地底の狩人   作:こんこんВерныйカワイイヤッター

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狩人の子

「この缶詰おいしい」

少女の声が木霊する。一度文明が滅び去り、地下へ葬られた幻想的な世界で木霊する。ランタンの光が周囲を照らす。その光に照らされているのはかつてのイギリス軍人を彷彿させる格好をした黒髪の少女、中島葵である。

 

この世界はよくできていると思われているが少し歪だ。地下は正体不明のガスに満たされ、変異体が居るために安全ではない。地上にはビルが建ち何一つ不自由ない…いや、最近物価が上がってるんだっけか。まあ過ごしやすい世界でその基盤は地下からの支柱で成り立っている。旧文明がどうして滅んだのかは定かではない。しかし一度滅び、文明が地上で再び興ったのだけは確かで旧文明が拠点としていたのだろう地下はその遺産が転がっている。

 

黒髪の少女は当然、危険な地下を征くための服装をしている。ブーニーハットに半袖シャツ。それらは砂色であり敵に悟られにくい。また耐久性に富んだジーンズに滑りにくいブーツ、5つほどポーチのあるベルトや拡張性や重量などを両立したバックパックなど何事にも対応できる装備を着用している。彼女の得物はイギリスの名銃、Short Mgazine Lee-Enfield MkⅢ。SMLEとして名高いライフルであり状況が変化しやすい地下での行動に高い耐久性で持ち主に応えてくれる銃だ。銃剣も勿論所持しており普段はベルトの左側に差している。

 

そんな黒髪の少女、私は高校生の身ではあるが夏休みを使って地下に潜っていた。政府は特に入ってはいけないとは言っていないが推奨はしていない。なぜなら死が身近でそのために無法地帯と化している。親は止めないのか、止めないならば親は何をしているのか。まず私は母親が死んでいるので片親だ。更に言えば父親は別に地下に潜ることに否定的な意見を出していない。なぜならば彼も地下に潜っているからだ。彼自身、確かに危ない目に合ったことはあるが五体満足で今に至る。彼のチームも少々の怪我をするものの誰一人脱落者はおらず、関係も良好である。たまに家に来てはお土産を持ってきてくれる気の良いチームである。

 

今はというと少しの休憩と軽食を摂っていた。地下は変異体が山ほど居て1秒先では死んでいる…という訳でもなく基本は岩や構造物、電灯が見えるだけで変異体とはあまり出会うことはない。地下での死因は滑落や油断からの奇襲など、単純に戦って死ぬということはない。だからこそ父親は私が地下へ行くことを許可したのだろう。バックパックの中身は戦利品や缶詰に水、それと火付け用のマッチに蝋、その他諸々である。缶詰を開けてそれを火にかけると気軽に温食が摂れるのはいいことだと思う。

 

一区切りしたあと食事を切り上げて片付けを始める。変異体は食事の跡から追跡してきたりはしない。じゃあどうしてするのかというと単純に迷惑になるからだ。キャンプに行ったとしよう。キャンプでは殆ど決まった場所で食事を摂ったり寝たりする。それは地下でも同じで事実、食事を摂っていたここもそういった場所だ。地下では安全地帯がある。暗黙のルールとして共有されている安全地帯では流血沙汰は無し、勿論今まで先駆者たちがここは殆ど襲われることはないと考えて安全地帯としているため変異体も来ることはあまり無い。そういった安全な場所は誰もが集まるところでありそこにはマナーが存在する。そういった場所なのだ。

 

地下には危険度があり、安全地帯、要注意地帯、危険地帯がある。安全地帯を通っていけば到底死ぬようなことはなく要注意地帯も時々変異体が出没したり流血沙汰が起こったりするぐらいだ。しかし危険地帯はそうはいかない。危険地帯は変異体だけでなく”変死”が起こるときがある。恐らく地下に充満しているガスのせいだと思われているが定かではない。

 

