常住戦陣~月島流剣術推して参る~   作:トコヨノオウ

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第二十二陣

 コカビエルの急襲。

 奪った聖剣を振るうフリード・セルゼンは、祐斗によって退けられたが彼の迎えに現れたコカビエルは無理だった。

 結果として、イリナが戦闘不能となり戦線を離脱。加えて、彼女の持っていた『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』を相手に持っていかれる始末となった。

 紆余曲折を経て、決戦の地は駒王学園。相対するのは、堕天使幹部。

 こちら側は、グレモリー眷属に、聖剣使い。それから現地最強格の人間。中々の混沌具合である。

 

「支取先輩は、結界係ですか?」

「ええ、そうですね。ソレと、もしもの時の通報です」

「通報?」

「政治的な部分です。実害が出ている方が、相手方への要求を通しやすいので」

 

 呼び出されて柔軟をする片手間の仁郎の問いに、蒼那は淡々とそう答える。

 本当ならば実害が出る前に色々と処理をすべきだ。だが、世の中というのは得てして理想通りに事が運ぶことは限りなく少ない。

 今回の場合、聖剣を奪われた教会が派遣したのは、若手の教会の戦士二人。年齢的に見れば高い実力かもしれないが、堕天使幹部を相手取るには力不足である事は明らか。

 寧ろ、天界の天使が出張って来てもおかしくない案件だ。だが、それこそが政治のお話。

 裏の世界の傾向だが、権力者は基本的に実力者が多い。これは、表の世界以上に武力が上昇ツールとして反映されているから。

 同時に、権力者が動けば周囲に対して必要以上の波紋を齎す事にもなる。

 そして世界は、常に危ういバランスの薄氷の上に成り立っていた。オマケに、聖書陣営は方々に恨みを買っている。ついでに、現在進行形で恨みの種も撒いている。

 何より今回の件も、既に十分こんがらがっている。初動が遅すぎた。最早、上層部がコカビエルを消そうともチョンボは消せない。

 

 子供たちは、スケープゴート。もとい、大人が動くための理由付け。

 

 死地が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漸くだ」

 

 若い悪魔たちを前に、コカビエルは玉座に座り笑みを浮かべる。

 彼が見るのは若い世代の台頭――――ではない。

 これから先に待つであろう、闘争の坩堝。混沌足る戦争の始まり。

 その為ならば、若い魂など幾らでもくれてやるつもりだ。戦いこそが生きがいであり、今の平和へと進もうとする世界は彼にとって退屈の苦痛極まる時間だから。

 

「事を荒立てるのは止めてもらえるかしら、コカビエル。ここは、悪魔の領土よ?」

「知っているとも。そして、お前は生贄の羊だ。お前が消えれば、まず間違いなく魔王は動く。くっくっく、戦争の発端は、目の前だ」

 

 リアスを前に、しかしコカビエルの余裕は崩れない。

 彼にしてみれば、上級悪魔程度物の数ではない。それが、まだまだ殻の取れていない雛鳥ならば猶の事。

 

「とはいえ、だ。聖剣の統合にはまだ時間がかかる。その間、俺が遊んでやっても構わんが…………雑魚の相手は面白くない」

 

 コカビエルの指が鳴らされ、魔法陣が二つ浮かび上がった。

 現れるのは、三頭の巨犬。それも、二体。

 

「ケルベロス……!?貴方、こんなものまで持ち込んだの!?」

「コピー品だがな。ペット程度は倒せなければ、俺の満足する闘争は出来んぞ」

 

 猛るリアスを鼻であしらうコカビエル。

 オリジナルには劣ると言えども、それでも巨体だ。

 リアスたちにも緊張が走る――――訳でもない。

 いや、危機的状況なのかもしれないが、ケルベロスは極論()()()()()()()でしかない。

 

「月島流……富嶽鉄槌割り!!」

 

 粉塵と衝撃が、グラウンドを襲った。

 言わずもがな、武力は持てども戦争など真っ平ごめんな人間代表の行動だ。

 粉塵が晴れ、中心の頭を重点的に地面に埋めつつ伏せるようにして事切れたケルベロスの上に立ち、月島仁郎はコカビエルを睨み上げた。

 

「戦争とか闘争とか、物騒な事ばかり言ってるんじゃない。戦いたいのなら、一人で勝手に挑んで、勝手にくたばれ。周りを巻き込むな」

「ほう?人間にしては、随分とやるな。その神器は………」

 

 スッとコカビエルの目が細まる。

 

「ふっ………そんな廃材同然の代物で、俺と戦うつもりか?」

 

 嘲笑を一つ。

 仁郎の神器はライザー戦の時のように鞘を固定して、刀の体裁を整えただけの鈍器状態のままだ。それでも、一撃で模造品とはいえケルベロスを一撃で叩きのめす事が出来る程度の威力はある。

 だからこそ、コカビエルは仁郎の実力を認め、その上で嘲笑う。

 

「人間。貴様の神器は、外れも外れ。大外れだ。神滅具以上にその発現率は低いが、()()()()()()使()()()()()()()()。その柄と鞘だけで、何が出来る?」

 

 そう、これだ。

 仁郎が上級悪魔のライザーと戦えたのは、偏に彼自身の力量があってこそ。それでも少なく無い火傷を負い、アーシアが居なければその傷跡は今も残っていただろう。

 それ程までに、現状の彼の神器は役に立っていない。

 もっとも、本人からすれば、だからどうした、程度の物だが。

 

 嘲笑のまま、コカビエルは玉座を立ち上がる。

 

「来い、人間。お前は、暇潰しになりそうだ」

「…………」

「ッ、やらせると思うの!?」

「黙っていろ、グレモリーの小娘。遊び相手はくれてやる」

 

 言うなり、新たに魔法陣が現れたかと思えば先程一体叩き潰されたケルベロスがもう二体現れる。

 合計三体。

 

「グレモリー先輩、そっち任せます」

「ッ、仁郎!」

 

 リアスの焦った声を背に、仁郎は前へと駆け出した。

 この状況では、取れる選択肢などこれしかないのだ。

 量産型のケルベロス程度なら、仁郎一人でどうとでもなる。無論、リアスたちでも十分に対応できるだろう。

 だが、ここでコカビエルの横槍を許し続けていると話は変わってくる。

 

 三大勢力に置いて、種族的厄介さがあるのは堕天使だ。

 彼らは、元天使であるから光力を扱う事が出来る。その光は、悪魔にとっては致命傷になりうる。同時に、天使ではないのだから邪な感情や、魔の力に対しても耐性を持つ。

 要は、天使と悪魔双方に特攻を取りつつ、同時に自身は彼らの影響を受けにくいという事。

 

 最上級堕天使のコカビエルの攻撃は、まず間違いなく悪魔であるグレモリー眷属が受ければ致命傷。即死してもおかしくない。

 そして興味を持たれた仁郎がコカビエルを放置すれば、間違いなく厄介な事になる。

 故に、仁郎には選択肢がない。文字通り死に物狂いで挑むだけだ。

 

 

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