「
大声を張り上げ拳を握り締めた男。実は樫木に囁く。
「静嶺組って確かあれですよ、昨年の白蓮連合への上納金がトップだったっていう…。」
「あぁ、聞いたことがある。一昨年あたりに頭が新しくなってから上納金も右肩上がりらしい。」
「取り敢えず…この場を収めないとですね。相手は取り巻き含め6人…俺も手伝いますよ。」
実はそう言うと拳を固めた。樫木もそれを見ると構えを取った。
「聞いてはいたが、中々独特の構えだ…。」
肩幅に開いた脚、両脚の前へと軽く握られた拳。大きく開いた胴、普通の構えならばまずあり得ない構え。その姿は二刀流の武士のようであった。
「なんだその構え。俺達も舐められたもんだなぁ…。」
オールバックの男はそう呟くと先程よりも固く拳を固めた。
「沈めてやるよ。」
その刹那、男は樫木までの距離をぐっと近づけ、顔面目掛け真っ直ぐに拳を突き出した。樫木は腰をひねり拳を躱すと、下から突き抜けるようにアッパーを繰り出した。顎にアッパーを繰り出された男の身体は宙を舞い、地面へと倒れこんだ。
「グハッ…!!!」
血反吐を吐いた男は這いずるように後ずさる。男は取り巻きに実を攻撃するように指示すると、ゆっくりと立ち上がった。
「なかなかやるようだな…ただ、幸いにもその構え。負けるわけがねぇ。」
男は再び構えると、樫木にじわじわと近づき始めた。
「ようは下からのカウンターにさえ注意すりゃぁ負けることはねぇ。」
「そう思うなら早くかかってこいや。」
「ッ…!なめやがってガキがッ…!!!」
男は顎を守りつつレフトジャブを繰り出す。その隙を突いた樫木はすかさず右フックを脇腹にめり込ますかのように繰り出した。男の顔が分かりやすく歪む。
「ガァッ…!!!」
男は地べたに跪くと激しく息を切らし、樫木を睨みつける。
「クソッ…隙だらけなのになんで当たらねぇ…。」
樫木は立てなくなった男から目をそらすと実の方に視線を移した。どうやら実も片づけ終わったらしく、このっ!このっ…!とか言いながら倒れた取り巻きを蹴っていた。
「樫木さん、こっちも片づけ終わりましたよ。」
「やるな実。俺も頭つぶしたからとりあえずは大丈夫だろう。」
「とりあえず、こっちの連中は“例の件”は知らなかったですね。」
セブンスターを咥え火を点けた実から視線をそらし再び男を見た樫木は、冷静に一言質問をする。
「“マヤ”を知ってるか?」
「はぁはぁ…マヤ…?誰だそれ…ッ…!」
樫木はスッと立ち上がると、壁にもたれ掛かり苦悶の表情を浮かべる男の顔面に思いっきり一発殴りを入れて店を後にした。