遠坂凛との騒動があって数ヶ月がたった頃、俺が13歳の誕生日を迎える頃に来てしまった。
それは、記憶にあるエミヤ達にもあった衛宮切嗣の寿命問題である。
衛宮切嗣の身体と魂は第四次聖杯戦争の時に妻であるアイリスフィールを模った悪神アンリ・マユによって汚染されていた。
記憶のエミヤ達の切嗣はどうだったか知らないがやはり
本来なら
しかし、衛宮切嗣の場合は違った。
それは彼を呪った
だから、通常よりも心身に掛かる呪いに対して強力なのに日常生活を送れる歪な状態になっていた。
だけど、その状態とは言え呪われている為に確実に寿命は削られており、嗣郎が改造投影した回復系宝具でなんとか他エミヤ達の切嗣よりも長生き出来ていた。
「義父さん、ごめん……。俺にはこんな事しか出来なくて……」
うなだらて俯く嗣郎に切嗣は笑う。
「良いんだ。他の僕はもっと早く身体が動かなくなって、もっと早く死んでいただろう?
それを君の宝具でなんとか今まで生きられる様になっていたんだ。その事実を誇りはしても怒りはしないさ」
エミヤ達の記憶に残る様な綺麗な満月の夜に俺と義父である切嗣は話し合っていた。
最近、切嗣の身体が思う様に動かす事ができなくなり段々と衰弱していく様になってきた。
魔眼による診察をしてまだ完全に投影出来ないアヴァロンの代わりに限定接続した根源から切嗣の起源を応用してなんとか誤魔化してきたがこれまでのようだった。
嗣郎は他のエミヤよりも改造宝具と言うか道具作成に関して才能が高いらしい。
元々が古くから存在する鍛治師の家系の末裔って事もあるのだろう。
それ故に他のエミヤでは出来なかった改造宝具のレパートリーはかなり多い。
これまで切嗣に渡して来た回復系改造宝具もその1つでそれは今も使われているが大した効果を発揮していない。
もしかしたら切嗣の状態からして完全なアヴァロンを投影出来ても今更なのかもしれないと不安に思っていた。
俺の先天的な起源である鞘と後天的付与された剣は、ある意味完全性を秘めていて陰陽太極図の様な完全性があるから擬似的に根源に繋がったとされている。
それが道具作成や改造宝具にも関係しているのだがそれが本質じゃない。
精霊や妖精が混じった俺が魔眼を使えば反動はあるだろうがアーサー王が使った全て遠き理想郷を完全に複製する事は出来るだろう。
だがしかし、それを切嗣に与えた所でアヴァロンの機能を果たしても今の切嗣には意味が無い。焼け石に水の状態だと分かってしまう。
切嗣の身体と魂は俺と出会った頃には既にアンリ・マユと同化に近い状態で汚染状態なっていた。
だから、切嗣のこの老化は老化にあらず、呪いは汚染であっても呪いではないのであった。これは愛という汚染なのだ。
もしも、仮に完全版なアヴァロンを投影して今の切嗣へ渡していたら汚染状態で永劫死なない存在に成り果てるだろう。
だから出来なかったとも言える。そして、それを分かっているから切嗣は嗣郎に投影をお願いするのを辞めているのだ。
「多分、他の僕は今日、この日に君に正義の味方と言う理想を押し付けて勝手に死んで行ったのだろう。
僕は幸いにも嗣郎のお陰でまだ死ぬつもりはない。だけど、最近の事を考えると保って後1〜2年って所かな……?」
「……それまでにはどうにかして治療方法を見つける。義父さんも……イリヤ姉も……」
嗣郎は自身の拳をギュッと握りしめてそれを切嗣の手がそっと重なる。
「嗣郎……もしも、治療方法が見つかったら僕なんかよりもイリヤに使ってあげてね」
「っ!? それはっ……!?」
「頼むよ……。これは君にしか頼めない事だから……」
「……切嗣さんは狡いよ」
視線をそっと逸らして涙を浮かべた。そう言われたら言う事を聞くしかなくなるじゃないか! その意識が強く働いたのか義父を他人行儀に呼びつけた。
「ふふ……。久しぶりに切嗣さんって聞いたな……。でも、大人は総じて狡いモノだよ」
「……でも、分かった。正直、本当は全然分かったつもり無いけど……義父さんの思いは確かに受け取ったよ」
「ありがとう……。君のお陰で僕は色々後始末が出来るよ。イリヤとこんなに親子をやれたのは間違い無く君のお陰さ。
アイリを失ってから僕はこんなにも多くの命に囲まれているよ。ちょっとアイリに怒られそうだけどね……」
嗣郎の頭を撫でる規律が満月を見て生前の妻との思い出に浸る。それを見て少しだけ嗣郎は嫉妬した。
「アイリスフィールさん……。義母さんか……会ってみたかったな……」
「アイリはね……優しくて素敵な女性だった。イリヤの奔放さはアイリに似たんだと思う。僕が愛した女性さ……」
「もっとお話が聞きたかったけど、今日はもう遅いからもう寝よう。また、アイリさんの事を聞かせてよ……」
「うん。そうだね……。また、今度話そう。あぁ、今日の満月はアイリにそっくりなほど綺麗な満月だ……」
手を握り嗣郎に引っ張られる切嗣は思い出にしがみつくように、最後の最後まで満月を見て笑いながら布団への入って行った。