正義の理解者   作:火取閃光

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第2話

 ━━子供の頃、僕は正義の味方になりたかったんだ。

 

 なんだよ、それ……。なりたかった、って……諦めたのかよ?

 

 ━━うん……。ヒーローは期間限定で大人になると名乗るのが難しくなるんだ……。そんな事、もっと早く気付けば良かった……。

 

 そっか……。それじゃ、しょうがない……。

 

 ━━うん、しょうがない……。

 

 しょうがないから、俺が代わりになってやるよ。

 

 ━━うん? 

 

 爺さんは大人だからもう無理だけど俺なら大丈夫だろ。任せろって! 爺さんの理想(ユメ)は俺が必ず形にしてやるから!!

 

 ━━アハハハ! うん。ありがとう、士郎。あぁ……なんだか、眠くなってきたなぁ。

 

 寝るならちゃんと布団に行けよ? 爺さん。

 

 ━━うん。でも、もう少しだけ月を見ていたいかな……?

 

 それなら、最後まで俺も付き合ってやるよ。

 

 ━━うん……。ねぇ、士郎……。

 

 なんだ、爺さん?

 

 ━━ありがとう。後は、頼んだよ……。

 

 感謝するのは俺の方だって……。ありがとう、義父さん……。

 

 とても綺麗な満月の夜に俺達はしばらくの間ずっと月を眺めていた、そんな夢だった。

 

 僕は借りているホテルで目を覚ました。隣にはシロウ君が横になっていて彼が暴走した後から既に1週間が過ぎようとしていたが未だ目覚める気配が無かった。

 

 あの後、僕は彼を養子に引き取った。本当なら彼にその意思を聞いた上でその考えを尊重するつもりだった。だから、仮に彼が施設へ行きたいと言うなら最後まで支援をするつもりでいた。

 

 しかし、あの出来事でそれは一変した。彼と繋いだパスから流れ込むシロウ君の、いや彼等の記憶が僕の方へ逆流して来て彼の状態や正体がそれなりに分かった。

 

 どうやらシロウ君は聖杯の泥へ触れた事で並行世界にある自身の同一体である衛宮士郎やその死後に至る英霊エミヤ達の記憶や経験、人格などの情報を受け取ったらしい。

 

 本来ならあり得ない事だが並行世界の士郎達とは違いこのシロウ君には生まれながらにある魔眼や魔術起源が関係していた。

 

 彼の元の魔眼は解析の魔眼と言う妖精眼と同等クラスの低ランクの魔眼だった。先天的な魔眼であるが故に珍しくあるがそれだけで解析に特化した魔術特性の魔眼だった。

 

 しかし、それが聖杯の泥を見て、触れて解析した結果、偶然にも聖杯戦争と言う儀式が行われた霊地だった事もあり、英霊エミヤと言う座を起点に並行世界の衛宮士郎と言う同一体と繋がってしまった。

 

 本来ならそんな事をすれば脳が破裂してしまい直ぐに死んでしまう。仮に生き残れたとしても人格や記憶が混合してしまい即廃人は免れない事だったが此処で彼の魔術起源である"鞘"と言う属性が彼の命を繋ぐことになった。

 

 彼の魔術起源である鞘と言う属性は受け入れる事に特化した属性であり、本来なら破裂する情報量を受け止めてシロウ君とその他の衛宮士郎達の様に棲み分けを行い少しずつ情報を処理していた。

 

 だが、それを知らなかった僕はオーバーフロー状態のシロウ君を死ぬ間際だと勘違いして彼にアヴァロンを譲渡した事で暴走のトリガーを作ってしまった。

 

 そのトリガーは僕と言う存在だった。彼等の記憶を見る限り衛宮切嗣と言う存在はどの衛宮士郎達にも原点の様な存在だったらしく病室で再会した事で暴走状態に陥ったらしい。

 

 かの騎士王の聖剣エクスカリバーの鞘だったアヴァロンは召喚されたモノではなかったが儀式の霊地、英霊エミヤ達の繋がり、シロウ君の魔術起源と言う偶然が重なり本来の能力に近い治癒力を彼に与えた。

 

 その結果、多少身体が壊れても即座に再生する肉体が暴走を強める事で情報処理速度を格段と向上させた。大火災により幼い精神は既に壊れていたから廃人の恐れすら無くなった事も原因だった。

 

 そして、僕とパスを繋いだ時に彼の変質した魔眼が一時的とは言え根源へ接続した事で、僕の魔術起源である切断と結合を上手く利用して彼等との記憶や人格、経験などの分離に成功したらしい。

 

 僕自身も彼の記憶が流れ込んだのだけど、僕自身には根源へ接続した感じは無くあくまでもその事実を認識しているだけと言う感じだ。何と言うか方法を見せられただけで理解出来なかったと言うのが事実かも知れない。

 

 そう言う訳でこのまま病院に預けておくのは彼の身の危険もあり直ぐにホテルへ泊まる事で彼の目覚めを待ち続けた。彼は1週間も飲まず食わずだがアヴァロンが正しく機能している為か眠り続けている。

 

 その表情は時折穏やかだったり、苦悶の表情だったり、悲しそうな表情だったり様々だった。恐らくは分離した衛宮士郎達の人生を見ているのだと思う。

 

 僕は早く彼と話したいと思いながら過ごし、彼が目覚めたのはそこから更に1ヶ月近くが過ぎた頃だった。

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