ちょっと長くなったので、2話に分けました。
皆さんも、こんな場面ありそうだなぁというのがあるでしょうか。
自分は、ライトノベルを読んでて、最初に推しキャラになったのが詩歌ちゃんなので、色々と妄想が捗っております。
「では、会見を再会します。まずは質疑応答の時間とします。複数人居る場合は、前方の席から順番に指名します。では、質問がある方は手を上げてください」
再び、
記者団の全員が、挙手をしていた。
「○○テレビです。今回の会見で是認された『虫』と『虫憑き』について、前々から国内で噂され、目撃情報らしきものもありましたが、政府は存在を認めていませんでした。今回、どのような理由で『虫憑き』の存在を是認するに至ったのか教えていただきたいです」
「お答えします。それは…」
質問に答えながら、土師は、あの決戦から今までの忙しない日々の事を思い返す。
なんだかんだ、魅車元副本部長は、優秀な人物だった。
特に、「虫憑き」という存在を、国際社会を含む世間から完全に隠蔽していたその手腕については、土師も讃えざるを得ない程のものだった。
土師が特環の局長になってからも、隠蔽工作は続行していたが、同じレベルで完全に隠蔽し切るのは不可能で、どうしても情報は少しずつ漏れてしまっていた。
今の社会において「虫憑き」は、その強大な力故に、数多の人々から恐れられている。
このまま「虫」の存在が表に出てしまうのは、当の「虫憑き」たちにとって、かなり拙い。だが、自分を含めた今の特環の力では、情報の流出は抑えきれない。
だから。
隠蔽が破綻して、「虫憑き」たちにとって致命的な状況になってしまう前に。
情報が流出しても、問題無い状態に変えてしまおう。
「虫憑き」の存在が、社会に肯定的に受け入れられる土壌を作ろう。
そういう方針の下、3ヶ月もの間地道に活動を続けて、その状態を作り上げた。
政府と協議を重ねて。在野の「虫憑き」たちを、むしばねの力を借りて正しく保護して。「虫憑き」の存在が、社会に認められるように情報工作をして。
その集大成が、この記者会見である。
ちなみに、当然ながら、こんな事は記者会見では言わない。表向きに話すのは、適当にでっち上げた言い訳である。土師は、我ながら良く舌が回るなと、喋りながら思っていた。
「…という経緯を以て、政府及び特別環境保全事務局は『虫』と『虫憑き』の存在を是認するに至りました」
「ありがとうございます」
「では、次の方」
「◯◯新聞です。先程の…」
そうして、質疑応答の時間は経っていった。
土師の最初の脅しがある程度効いたのか、変な質問は無かった。
─────
「質疑応答は、現時点では、以上でよろしいでしょうか。…はい、では質疑応答の時間を終わります」
そうして、記者会見は、どうにか無難に終了した。
さて、あとは最後の「爆弾」を放り投げるだけだ。
「では、最後に。
今から、現在、特別環境保全事務局にて保護されている虫憑きの子どもたちのうち、事前の了承を得ている子どもの氏名と年齢を、読み上げます」
記者団は、唐突な個人情報暴露の展開に、騒つく気配を見せた。しかし、会場は
「もし、心当たりのある子どもの名前があり、そして、覚悟が定まったのであれば、特別環境保全事務局まで、お問い合わせください」
これは、小学生くらいの幼い子どもの「虫憑き」の、面倒を見る事が多い職員たちからの提案だった。
「虫憑き」になる前の、家族のことを恋しがる子どもたちがいる。
なんとか、再会させてあげたい。
そんな声が、会見準備をしている土師のもとに届けられた。
子持ちの大人の職員にも意見を聞いてみた。
もしかしたら、結果的に捨てるようになってしまった、自分の子どもに対する後ろめたさとか、子どもに憑いている「虫」への恐怖とかで、会うに会えないかもしれない、と言われた。
又は、行方不明扱いで、「虫憑き」として保護されている事それ自体を知らないかも、とも。
たかが「虫」程度で…と、思いつつも。
土師も、自身が溺愛する妹が「虫憑き」だっただけに他人事とは考えづらかった。
なので、この会見を上手く使って「虫憑き」の子どもたちにとって、出来る限りリスクを軽減した状態で、それを実現出来るように、色々と考えた。
