最後の決戦が終わった後の蛇足   作:星の王子さま

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書けちゃったやつの最後です。
また暫くは何も無いと思います。
では、どうぞ。


とある取り組みの話(3)

 

「欠落者を蘇生する取り組み」の1つとして、元虫憑きで現在は欠落者の、中御門美優という女子を対象に行われている取り組みが、ほぼ半年経とうという頃。

 

 

 

「じゃあ、今日も遊ぼっか」

「……」

 

 

 

ついに、それは起こった。

 

 

 

───

 

 

 

その始まりは、私たちがプロの選手だからこそ、普段はあまり起きない、ちょっとしたミスからだった。

 

グラウンドの向こうで、パスの練習でウォーミングアップをしていたチームメンバーが、ちょっとしたミスでパスを受け取り損ねた。

 

受け取り損ねたボールが、此方へ転がって、目の前の女の子の足にぶつかって、止まった。

 

ミスしたチームメンバーが「ごめーん!」と、此方に駆け寄ってくる中、目の前の女の子を通して欠落者という状態に慣れた私は、彼女がとった初めて見る行動に、唖然としていた。

 

 

 

 

 

「……」

「……え?」

 

 

 

 

 

彼女は、転がってきたボールを、私が何も言っていないのに、自主的に両手で拾って、拾ったボールをじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

「……美優ちゃん?」

 

 

 

 

 

彼女の名前を呼んでみる。

 

反応は無い。

 

 

 

 

 

向こうから、柊子さんと、いつも一緒にここに来ている女の子が駆け寄ってくる。

女の子の方は、棒状の何かを取り出していた。

 

 

 

 

 

美優ちゃんが、フッと別の方向を見た。

 

私もその方向を見る。

 

彼女が見ていた先には、サッカーゴールがあった。

 

 

 

 

 

美優ちゃんが、ボールを手放す。

 

当然だけど、ボールは彼女の足元に落ちた。

 

…私の目の錯覚だろうか。彼女の後ろの空間が一瞬歪んだように見えた。

 

 

 

 

 

そして。

美優ちゃんは突然、ボールと一緒に、走り出した。

 

私が教えた、ドリブルを使って。

 

わたしは、慌てて彼女を追いかける。

程なくして、わたしは彼女に並走する形になった。

 

 

 

 

 

此方に駆け寄って来ていたチームメンバーの1人が「およ?」という感じで立ち止まり、美優ちゃんを見てか、満面の笑みを浮かべた。

 

私は、ちょっと嫌な予感がした。あの子が満面の笑みを浮かべた時は、あまり碌な事を考えていない時が多かったから。

 

 

 

 

 

チームメンバーの彼女は、唐突にホイッスルを取り出すと、他のメンバーたちに向けて吹いた。

 

他のメンバー達の視線が、此方を向く。

 

ドリブルで、ゴールに向かって一直線に走っている、美優ちゃんに、視線が集まる。

 

 

 

 

 

そして、メンバー達は、何やら視線を交わし合った後、突然試合の配置についた。

 

 

 

 

 

そして、そこから。

 

美優ちゃんの無双が、始まったのだった。

 

 

 

───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、霧が、少しずつ、晴れていく。

 

身体が、勝手に動く。

 

でも、全然悪い気分じゃない。むしろ、とっても良い気分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空っぽだった自分の中から、溢れんばかりに「なにか」が湧き出してくる。

 

自分の足元にあるものが、淡く光り出した。

 

薄れゆく霧の先に、光り輝く枠のような「なにか」が見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このまま、向こうの光の元へ、自分の足元にあるものを届けるんだ。

これは、そういう「スポーツ」だ。

 

自然と、思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄れゆく霧の視界の中に、新しいものが出て来た。

 

自分の隣に居る1つの青い光と、立ち塞がるようにわたくしに向かってくる、11の赤い光。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あははっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは赤の光1つ。

 

風のように、くるりと回って避ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次、赤の光2つ。

 

隣の青い光に、足元にあるものを蹴り渡す。

 

そのまま、赤の光2つを素通り。

 

青の光から、足元のものが、すぐに帰って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは!はははっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、楽しい、楽しいっ、楽しいっ!

 

くるくる回って、時に青の光と一緒に、赤の光に立ち向かい、突破していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、気づけばもう、残る赤の光は後1つ。

 

その先に、お届け先の、光り輝く枠のような「なにか」が待っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は、足元のものを、届け先に向かって。

 

足に、力を込めて。

 

全力で、蹴り出す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の赤い光は、それを見て、わたくしが蹴り出したものに飛びつこうとするが…届かない。

 

そうして、わたくしが運んできたものは、光の下に遂に届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、同時に。

 

わたくしの周りの霧が、完全に晴れた。

 

世界に、色が戻ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、そうだ。

 

わたくしの名前は、中御門美優。

 

わたくしの夢は「プロ女子サッカーの選手になる」こと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、全部、ぜんぶ思い出した!

 

これで、わたくしはまた、夢を見られる!

 

今なら、その為なら何だって出来そうです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、でも。

 

何故だろう。

 

眠いなぁ。

 

疲れてるのかしら。

 

そうですね、がんばって、夢を思い出せたから。

 

…だから、少しだけ、休みましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───

 

 

 

その後の時系列は以下の通り。

 

まず、蘇生したての美優ちゃんは、精神的な興奮からか、テンションがハイになっていた様子だった。

彼女の虫…ヒジリタマオシコガネ、通称スカラベの外見と酷似している…も、始めはその影響を受けてか、暴走の気配を見せていた。

 

 

 

そこに、いつもグラウンドの片隅にいた女の子が、銀槍を中心に身体のあちこちに青みがかった銀色を纏って、割り込んだ。

 

 

 

彼女…一之黒亜梨子さんが、暴走の気配を見せた虫を抑えつつ、手元の銀槍を振り回して、美優ちゃんと彼女の虫に、粉のような何かを撒き散らした。

 

そうして、若干暴走しかけていた彼女の「虫」は、彼女によって鎮静化され、現在は宿主ともども眠っている。

 

美優ちゃんの虫の体長は、目測で4メートルくらいだろうか。側では、美優ちゃんが寄り掛かるように眠っている。

 

本物の虫憑きの「虫」なんて初めて見たから、そういう点はちょっと怖いけど、昆虫自体は別に嫌いというわけでは無いから、美優ちゃんの虫に少しずつ近寄ってみる。

 

そういえば、テレビでやっていたな、と思い出す。

この「虫」たちは、宿主達の夢の具現化なのだと。

焦がれる程に強く夢見た子ども達の夢、そのものなのだと。

 

そういう風に見るならば、この「虫」が、美優ちゃんの夢の具現化なのか。

…なるほど。

ちょっと目の前の「虫」が可愛く見えて来た気がする。

 

「お疲れ様、でした」

 

柊子さんが、声をかけて来た。

彼女も、感無量という様子だった。

若干涙ぐんでさえいる。

 

「ご協力、ありがとうございました。これで、今回の取り組みは終了となります」

「…そうですね」

「この後、諸々の雑用があるので、私たちはすぐにでも戻らなければならないのですが、今回の取り組みの記録は残っています。なのでいつか、特別環境保全事務局まで、是非美優ちゃんに、会いに来てください」

「…えぇ、あの子とちゃんと話したいと、思っていたところでしたから」

 

そうして、欠落者の蘇生に成功したという、上々の結果を伴って、今回の取り組みは、終了した。

 





書けちゃったやつ、とりあえず完です。
それっぽくなってると良いな、と思いながら投稿してます。

今後も、思いついて、書けたら投稿しようと思います。
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