ぼっち・ざ……ぼっちちゃん?   作:あったかもこもこ

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なんで誤字が
こんなにあんだよ……?
教えはどうなってんだ 教えは!

※誤字脱字報告ありがとうございます。
それと、主人公の名前の読みは吉(よし)です。
吉(きち)派のみんなごめんよ。


5話 きみという花

 

「えぇー……ここで残念なお知らせです」

 

 チケット販売前ということもあって、閑散としたライブハウス内。

 机に腕を預け、顔の前で手を組んだ虹夏先輩の表情はかたい。いつもは爛々と輝く瞳も今は閉ざされており、一文字に結ばれた口元が事の重大さをありありと語っていた。

 

「とうとう喜多ちゃんと音信不通になってしまいました」

「南無……」

「はいそこ、勝手にころさない」

 

 ジャリ。数珠の擦れる音。

 リョウさんの方から小声で「線香買っとこうかな」なんて呟きが聞こえる。リョウさん気が早いです。

 

「あみちゃんの方は、連絡来てたりしない?」

「ううん、駄目。2日前から音信不通」

「ありゃ、あたしらより前に音信不通になってるのか」

 

 頑なに合わせの練習に来ないことは伝わっていたので。

 喜多ちゃんにも事情があるんだろうなと、それとは別に、それとなく何かあったら相談にのるよって感じでメッセージを送ってきたけど。どれものらりくらりと回避された。

 結果、私が面倒くさいナンパ野郎みたいなまま音信不通となってしまった。助けて虹夏先輩。

 

「うーん姿形さえ見えないもんね」

 

 おそらく下北沢に来てないのだろう。

 高校は秀華高校だったはずだし。寄ろうと思わなければ、下北沢に姿が確認される事はない。

 ただ、ちょっと遠出をすれば喜多ちゃんの性格的にどこかでバッタリ会いそうな気がするけど。

 

「せっかくお姉ちゃんからライブ出演の許可もらったのに、これじゃ前途多難だよ」

「どうする?今からでも新しいギターボーカル探す?」

 

 二人からの視線を受ける。

 茶化しのつもりで、エアーギターを披露してみると。リョウさんは無表情。虹夏ちゃんから「あはは」と失笑をもらってしまった。

 吉あみはショックを受けた。

 

「まぁ、喜多ちゃんを信じようよ。きっとライブまでには戻ってきてくれるよ」

「……虹夏がそう言うなら、私はそれでいいよ」

 

 虹夏先輩はこう言う時、明るさでどうにかしようとする。リョウさんも平気そうな顔してるけど、ああ見えてメンタル弱めだから、本当は不安がっているはずだ。

 さてどうなるか。上手くいってくれればいいんだけど。

 正反対な二人の表情を最後に、私は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あみちゃん寝ちゃった?

「分からない」

今なら悪戯でき「起きてるよ」どぅわぁぁ!

 

────

──

 

 休日。

 昼下がりの大通りでの事。

 今日の服装は、ぶかっとした白シャツにネクタイ。下は黒パンツ。さらに黒のキャップを目深く被った、社畜コーデだ。  

 暇だし服でも見て周ろうかなと、るんるんで駅を出た矢先。

 偶然か、特徴的な赤髪を見つけた。

 

「あ、喜多ちゃんだ」

「えっ?」

 

 声をかけると、まるで時が止まったかのようなに凍ってしまった喜多ちゃん。

 側に居る二人組が怪訝そうな顔で喜多ちゃんの顔を横から見つめる。二人組はおそらく学友だろう。

 

「よ、吉さん……」

 

 ギギギと彼女が振り向くと、大粒の汗を流し、焦点の定らない黄緑の瞳がぐるぐると回りはじめる。やがて、可哀想なくらいに全身を震わせて、その顔はみるみるうちに青くなっていった。

 

「はわわわわわわわわっ!」

「えっ!? 喜多ちゃん大丈夫!?」

「ちょっ!? 大丈夫なのこれ!? 赤と青でサーモグラフィーみたいな顔色になってるんだけどっ!?」

 

 えぇ、ちょっと待って。そんな反応されるとちょっとショックなんだけど。なんでそんな化け物に会っちゃったみたいな反応なの?私喜多ちゃんに何かしたかな?

