駄文ですが、よければ見ていってください。
葉芝市こと「GARDEN」にて、超種1号「C」と「大喰い」を撃破・撃滅し、詩歌と迎えたあのクリスマスから、おおよそ半年ほど。
「おう坊主!これを、あっちに持っていってくれ!」
「了解です」
薬屋大助は、なんだかんだで特別環境保全事務局(略:特環)で、職員の1人として働いていた。職員としての待遇は、事務局長になった土師曰く特例らしいが、なんとビックリ地方公務員である。
「…まだ持てるか?」
「もう少しならいけます」
「おう!じゃあ頼む!」
「凄えな坊主!頼りになるぜ!」
あのクリスマスの後、程なくして「むしばね」が特環に合流し、諸々込みで新生した特別環境保全事務局は、中々に働きやすい環境だった。
所属する虫憑き達の基本的な業務は、在野の虫憑きの保護を最優先として、次に、特環の斡旋の下、派遣社員的な感じで、公務に関する仕事や、虫の能力を利用した各種の雑用等が割り当てられる。
「言われた物、持ってきました」
「おう!ありがとさん!…て、凄え量持ってきたな」
「『ほたる』は何処に?」
「ん?あぁ、嬢ちゃんなら、あっちにいるぜ」
「ありがとうございます」
労働形態は、以下のようになっている。
まず、未成年なので勉学が最優先。
公立の学校に通う児童、生徒、学生たちと同じように週5で勉強する。
虫憑きとして迫害された結果、義務教育や学校の勉強が滞ってしまっている子が殆どなので、これを取り戻す事が特に大事。
次に、1週間のうち、勉強に使わない余りの時間の中で、労働に充てる時間を申告する。
「じゃあ、いきます!」
「おう、よろしくな嬢ちゃん!」
『壊れて…少しだけ…真っ直ぐに…』
例えば、大助の場合はこうなる。
まず月曜日から金曜日は、8:00から15:00までは勉強の時間。公立学校の時間割と同じように過ごす。
次に、大助は、月曜日、水曜日、金曜日の15:30から18:30までの3時間を、地方公務員として働く時間として提出している。当人や、彼の虫の能力に適した仕事がある時は、特環の方でそれを割り当て、大助に仕事が回される。
そして、この労働時間で、1時間単位でお給料が発生して、特環に管理されている大助の銀行口座に貯蓄されていく。
残りはフリーで、大助の好きに使える時間となる。
未成年なのに国家公務員という、現行法において想定外の塊みたいな彼ら彼女らの、労働形態をどうするかに関しては、あちこちでかなり紛糾したらしい。
「もう少し、もう少し…そこまで!」
「はいっ!」
「…オッケー完璧だぜ嬢ちゃん!サンキューな!」
「えへへ…良かったです」
今現在は水曜日の15:30からの労働の最中。
偶々詩歌と派遣先が同じだった為、大助は内心、結構テンションが上がっている。
で、現在の仕事の内容だが。
「これで支持杭が打ち易くなるな!助かるぜ!」
「柔な地盤が分厚かったから、基礎工事が厳しくなると思ってたが、嬢ちゃんのお陰でやり易くなった。ありがとうな!」
建設現場である。
結構大きなビルを建てるらしい。
大助は、虫との同化による単純なパワーを使った荷運び等。
詩歌は、虫の能力を使用した基礎工事の補助である。
かの決戦までの時と比較すると、なんとも実に、建設的かつ平和的な虫の力の使い方である。
現場のおっちゃん達も、2人の仕事ぶりに感激しているようで、このままでは褒め殺されるのでは、という程である。
「『ほたる』、お疲れ様」
「あっ、『かっこう』くん!お疲れ様!」
「すみません、少し休憩貰っても良いですか?」
「おう、いいぜ!あんたらのお陰で予定よりも早く進んでるからな!」
「ありがとうございます。では、10分程休みます」
そう言って、空いたスペースに休憩と称して、2人で体育座りで座り込む。大助が彼の虫との同化を解除すると、彼の虫は大助の正面の地面にそのまま着地した。詩歌の虫も、彼女の正面の地面に降りている。
大助が腰に吊るしていた水筒で水分補給を済ませていると、詩歌が肩に頭を乗っけてきた。
なんとなく、詩歌の肩に手を乗っけて、軽く抱き寄せる。
「詩歌」
「大助くん」
いろんな想いを込めて、名前を呼び合う2人。
周囲には、穏やかな空気が流れている。
一応、労働中ではあるが。
全てに決着がついて、その後、社会に虫憑きという存在が正しく認められるまでは、こんなに気が抜けるような時間は、無かった。
「…変わったな」
「うん。すごく変わった」
そう言って、また無言になる2人。
2人の周りには、穏やかだが桃色な空気が、実に分かりやすく漂っていた。
ちなみに。
2人と交流のある他の虫憑きたちは、カップルでいる時の2人の事を、ある種の畏怖と多大なる揶揄いを込めて「最強バカップル」と呼んでいる。
また、世間からは、明かされた2人の恋路の経歴の、現代にあるまじき激烈さから「現代のオデュッセイア」とか呼ばれ始めている。
「…あの2人、アツアツだねぇ」
「見ててコーヒーが飲みたくなってくる。ブラックの」
「いやぁ、若いってイイねぇ」
そして、現場のおっちゃん達は、2人の様子を、まるで孫を相手にしているかのような、生暖かい目で見ていた。
最終決戦後の出来事については、今後少しずつ書いていこうと思います。
大助も詩歌も、寡黙なほうだから、多分こんな感じのカップルになると思うんだ、わたし…