先ほどから言っているガスというものは地下に充満している謎の多い気体のことでこれを吸っているあいだは身体能力向上などの効果がある。また吸っている総量で身体強化の度合いが違うらしく私たち学生の間では「ゲームのレベルみたい」と思われている。しかも身体強化の度合いは吸っていないあいだも維持されているらしく専門家は「ガスによってなんとか因子が産まれてガスを吸うたびにその因子が活性化~」とよくわからないがそういうものらしい。しかしメリットだけではなく変異体になってしまうリスクがある。恐らく危険地帯の変死はそれが影響しているのだろう。しかし濃度は対して変わらないのにどうして場所によって変異体になるリスクの偏りが出るのかは未だにわかっていない。噂では「ガスの質だ」「わかっているガスとは違うガスが」「呪いのせいで」と言われている。

 

片付けたあとは私は決まって要注意地帯を歩く。安全地帯のものは基本的に先駆者に拾われているので良い物は落ちていない。だから私は要注意地帯を歩く。まあ要注意地帯もある程度警戒しておけば死ぬことはあまり無い。そうして辺りを見回しながら歩いていると地面に動く残骸を見つけた。一見するとただの瓦礫のようだが実はこれが私たちが求めているものだ。

 

アーティファクト…それは地下において謎の多い「再生成」という現象の結果だ。無機物の物をその辺にポンっと置いておくといつの間にか勝手に動き出したり火を吐くようになってたりする。地下の環境がなのかそれとも何かもっと別の作用が働いているのか、少なくとも地下に置いている物全てがそうなるらしくアーティファクトというのは案外身近なのかもしれない。

 

それを拾うと遠くから何か鳴き声が聞こえた。手短に銃の点検を済ませてその場を立ち去る。変異体は戦ってメリットが全く無いため全員に嫌われている。これがゲームであれば何か有用なものがドロップするのだろうが現実においてドロップするのは死体か糞尿ぐらいだ。鳴き声からして狼のような犬型の変異体だろう。あいつらはすばしっこくて苦労する。さっさと退散しよう。

 

そういえば日向はどうしてるのだろうか。クラスメイトに本庄日向という女子が居る。金髪で元気な子だ。クラスでも中心人物な女子なのだが実は私のチームの人なのだ。彼女が居ると幾分か楽なのだが用事があると言っていた。スマホで連絡でも取ってみたいがここは地下で電波など通るはずもない。

 

また少し進むと狼が居た。恐らくさっきの変異体だろう。音がしないように気を付けながらセーフティを外して狙いを定める。私はギャンブラーなどではないがこういった静かに敵を狙うときが好きだ。別にウォーモンガーではないがこういった照門の中に敵が入っている時が好きだ。照門と照星、そして敵を一直線に揃え銃のブレが無くなるように少しずつ息を浅くしていき息を止める。銃声。肩がぐいっと後ろに押される感覚と右目の視界が銃本体に遮られる。そしてもう一度敵を見ると倒れていた。素早くコッキングして銃剣を取り付け前進する。そして銃剣で狼の腹を突き刺す。反応は無い。死んだのを確認し銃剣を取り外し、銃声を聞きつけた敵が来ないようにそそくさと退散する。

 

帰りは必ず安全地帯を通る。帰りまで危険に晒されたくないからだ。そうして私は支柱まで撤退した。支柱の中にはエレベーターがありそれで地上へ帰れる。

 

これが私の生活。高校生にはこういうスリルが魅力的に思える。だからなのか高校生でAK片手に地下に潜る人がなかなかに多い。私はそこに浪漫を足す。確かに私が選んだのは耐久性を考えたボルトアクションライフルだ。しかし一般人はAKを選ぶ。そっちのほうが使いやすいし修理も簡単だからだ。しかし私はそれでもと言う。

 

これが私の狩人ライフ。これぞ私の浪漫。




息抜きで書いてるので更新速度は気にしないでください。
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