夏油傑の妹は幸せに生きたかった 作:アルトリア・ブラック(Main)
東京校との野球試合は普通に終わり、京都校に帰ることになった。
「東京校との野球試合楽しかったですね!負けましたけど!」
三輪の明るい声に『負けたのは素直に悔しいが』と加茂が言う。
「寒いッ…」
メカ丸の隣に座っていた美穂がそう呟く
「上着イルか?」
メカ丸がコートを出してくれる
「ありがとう」
チラッとメカ丸を見る
『京都側に内通者がいる可能性がある。歌姫は弱いから大丈夫だし、美穂は敵に内通するより呪詛師を呪霊にして取り込んだ方が早いと思ってるから絶対にしないだろうから話してるんだ』
五条から言われた事を思い出す
(誰も怪しくないけど、消去法でメカ丸だな)
東堂はイカれすぎてて内通者なんて器用な事出来ないだろうし、加茂はそう言うタイプじゃない。
「メカ丸〜ロボ一体貸して」
「何に使ウんだ?」
「いや、純粋に手伝い。呪霊操術の視覚共有はメッッチャ頭痛くなるから」
「分かった、後デ向かワセル」
「持つべきはロボだね」
「…ソレハ褒めてるのか?」
「120%褒めてる」
美穂に傀儡を一体渡してから戻ってくる
「…一体何に使ったんだ」
殴り合いでもしたのか、美穂の呪力が満ちていた。
「!」
前から気配を感じ、そちらを見る
「来たか…」
二人組の影にそう言う
歌姫が伏黒達と共にメカ丸のいる場所に行っている一方、メカ丸と真人・夏油の戦闘が開始されていた。
巨大なロボットに入り、真人を追い詰めていたが、特級呪霊・真人を倒すのは安易な事ではなかった上、帳を破壊する事は難しかった。
真人の攻撃を受け、死にかけていた。
「弱者の簡易領域かぁ、発想は良いんだけど、さすが弱者であってあんまり効かなかったよ、じゃあ、終わりにするね」
「くっ…」
真人が目の前にくる
(…俺はみんなに会う事すら出来ないのか…)
悔しくてたまらなかった。
『メカ丸、また今度教えてください』
三輪の声を思い出し、簡易領域の筒を向けようとすると…
「!!」
真人が何者かに吹き飛ばされる
「!?」
メカ丸の前に立ち塞がった四つ腕の化け物に目を見開く
(…美穂の呪霊…!?)
いつのまにか帳の中にいた。
「!!真人!!」
夏油の怒鳴り声
帳が破壊され、上から降ってくる美穂と守るように抱えて来る兵士姿の呪霊
すぐにこちらを見て
美穂の背後から少年のような姿の呪霊が現れる
美穂と兵士の呪霊はメカ丸に着地する
次の瞬間、戦闘ヘリの爆撃のような音が響き渡る
巨大なメカ丸を盾にして美穂が与幸吉を掴んで隠れる
「み、美穂!?な、なんでここに…!」
美穂は究極メカ丸を指差し
「前に貸して貰ったメカ丸の影に呪霊を仕込んでおいた、情報が流れた件に関しては五条から聞いたから東堂以外の影に呪霊を隠しておいた」
裏切っていたら厄介だなと思ったメカ丸に特級相当の呪霊を隠したと言う
「そうか」
つらそうな顔をする与幸吉を見て
「悔やむのは後、とりあえず、ここは避難、絶対に死なないこと」
そう言って美穂がロボットから外に出る
真人が荒御霊と太宰霊怨と戦っていた。
(…衰弱の術式を付与し続けてるのにそれに耐えた上で太宰霊怨と戦っている…荒御霊じゃ部が悪いか)
帳の外に逃げるために橋の上に登る
「やぁ、結友。相変わらず行動が早いね」
死んだはずの兄がそこに立っていた。
髪の間から見えるツギハギの傷
(別人だな)
死体に取り憑く呪霊かなと思ったが、呪霊特有の気配はしない
「死体を弄ぶ趣味があるんだ」
そう呟くと夏油傑のフリをしようとしていただろうが、諦めたのか『本当に運が悪いと言うか、お前らなんなの』と話す
話は積もるほどあるが、与幸吉を避難させるためにコイツは無視した方が早い。
太宰霊怨が真人を瀕死に追いやったのを確認し荒御霊と太宰霊怨を下がらせ、死神に与幸吉を背負ってもらい、京都校の方に飛ばせる
「!?美穂!!」
直感で理解する、この男はこの場で殺さなければならない。
あのツギハギ呪霊も瀕死の重傷であって倒せてはいない。
「!!」
あの男が無数の呪霊を出し攻撃をしてくる
縁切り神社で手に入れた呪霊…名前を付けるとしたら断絶呪霊のハサミが呪霊を切り刻む
呪霊操術の強みは圧倒的な手数、そして、特級呪霊を支配下に置き、完全に操れるということ
そして、百鬼夜行で夏油傑が見せた極の番・うずまき
低級呪霊のリサイクルにしかならないのだが、極の番を研究して行く過程で見つけた技
それは…
