ぼっち・ざ……ぼっちちゃん?   作:あったかもこもこ

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誤字報告ありがとう!
それと重大なミスが発覚したので修正したよ!

一つ言いたいことは
ぼっちと主人公は同年代ですっ!!


3話 それではまた明後日

 

 なんやかんやあって、あみちゃんがSTARRYのバイトとして参加することになった。薄暗いSTARRY内では、明るい赤色がよく見えるので彼女はこの場所ではとても目立つ存在。

 この前のサボり発言から、うちのSTARRYにリョウ含めサボり魔が二人になるかと危惧されたがそんなことはなく、入ったうちから要領よく仕事をこなし、対応力もとても高いので、一気にうちの主戦力となった。

 表情が乏しいのが玉に瑕だが、彼女の顔面レベルならある種プラスに働くだろう。リョウと一緒に受付に立たせると、客寄せパンダとして、うちの人気爆上がり間違いなしだ。多分。

 今日みたいに、学生にとって貴重な休日もバイトしに来てくれるのでお姉ちゃんもあたしもとても助かっているのが現状だ。

 

「いやぁー、あみちゃんよく働いてくれて助かるよ」

「いえいえ」

「店長のダブルチェックにも付き合ってくれますもんねぇ」

「いえいえ」

「あみちゃんお菓子食べる?」

「なでなでしてあげます」

 

 彼女は早速大人二人組を魅了して、年長者からの人気者になった。

 PAさんとは何があったのか、いつの間にか仲良くなってるし。

 あたしのお姉ちゃんなんかは最初からあみちゃんにメロメロだったような気がする。最初、あみちゃんを紹介しに行った日なんて血走った目で「……採用」って面接も無しに言うもんだから、姉の正気を疑ったもんだ。

 

「ちょっとそこ大人二人組!」

「「ん?」」

「あんまりベタベタしないっ! あみちゃん困ってるでしょ!」

「いえいえ」

「もー! あみちゃんも拒否しないと永遠にベタベタされるよっ」

 

 はぁ。

 ため息をひとつ。

 どこかフワフワしている彼女が心配になる。とにかく可愛いくて素直なので、二人ともが気にいるのは分かる。とくにお姉ちゃんなんて可愛いモノ好きはクリーンヒットだろう。

 

 結局、お菓子もなでなでももらっている彼女を見て不安な感情が芽生えた。

 こんな調子で変な大人に引っかからないかあたし心配です。最近知ったが、あみちゃん一人暮らしをしているらしい。あたしは本当に心配です。

 

「あみちゃんもっと危機感持った方がいいよ。世の中にはわるーーい大人がいっぱい! いるんだからね!」

 

 なんて言いながらも、あたしも彼女をナデナデしてみる。

 頭をポンポン。手櫛でさらさらりと。手触りの良いふわふわな髪の毛からは何のトリートメント使っているのか、良い香りがフワッと漂ってくる。

 目を細めて気持ちよさそうにしているので、あたしも嬉しくなる。

 なんだこの可愛い生き物は。持って帰ってもいいですか?

 

「いい? あみちゃん、とくに付き合ってはいけない3Bには気をつけるんだよ。ちなみに3Bはベーシスト、ベーシスト、ベーシストのことだからね」

 

 撫でながらそう言うと、テキトーな感じで「うん」と小さく返事がかえってきた。本当に分かってる?

 

「ねぇ虹夏先輩、ギタリストとドラマーはどうなの?」

「ギタリストはギリアウト。ドラマーは……ギリセーフで」

「ふーん」

 

 正直、今の質問は自我が出た。

 仕方がないだろう。こんな声で! こんな顔で! そのうちにドラマーは無理なんて真っ当に言われたらと思うと……あれ? なんかゾクゾクしてきたな。

 

「と、とにかく! ベーシストには気をつけるんだよ!」

「うん分かった」

 

 すっごいテキトーな返事に聞こえたんだけど、気のせいかな。

 

「バイトリーダーあっちの掃除一緒にしよう」

「あ、リョウさん」

 

 おっと、噂をすればなんとやら、ベーシストであるリョウがやって来た。

 一見、普通の会話に聞こえるそれ。だがあたしには分かる。裏に隠れた「サボろうぜ」という意思が。

 

「はいそこリョウ! あみちゃん使ってサボろうとしないっ!」

「違うけど?」

 

 見え見えな嘘。

 ジトっとした視線を送れば、山田の目は見事な水泳クロールを披露した。

 仕事の出来るあみちゃんの事をバイトリーダーなんて呼んで。先輩としての威厳はないのか。そう問うてみたところ「威厳はあるよ。よく奢ってもらってるし」とのこと。お前ぇ。

 しかも、私の知らない所で結構仲良くやってるらしく、最近私の家に泊まりに来ないのも、なんとあみちゃんの家に泊まってるからとのこと。お前ぇっ!

