誤字報告ありがとうございます。
結構見直してるけど結構ミスしてます結構ショック。
どうしようもなく憧れた。
どうしようもなく魅せられた。
見惚れてしまったのだ。その姿に。そのありように。
浮世離れした
芽生えた翼にも気づかず、
──あぁ。
私は、どうしようもない痴れ者である。
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──
下北沢にある楽器店にふらりと立ち寄った私は、ずらりと並んだ楽器を尻目に店内を吟味中。
店長から貰ったチョーカーを身につけ、ピンクの革紐で赤髪を後頭部低めの位置で縛る。最後に丸メガネをかければ、プライベートスタイルの完成だ。
ポニーテールとなった髪束を揺らしながら、
陳列された楽器を前に思案していると、小さめの身長の店員さんがこちらにやって来ていることに気づく。
「あ、あの、試奏なさいますか?」
「うーん……いえ、見るだけで大丈夫です」
「そ、そうですか。何かあれば遠慮なく仰ってください」
バイトを始めて間もないのか、どこか緊張した様子の店員さん。
小さなツインテールをピョコピョコさせながら話す様が可愛いらしく、つい口角が上がるのが感じた。
「じゃあピックの場所教えてほしいな」
「は、はい!」
せっかく来たんだし、小物も見ておこうと、案内をもとに足を進める。
今日は可愛い系のを攻めてみよっかな。どこかのキャラクターとコラボしたやつなんかもあるし、掘り出し物があるかも。
私のお気に入りは硬めのトライアングル*1だけど、もし使い心地が気に入らなくても、コレクションしたりネックレスやイヤリングに加工もできるし。一石二鳥とはこのことか。
「はい、ここです!下の方にあるので見つけにくかったかもしれませんね」
「うん、ありがとね店員さん」
そう言って微笑めば、店員さんは何故か顔を赤くして、足早に去っていった。なにか怒らせるようなことしたかな?
店内とは思えない早歩きを披露した店員さんを見届けて。さておき、良い物はあるかなと屈んでピックを眺める。
あ、この描かれてるキャラは……アレだ。なんだっけ?スーだったかヌーだったか、ほらアレだよアレ。
あー思い出した。スヌー……
「こっちのはかっこいい……あ、こっちの可愛いけど、うわっ高い!」
背中側から声が聞こえる。
ちらりと首を振ると、おや珍しい。私と同じ赤髪だ。
歳は私と同じ位か。こちらに背を向け、ベースの陳列棚を眺める少女。
悩んでいるのだろう。うむむと唸る様子が微笑ましい。
最近は若い子も楽器屋に結構いるので、こういった光景もそれほど珍しくもない。
「これ!これだわ!」
あ、この子結構渋い。
彼女が手に取ったのは多弦ベース。しかも六弦。
ベースの中でもかなりの技量を求められるそれを、彼女は両手に持って淀みなくレジへと向かっていった。
あの歳で変態ベーシストか。今時の女子高生って凄いな。
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──
「ところであみちゃんってギター弾けたりしないの?」
学校での事。
昼休みの空き教室。昼食の食べ終わり。
喧騒が少し遠くに聞こえる中。虹夏先輩、リョウさん、私での三人で暇を持て余していると、虹夏さんから唐突に疑問を投げられた。
「弾けるには弾ける」
「リョウには聞いてないっ!ねぇあみちゃんどうなのー?」
「弾けるには弾けるよ」
「えぇー!じゃあね、バンド活動とか興味ある!?」
「うーん、今のところないかな」
無難に答えると、たはぁー残念!と大袈裟に残念がる姿に少しの罪悪感。
虹夏ちゃんのどこかで見たことのある形をした、変わったアホ毛が項垂れて、なんだろうアレと疑問感。
「いやぁーあたしらのバンドって現状二人だけなのね。あたしとリョウ、ドラムとベース。リズム隊しか居ないわけ」
「居ないわけ」
居ないわけ、ということはだ。
「なるほど、勧誘だね」
「そゆこと!」
バンドとして活動する予定とは聞いていたが、 聞く限り、2ピースでリズム演奏だけする方向で、という訳でもないだろう。
そうなると、確かにバンドの主軸となるギターとボーカルが居ないのは致命傷だ。
「だから、あみちゃんさえよければ入ってくれないかなぁって」
「リーダー、顔も良いし絶対人気になると思う。グッズも爆売れ間違いなし」
力強く言うリョウさんを見やればリョウさんの目がドルマークになっているのを幻視した。
そんなに人気でないと思うけどなぁ。私地味だし。派手なのは髪だけってね。くるくると前髪をいじりながらそう思う。
「あっ!ちなみにボーカルは?」
再びの問いに対し、答えは否。
首を横に振れば。またも大袈裟に残念がる虹夏先輩。
しょぼーんと項垂れるドリト……アホ毛。
そんなに入ってほしいのかな?