「この読み上げを行うにあたり、子どもたちには、この会見で氏名を読み上げることの目的と、想定されるリスクを、不足無く彼ら彼女らが理解出来るように、説明しています」
これからやるのは、手元のリストをもとに、名前と年齢を読み上げる。それだけ。
開示する個人情報を限界まで絞る為に、資料等の物的証拠は一切残さない。残すのは、音声のみ。
「虫憑き」になる可能性があった子どもたちは、日本全国で見れば1000万人以上は居る。文字が分からなければ、同姓同名の別人だって、きっとあり得るだろう。
だから…
「これから氏名を読み上げられる子どもたちからは、それを承知の上で、了承を得ています。
どうか、子どもたちの想いと覚悟を、無碍にするような事は、しないでいただきたい。
よろしくお願い致します」
─────
『…。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇、〇〇歳。氏名…』
読み上げられる名前を、一音も漏らさないよう、必死で聞き続ける。
『…。氏名、〇〇〇〇〇、〇歳。氏名、〇〇〇〇〇、〇歳。氏名、〇〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名…』
父と母は、この名前の羅列が始まってから、逃げるように部屋に閉じ籠ってしまった。
何とも情けないと思った。
『…。氏名、〇〇〇〇、〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇歳。氏名…』
私は、絶対に逃げない。
あの時、居なくなってしまった、大事な家族に。
『…。氏名、〇〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名…』
妹に。
再会出来ることを祈りながら。
『…。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇〇、〇〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇歳。氏名、〇〇〇〇、〇〇歳。氏名〇〇〇、〇〇歳。以上です』
…無かった。
妹を表す音の羅列は、無かった。
無かったという事は。
あの子は、もう私たちとは会わないという選択を、したのだろう。
「………っ」
あの子の選択なら、尊重しなければ。
のんびりしてて、おっちょこちょいで、内気だけど、優しかったあの子の、選択ならば。
『…ん?あぁ、失敬、忘れていました』
自然と俯いていた頭から、水滴が溢れ落ちているのが見えた。
『最後に、現在の虫憑きたちの代表として、この2人に登壇してもらいます』
視界がボヤけて、よく見えない。
『虫憑きの子どもたちの情報管理の項目の時に、号指定について説明したと思います』
けど、特環の会見はまだ終わってない。だから、ちゃんと最後まで聞こうと、滲む目でテレビの画面を見る。
『この2人については、号指定とコードネーム、そして氏名と顔を、この場で公表致します。また、虫憑きとしての2人の経歴も、特別環境保全事務局のホームページに掲載させて頂きます。代表ですからね。あぁ、2人とも承諾済みですから、大丈夫ですとも。』
画面では、全身黒ずくめの特環の職員さんの中から、2人が前に進み出てくるところだった。
体格や髪の長さから見て、男の子と女の子だろうか。
『はい、2人とも、ここにおいで…。この2人の経歴を参考に、今まで虫憑きたちが過ごしてきた時間の過酷さに、思い至って頂ければと思います』
前に進み出てからここまで、2人はずっと、手を繋いだままだ。仲が良いのだろう。
女の子の方は、記憶の中の自分の妹と、背格好が似ているなぁと、想いを馳せる。
『火種一号「かっこう」、氏名、薬屋大助』
男の子の方が、名前を呼ばれて、ゴーグルを外した。
穏やかで実直そうな子だなぁと、何となく思った。
『秘種一号「ふゆほたる」、氏名…』
そして。
本当に最後の1人が。
『杏本詩歌』
「…え?」
そう言われて、ゴーグルを外した。
そこに居たのは、見紛う事なき、自分の妹だった。
虫憑きの世界って、現代日本が舞台なのに過酷ですよね。
欠落者になるならまだマシで。
まだ子どもなのに、普通に死者が出てますからね。