正義の理解者   作:火取閃光

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第11話

 凛と葵さん達が来るようになって数ヶ月が経過した。あの日以降、衛宮家は更に賑わいをました。

 

 凛は週一で来て、葵さん達は月一で衛宮邸へ来るようになった。

 

 その為か切嗣に再婚疑惑が出てきて冬樹の虎たる藤ねぇが結果的に切嗣へ想いをぶちまけた。

 

 切嗣も葵さんも元々そんな気はなかった。

 

 しかし、第三者視点からすれば妻と死別した独身子持ちの小金持ちと夫と死別した由緒正しい家の子持ちの未亡人である。

 

 何かない訳がないと周りは勘繰ってしまう。それに加えて子供達、つまり俺達は仲良しである。

 

 つまり、そう言う事になってしまうと思って告白したらしい。結果は惨敗だったが藤ねぇは晴れやかな顔だった。

 

 元々、エミヤ達の記憶にも藤ねぇは切嗣が好きだったっぽい部分が見え隠れしていた。

 

 それが告白に移る前に切嗣が死んでしまってその想いがどうする事も出来ずにいて、終いには髪を切って失恋しました! と言わんばかりに強がった母性溢れる女性だったと記憶していた。

 

 だから、彼女的には踏ん切りが着いたらしい。自分のとの感情に一区切り着いたから笑えるらしい。

 

 それはそうと俺自身の事なんだが、あの日以降桜やイリヤ姉、セラ達から僕と言う一人称が合っていないとの事だ。

 

 自分的には切嗣の様な落ち着いた余裕のある大人な男性を目指していたつもりだったが子供らしくないと言う当たり前な事を言われた。

 

 そう言うわけで一人称は今後とも俺と言う事になった。俺自身も無理に僕と呼ばなくて良いから少しだけ気が楽になった。

 

 凛が週一で衛宮家に来るとなると問題が1つ発生した。それはゼルレッチ爺さんとのお茶会である。

 

「ほぉ。そなたが永人の子孫か……。名はなんと言う?」

 

「っ!? は、はい! 私は遠坂凛と申します! 魔道元帥、万華鏡とも称される大師父様にお会い出来て光栄の極みですわ!!」

 

 遠坂はゼルレッチ爺さんに出会った時はまるでスーパーアイドルにでもあったドルオタの様に大興奮して聞いたことも無い言葉遣いをしていた。

 

「これこれ、もっと楽にして良い。折角のお茶会なんだ。そなたは淑女だが子供であろう? 気を楽にしなさい」

 

「は、はぁ……」

 

「そうだぞ。ゼルレッチ爺さんもお忍びで来ているんだ。そんなに気張った態度で接せられると気疲れしてしまうだろ? だから、いつも通りで良いんだ」

 

 嗣郎は半ば諦めの境地で対応していた。機嫌を損ねてもそうじゃ無くても俺みたいな存在を目の前の人物はデコピンで消滅させられる。だかり普通に対応していた。

 

「え、えぇーーっ!?」

 

「ゼルレッチ爺さん、これは俺が最近アレンジしたお菓子なんだ。紅茶とあって美味しいと思う自信作さ」

 

「ほう、これはこれは……。さて、頂くとしよう」

 

「……お、美味しい」

 

「っ!? 嗣郎ってばまた腕を上げたー!」

 

「所詮、エミヤ達の料理の記憶から色々と試した結果だよ。俺が凄いんじゃない」

 

「でも、エミヤの記憶って、嗣郎さんの未来の可能性、なんですよね……?」

 

「つまり、嗣郎は凄いんだよ! お姉ちゃんと桜が褒めてあげる!!」

 

 それは良いのだろうか? と困惑しながらも嗣郎は2人の褒め言葉へ素直になって受け入れた。

 

「あはは……。あまりがどう、2人とも。遠坂も早く席について食べると良い。冷めないうちにどうぞ」

 

「あ、ありがとう……。っ!? お、美味しいっ!? あっ……!」

 

「気にしていない。偶にはこう言う日も良かろう」

 

 こうしてのんびりとお茶会をしていた時、ふと悪戯顔で何か思いついた表情のゼルレッチ爺さんを見て俺は嫌な予感がした。

 

「時に遠坂の娘……凛と言ったか?」

 

「は、はい! 遠坂凛です!!」

 

 先程までののんびりさ加減からビシッと背筋を伸ばしてゼルレッチへと身体を向けた。

 

「そなた、見る限り相当の魔術的才能を持っているに見える。まぁ、それを言えばそなたの妹の桜やイリヤスフィールも同様に言えるが……」

 

「あ、ありがとう、ございます!!」

 

「そなた、儂の弟子にならないか?」

 

「っ!? よ、よろしいのですかっ……!?」

 

「ただし、条件がある。そこの、儂の弟子である衛宮嗣郎を魔術戦で倒してみなさい。そうすればそなたに弟子の座をくれよう。どうじゃ?」

 

 ゼルレッチの提案に遠坂は途轍もなく燃えていた。

 