 

「カモーン、バイトリーダー」

「はい、リョウさん」

「あっ!ちょっと……」

 

 少し目を離した隙にリョウが私の包囲を抜け出す。

 あみちゃんも、危機感持ってと言ったばかりなのにのこのことついて行って。そこのそいつがベーシストですって言わなきゃ分かんないのかな。

 

「もう……まったく」

 

 まったくもって羨ましい。

 

 

────

──

 

 

「実は昨日ホラー映画借りたんだよね」

 

 掃除を手早く終わらせたところで、リョウさんから話題が振られる。

 しかし私はホラーが苦手なので、そういう話はもっぱらダメだ。なのであまり詳しく話せるような内容ではない。

 

「私、怖いの苦手」

「ちなみにこんなモノなんだけど」

「聞いて?」

 

 なんで今現物持ってるのかはさておき、見せられたホラー映画の表紙に「うっ」と後ずさる。

 『恐怖の3本指』とでかでかと書かれたそれは、なんだか微妙そうな作品……いわゆるB級といわれるモノに見える。しかし、A級だろうがB級だろうが苦手なものは苦手で、あまり長く見ていたくもない。

 

「……へー、見終わったら感想聞かせてね」

 

 若干目を逸らしながら。

 本当は感想なんか聞きたくはないが、ここは社交辞令ということで……

 

「その必要はない」

「?」

 

 フッとしたしたり顔。

 嫌な予感がよぎる。

 

「リーダーの家で一緒に見よう」

「……えっ?」

 

 リョウさん?

 信じられないものを見るかのように視線を送るが、どこ吹く風である。

 

「いや」

 

 そう言いながらぷいっと顔背けると、リョウさんに優しく顔を包まれて元の方向へと戻される。

 結果見つめ合う形になる。

 

「いやじゃない」

「……いや」

「大丈夫、年齢規制もないし。きっとそんなに怖くない」

「……」

「とりあえず一緒に帰ろう」

 

 まぁそれくらいなら。

 

──むにむに

 

 頬を引っ張らないでほしい。

 

────

──

 

──♪

 

 映画はしっかり楽しみたいよねってことでオヤツやら飲み物を買いにコンビニに来たところだ。

 そう、結局押しに負け、家へと招待してしまったのである。

 押しに弱い?いや引き下がらないリョウさんが悪い。許すまじリョウさん。

 

「あみ、これ美味しそう」

 

 何か考えでもあるのか、二人きりになるとリョウさんはバイトリーダーではなく私を「あみ」と、下の名前で呼ぶ。バイトリーダーって呼びにくいだろうと、いつでも「あみ」と呼んでいいよと言ってもあまり改善はされない。

 あれ欲しいこれ欲しいと次々に商品カゴに入れるリョウさんを眺めながら、やっぱり何か考えがあるのか、と思う。

 

「これも美味しそう」

「もちもちょこ……確かに美味しそう」

 

 ガサリ。新たに買う商品が追加される。

 私は大丈夫だけど、リョウさん太らないのかなぁ。

 リョウさんって結構スタイル良いし。年頃の女の子ってそういうの気にするものなんじゃないのか。

 あと、これだけ買ってリョウさんはお会計大丈夫なのか。

 大体こういうパターンは私が払う事になるけど……

 

「お会計3180円でーす。お支払い方法を選んでください」

 

「あみ、貸しといて」

「……そんなことだろうと思ってたよ」

 

────

──

 

 自宅に着くと、リョウさんと私は慣れた足取りでリビングへと向かう。

 実は何度か招待した事があるので、何も言わなくてトイレの場所だったりをリョウさんは把握している。

 私より先を歩く姿はすっかり見慣れたものだ。

 

「ん、それ美味しそう、一口ちょうだい」

「はいあーん」

 

 リビングに着くと、休憩がてらに買ってきたスイーツ等を食べる。

 バイトで疲れた体を労り。固形、液体と喉の中を通っていく。

 リョウさんが気になった物があれば、私の方から食べさせることがしばしば……あっ一口でかい。

 

「ん、美味しい」

「それはよかったね」

 

 己がどれだけの量を食べたのか……齧り後を見せつけてみるが。案の定、反応はない。それどころか、もう一口食べようとしたので、慌てて手を引っ込める。

 あ、ダメだ齧られてる。

 

「あみが悪い」

「もう……」

 

 こうしていると、初めてリョウさんと出会った時のこと思い出す。リョウさんは覚えてるかな?

 リョウさんとの出会いはSTARRY……ではなく、そこら辺の道端だった。出会いは唐突で。読んで字の如く、道草食べてたリョウさんに私が話しかけたのがきっかけだ。「お腹壊しちゃうよ?」と。

 そこからとんとん拍子で自宅に招待する事になり、今に至る。

 

「あみ、そろそろ準備お願い」

「……」

「あみ?」

 

 さて、時間が来てしまったようだ。

 

「私ホラー映画苦手。他のにしない?」

「ふーん」

 

「……」

「……」

 

 リョウさんの手にある照明のリモコンが操られる。

 部屋の中は薄暗くなり、すっかり雰囲気が出来上がる。ホラー映画を見る雰囲気がだ。

 

「なにしてるの?早く見ようよ」

「……うん、そうだね」

 

