地底の狩人   作:こんこんВерныйカワイイヤッター

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風の子

スライムを駆除したあと私たちは火を起こして缶詰を温めていた。どうして無害なスライムを駆除する必要があるかというと水辺に放置していると成長してしまうからだ。これが割と洒落にならず、下手すると死者が出る。大体一晩で手のひらサイズだったスライムが子供一人を吞み込める大きさになってたりする。ちなみにスライムを駆除する方法は単純に埋めるか蒸発させるかで地面に埋めておいたら木に水分を吸われて死んでたりする。まあ水分をどうにかできれば大丈夫だ。

 

今日持ってきた缶詰は鳥飯だ。醬油ベースで缶詰の中でも特に美味しいほうである。ちなみに今回は蝋ではなく炭を持ってきたので火力が高くかなり助かっている。蝋は1人で潜るには軽くて場所を取らないから重宝していたが2人以上のときは火力不足が気になる。炭は火消しつぼとコンロが必要なのでかなりバックパックを圧迫する。地下で動く分にはガスで身体能力がブーストされているので別にいいが割と地下に着くまでが辛い。

 

「そろそろ温まったかな?」

「そうだねぇ」

2人とも熱くないように軍手をして缶詰をつつく。缶詰は平時には美味しくない、自分で作った方がいいと言われがちだがこういうキャンプのようなときには美味しく感じる。多分シチュエーションっていうものだろう。実際高級料理屋に行ったとして美味しいかどうかわからなかったとしても美味しいという認識になったりする。割と高めの焼肉屋に行ったことが何回かあるがそこで食べた和牛は物凄くおいしかった。しかしそのあと家で食べたときは確かにおいしかったが焼肉屋で食べたほどではなかった。

 

暫く経つと2人とも食べ終わった。少し足りない気がするがそれぐらいが丁度いいだろう。実際「お腹一杯だったので動けずに殺されました」は恥ずかしすぎる。まあそんな長居する予定も無いのでそこまで食べなくても大丈夫だ。最悪カロリーメイトを持ってきているからそれでも食べておけばいい。個人的にはカロリーメイトはキャンプにいい食べ物だと思っている。場所を取らないしすぐにでも食べられる。チョコと比べるとカロリーが少ないのが欠点か。

 

火の後処理をして片付けていく。まあテントは持ってきてないので時間はかからないだろう。

「このあとどうする?」

日向に聞いてみる。

「うーん…ちょっと物足りないから少しぶらついて帰りたい」

「わかった」

今回は日向も居るので結構なペースで片付けが進んでいる。2人のときは協力できるから本当に楽だと思う。実際私も基本は誰かと一緒のほうが良いと思っている。まあ…友達少ないけど。

 

火消しつぼで火を消し終わったのでそれを炭ごとバックパックに入れていると茂みのほうで物音がした。はて…?日向は逆方向にふらつきに行ったはずなんだが…。そう思っていると茂みから何かが飛び出して来た。咄嗟に銃剣を抜き防御する。結構相手の力が強く反動で吹き飛ばされる。手を付き1回転して衝撃を受け流し相手と相対する。敵は…2匹。しかも狼だ。だいぶ苦手な部類なんだが…まぁやるしかないだろう。そう思いながら銃を肩から降ろそうとすると銃の重さを感じない。しまった…銃、置いたままだ。

 

獣相手にリーチの短い武器は致命的に相性が悪い。さて、どうしたものか。相手は2匹、片方を相手にしていると片方にやられかねない。日向は迷子になりやすいからそう遠くまで行かないだろうし耐久したほうが都合が良いか?いや、置いてしまっているだけで銃自体はすぐそこにあるからどうにか取りに行くべきか?狼が痺れを切らして突撃する。1匹が正面から来る。タイミングを見計らって牙を銃剣で受け止め、そのまま受け流す。もう片方は斜め左から来る。銃剣は反対側にあるから防御が間に合わない。体を後ろに倒しその勢いで顎を蹴り上げる。殴り合いを得意としない私だがこれは痛手になったろう。

 

しかし未だ不利なのは私だ。片方は脳震盪だろう、動くのにまだ時間が掛かるだろうがまだ片方は動ける。しかも時間を掛ければ掛けるほど不利になっていく。突っ込んでくる狼を正面から受け止める。そしてそのまま押し返し、飛び込んで突く。しかし横に跳んで回避され反撃される。幸いそのまま通り抜けて繰り出された爪は避けることができた。また狼が突進し爪を繰り出してくる。それを後ろに跳んで避ける。すると後ろからバッ!という何かが跳んだ音がして咄嗟に振り向くと何かの口が見えた。終わった…。しかし次に見えたのは自身の血ではなく青い半透明の、空気の奔流だった。

 

「ごめん!待たせた!」

「死ぬかと思った…まあ助かったよ」

青い奔流に吹き飛ばされた狼は木に激突し立てないようでふらふらとしていた。しかし最初に蹴り上げた狼は復帰したようで立ってこちらを睨みつけている。また先程正面から襲ってきた狼は様子を見るようにこちらを見ている。

「日向、任せられる?」

「わかった、全滅させてあげてもいいよ?」

「ありがとう」

私は一旦下がり合流した日向に前線を任せる。

 

日向が持つ刀は普通の刀ではない。決して業物といったものではないが、しかし普通とは異なる部分がある。それはアーティファクトだということだ。彼女の刀は周囲の空気を圧縮し、放つことが出来る。致命傷になり得ることは到底無いが吹き飛ばすぐらいはできる。刀を正面に構え、じりじりと近づく。彼我との距離が5m程になったときに狼2匹が攻撃してくる。1匹が嚙みついてくるのを刀を突き出し喉元を刺す。もう1匹がその隙に嚙みついてくるがそれを大袖で押し出すことで無効化し、更に向こう側へと押しのける。狼が立ち上がろうとする途端、銃声。狼は立ち上がること叶わず倒れる。狼から刀を抜き、木に激突した狼が動き出すのを確認すると日向の体が不自然に前進する。空気で地面を撃ち、その反動で一気に加速したのだ。突然、それも不自然に動き出すことが予測できるだろうか。狼はそのまま振り下ろされた刀で頭蓋を割られた。

 

「ごめん、まさか襲われるなんて…」

「大丈夫だって、怪我も無かったから謝ること無いよ」

今回は完全に私のリサーチ不足だ…。ここには来ることが多いとはいえ危険度を見誤るとは。今度はもっと安全なところで食事を取るべきだ。

「どうする?もっと探索する?」

「うん。話題変えてくれてありがと」

「どういたしまして」

本当に日向は頼りになる。能力的にも、精神的にも助かる。

 

森を抜けるとちょっとした丘に出る。私がいつも森に来る理由がそこにはある。ある者はこう言った。

「水の都…!」




今回はちょっと短めです。
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