 そして、あのジジイやりやがったなっ! と言う目で嗣郎は睨むがゼルレッチはどこ吹く風の如く知らん顔していた。

 

「衛宮君? 悪いとは思っているわ。でも、折角のチャンスだものっ……! 貴方の命、取らせてもらうわっ……!!」

 

 そして始まったゼルレッチ卿のお遊びと言うなの暇つぶし。

 

 ここに対するは遠坂凛。五大元素全てを持つアベレージワンと言う規格外の才能を持つ魔術師見習い。

 

 そして、それに対するはおよそ宝石相当の魔眼を持ち、多くのエミヤ達の記憶や経験を継ぐ魔法使い擬きの魔術師見習いと言う訳のわからない存在である衛宮嗣郎。

 

 嗣郎は悟った。別に自分が負けて遠坂が弟子になるのは良い。それは彼女の才能を伸ばす意味でも良いと思う。

 

 でも、仮に負けた場合に出される課題がエグい事になるのは確定である。

 

 負けてはいけない。しかし、簡単に勝って仕舞えば彼女との関係もその才能も健全な事にはならない予感がある。

 

 それを分かっていてあのジジイはこれを仕組んでいた。そして、どう足掻くのか楽しんでいる。

 

 さてどうしたものかと悩んでいると凛は勝ち誇った顔で言い放つ。

 

「衛宮君、まさか魔術で私に勝てるとでも思っているの? なら、もしも貴方が勝ったら結婚でも、奴隷にでもなってあげるわ! ま、無理でしょうけどね!」

 

 遠坂には嗣郎の魔眼や魔術特性は言わずに軽く珍しい魔術と言う事を踏まえて降霊術的なモノで魔術を覚えたと掠ってもない事を伝えていた。

 

「わ、分かったが、少し落ち着け遠坂!?」

 

「問答無用!!」

 

 凛が魔術詠唱を述べる。エミヤ達の記憶から聞き覚えのある重圧系の魔術だったと思う。

 

 そして、投げられる宝石が砕け散り嗣郎の頭から考えられないくらいの重さのしかかった。

 

「どう? 重いでしょ? 早く降参しないとぺちゃんこよ」

 

「ぐっ……」

 

「ついでにガンドも欲しいかしら?」

 

「……後ろ、気を付けた方が良いぞ」

 

「そんな古典的な罠に引っかかると、で、も……??」

 

 頭に強い衝撃を受けて目を回す凛はその場に倒れる。そして、その影響で嗣郎に掛かった重圧も解かれた。

 

 凛の頭に当たったのは干将・莫耶の片割れである干将の刃引きした方である。

 

 重圧で倒れ込んだ際に改造した莫耶を投影して凛の後頭部に当たる様に干将をセットしておいたのだった。

 

 これはエミヤ達の記憶にある鶴翼三連の応用擬きだ。アレも同じような原理で働いていたからなんとなかった。

 

 そして、頭で気を失った凛が起きて肩を落とす。自分の才能は1番自分が分かっていた。

 

 同世代で負けるだけじゃ無く、元一般人の嗣郎に負けるわけないと若干慢心していた。

 

 凛が反省して項垂れている。嗣郎もなんて言って良いか分からず見守っていると白い妖精がニヤニヤして凛に近付いた。

 

「ねぇねぇ、凛、そう言えば貴方、負けたらなんでも言うこと聞くとか言ってなかったっけ?」

 

「っ!? そ、それはっ……!?」

 

「そ、そんなの本気の訳ないだろ!? イリヤ姉も何言って……!?」

 

「ねぇ? ゼルレッチおじ様。魔術師同士の口約束って口頭契約(オーラルギアス)って言うんだよね? さっきのアレ、成立しているよね?」

 

「その通りだとも。凛が提案して嗣郎がそれを了承した。そして、我々がそれを立ち会った。これは立派な契約である」

 

 そして、2人して同時に思い出す。そう言えばそんな事を口走った側と勢いで了承した側が同時に青褪める。

 

「これで、凛も桜同様に私の妹よ。可愛がってあ・げ・る」

 

 膝から崩れ落ちている遠坂に妖艶ながらも可愛い笑みでイリヤは遠坂の顎を指で撫でる。

 

「ま、待てって! イリヤ姉ぇ! それは破棄だ破棄!」

 

「知らないの嗣郎? 私のモノは私のモノ。嗣郎のモノは私のモノなのよ? ふふ」

 

 白い妖精がまるで猫の様な顔になって悪戯顔へ変化した事を見て嗣郎は手遅れである事を悟った。

 

「なんてジャイアニズムッ……!? 終わった……」

 

 天を仰ぎ絶望の縁に佇む嗣郎と凛は初めて口約束でも適当にやってはいけないと後悔して反省した。

 

 その後、なんやかんやあって遠坂にお願いを聞いて貰える事に落ち着いて俺は心臓が止まるかと思った。

 

 その背景を大爆笑している辺りやっぱりこのジジイは傍迷惑な魔法使いである事を再認識した。

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