 ふーっと一息吐く。

 リョウさん……そんなにそれ見たいのね。私は見たくないよ。

 しぶしぶと準備を済ませ、あとは再生ボタンを押すだけとなる。リョウさんに視線をやれば。早く、と促すように首を横に振られた。

 ソファに二人で並んで。懐にはコンビニで買ったお菓子を構える。

 硬直状態。私は見事にフリーズした。

 

「あみ、リモコンかして」

「……うん」

 

 結局リモコンはリョウさんの手に回り、ノータイムで再生ボタンが押された。

 

『恐怖の三本指』

 

 テレビにはおどろおどろしいフォントで書かれた題名がデカデカと映し出される。

 生唾を飲み込む音が聞こえる。もちろん私だ。

 リョウさんの方をチラリと見ると、なぜかジッと眼差しを向けられてることに気づく。

 

「あみ、もっと近くに寄ってもいいよ。怖いんでしょ?」

「うん……でも、いいの?」

「ん、どんとこい」

 

 そう言うのでお言葉に甘えて、臀部を上げリョウさんの方へとずる。肩と肩の間は拳一つ分ほどの隙間を開けて、移動は完了する。

 ちょっと近すぎたかも。でもリョウさん何も言わないから、まぁいいか。

 

「……」

「……」

 

 本当に何も言わないなぁ。

 見てる時は集中するタイプなのかも。

 薄目で画面を確認してみれば、ちょうど山場のシーンが流れており……

 

「ひっ……」

「……」

 

 ついリョウさんの方へと寄ってしまう。

 腕が当たり、胸が当たる。

 リョウさんのフワッとした髪の毛が頬を撫でるのを感じた。

 薄着ってほどでもないが、密着してしまっているのでリョウさんの体温が伝わる。

 

「あ、ごめん」

「……」

 

 しかし反応がない。

 怒ってるのかな、と思い顔伺えばいつもと変わらぬポーカーフェイスがあるのみ。

 寒気を感じる映像から現実に暖かさを求めて、もうちょっと触れていたくなる。

 

「ね、もっと触ってもいい?」

「……ん」

 

 下から覗き込むようにそう言えば、ようやくリョウさんの重たい口が開く。

 了承を得たので、リョウさんの腕に手を回し、暖かさに身を寄せる。

 

「……」

「……」

「ひっ……」

「!……」

 

「ひぅ……リョウ……さ」

「っ……」

 

────

──

 

「案外面白かったね」

 

 ラスト、悪霊からの攻撃をまさかのローリング回避からのアッパーで退散させるとは思わなかった。

 

「面白かった……うん」

「?」

 

 リョウさんの様子がおかしい。どうも煮え切らない様子で、ぼーっとしているようにも見える。

 おーいと手を顔面付近で振ると、ようやく正気に戻ったようだ。

 

「リョウさん今日は泊まってく?」

「いや、いい……これ以上は

「そう?それじゃまた」

「うん、また……」

 

 若干ふらついてるように見えるその背中を、私は不安げに見送った。

 

 

 

 

 

────

──

 

 

 

 

「お腹壊しちゃうよ?」

「ムグ……」

 

 気に入ったベースがあったので、衝動買いした結果。またも草を食べる事になること二日目。

 そんな時に出会ったのだ。赤髪の少女と。

 

「同じ制服だね。もしかして先輩かな?」

「モグ……二年の山田リョウ」

「あっ、やっぱり」

 

 パチンと手を合わせると彼女の赤束が揺れる。

 反射の少ない水色の瞳からは感情が読み取りづらく、何を考えているのか分からない。

 

「とりあえず、これ食べて」

 

 そう言って鞄から取り出したのは一つのパンだった。

 

「はいあーん」

「自分で食べれる」

「あーん」

「……」

 

 しぶしぶそれを口に含むと、彼女は満足げな顔を浮かべる。

 

「何味だと思う?」

「……パイナップル?」

「正解はこれ」

 

 パイナップル焼きそばあんドーナツパン。

 「うげ」と顔を顰める。

 

「もしかして実験台にした?」

「ふふ、そうだね、実験台にしちゃった」

 

 彼女は、じゃあ私もひとくちと、私の食べたところをかぶりつく。

 自分で言うのもあれだけど、そこ、さっきまで草食べてた人がかじった場所なんだけど。

 

「うーん、新しい味だね」

「それ、テレビで不味い時に言うやつ」

「あ、バレた?」

 

てへっとしたちゃめっけは伝わるが、表情が無表情なので、雰囲気と瞳に映る姿からの温度差が激しい。

 

「ちなみに私は結構いけた」

「お腹空いてるからでしょ?」

 

 「ぐぅー」と情けなく腹の虫が鳴く。

 どちらかなんて考えるまでもない。

 

「ウチにおいでよ、ご飯作ってあげる」

「いいの?そんなペットみたいに」

「いいよ。なにより足元フラフラだし見てて不安」

 

 そう言われると、だんだん力が抜けてきたように感じる。

 

「あ、そういえば私の名前は言ってなかったね」

 

──私の名前は……

 

 これが彼女、あみとの出会い。

 




下手な自覚はあるんだ、ごめんよぉ(泣)
そのうち、きっと、いつか上手くなるから許してぇ(遺言)
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