「!君は本当に出鱈目だなっ!!」
極の番・うずまき『術式抽出』
特級呪霊・原龍爆破の術式を抽出する
本来なら複数回使うことは不可能であり、この攻撃を持ってすれば原龍爆破は死ぬはずなのだが、数年前に取り込んだ便利な呪霊のおかげで何度も何回でも抽出が出来る。
しかし、特級呪霊の術式を抽出すると言うことは攻撃力が落ち、使い物にならなくなる
その欠点を縛りによって克服する
「領域展開・灼熱堕片影」
美穂の手から超巨大な光が発生する
それは【己の寿命を削ること】により破壊力を底上げする
呪霊操術が相伝として取り込まれて居ないことの不思議さ、過去千年を遡っても存在しなかった理由。
それは、呪霊を喰らい続けた者の末路にハッピーエンドなんて待ち構えて居ないからだ。
そもそも、呪術師というのは長生きできない生き物だろうが、その中で呪霊操術持ちなんてのは、呪霊になる確率・呪詛師になる方がよっぽど利点であるのだから
ダムがとてつもない音と共に破壊され、目の前にキノコ雲が発生する
地下への階段がたまたまあり、そこに死神が与幸吉と共に退避したおかげで事なきを得たが…
「な、なんだ…これは…」
ダムが跡形もなく消し飛んでいる。
ダムに溜まっていた水も全て蒸発し、ダムの原型も消し飛んでいる。
「美穂!!」
与幸吉が行こうとするのを死神が制する
『………』
「…?なんだ?」
死神は無言でダムの方に戻っていく
与幸吉もその後に続いて行く
「…メカ丸君、大丈夫…?」
ボロボロの美穂がクレーターのど真ん中にいた。
「美穂!!一体何が…」
「説明は…後でするから…ちょっと寝させて…」
フラフラする美穂を死神が抱き上げる
「…一度高専に…」
気絶した美穂を見て死神が口を開く
『案内しろ』と威圧的な声が聞こえてくる
どんな顔をして高専に戻れば良いのか分からなかった。
でも、美穂の疲弊さを見ればそんな我儘は言っていられなかった。
与幸吉として高専に来るのは初めてだった。
来た折、歌姫から色々問い詰められるが美穂の怪我を見て保健室に通してくれる
歌姫に呪詛師達が徒党を組んで渋谷で事を起こす算段だった事を伝え、数時間遅れて五条悟も京都に来るとのことだった。
「……それで?そいつはなんで出っ放しなの?」
美穂の目の前に座って威圧感を出している死神
「…俺には分からなくて、その…」
先ほど、禪院家所以の者と上層部の数人がやって来て裏切り行為をした与幸吉を責め立て処刑だと喚く彼らを死神が威圧しつつ彼らの術式を強制解除し、与幸吉の死刑や暗殺を強制的にねじ伏せていた。
まるで、美穂の意思を汲んだように勝手に与幸吉を助けていた。
「おまたー、待った?」
五条悟がハイテンションでやってくる
「待ってない」
歌姫はそう言いつつも与幸吉の裏切りを弁明することを言いつつ、ダムとその周辺を吹き飛ばした美穂に関しての話をし出す
ある程度聞いた後、五条は『生きる目標がないからってやり過ぎにも程があるでしょ』と言いつつ死神を見て
「お前って本当は流暢に話せるけど、話せないフリしてるだけでしょ」
『………』
死神は相変わらず無言で五条を見る
死神は話す気がないのか、美穂が起きたのを見計らってその場から掻き消える
「おはよう、美穂」
五条の言葉に「おはよう…」と返す
「メカ丸君は無事?」
「うん、処刑は無しさたった一度の過ちも許せない上層部なんて要らないしね、それと、美穂、ダムの存在そのものが消し飛んでたし、なんなら水も蒸発してるし市街地の方にも爆風が来て相当な被害を被ったけど、誰使った?」
「………」
シラァと視線を逸らす美穂
「原龍だよね?かなりの縛りかけてあの威力って普通にヤバいし、与君の前に美穂が秘匿死刑になるよ?」
その言葉に「大丈夫、私殺したら原龍が解き放たれてもっとやばくなるから秘匿死刑には出来ないよ」と親指を立てる
「…まぁそうなんだけどさ、その対処に走らされるの僕だからまぁ、すっごい言いたいことあるんだけど、まぁいいや」
それから五条はメカ丸と歌姫を見る
「与君の秘匿死刑は美穂の頼みだ、なんとかしてみるよ、それと、美穂も死刑だとか言うだろうけど、ハイリスクしかないから流石の上も警戒するだろうから大丈夫さ」
五条の言葉に歌姫が安心したように胸を撫で下ろす
「まぁ何より厄介なのは禪院家だからね?あの家、危機感より足の引っ張り合いをとるような家だから」
今の当主が生きてる限り大丈夫だと思うけど、と言われ、手を振って居なくなる