カズマさん in ウマ娘わーるど 作:カズマ=サン
転生した。
それも、二度目の。
一度目はファンタジーな世界だったが、二度目はどうやら現代の世界に転生してきたらしい。
だが、俺がいた現代とは少し違うこともあった。
いや、そこまで大きなことではない。
この世界には”ウマ娘”とやらがいるのだ。
簡単に言うと、ケモ耳と尻尾付きの少女。
それが何故だかヘンテコな服を着て、レースで走って踊っている。
やっていることはよく分からんが、可愛い。
そう、とにかく可愛いのだ。
もれなく全員美少女なの、ウマ娘って。
理由は知らん。
で。
そんなウマ娘たちと二人三脚でレースの世界”トゥインクルシリーズ”を駆け抜ける”トレーナー”という仕事があるらしいのだ。
何それ。
ウマ娘ってのはなあ! 中学生になる前らへんから急に発育が始まってさあ! 中学生でもロリじゃなくなるの! みんな中学生高校生なのにとんでもない発育をしてやがるの!
そんなウマ娘たちとさあ? 二人三脚でぇ? 数年間走り抜ける?
そんなもん、なんかの間違いを起こしてくださいって言ってるようなもんだろうがァ!!!
あとチームトレーナーってなんだァ! 実質ハーレムじゃねえか!
トレーナー!!! うらやまけしからん!!!
でね、トレーナー試験って東大合格と同じか、それ以上に難しいらしいじゃん。
絶望したよ、なんせ前世……いや前前世ではニートだったもん。
俺にそんな頭あるわけないよね。
でも、俺は諦めなかったわけで。
カズマさん、トレーナー試験受かっちゃった。
そう、受かった! 受かったんだよ!
フハハハハハ! これで今日から俺もトレーナー……つまりはケモ耳美少女たちとイチャイチャできる存在というわけだ!
──勝ったな。
というか、世間一般的にも中央のトレーナーとか超超エリートな存在だし、給料も高いし、美少女とイチャイチャできるし。
これ以上の仕事があるなら教えてほしいレベルだ。
だが、俺はこんなところで終わる存在じゃない。
まだ”上”があるじゃあないか。
そう、それは──ハーレム! ……じゃないチームトレーナー!
チームを作るには、ウマ娘を集める必要がある。
それも、最低5人のウマ娘が必要だ。
そして俺は、一人も集めることができなかった。
うん。まあ、よく考えたら何の実績もない新人トレーナーにスカウトされたいウマ娘なんているわけがなかった。
そして俺の場合はそれだけではなく、前前世のニート期間の弊害によりコミュ障もスカウトを邪魔していた。
こっちから話しかけられなかったらスカウトなんてできるわけがなかった。
大人しくどこかのチームのサブトレーナーになるしかないのか……?
いや、それはダメだ。
なんか負けた気がする。
やはり、自分でハーレム………じゃない、チームを作らないと。
いや、でも流石にウマ娘が一人も集まらないとどうしようもない。
……ちくしょう。
ファンタジー世界も現代も、世知辛いところは、ちゃんと世知辛い。
◇ ◇ ◇
「……そういえば理事長、この前最年少でトレーナーになった彼ですが、まだ担当の娘を見つけられていないようです。大丈夫でしょうか……」
「おお、彼か! ……いや、彼なら大丈夫だろう」
「言い切るなんて、何か理由がおありでしょうか?」
「それはだな……彼の”目”だ!」
「目、ですか?」
「そう、”目”だ。彼は若いながらも、その目はやる気と自信、そして熱意に満ち溢れていた! あれほどの逸材、なかなか見つからないぞ? いやあ、あの目は一体何を見据えていたのか。クラシックか、天皇賞か、はたまたグランプリか」
「なんと、理事長がそこまで言うほどですか……」
「ああ! それに彼の試験はものすごく良い出来だったからな! やる気と実力、両方を持ち合わせた、まさに”逸材”だと私は思っている! 是非結果を残せるよう精進ッ! してもらいたいものだ!」