「一応ね、こういうポスターとか使って募集してるんだけど」
「虹夏の手書きポスター。STARRYにも貼ってあるよ」
虹夏先輩がガサゴソと鞄の中身漁って、出てきた物は一枚のA4用紙。
虹夏先輩らしい可愛いらしく丸みをおびたフォントで描かれたそれ。まず目に入ったのは「結束バンド!ギターボーカル募集!」の文字だった。
「結束バンドって、もしかしてバンド名?」
「うぐっ!そこ突いちゃう?」
「ぷふっ、傑作だよね」
「寒いし!将来絶対変えるから!」
「なんで?可愛いのに」
やいやい言い合う二人をよそにポスターを眺める。
新人の方は見学のみでも大歓迎!!
お気軽にSTARRYスタッフまで。
質素な内容の横には可愛らしい兎の絵が描かれている。虹夏先輩、結構絵上手いな。
「あ、そういえば」
「なに?リョウ」
「メンバー募集について興味あるって人いたよ」
「……」
「……」
「……」
リョウさんそれは……
「先に、言えぇぇぇぇぇ!!!」
「あばばば」
リョウさんが揺さぶられて、青い残像が生まれる。
流石はドラマーだ。手首の力がよく効いている。
摩擦する二人をよそに、私は虹夏先輩の技量に感心した。
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──
「初めまして!喜多郁代です!気軽に喜多ちゃんって呼んでくださいっ!」
「はい喜多ちゃんよろしくね!」
「ん、よろしく」
と、そんな会話が遠くから聞こえてくる。
早速とばかりにリョウさんが連れてきた人は、いわゆる陽キャと言われる部類。アクセサリーとかは付けてないけど、スカート折り曲げてますっというか。バレない程度に化粧してますっていうか。
パッとして明るい雰囲気は、薄暗いライブスタジオ内を照らしてるかのようだ。
──キターーン!
いや、本当になんか光ってない?気のせい?
