夏油傑の妹は幸せに生きたかった   作:アルトリア・ブラック(Main)

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心霊映像は見慣れてるけど、オカルト小説は怖すぎてお腹痛い『近畿地方のある場所について』が怖すぎて…泣く


第6話『百鬼夜行・下』

補助監督を呪殺して行き、最後の一人が綺麗事を言ったのにイラつく

 

コイツは田舎で呪術師がどんな扱い受けているか知らないだろう

 

「美々子〜?アイツゲロムカつかねぇ?」

「吊るす?菜々子」

 

菜々子が術式を使用しようとしたとき…

 

ガシャン

 

「「!!?」」

 

美々子と菜々子の間に兵士姿の呪霊がいた。

 

菜々子がカメラを構えるが、その呪霊を前にするとカメラが正常に機能しなくなり、術式が発動できなくなる

 

(術式が使えない…!?)

 

「伊地知さん大丈夫?」

 

呪霊の男は二人から離れつつこちらを見ていた

 

「禪院さん…!」

 

「この二人?呪詛師って」

 

バッと警戒態勢になるが、兵士姿の呪霊で術式が使えなくなっていた。

 

「そうなりますが…まだ未成年です」

 

禪院と呼ばれた女性は背後の首吊り死体を見て

 

「未成年でもそこそこ良い歳と見た。若いとはいえ、人を殺したなら罰は然るべき」

 

そう言った次の瞬間、目の前が真っ暗になる

 

「「!!」」

 

「でも手加減して、過度霊」

 

領域展開『観衆大業縁』

 

四方八方に目が出現し、ギッと二人を見る

 

 

 

 

過度霊は人を殺すことには向いていない一級呪霊だ

 

でも、それは物理的に殺す事ができないのであって、精神的に死に追いやる事は可能なイかれた性能だ

 

(…まぁ実際問題、元からイカれてる人間には何も効かないけど…)

 

直哉にこの呪霊をけしかけたが本人は「キショ」というだけでまるで堪えていなかった。

 

領域を使えようと、この呪霊はあくまで一級以下もとい精神が健常者な人間にしか通用しない術式持ちだ

 

ミミナナが子供返りしたように震えながら抱き締め合いながら泣いていた

 

「一体何が…」

 

隣にいた伊地知がそう聞いて来る

 

「その人間のつらい時代に精神を巻き戻す術式、つらい時代がないなら精神を破壊する夢を見させる」

 

過度霊を下がらせ二人を見て

 

「……呪術師に拾われる事は幸せな事じゃないのに」

 

呪霊操術を研究する過程で見つけたのは、自分の支配下に置いた呪霊の視界を共有することだ

 

とはいえ、ある程度意思疎通の取れる呪霊じゃないと無理だし、深入りすると戻って来られない危険性がある。

 

過度霊の視点(通常位置)で見た二人のつらい記憶は、文字通りつらい記憶だった。

 

少し離れた所からドカーン!という音が聞こえて来る

 

「伊地知さん、あとは大丈夫?」

 

そう聞くと「はい、大丈夫です」と言われ、高専に戻るためにそっちに行こうとすると…

 

呪霊の大群が襲いかかって来る

 

300はいた呪霊が死神によって切り刻まれる

 

暴れさせている荒御霊がある程度呪霊をぶっ殺したのを確認し、その場で消えさせる

 

高専に来ると辺りは崩壊しており、里香の呪力で満ちていた。

 

大方、里香と夏油が殺し合ってこうなったのだろう。

 

夏油の微かな呪力を辿って行くと

 

「驚いた、結友が来るなんてね」

 

悟が来ると思ったんだけどと言われる

 

「‥死に際が妹で嬉しいでしょ」

 

自分を殺そうとした高専の服を着た兄を思い出す

 

あの時と逆だなと思っていると、後ろを走っていた死神が追いついて来る

 

『………』

 

死神を見た夏油は笑いながら

 

「その呪霊に関して知りたいなら私たちの家系を遡ると良いよ、きっと驚くんじゃないかな」

 

「?」

 

兄は笑いながら右肩を押さえ

 

「悟じゃなくて結友なのは複雑な気分でもあるよ、私が捨てた過去が大鎌を持って追って来るなんて思わなかった」

 

「…私にとって生きる理由は貴方を殴り殺すか再起不能にすることだったから」

 

幼い自分が兄の元に走って行く

 

「…幼い頃はどうしてだとか許せないとか思ってたけど、最近は凄くどうでも良くなったんだ」

 

夏油傑の絶望は禪院家の闇の部分と大した事がなかった。

 

非術師のせいで呪術師が死ぬ世界なんて、呪術師が呪術師で何度も繰り返している。

 

「…禪院家はそんなにひどいのかい」

 

「そりゃもう」

 

