にする。

 

 これにより、思考を葬りながらルナージの力になることを決めたのである。

 

「もう、いい。教えることはないからの……」

 

 レーベンクルスはそういいながら机に戻り書置きを残した。

 

 その後――机の上で魔法を唱えようとする。

 

 その刹那だった。

 

「いたっ……!」

 

 ベッドの縁に頭をぶつけたルナージが向くりと起き上がったのだ。

 魔法を行使しようとしていた彼女が起きてしまうのは、レーベンクルスにも予想外だった。

 

「……ルナージ。目覚めたのか」

「うん」

「そうか……夜も遅いし、もう寝なさい」

「いやだ」

「…………それは、なんでだい?」

「なんだが……嫌な夢を見たから」

 

 嫌な夢を見たと聞いたレーベンクルスは神妙な顔で問いかける。

 

「師匠が、遠くへと向かっちゃう夢。なんでかわからないけど、現実になっちゃうんじゃないかって思ったの。ねぇ、師匠。いなくならないよね? 消えたり、しないよね?」

「……!」

 

 レーベンクルスは悲しそうな顔で見つめてくるルナージを見てはっとした表情を浮かべた。

 

「……私はいなくならないさ」

「本当? 本当に、いなくならない?」

「あぁ、本当さ。だから、おやすみなさい」

「……お休み、師匠」

 

 レーベンクルスは彼女が眠ると同時に、より深く眠るための魔法をかけた。

 これで目覚めることはないと確認してから、戸締り確認したうえで魔法を行使する。

 

 数分ほどレーベンクルスの身体が光り輝いた後――

 

 レーベンの身体は、光となって消えた。

 

 そして残ったのは――彼の身体を触媒に生み出された、美しい装飾の剣だった。

 

 

 翌日――

 

「いなくならないって言ってたのに……何でよ、師匠……」

 

 レーベンクルスの書置きを見たルナージはぽたぽたと涙をこぼしていた。

 師匠からの手紙には、これからのルナージを労わる言葉と同時にその武器を用いて街に降り自分が思う生活をしてほしいと頼まれる内容が記述されていた。

 

 唐突に与えられた自由は、ルナージを苦しめた。

 彼女の生き方は全て、レーベンクルスから与えられたものだったからだ。

 

 それ故に、彼女はこれからどうやって暮らしていけばよいか全く見当がついていなかった。

 そんな風に考えていたころ――彼女にとって予想外のことが発生した。

 

「ふぅ~~~~!! 自由だぁぁぁぁぁああああ!!」

「ひゃぁっ!?」

 

 レーベンクルスが生み出した剣が喋り始めたのだ。

 

「おっ、お嬢さん! なるほどなるほどねぇ~~これが触媒の愛娘ってわけか!」

「しょ、触媒……?」

「そう! お前のお爺さんは俺の触媒として剣になる魔法を使ったのさ!!」

「……!?」

 

「ケッケッケッ! 馬鹿な男だよなぁ! 娘に罪を背負わせようってのがバカな考えなのによぉ!!!」

 

 剣が浮遊しながらあざ笑う中――

 

「……なるほど。わかりました!」

「……は?」

 

 剣が困惑した声を漏らす中、ルナージは剣の柄を手にした。

 

「あなたを活用して、町で暮らせってことですね!」

「……は!? 俺の話聞いてた!?」

「難しい話は分かりません! ただ、師匠のいう事だけは正しいってわかります! 町で暮らしていく事が師匠の伝えたかった事なんです、たぶん!!」

 

 剣はただただ困惑した。

 馬鹿にして曇らせようと考えていたのに、当の本人はかなりポジティブ、いやバカみたいな考えを抱いていたからだ。

 

「ささ、行きましょう!」

「わわっ! 引きずるなぁ!!!」

 

 街へと向かうルナージに剣は引きずられながら街へ向かっていくのだった。

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