 

「ちょっとあんた喜多ちゃんに何したのよっ!」

「場合によっちゃぁ、私の右ストレートが火を吹くよ!」

 

 ここはバトル漫画の世界じゃないから火は吹かないし。右ストレートは普通に傷害なのでやめてほしい。

 この二人だけなんだか世界観違わない? なぜか瞳に火が灯ってるし。

 

「ごめんね、驚かせるつもりはなかったの。ただ喜多ちゃんに会うの久しぶりだから」

 

 帽子を外しながら言うと、怒髪天を衝く勢いだった二人が、動きをピタリと止めた。

 

「おわぁ美形かよ。死んだわ私」

「あ、すみません右ストレートはやめておきます。代わりにキスしてもいいですか?」

「ごめんね、遠慮しておく」

 

 喜多ちゃんの友達、愉快だな。

 

「はっ! 吉さん!?」

「あ、喜多ちゃん戻ってきた」

「おかえりー」

 

 そうこうしている内に、喜多ちゃんは正気に戻ったようだ。

 

「あの、吉さん、私……」

「大丈夫だよ喜多ちゃん。別にどうこうしようとか思ってな──」

 

 ──再び火が灯る。

 

「行きなよ喜多ちゃん」

「え?」

 

 え?

 

「正直、今の喜多ちゃんさ、見ていて痛々しいというか。今日も隙を晒す(ぼうっとしてる)こと多かったし」

「その人と何かあったんなら解決した方がいい。フッ、安心して。私達は二人でもやっていけるから」

 

 なんか変な流れになってない?

 あの、別に責めるつもりもないし。私そんなつもりで話しかけたわけじゃないんだけど。

 ただ、元気にしてるかなーって軽いつもりで……

 

「貴女も! 喜多ちゃんの何なのかは知らないけど、傷つけたりしたらタダじゃおかないから!」

「いや、あの──」

「殴るから!」

「あ、はい」

 

 この二人どうにかして、と思いながら喜多ちゃんを見やると。

 

「吉さん、私覚悟できてます」

 

 瞳に火を灯し、何かの覚悟を決めた喜多ちゃんがいた。

 どうしちゃったの喜多ちゃん?

 

────

──

 

 時は経ち、1時間後。

 出戻りして、喜多ちゃんを自宅へと招くことになった。

 色々話を聞いてみると、実はギターを弾けないことが判明。

 どういう経緯で結束バンドに、と聞くと。

 リョウさんに憧れたこと。

 嘘をついてまで近づきたかったこと。

 リョウさんの娘になりたかったこと、とのことらしい。

 うーん、ロック。

 

「そんな嘘つかなくても二人ならきっと受け入れてくれたと思うな」

「お近づきなれると思って、つい。気付いたらギター買って、気付いたらリョウ先輩に話しかけてたわ」

「喜多ちゃんって結構大物だよね」

 

 行動力の凄まじさに驚愕する。

 目標見つけたらノンストップで進む様はまるで闘牛のようで、そのままリョウさんも轢いちゃわないか些か心配だ。リョウさん細身だし、絶対吹き飛ばされちゃうよ。

 

「私、ギターの練習頑張ったんだけど、全然上手くいかなくて」

「教えてくれる人が居ない環境なら最初は厳しいかもね」

「うん。頑張って押さえてもボンボンって低い音しか鳴らなくてね」

 

 ん?

 

「やっぱり、私には最初からリョウ先輩に近づく権利なんて……」

「ちょっと待って喜多ちゃん」

「?」

「もしかして、それってベースじゃないの?」

「もー、やだなぁ吉さん。ベースとギターの区別くらいつくよぉ。弦が六本のがギターで、四本のがベースでしょ?」

 

 どうも雲行きが怪しくなってきた。

 試しにと、立て掛けてある正真正銘のギターを渡してみる。

 

「これ、弾いてみて」

「?こうかしら」

 

──ジャラララーン

 

「わぁ凄いわっ!こんな音一度も出せたことないのに!吉さんって魔法を使えるのね!」

「……魔法は使ってないよ。ただ、喜多ちゃんの問題点が分かったよ」

 