「ずいぶん明るいやつが入ってきたな」
「どちらかというと店長って暗めですもんね、浄化されちゃいます?」
「なぁにが浄化だ」
私は虹夏さん達のバンドのメンバーではないため、あちらの席には出席していない。
こちら側の、店長、PAさん、私での会合だ。
「あたしはてっきりあみちゃんがメンバーになるもんだと思ってたけどな」
「あ、それ私もです」
「音楽は好きですけど、今はあまりバンド活動というのはちょっと」
自分にはOouTubeの活動もあるしと、心の中で言い訳。
「まぁ、そういうこともあるだろ」
「年頃ですもんねぇ。高校生といったらやりたい盛り──」
「おい言い方。あみちゃんの教育に悪いだろ」
「別に他意はないですけどぉー」
二人の言い争い?に耳を傾けながら。
良い子りんご100。チョイスが可愛らしい店長さんから貰ったジュースを一口。
「あと、言うほどあみちゃん純粋じゃないですもんねぇ」
突然の飛び火。
ぐふっと液体が喉に詰まる。
危ない。吹き出しそうになった。
急に矛先を私に向けないでくださいPAさん。
「……おいどういう事だ!説明しろ!お前あみちゃんに何かしたのか!?」
「別に何もしてませんよー。ねぇー?あみちゃん」
「……そう、ですね」
ちょっとした悪戯。
勘違いが起こるよう。片腕を抱いて、身をよじりながら、目を伏せて言う。
すると二人の顔色がみるみるうちに変わっていく。熱の赤。冷の青へと。
「だぁぁっ!!とうとうやりやがったな!!」
「あみちゃん!?」
べー。仕返し。
舌をちろりと出すと、急に二人して心臓を抑えはじめた。
「え?そんな急に……大丈夫ですか?」
「ゴフっ大丈夫。致命傷で済んだから」
「同じく」
「それ大丈夫じゃありませんよね?」
────
──
「で、どうする早速合わせの練習する?」
「うーん、会って今日やるには早いんじゃない?」
「そ、そうですよ。……あ!私まだこのスタジオの事詳しくないので、色々教えていただけると……」
現状、ギター弾けると嘘をついているのでリョウ先輩の提案はとても困る。
合わせって、一緒に練習するって事でしょ?そんなのしたら間違いなく嘘が一発でバレてしまうわ。
そうしたらきっと……『あはは喜多ちゃん嘘ついてたんだー、へーそういう人なんだー』、『見損なった。もう二度と顔見せないで』って。あぁ!考えたくないぃ!
いや!確かに私が悪いんだけれども!
「あー、それもそうだね!んじゃ、着いてきて!」
「は、はーい」
ごめんなさい先輩方。そのうちに弾けるようになってみせるので、それまで待っていてくださいっ!
「はいまずこちら、やさぐれた大人二人組」
「おい」
「えぇ私もですか?」
まず最初に紹介されたのは、怖そうな二人組。一方は虹夏先輩のお姉さんでこのお店の店長さんの伊知地星歌さん。そしてもう一方がPAさんって……「ぴーえー」ってなにかしら?
「そして、あたしらと同じ高校で、一つ下の後輩のバイトちゃん。喜多ちゃんとは同年代になるのかな?」
「どうも」
一目見た第一印象はお人形。見ているだけで触りたくなるロングの赤髪。ミステリアスな水色の
下北沢の高校の白シャツの上から黒いエプロンを着て。首元にはワンポイント、黒いチョーカーが飾られていた。
──わぁ、とっても綺麗な人。けどあれ?どこかで見たことあるような?
「は、初めまして、私喜多郁代っていいます。喜多ちゃんって呼んでください!……それとあの、どこかで会ったことあります?」
「初めまして、私は吉あみ。確かに初めて会ったとは思えないね。シンパシーを感じるよ」
さらり。互いの赤髪が揺れる。
いや、そういう意味じゃなくて……物理的になんだけども。
「いやぁ、こうして見ると姉妹みたいだね!」
「バイトリーダーの方が身長高いから、姉はバイトリーダーだね」
あら、吉さんってバイトリーダーなのね。
同い年でそこまで凄い人だなんて、なんだか尊敬……
「喜多ちゃん誤解しないで、あみちゃんはバイトリーダーじゃないから。リョウが勝手にそう呼んでるだけだから」
「あ、そうなんですね」
リョウさんの方を見れば、何も考えてなさそうな無表情が一つ。
まぁ!目が死んでるけど、その顔も素敵っ!流石リョウ先輩!
「喜多ちゃんってこういう所初めてでしょ?だから、困ったことがあったらいつでも相談してね」
優しい言葉をかけてくれる吉さん。
ふわりと笑う彼女がとっても綺麗で。
痺れた前頭葉からはいつの間にか言葉が発せられていた。
「吉さんってとっても
──キターーン!!
うわ眩しい……そんな声が聞こえた気がした。
きくりはまだか(ゆいごん)