常住戦陣~月島流剣術推して参る~   作:トコヨノオウ

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一年以上放置していた物を久しぶりに動かしてみました
待っていた方々がいらっしゃるか分かりませんが、ぼちぼち再開したいと思います
筆が乗れば











第三十三陣

 三大勢力のトップ会談。

 この会談への出席要請を受けた仁郎は、悪魔寄りの第三者として立つ事になった。

 駒王学園の制服に、上のブレザーを脱いで代わりにミカエルから渡された羽織を着た。そして、腰の左側に一振りの木刀を佩く。

 これは、仁郎なりの配慮だった。

 鞘入りとはいえ、神器をそのまま装備していれば要らぬ警戒を生むかもしれない。かといって、素手でも戦えるとはいえ有事の際にはどうしても力不足。

 その点、木刀ならば真剣ほど警戒させず、気を流せば十分に実戦に堪えうる。

 

「……眠いな」

 

 周囲への配慮も兼ねて、深夜に行われる会談。

 夜型人間どころか、規則正しい生活を送っている仁郎にとっては眠気を堪えなければならない時間帯。

 悪魔側は悪魔側で調整があるという事で、今は一人単独行動中。屋上で木刀を振るって眠気を紛らわせていた。

 

「――――そそられるな」

「……自分にそっちの気は無いぞ、ヴァーリ」

 

 振り下ろした木刀を肩に乗せて、ジトリと仁郎は屋上の出入り口へと目を向けた。

 開け放たれた扉の枠に腕を組んで寄りかかるヴァーリは、その瞳に好戦的な色を隠そうともしない。

 

「俺が求めるのは、強者との血沸き肉躍る戦い。そこに種族の隔たりは無い」

「買い被りが過ぎるんじゃないか?自分はそこまで戦いに熱意を持ってはいないぞ」

「強者であるのなら、何ら関係のない話だ。月島仁郎」

「……なんだ?」

「君は何故、戦う?何を持って強さとする?」

「は?」

 

 思わぬ問いに、仁郎の眉が上がる。

 彼から見て、ヴァーリは戦闘狂だ。コカビエルとの違いなど、集団か個人か、それ位ではなかろうか。

 そんな男が、戦いに理由を求めるとは思わなかった。

 

「……自分の大切な物を守るためだ」

「ありふれているな」

「寧ろ、自分としてはお前がそんな事を気にしているとは思わなかったんだが」

「ふっ……些細な気紛れさ。戦いに際して、高尚な理由を声高々に語る者も居るからな」

「戦いになっている時点で、高尚も何も無いと思うが……」

「違いないな」

 

 強者との戦いを求めるヴァーリと、大切な人たちを守りたいからこそ戦う仁郎。

 相容れない目的意識だが、その一方で二人とも戦場そのものに美学を持ち合わせている訳ではない。況してや、高尚だとかその手の事も頓着しない。

 

 そして、時は来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 駒王学園の会議室に集まった錚々たるメンバー。

 悪魔陣営は、サーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン

 天界陣営は、ミカエル。

 堕天使陣営は、アザゼル。

 何れも、勢力のトップ。そして、今回の会談の発端であるコカビエルの一件に際して立ち会った若き悪魔たちと一人の人間。

 

「おいおい、ミカエル。随分と天界側は入れ込んでるらしいな」

「人聞き悪いですね、アザゼル。我々は、今回の件の功労者に慰労を施しただけですよ」

 

 アザゼルが見咎めたのは、仁郎が羽織った純白の羽織。

 祝福儀礼済みの聖骸布にも用いられる特殊な布地を使った一品。下手な鎧よりも堅牢堅固であり、生半可な魔術は自動的にレジストしてしまう高性能。

 当然、そんな代物はそう簡単に流通しない。それどころか、教会主力の戦士たちの中でも上澄みの上澄みが辛うじて支給されるかどうか、というもの。

 そんな代物を、コカビエル討伐の立役者とはいえ自身の陣営でもない人間に贈呈するなど余程の事。

 故の指摘だったが、ミカエルはその目をキラリと光らせる。

 

「そういう貴方はどうなんです?アザゼル。事の発端を起こしたコカビエルは、貴方の部下でしょう?」

「過激派を完全に統率できるってんなら指摘してこいや」

「アザゼル、それはこちらにも飛び火するから止してくれないか?」

 

 互いが互いに悩みの種を突きつけられてため息を吐いた。

 三大勢力、もとい聖書陣営は内部闘争の火種に事欠かない。

 そもそも、今回のコカビエルの暴走にしてもそれが偶々堕天使陣営の幹部であっただけで、天界陣営も悪魔陣営も過激派は抱えている。

 辛うじての統率は出来ているものの、過激な手足は今この瞬間も他陣営を滅ぼそうと蠢いているのだから。

 