それは楽しみな人物だ、とたづなは目を細めた。
担当ウマ娘が未だ見つかっていないのも、きっと彼がよく吟味して担当を選んでいるからなのだろう。
最年少でのトレーナーということで学園のウマ娘たちの間でも話題になっているようだったし、きっと大丈夫だろう。
それに、最悪担当が見つからなくても、どこかのチームでサブトレーナーとして実践的なスキルを身につけ、どこかのタイミングで独立すればよいだけの話。
ならもうこの話は大丈夫だろうと、次の話題を理事長に振るのだった。
◇ ◇ ◇
静まり返った夜のグラウンド。
その中で、一人の新人トレーナーがため息をついていた。
「はあ、今日もスカウトできなかった。というか話しかけることすらできなかった……」
そうして顔をうずめ、グラウンドの芝コースを見つめる新人トレーナー。
その顔には、不安の色が浮かんでいた。
「はっ! ま、まさかこのまま担当が付かなかったらトレセン学園退職、とかないよな!? ……いや、それは流石にないか。その時はどこかのチームのサブトレーナーになればいいだけだし」
少し安心した表情になり、続ける。
「でも、このままだと流石にまずいか……どうする? ……そうだな、まずはこの美少女たちを相手にした時発動するコミュ障をなんとかしないと……ってうおっ! な、なんだあれ!」
そのトレーナー……カズマが見つめる先には、グラウンドの芝の上に浮かぶ、青白い人魂の様なものが見えた。
そしてその人魂は、少しずつ速度を上げながらカズマの方へと近づいて行く。
「いや本当になんだあれ! 近づいてきてる、よな……? いや絶対近づいてきてるわ! ちょっと待て、こっちくんな!」
そして、一つ閃く。
「はっ、そうだ! ……ふふふ、あっちの世界では”鬼畜のカズマ”で通っていたこのカズマさんだぜ……異世界で習得してきたこのスキル、くらえ! クリエイトウォーター!」
そうして指先から放たれた水が青白い炎を消す……ことはなく、青白い炎はそのまま接近してくる。
「な、何! 効かない……だと……」
少し焦りの表情を見せたが、すぐにその表情は余裕の笑みへと変わった。
「あ~、なるほどねー。あれはアンデッド的なやつか。ふん、くらえ! ターンアンデッド!」
今度は指先から放たれた光が青白い炎に当たると、白い光に包まれて消えていった。
「いやー、まさか現代にもあんなのがいるなんてな。……あの駄女神のターンアンデッドと比べたら全然だったが……まっ、カズマさんにかかればこの程度なんてこと……ん? 誰か、いる?」
カズマの瞳は、グラウンドに佇む一人の黒いシルエットのウマ娘の姿を認めた。
そしてそのウマ娘が、走ってこちらに近づいてくる姿も。
カズマは知っていた。
ウマ娘から逃げることは不可能だと。
人間の3倍くらいの速度で走ることができるということを。
カズマは、受け入れた。
”夜中に変なことを叫びながら水や光を放つ新人トレーナー”という噂が学園中に広がり、結局担当を一人も持てないままトレーナー業を引退し、前前世と同じくヒキニートになることを。
ああ、せめて一人でもいいからウマ娘の担当を持ってイチャイチャしたかったなあ。
「アナタ、先程のあれは……」
「あ~! あれ、あれね!? いや、実は俺、宴会芸が得意でね!? さっきの光もその、あれって言うかさ! ほら、……花鳥風月~!」
「え、いや……」
「……」
「……」
ああ、終わったな、と。
よく考えたら夜のグラウンドで宴会芸の練習をしてる新人トレーナーとか意味不明すぎる。
完全に終わった。
「いや、その……宴会芸はよくわかりませんが、先程の人魂……アナタ、どうやって」
あ、そっち?
……もしかしてこの世界、現代ファンタジーだったりする? (※しません)
冒険者カードが無くてもスキルが使えるのは、そういうことにしておいてください。