幻装探偵ディランド-ビフォア・プリクエル-   作:天梟うらら

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不思議な青年の、なんて事ないお話です


前日譚の二:ある春の不穏な一幕

 もうすぐで暑くなりそうな頃、僕は公園で休憩を取っていた。

「はぁ……」

 ベンチに座って空を見上げる。

 太陽が無駄に眩しく輝いている。

「どうするかな……」

 今日の予定が消滅して、僕は暇を弄んでいた。

 こう突然暇になるとやる気が一気に溶けてしまうな。

『ガゥ……』

 ふと、僕の前から鳴き声がする。

「なんだ、居たのか」

 本当にちょうど真正面。

 身体が淡く光ってる白い虎が居た。

 その頭の上には、物言わぬ小さい人型の、多分妖精とか言う奴。

 両方揃って不安そうな顔をしてる。

 この虎と妖精は、物心付いた時にはそばに居た、腐れ縁みたいな存在。

 なんだかんだ触れるし、事あるごとに僕を助けてくれる。

 そんななのに周りの人間には見えないようで、その点は安心なん--。

「おぉ、こんな所で虎を見るとはね」

 ふと、声をかけられた。

 声のするほうを見れば、明らかに虎達を見ていた。

「……見えてるんですか、それ」

 現れたのは、一見柔らかそうな印象を受ける二十代程の男。

 目に浮かんでる菱形の模様が、どこか不気味に見える。

「そうだね。ぼくにはハッキリと」

 相手はそのまま僕の隣へと座ってきて。

 虎達は明らかに警戒を強めてる。

 ……二体が見える相手とか初めてだからな……。

魔海(まうみ)(あかつき)君、だよね?」

 男はそんな二体を意に介した様子も無く僕を見ては聞いてくる。

「……人に名前を聞く時は先に名乗るものですよ」

 まさか、名前が知られてるとは思わなかった。

 得体が知れない。

 ただ、間違いなく僕に用がある事は分かった。

「あぁゴメン。ぼくは東雲(しののめ)(あきら)……いや、もう捨てる名だったっけ……。そうだね、プトレマイオスとでも名乗っておこうかな」

「……はぁ、偽名で名乗る意味ありますか?」

 明らかに東雲晃とか言うのが本名臭いけど……それも偽名なのか……?

「ゴメンゴメン。自分の名前が嫌いでさ。まぁすぐに変わるだろうし適当でいいよ」

 言ってる意味は理解できないけど、敵意の類は感じられない。

「……さて、暁君。君にとても面白い話とお願いがあるんだけど……どうかな?」

 この手の話題は大抵詐欺かなんかだが……。

「……とりあえずお話だけ聞かせてもらいますよ。詳細くらいは教えてもらわないと」

 不思議と話だけでも聞いてみようと思ってしまった。

「それもそっか。……えーっとね、君と、そこに居る二人に関わる話なんだけど……」

 

 

 --今思えば、これが僕の罪の始まりで、運命が決まった瞬間なのかもしれない。

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