 ジャブの応酬を経て始まった三大勢力による会談。

 とはいえ、この会談はどちらかというと形の方が大切な者だったりする。

 コカビエルの件だけではなく、既に世界的に見てきな臭い状況に置かれているからだ。

 

「ハッキリ言うと、状況は最悪だ。過激派は止まらねぇ。末端の小競り合いは激しさを増し、今回は戦争数歩手前まで来た」

 

 背もたれを軋ませて、アザゼルは椅子へと体重を預ける。

 

「ハッキリ言って、小競り合いをしている時間はとっくに過ぎてる」

「随分と断言しますね。何か根拠が?」

「そっちも少しは情報掴んでるだろ?世界を引っ掻き回したい奴らの事を、よ」

「つまり、アザゼル。君にとって今回の件は渡りに舟だった、と?」

「結果的にはな。即戦闘状態に入らない二天龍の邂逅に、聖魔剣の出現。そして、今に至るまで正常起動した事の無かった神器の覚醒。これらを単なる偶然で片付けるのは、余りにも勿体ない」

 

 ニヒルな笑みを浮かべて、アザゼルはこの室内を睥睨する。

 トップ陣は、それこそ三大勢力が大戦を行った以前からの生き残り。特に、悪魔陣営の四大魔王などは大戦で頭角を示した者たちだ。

 一方で、この場に居る者たちの大半は未だ若い。人間の十代程度の年齢の物ばかりで、俗に言う新しい世代を担う者達。

 時代に節目に居る、という認識がアザゼルの中には生まれていた。

 

「柄じゃねぇが、今回の発端の責任者として音頭を取らせてもらう。やろうぜ、和平。もう内輪で揉め続けて良い状況じゃねぇからな」

「…………あのいたずら小僧が、随分と真面目ですね」

「抜かせ。そんだけ状況がヤベェって話だ」

 

 ミカエルの茶化しにも、アザゼルは肩を竦めるだけ。

 会談の流れは決まった。ゴールが定まり、そこからは年長者からの若者弄り。

 

 和やかな雰囲気で時は進み、

 

 ――――時は止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何……?」

 

 いつの間にか、背に神器である鞘入りの環頭大刀を背負った格好となった仁郎は眉を上げた。

 周りに視線を走らせれば、各陣営のトップや白龍皇、紅髪の姫以外は動ける者が居ないらしい。

 

「コレは、ヴラディの……」

「でも、ギャスパーはまだここまでの力はない筈よ……?まさか、暴走?」

 

 直ぐにでも動けるように木刀へと手を変え乍ら、仁郎は視線を彷徨わせるリアスの傍へと寄り添う。正確には、時間停止を食らっている面々を守る為の行動である。

 この間に、校舎の窓側に巨大な結界が張られた。直後、結界に衝突する幾つもの攻撃。

 目まぐるしく流れていく事態に、アザゼルは舌打ちを零す。

 

「チッ、来やがったか……!ヴァーリ!」

「何だ」

「外の奴らを任せる」

「フッ、良いだろう」

 

 その背より白銀の翼を出現させ、ヴァーリは一瞬の結界の隙間をすり抜けて外へと飛び出していく。

 続けて、アザゼルの視線が向くのは仁郎だった。

 

「月島。お前にも、外の奴らを任せたいんだが、良いか?」

「自分か?」

「ちょっと、アザゼル!どういうつもりかしら!?」

 

 首をかしげる仁郎に代わり、アザゼルに噛み付くのはリアス。

 彼女にしてみれば、己の後輩を死地に放り込むような真似なのだからこの反応は当然の事でもあった。

 だが、アザゼルとて何も考え無しの提案ではない。

 

「ミカエルとサーゼクス、セラフォルーはそれぞれ防備に回る。俺も出て良いが、相手するのは相手の首謀者の場合が建設的だろ。この状況で、自由に動ける戦力をそのままにしておく理由はねぇだろ?」

「だからって……!」

「ありがとうございます、グレモリー先輩」

 

 猶の事噛み付かんとするリアスを、仁郎は押し留める。

 そして、アザゼルを見た。

 

「戦いに関しては、了解した。自分としても、このままこの場に居続けるのも座りが悪いと思っていた所だからだ」

「んじゃ、任せるぜ」

 

 アザゼルの言葉へと頷きを返し、心配そうに自分を見るリアスへと拳を握って健闘と無事を誓い仁郎は左腰に佩いた木刀を引き抜くと気を纏わせてグラウンド側へと駆けていく。

 タイミングよく一瞬結界が緩み、その隙間を通り抜けて彼は戦地へと飛び出すのだった。

 

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