読みづらかったらごめんなさい。
2つ目です。どうぞ。
何だか、長い間、一歩先も見えないような、深い霧の中を彷徨っている様な感覚。
自分の中にある、焦がれるほど強く願った「ナニか」が、すっぽりと抜け落ちている感覚。
道が見えない。前後左右。
何も、分からない。
抜け落ちた、心の火種。
何も、出来ない。
あぁ、目の前に転がっている、これは…
一体、何だっただろうか。
───
わたくし、中御門美優が生まれた家は、いわゆる上流階級の家系で、そして、古い価値観が色濃く残った家系でした。
男子が稼ぎ家を発展させ、女子が子を育て家を護る。
女性にも家に関してしっかり役目が振られている辺りは、女子を道具としてしか見ない様なところより、遥かに良い家系だったと思います。
一般家庭と比べると厳しい家訓に基づいて運営された家系でした。
しかし、一家の柱たるお父様は、厳格だけれど、忙しそうな合間を縫って、わたくしのことをちゃんと見てくださっていました。
お母様は、定番の嫁入り修行としての家事に加え、家庭運営の為の家政の諸々を直に教えてくださり、また、いざという時の為に、棒術のお稽古の手配もしてくださりました。
しっかりした学校にも通わせていただき、友人にも恵まれていました。
学友の方々からも、時に頼り、時に頼られと、良い関係にあったと思います。
だから、現状の環境に対して、不満らしい不満はありませんでした。
でも、わたくしは見てしまったのです。
かっこいいと、思ってしまったのです。
自分もあんな風になりたいと、思ってしまったのです。
憧れて、しまったのです。
中御門家の子女として、きっと、わたくしには許されないであろう、女子サッカーという、スポーツに。
───
「あの、お父様」
「なんだ」
「…これを、やってみたいのです」
「これは…女子サッカー、か」
「はい!」
「……」
「まえ、テレビで試合を見たのです。とても楽しそうだと、思ったのです!選手の方々が、格好良かったのです!わたくし、こんなにワクワクしたの、はじめてで!わたくしも、あの選手の方々のように、グラウンドに立って、サッカーをしたいと、思ったのです!だから…」
「……」
「…あの、お父様?」
「美優」
「は、はい!」
「…少し待て。大人で話し合う。長くは待たせん」
「…はい」
───
お父様は、しっかりと考えてくださったのだと思います。夜遅くに、家の方々が集まって、居間で話し合っているところを見ましたし、その時に「サッカー」という単語を聞きましたから。
その上で、中御門家として出した結論は、否でした。
後に聞いた話ですが、今回のわたくしのように、やりたい事を家の方針で「否」とされた方は、男女の隔て無く何人もいらっしゃったようで、中には後継たる長男もいたそうです。
頭ごなしに否定されたのであればともかく、協議を重ねて、その上で否と言われてしまったのでは、わたくしは何も言えません。
しかし、幼いわたくしは、その決定を粛々と受け入れる事が出来ませんでした。
幼い心に焼き付いた憧れは、決して消える事なく、わたくしの心に「叶わぬ夢」として残ったのです。
そして、わたくしの心の中に残った火種は燻り、少しずつ膨らんでいき…
とある日の、学校からの帰り道。
帰宅途中にある、公立の学校の校庭でサッカーをしている、見知らぬ女の子たちを眺めていた時に。
始まりの三匹の1匹、「大喰い」に、虫憑きにされたのです。
わたくしが、小学4年生の時の事でした。
ちょっと短め。
1300とちょっとでした。
でも、キリが良いのでこれで1つです。