時系列が前後しています。ご注意ください。
土師さんは、こんな感じだったと思いますが…
解釈違いだったらごめんなさい
葉芝市が突発的な竜巻で壊滅したあの日から、3か月と少し。
「本日は、当記者会見に足をお運びくださり、誠にありがとうございます。特別環境保全事務局、局長の土師圭吾です。本日はよろしくお願い致します」
そんな、定番な始まりの文言でありながら、どこか慇懃無礼な空気を漂わせる言葉で、その会見は始まった。
特別環境保全事務局とは、公には存在していないとされているが、既に知らない者の居ない、あの「虫」と「虫憑き」に対処するべく、秘密裏に活動しているという噂がある国家機関である。
今まで公の場に出て来ることが殆ど無かった、前述のような噂のある国家機関が、政府の会見を通して、突然「重要な会見を開きます」と言ってきた。
しかし、政府の会見で発表された当時は、特環の会見に対しての質問は受け付けておらず、我々記者団は「ただ会見を開く」という情報しか得られなかった。
なので、発表を受けて、各報道機関はどんな会見なのか、どんな情報が出て来るのか、ドキドキワクワクしながら大慌てでスケジュールを組んで、準備をした。
そうして、今に至る。
今回の会見で、私を含む各報道機関を代表して来ていた記者たちは、特に今話題の「虫」と「虫憑き」について、ありったけの情報を毟り取ってやろうと、戦意を昂らせていた。
が。
「当会見のスケジュールですが、長時間になる事が想定されておりますので、前半と後半に分けて行わせていただきます」
一部は若干暴走しそうな気配さえ漂わせている、そんな我々に向ける、事務局長を名乗る彼の視線は、実に冷ややかだった。
「それと、今回の会見でお話しする内容は、様々な方面において、とても繊細な話題であります。
質問内容は、どうかくれぐれも、熟慮の上で作成していただきたい。
よろしくお願い致します。では、記者会見を開始します」
─────
事務局長の土師は、予定通り、いきなりぶっ込んだ。
「まず始めに。本日この会見の発表をもちまして、日本政府と特別環境保全事務局は、『虫』と『虫憑き』の存在を是認します」
一度、ここで止める。
焚かれる、
「また、本日の会見では、この『虫』と『虫憑き』について、現時点で特別環境保全事務局が把握している情報を、出来る限り報告していきます」
「虫憑き」たちは、みんな未成年だ。1番年上の「虫憑き」でも、高校生がせいぜい。18歳以上の子は居ない。
中には、年齢上は小学生にあたる子さえ居る。
彼ら彼女らは、直接的な武力こそあるが、権力相手にはほぼ無力だ。
「虫憑き」になってしまうほどに夢見ている、未来あるこの子達を、強欲なる権力者どもの手から守るのが、今の自分の役目。
油断も、隙を見せるつもりも、一切無い。
この子達は、もう既に自分の身内なのだから。
「資料を配布しますので、お受け取りください。この場に居ない方々で、かつ資料を見たいという方は、特別環境保全事務局ホームページに掲載しておりますので、そちらを併せてご覧ください」
始めは会場の端で待機させていた、黒で統一した特環東中央支部の戦闘服を着用した者たちが、資料を手渡していく。
今記者団に資料を配布させている子たちも、虫憑きだ。
記者団の面々は、如何にも怪しい格好の彼ら彼女らの事を訝しんでいるが、特に何か言うことは無かった。
「では、資料の3ページから。第一項、現在の『虫憑き』と呼ばれている者たちの概要についてですが…」
そこから暫くの間は、こちらが淡々と、事前に組んだ予定通りに、資料の説明と補足をしていく時間だった。
「虫」とは、何か。
「虫憑き」とは、どんな者たちなのか。
「虫憑き」を生み出す元凶は何で、今どうなっているのか。
「虫憑き」に対して、特別環境保全事務局は、これからどのように対応していくのか。
大凡これらの点について、説明していった。ここまでで、大凡1時間。記者団たちにとっては、とても濃密な時間だっただろう。
「…資料の内容は以上となります。この後、質疑応答の時間になりますが、少し休憩時間を設けますので、この間に諸々の情報を整理したり、質疑の内容を検討したり等して頂ければと思います」
そう言って、合図を出す。
会場は、一気に騒がしくなった。
土師は、愕然としている記者団の面々をを尻目に、特環の職員たちと共に淡々と退出していった。
─────
「みんな、お疲れ様だ」
「あんたこそ、お疲れ様だろう」
控え室にて。
土師が、一緒に会見の場にいた特環職員の子どもたちを労う言葉を掛ける。
すると、職員の1人としてこの場にいる大助に、お互い様だと言われてしまう。
周りの職員たちも、目元のゴーグルを外して、土師の方を見ている。その目には、多かれ少なかれ、土師に対する敬意と感謝があった。
かつての、東中央支部長時代の彼の容赦の無さは有名だったが、それとは別に、事務局長としての土師の、この時までの奮闘を、この会見に参加している局員たちは正しく知っていた。
思わぬ言葉を思わぬ人からかけられて、こいつも変わったな、と苦笑を浮かべる。
「後半も、みんな宜しく頼むよ」
虫憑きたちから見た魅車さんと土師さんの評価は散々だけど。
なんだかんだ2人とも、それぞれの方面で優秀な人材である事は間違いないでしょう。
でも、土師さんは、魅車さんには成れないので、こういう事になるんじゃないかなぁと思い、こんな話になりました。