堂江はにんまりと口を開き、肩で空を切るように堂々と歩いてきた。
やがて樫木の前まで来ると、樫木と実をつま先から顔まで舐めるように見ると、少し掠れた声で話し始めた。
「おぅ、兄ちゃんら。この辺のシマか?」
ー 第四代白蓮連合会直系堂江組三代目組長【
堂江はニタッと不敵に微笑むと、樫木を見つめる。
「だったら何だっていうんだよ。」
「―――んいや別に。」
堂江の顔から笑みが消える。
「何だ、オメェあれだろ。この辺じゃあ櫻んとこか?」
「あぁ、そうだ。俺もこいつ(実)も櫻さんとこでやらさせてもらってる。」
「そうか。そうか…。」
「おめぇ、この辺のシマが誰のもんか知ってんのかこの野郎。」
ズボンのポッケに手を入れ仁王立ちのまま直立不動の樫木。十数人を連れた堂江の顔に苛立ちが見え始める。
「てめぇ、誰に向かってのその口だ?」
「オメェと話してんだ、オメェ以外誰がいんだ馬鹿野郎。
睨むように堂江は樫木を見つめる。樫木も堂江の目を離すことなく、直立不動を決め込む。お互いにとても冷静に話しているが、その間には痺れるほどの威圧感と凄みのある雰囲気が漂っていた。
「―――そうか、てめぇ口の利き方知らねぇらしいな?」
「あんたも“礼儀”知らねぇんだな。」
暫くの間堂江と樫木の睨み合いは続き、やがて目を逸らした堂江は隣にいた取り巻きに話しかける。
「おう、道具貸せや。」
堂江はそう言うと何かを受け取る。
樫木のシャツに何かが突き付けられる。
「この世界いんなら…これが何か分かるよな。」
「…チャカか、こんな場所で出すなんざ大分先急いでんだな。」
樫木は腹に突き付けられたリボルバーをさらに押し込むように一歩歩みを進める。
「――随分と冷静だなぁ。お前何者だ?」
「ふ、さあな。」
ニッ…と不敵な笑みを浮かべた樫木に、堂江はさらに睨みを強める。
「殺っちまうぞおいコラ。」
「ここでか?殺れんなら殺れや。」
堂江は撃鉄を指で起こす。新宿の大通り、大勢の人の群れに大勢の人の声が響くこの大通り。だが、確かに樫木と堂江の周りには、静寂とはまた違う静けさがそこにはあった。
二人だけの睨み合いが続くと、堂江は静かに銃先を下した。
「今回だけは見逃したる。次はねぇぞ。」
堂江は腹の輪入道を少しなでると、樫木に背を向けてその場を後にした。
「樫木さん…あなた何者なんすか…。俺、この道6年…こんな場面初めてですよ。」
実は樫木にそう言うと、全く吸ってなかった煙草を灰皿に捨てた。
「いやまぁ…俺は別に言いたい事言っただけだ。まぁ、これで堂江もこの辺うろつかなくなるとは思うんだがな…。」
樫木は実に少し目をやると、事務所に向け歩き出した。