兄は笑いながら『どこも地獄だな…』と言われる

 

「…それでも猿どもは嫌いだ。誰かのために戦っている人間が非術師によって殺されるのは我慢できなかった。この世界では心の底から笑えなかった」

 

そう呟く兄に

 

「………」

 

兄に抱きついて泣く幼い自分が見える

 

「……お兄ちゃん」

 

「?」

 

「ーーーー」

 

呟くように言うと兄は微笑み

 

「最期ぐらい呪いの言葉くらい、吐いて良いだろうに」

 

そう言われる。

 

【極の番・うずまき】

 

小さい殺傷能力に全振りしたうずまきを出す。

 

「さようなら」

 

それだけ呟いてうずまぎで抽出した呪霊の術式で兄に止めをさす

 

「………」

 

兄に抱きついて倒れる幼い自分を見て空を見上げると、ちょうど雨が降って来る

 

 

 

 

 

 

「結友、風邪ひいちゃうよ」

 

雨に打たれている結友に声をかける

 

横にいた兵士が何も言わず同じく雨に打たれていた

 

「殺したよ」

 

「うん」

 

「悟が来ると思ったのにって言ってた」

 

「結友より先に来ようと思ったけど、早かったね」

 

「後のことはこっちでやるから帰りな」

 

「うん」

 

『………』

 

兵士と目が合い、呪霊の癖に意思が伝わったのか、結友の腕を強引にひいて歩いて行く

 

(正確に言えば呪霊になったの方が正しいだろうけど)

 

兵士の後ろ姿を見て考え込む

 

生前は頭がイカれてるのかってぐらい戦闘狂で、下手に呪力が多かった分ああなったのだろう。

 

「だからって術式強制キャンセルってなんなの?あの時代の人間ってフィジカルしかいないの?」

 

そう呟きつつ、夏油の遺体の元に行くと

 

「お前、ほんと性格悪いね」

 

物言わぬようになった親友の遺体を見て呟く

 

家族に看取られて死ぬなんて良かったなと呟きつつ立ち上がる。

 

 

 

 

その翌日、京都に帰る準備をしつつ、東京でお世話になった人間に挨拶していた。

 

「京都に帰んのか?」

 

真希から声をかけられて「うん」と返す

 

「それより真希ちゃんはもう怪我大丈夫なの?」

 

そう言うと真希は『憂太と家入さんの反転のおかげで平気だよ』と

 

話していると…

 

「真希〜!美穂〜これから任務だよ〜!!」

 

悟が元気よく入って来る

 

「唐突かよ」

 

黒い制服になった乙骨が悟の隣におり、どうもと挨拶してくれる

 

「私と美穂に?」

 

「それと憂太、先輩術師としてイチから教えてあげて」

 

「それは教師の仕事では?」

 

「言ってやるな」

 

 

「任務はここ」

 

自分たちの目の前に現れた立ち入り禁止と書かれた一軒家にん?となる真希と憂太の二人

 

「呪霊の気配しませんよ?」

 

乙骨の言葉に『呪霊はいないよ、ここね、夏油傑がいた家』

 

「「!!!」」

 

「呪力が溜まり始めたから定期的に中に入ることになってるんだ」

 

元気いっぱいに悟が説明していると…

 

乙骨が中を見つつちょくちょく美穂の後ろを見ていた。

 

悟が待ってるよーと言っていなくなる。

 

美穂はまっすぐ家に入る

 

「ま、待って!」

 

室内を探索しつつ、呪霊が湧いていないのを確認する一行の中、美穂はかつての自分の部屋を見たあと、両親の部屋だった場所に行く

 

「…?」

 

棚を開けた時に間から何かが落ちて来る

 

古ぼけた写真、祖父祖母の顔はわかる

 

「?」

 

「美穂?何してんだ?」

 

真希が覗き込んで来る

 

「ん?おい、美穂、ここに写ってるやつお前の呪霊に似てねえか?」

 

剣を地面にぶっ刺して堂々と座っている貫禄のある男性

 

『私たちの家系を調べると良い』

 

そう言われたのを思い出し、そっと写真を戻す

 

「こっちには何もなかったありがとう」

 

そう言って真希達と外に出る

 

家系の調査は、京都に帰ってからやろうと思いつつ死神を隣に出すと無言で家の方を見ていた。

 

『憂太は菅原道真の子孫だった。憂太が里香に呪いをかけたんだ』

 

逆だと思われていたことが違った。

 

つまり…

 

「あの時は助けてくれてありがとう。貴方が居なかったら終わっていたかもしれない」

 

そう話すと『………』と珍しく無言を突き通される

 

その写真一枚だけ持ち、取り壊して欲しいと言うのを補助監督に伝えて背中を向ける

 

これからの人生は夏油結友としてではなく、禪院美穂として生きていくことを決めた。

 

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