 あぁ、私は今からこのキラキラな瞳を曇らせなければならないのか。切実に誰か変わってほしい。

 

「喜多ちゃんの買った楽器……多分、多弦ベースだよ」

「多弦ベース?多弦、たげん……多、弦!?」

 

 はぁ。

 あの楽器屋で見かけたのって、もしかして喜多ちゃんだったのではないか。赤髪だし、よく思い返したら声が喜多ちゃんだったような気がするし。

 

「がぁっ!?」

 

 壊れたブリキ人形かのような動きでこちらを見た喜多ちゃんは、しばらく茫然自失となり、やがてそのまま床へと倒れ込んでしまった。

 

「おーい喜多ちゃん。大丈夫?」

「  」

「あぁ、ダメそう」

 

────

──

 

「喜多ちゃん落ち着いた?」

「はいぃ」

 

 女子高生がしてはいけない顔から復活を遂げた喜多ちゃん。

 魂の抜けた状態からは回復したが、ショックが大きかったので落ち込んでしまい、キターンがドヨーンとなり、いつもの明るさが鳴りを潜めていた。

 

「まぁ、失敗は誰にでもあるよ」

「失敗の度合いがぁ……親に前借りしたお小遣いがぁ」

 

 二年分の前借りらしい。分かるよ、普通の女子高生からしたらショックだよね。しかも自分の猪突猛進が招いた結果だから、尚更心にきているだろう。

 はぁーと長めの溜め息を吐き、頭を抱え込んでしまった喜多ちゃんの頭を撫でる。よしよし。

 

「喜多ちゃん、しばらくは私のギター貸してあげる」

「え、そんな……いいの?」

「うん。これは喜多ちゃんの為でもあり、結束バンドの為でもあるから」

 

 これなんてどうかなと、喜多ちゃんに合いそうなギターを見繕って渡す。

 グラスルーツのG-JR-LTD Pelham Blue。*1それが私の選んだギターだ。

 

「喜多ちゃんはリョウ先輩が憧れだから、青のギターにしてみたよ。そんなに高いやつでもないから、遠慮なく使ってね」

「わぁ!すっごくかわいいわ!ありがとう吉さん!」

「喜んでもらえてなによりだよ」

 

 キラキラとした瞳をギターに向ける。それがとても可愛いくて、私も嬉しくなる。

 

「吉さんってこんなに楽器持ってるけど、結束バンドには入ってないのよね……もしかして他にバンドでもしてるの?」

「いや、してないよ。でも音楽活動はしてるよ」

「あ!もしかしてシンガーソングライターってやつかしら」

「うん、だいたい合ってる」

「凄いわっ!」

 

──キターーン!

 

 うん眩しい。元に戻ったみたいでなによりだよ。

 

「あー、あとギターも教えようか?」

「えぇ、そこまでしてもらう訳には……」

「これは選択だよ。()()()どうか、喜多ちゃんが選ぶんだよ」

 

 そう言うと、しばらく喜多ちゃんは逡巡(しゅんじゅん)して。やがて決心がついたようで、覚悟の決まった双眸を私に示した。

 

「……そうね、もう遠慮はしないわ。よろしくね吉先生」

「うん、先生呼びは遠慮して?」

「えぇっ!?」

 

 ごめん。むず痒くなるからそれは却下で。

 

「えぇとじゃあ、とりあえず最初は何をすればいいのかしら?」

 

「まずは基本的なコード……と言いたいところだけど。最初に目標となるものを決めた方がいいかもね」

「目標って言われても、私あまりギタリストとか詳しくないわよ?」

 

 まぁそうなるか。

 

「うーん……あ、ならちょうどいいや。私が喜多ちゃんにギターを魅せてあげるよ。よかったら一つの参考にでもして」

 

*1
舞台喜多ちゃんが使ってたギター。




喜多ちゃん編が思ったより長くなりそうだから区切り。




作者は思う。
こんな小説書いてるけど、原作カップリング推しの人達から刺されないか心配です。
実際作者はきく星、を推しているので実際にあみちゃんとの場面を書く時がきたら、私は正気を保つことができるのか不安で──

おっと誰か来たようだ。
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